僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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ようやく雄英高校編です!
あと、注意事項というか連絡事項というか。登場人物について、当初から出久と勝己については名前をそのまま使ってましたが、雄英の登場人物は名前だと誰だか分かりにくいキャラがいるので、苗字表記で行きたいと思います。今さら出久と勝己を苗字表記にするのも変な感じがするのでこのような取り扱いとしていきます。よろしくお願い致します。
 それでは、本編をどうぞ〜!


第7話 やったぜ入学!頑張れ個性把握テスト!

「出久! ティッシュ持った!?」

「うん」

「ハンカチも!? ハンカチは!? ケチーフ!」

「うん!! 持ったよ! 時間がないんだ、急がないと……」

「出久!」

「なァにィ!!」

「……超カッコイイよ……」

「…………! ありがとう! それじゃあ、行ってきます!」

 

 春。

 新しく学生や社会人となる者が期待と不安を胸に新生活へと望む季節。

 

 出久も雄英高校ヒーロー科1年生として新たな一歩を踏み出した。

 

 

 雄英高校へ着いた出久は自分が所属することになるクラス、1年A組を目指していた。キョロキョロ周りを見渡しながら、廊下を進んでいく。

 

「(廊下や教室のドアの高さがやたら高いなあ。異形型の生徒や先生に配慮しているからかな?)」

 

 そんな分析をしながら歩いていると、ようやく探していた1年A組の教室に辿り着いた。

 

「(あの受験者数から選ばれた(エリート)たち………できれば怖い人たち、特にかっちゃんとは違うクラスだとありがたいんだけど……)」

 

ガラッ

 

 そう願いながら出久は1ーA教室のドアを開け……。

 

「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」

「思わねーよ!! てめーどこ中だよ端役が!」

 

バタン

 

 そのまま閉めた。

 

「まさかの2トップ……。どうしよう……、めちゃくちゃ不安なんだけど……」

 

 1人呟くが、それに答えてくれる者は周囲に誰もいない。気を取り直して出久は再びドアに手をかけて開ける。

 

ガラッ

 

「よお、デク! 久しぶりだなあ?」

「ぎゃああああああああああああああああああああ!!?」

 

 そこには鬼の形相で笑う勝己が立っており、出久は恐怖のあまり叫んでしまった。

 

「なんだなんだ?」「今の声何?」「何かあったのか?」「おーい、どうしたんだ?」

 

 出久の叫び声に他のクラスから生徒が次々と顔を出して何事かと教室から顔を覗かせていた。

 

「す、すみません! ちょっとびっくりしちゃって、なんでもありません!」

 

 頭を下げてそう言って、他の生徒達が教室に戻るのを確認してから出久は自分の前に立つ人物に目を向けた。

 

「人の顔見て叫ぶとか随分失礼なことしてくれるじゃねえかよ、なあデク……」

「お、おはようかっちゃん。ごめんね、ついびっくりしちゃって……」

「やや! 誰かと思ったら試験会場で会った女子じゃないか!? やはり君もごうが!?「今は俺がこいつと話てんだ、割り込んでくんじゃねえクソメガネ!」

 

 出久の姿を見て眼鏡の男子生徒、飯田天哉が話しかけてくるが、割り込まれるのが気に食わない勝己に顔を押さえつけられてしまう。

 

「ちょっ、ちょっとかっちゃん! そんなことしたらダメだよ!」

「うるせえ、俺に指図すんじゃねえ」

 

「かっちゃん!? あの強面顔にかっちゃん!?」

「どういう関係なのよ、あの2人……」

 

 金髪に黒のギザギザ模様が入った男子生徒、上鳴電気と耳たぶがイヤホンジャックになっているショートカットの女子生徒、耳郎響香の2人は揃って疑問を口にした。入学初日から激しく言い合うなど明らかに普通ではなく、クラス中の目が出久と勝己に向けられていた。

 

「あ! そのモサモサ頭は!!」

 

 出久が勝己とドア近くで対峙していると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。振り返ると、試験会場で自分が助け、また自分を助けてくれた女子が笑顔で歩いてきた。

 

「地味めの!! 良かった、合格してたんだね!」

「あ、あの時の丸顔の女の子!」

「ええ!? 君も丸顔って言うの!?」

「ああ、ごめん! かっちゃんが言ってたからつい……」

「ああ? あの時の丸顔じゃねえか? てめえも受かったんか?」

「爆豪君もいるん!? このクラスやばない!?」

「君は確か、彼女に助けられた女子だね?」

「そっちは……誰?」

 

 ドア付近で4人がワイワイ話し合っている(1人は喧嘩腰)のを他の生徒達は遠目から眺めていた。

 

 ……すると。

 

「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け」

 

 どこからともなく、どちらかと言うと足元の方からそんな言葉が聞こえてきた。出久達4人が視線をドアの下に向けると寝袋に入った、長髪に無精髭の男が横になっていた。

 

「ここはヒーロー科だぞ」

「「「「「(なんか!!! いるぅぅ!!!)」」」」」

 

 そのままの体勢でゼリー飲料を飲む男に生徒全員困惑していた。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

「(誰だろう、この人? 先生だとしたらプロヒーローなんだろうけど、見たことないよこんなくたびれた人……)」

 

 出久が脳内ヒーロー図鑑で調べてみるが該当ヒーローがなかなか出てこない。そうしているうちに男が自己紹介を始めた。

 

「担任の相澤消太だ、よろしくね」

「「「「「(担任!!?)」」」」」

 

 再び全員の心の声が一致した。国内最高峰の雄英ヒーロー科の先生がこんな不審者一歩手前な人物とは俄には信じられなかった。そうしている間にも相澤は話を続けた。

 

「早速だが、体操服(コレ)着てグラウンド出ろ」

 

 

 

「個性把握テストォ!?」

 

 グラウンドに出たA組生徒は相澤に告げられた内容に驚きの声を上げた。

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」

「……!?」

「雄英は『自由』な校風が売り文句。そしてそれは『先生側』もまた然り」

 

 相澤はそう言ってこの国の文部科学省がいかに怠慢かを説いていく。画一的な授業では現代の『個性』豊かな生徒達を成長させることができない。そう結論づけて、雄英では個性をフル活用した身体テストを行なっているとのことだった。

 

「まずはデモンストレーションだ。爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだった?」

「67m」

 

 それだけでも、男子中学生の平均を大きく上回る数値である。相澤は勝己にソフトボールを投げ渡した。

 

「じゃあ『個性』を使ってみろ。円から出なきゃ何してもいい、早よ。思いっきりな」

 

 言われた勝己は軽く肩周りをストレッチし、準備を整えると右手を大きく振りかぶる。

「(球威に爆風を乗せて!)死ねえ!!!」

 

 物騒な言葉と共にソフトボールは勢いゆく飛んでゆき、すっかり見えなくなってしまった。手元の端末を確認していた相澤はそれを生徒に見せながら話を再開した。

 

「まず自分の『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 相澤がかざした端末の数値は705.2m、『個性』なくしてはあり得ない距離を示していた。

 

「なんだこれ!! すげー()()()()!」

「705mってマジかよ」

「『個性』思いっきり使えるんだ!! さすがヒーロー科!!」

 

「……面白そうか……、ヒーローになる為の3年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

「!?」

 

 興奮気味に生徒達は感想を言うが、相澤の冷や水を浴びせるような言葉に全員に緊張が走る。そして、さらに衝撃を与える言葉を続けた。

 

「よし。トータル成績最下位のものは見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

「はあああ!?」

「生徒の如何は先生(おれたち)の『自由』。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 除籍処分!? なにそれ!? マズい! 

 

「最下位除籍って……! 入学初日ですよ!? いや初日からじゃなくても……、理不尽すぎる!!」

 

 丸顔の女の子、麗日お茶子さんが相澤先生に抗議する、が……。

 

「そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー」

 

 さも当然と言うように相澤先生はそう言って、さらに続ける。

 

「放課後マックで談笑したいならお生憎。これから3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける」

 

 ニヤリと不敵に笑い、挑発するように人差し指を上に向ける。

 

「『Plus Ultra(更に向こうへ)』さ。全力で乗り越えて来い、こっからが本番だ」

 

 どうする僕!? 僕は力の調整なんて……!

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 静岡県内某所 ヒーロー御用達トレーニング施設

 

「コントロールのコツ! それはズバリ、イメージと感覚が大切だね!」

「イメージと感覚……、オールマイトも言ってました。やっぱり大切なんですか?」

「そう! 個性もいわば身体能力の1つだからね。みんな小さい頃から手足を使うように感覚を覚えていくんだけど、出久ちゃんはこれまで無個性だったから『個性』を使うというイメージと感覚があまりないと思うんだ。オールマイトに教えてもらったのは100%の出力を出す方法。でもそれだと出久ちゃんの今の身体がボロボロになっちゃうから、そうならないように出力を抑える方法を覚えないといけない。正直な話、俺もそんなに得意じゃなかったし、なんだったら今でも調整ミスることあるけど、それでも出久ちゃんの手助けにはなると思うよ!」

「はい! いつまでもコントロールできないままじゃ個性を使うたびに骨が折れてなにもできません。できれば、入学までに10%は無理でも5%、せめて1%でもできるようになりたいんです! ミリオさん、お願いします!」

「オッケー! それじゃあ、レッツトレーニング!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 ミリオさんに指導してもらってなんとか1%の出力ができるようになったけど、それも集中してギリギリなんとかできるレベル。集中が途切れた途端にコントロールブレちゃうから全然安心できない!

 

 でも、なんとか頑張らなきゃ!

 

 相澤先生の指示で個性把握テストが始まった。

 

 

 

 ……現在4種目が終了。結果は一進一退だ。

 瞬時に力を発揮する種目は高1女子の平均を遥かに上回る結果、握力150kg、立ち幅とび10mをそれぞれ出せた。でも、継続的に力を発揮する運動、50m走や反復横とびは1%出力のイメージができなくて個性を使わずにそれぞれ7.02秒、57点だった。これ自体女子としては優れた成績だが、ヒーロー科の中で特筆できるものじゃなかった。

 

 次は5種目目のソフトボール投げ。さっき麗日さんが∞ってとんでもない記録出してたけど、この種目は瞬間的な力が求められるから結構いい記録が出せるかもしれない。

 

 ここで巻き返さないと!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Katsuki

 

 何が起こってやがる? あいつはこの間まで運動音痴の無個性だったはずだ。それがなんでこんな記録が出せるんだ!

 

「うーん、なんというか試験の時と違って随分控えめな記録だな。いや、女子としては十分異次元の記録なんだが……」

「おいクソメガネ、どういうことだ!?」

 

 クソメガネがさも当たり前のように、むしろ物足りないような雰囲気で言うから思わず聞き返した。

 

「君は彼女が入試時に何を成したのか知らないのか!?」

「あ!? お人好しにもそこの丸顔を助けて手足をぶっ壊したんだろ!?」

「ちょっと!? 毎回丸顔ゆーのやめてくれへん!? あの子が手足壊したのは超大型仮想敵をぶっ飛ばしたからなんよ! こう、『すまっしゅ』って感じで!」

「あれ、凄かったよね。スマートではなかったけど」

「なんだと!?」

 

 丸顔やキザ野郎の言うことが信じられなかった! あいつは昔から木偶の棒、『無個性』のはずだ! そんな力あるはずがない!

 

 何かあるはずだ!

 

 そんなことを考えているとソフトボール投げでデクの番がやってきた。一応今までの傾向からして瞬間的な力が必要な種目で高い記録を出しているから、これでもそうなるかもしれねえ。

 

 デクが位置について構える。助走をつけて振りかぶる、がその瞬間目に何か入ったのか、フォームが崩れた。それでも動きを止められず、不恰好なフォームでボールを投げた。

 

 記録は46m。

 

 個性を使ったにしては平凡な記録だ。一体何が起こったんだ?

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 一体何が起こったんだ? 僕は確かに個性を発動させて、でも目に汗が入ってコントロールを失ったはずなのに……。腕が折れてない。その代わりにボールも飛んでないけど……、なんで?

 

「個性を消した」

 

 声のした方向、相澤先生に振り返る。相澤先生の目が赤く光ってる? あれは一体?

 

「入試から少しはマシになっているかと思えば……。つくづくあの入試は……合理性に欠くよ。お前のような奴も合格出来てしまう」

 

 消した……!! あのゴーグル……、そうか……!!

 

「視ただけで人の個性を抹消する『個性』!! 抹消ヒーローイレイザーヘッド!!!」

 

 他のみんなもざわつく。知らない人もいたり、名前だけ知っている人もいたり。

 僕もかろうじてヒーロー名と個性を知っているだけでその姿を見たことはなかった。まさか、雄英の先生だったなんて!

 

「見たとこ……個性の制御がまだ上手くできないんだろ? 多少はマシになったようだが、また()()()()になって、誰かに救けてもらうつもりだったか?」

 

 相澤先生の言葉が僕の胸に刺さる。まだオールマイトの個性を受け継いで1ヶ月ちょっとしか経っていないけど、それでもなんとかここまで来たんだ!

 

「そっ、そんなつもりじゃ……! 今は汗が目に入って……!」

「どういうつもりでも周りはそうせざるをえなくなるって話だ」

 

 相澤先生が身につける布、確か捕縛布、で締め上げられる。

 

「プロになれば言い訳は通用しない。たとえ1人救ったとしてもその後自分が怪我して動けなくなってしまえばほとんど意味がない」

「…………」

 

 相澤先生のいうことは正しい。僕はまだオールマイトのようにOFAを扱えない。100%の力を使うと身体を壊して動けなくなってしまう。1%ならできるけど、まだまだ安定して使うには経験が足りない。

 

「『個性』は戻した……。ボール投げは2回だ。とっとと済ませな。……不測の事態に備えるのもヒーローに必要なことだ」

 

 そう言って、ボールを渡される。

 

 ……どうしよう? 一応、さっきみたいに1%でもう1回チャレンジする? でも、また何かあったら後の種目が全部ダメになっちゃう……。

 

……考えろ、考えるんだ!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ミリオさんはどうやって個性のコントロール法を習得したんですか?」

「そうだね、俺の個性は『透過』、全身発動させるとあらゆるものが俺の体をすり抜ける。そうなると地面もすり抜けて重力に従って地中に落ちていってしまうんだ。だから、まずは身体の一部、それこそ指先だけ発動できるようにトレーニングしていったよ。指先ができたら手首まで、その次は肘までと言った具合に発動できる部位を広げていったのさ」

「なるほど〜、でもこれだと……」

「そう、出久ちゃんの個性をそのイメージでやると指先だけ100%になってボロボロになっちゃうよね。だから、少し考え方を変えて……」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 ……これだ! 今できる最善はこれしかない!

 

「おい、早くしろ」

 

 相澤先生に急かされる。大丈夫、できるはずだ。オールマイトやミリオさんの言ってた『イメージ』と『感覚』を意識して……。

 

 手渡されたボールを持ち、構える。軽く助走をつけて……身体のひねり……左足の踏み込み……ひねり戻し……右手が振り出されて……まだだ……まだ、ぎりぎりまで粘って……指先にボールが引っかかって……。

 

 今!!!

 

「SMASH!!!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「(こいつ……! まさかそんな方法を思いつくとは!)」

 出久の投げたボールはグラウンドの遥か遠くへ勢いよく飛んでいった。彼女の行動に驚愕していた相澤だったが、確認していた端末に数値が確定表示されると、生徒一同にそれを見せた。

 

 記録は705.3m。

 

「(力任せの一振りではなく、指先にのみ力を集中させたか。さっきまではなんとか出力を抑えていたようだったが、まだまだ集中が甘く一瞬の隙で途切れてしまうものだった。注意で萎縮するか、踏ん張って集中し切るか、やぶれかぶれの1発かどちらかと思ってたんだが……)」

「先生……! まだ……動けます!」

「……! なかなかやるじゃないか……」

 

「うわー! ヒーローらしい、すごい記録出したよー!」

「いや、先ほどまでの記録も十分すごいものだったっんだが……。それにしても指が腫れあがっているぞ。入試の時といい……、制御が不安定なのか? おかしな個性だ……」

「でも、やっぱりスマートじゃないね」

「…………!!?」

 

 入試で出久と会場が一緒だった3人はようやくその時を彷彿とさせる記録が出たことに三者三様の反応を見せ、それ以外の生徒は驚愕の表情を見せていたが、その中でも勝己の驚きは人一倍だった。

 

「(何だあれは……! 『個性』の発現はもれなく4歳までだ! あいつは無個性だった、それは俺が一番よく知ってる!さっきまでの記録もそうだが、ありえねえ! 一体何が!) どういうことだコラ! ワケを言えデクぅ!!」

「うわああ!!?」

 

 激昂した勝己が個性を発動しながら出久に向かっていく。が、どこからか伸びてきた細布が勝己に絡まり動きを封じる。

 

「ぐっ……、んだこの布固っ……!!」

「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ『捕縛武器』だ」

 

 勝己を拘束したのは相澤だった。かなり丈夫なのか、勝己が動こうとしても千切れる様子が全くない。いつもなら個性で焼き切るだろうが、相澤が抹消の個性で使えなくしており、勝己に為す術はなかった。

 

「ったく、何回も個性を使わすなよ……俺はドライアイなんだ」

「「「「「(『個性』すごいのにもったいない!!)」」」」」

 

 またもや全員が同じ感想を抱いていた。

 

「時間がもったいない。次準備しろ」

 

 相澤が個性を解き、拘束をほどいて勝己を解放した。勝己はその場を動かず、未だに信じられない目で出久を見ていた。

 

「(何もできねえ無個性だったはずだ! だから、俺は……!)」

 

 周囲にまで歯軋りが聞こえそうな表情の勝己だったが、次々と進むテストや指示を出す相澤に不満をぶちまけることができずに黙って従うしかできなかった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 予定していた全種目が終了した。

 

 僕のめぼしい記録はソフトボール投げの705.3m、握力や立ち幅とびが中くらいであとは他の生徒が良すぎたのとソフトボール投げの怪我の痛みで全然ダメだった。

 

「んじゃ、パパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 トータル最下位が除籍……! この中の誰かが……! 自分が除籍になるのはもちろん嫌だけど、せっかく同じクラスになった誰かが、まだ名前も覚えていないのに除籍になるのも嫌だ!

 

「ちなみに除籍はウソな」

 

 

 

 ………………………………………………………………………………は?

 

 

「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

「「「は――――――――――――――――――――――――――――!!!!??」」」

 

 そんなんありか――――――――――――!?

 僕の心配をかえせ――――――――――――!?

 

「あんなのウソに決まってるじゃない……。ちょっと考えればわかりますわ……」

 

 ポニーテールに長身の女子生徒、八百万さんが呆れ気味にそう呟いてた。

 

 ……でも、相澤先生のあの目は本気だったよ、たぶん……。

 

「そゆこと、これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ」

 

 そう言って振り返り、校舎へ向かってスタスタ歩き始める。

 

 マジでなんだったんだ……? 無駄に絶望感味わわされるし、人差し指は折れちゃうし……。まあ、指先のみで100%出せたのは良いことかもしれないけど……。

 

「緑谷」

「ひゃい!?」

リカバリーガール(ばあさん)のとこ行って治してもらえ。明日からもっと過酷な試練の目白押しだ」

 

 そう言いながら何かの書類、保健室利用書を手渡して今度こそ校舎に戻っていった。

 

 ……なんなの……?

 

 

 個性把握テストの結果は15位。ソフトボール投げの記録がなかったらもっと下だったかもしれない。まだまだ足りないことが多い。これから学んでいくんだ! 憧れに近付く為に……!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 初日終了、下校時間。

 

「疲れた……。治療にも体力いるんだなあ……。」

 

 出久はトボトボと校門に向かっていた。個性把握テスト後にリカバリーガールに治療してもらったが、治療にも体力がいることを教えられ、以後気をつけるようにと釘を刺された。出久としてもそのつもりではあるが、まだまだ個性のコントロールが上手くいかないのでどうしたものかとぐるぐる頭を悩ませていた。

 

「指は治ったかい?」

「飯田君……。うん、リカバリーガールに治してもらったよ」

「それは良かった。しかし、相澤先生にはやられたよ。俺は『これが最高峰!』とか思ってしまった! 教師がウソで鼓舞するとは……」

「(飯田君、怖い人かと思ってたけど真面目なだけなんだね)」

 

 歩きながら「教師とは、教育とは」と続けて自分の考えをつらつらと語る飯田に、出久の中の第一印象が怖い人から真面目で固い人に変わっていった。

 

「おーい!」

 

 そんな2人を後ろから呼ぶ声がして、振り返ると麗日が小走りに向かってきた。

 

「2人とも駅まで? 一緒に行こ!」

「君は∞女子」

「(∞女子!? 飯田君って独特のネーミングセンスしてるなあ)」

「麗日お茶子です! えっと飯田天哉君に緑谷……デクちゃん! だよね!!」

「ええっ!?」

「あれ? でも爆豪君がいつもデクって呼んでたから……」

 

 出久は由来を正直に話すか迷ったが、言われ慣れているし今さら隠すことでもないかと考えて経緯を話した。

 

「ええと、麗日さんは前聞いたと思うけど、かっちゃんとは幼馴染で……小さい頃のあだ名をそのまま言われ続けてるみたいな……。本名は出久で、漢字で書くとデクとも呼べるから『木偶の棒』にかけて……」

「なるほど、蔑称か」

「えーそうなんだ! ごめん!! ……でも『デク』って『頑張れ!!』感じで、なんか好きだ私」

 

 麗日の言葉に出久は目から鱗が落ちるようだった。勝己に言われ慣れてしまっていたが、それでもふとした時に蔑称であると思い出してしまう『デク』の名を、そんな風に前向きに考えられるのかと、出久には衝撃的なことだった。

 

「……そう言ってもらえたのは初めてだよ。いいよ、デクって呼んで」

「それでいいのか緑谷君!?」

「うん! 私もお茶子でいいよ!」

「いや、でも、女の子でも名前で呼ぶのは、その、あまり慣れてなくて……」

 

 飯田のツッコミが入るが、入学までのトレーニングと初日の個性把握テストで張り詰めていた心が穏やかになるのを出久は感じた。

 

 雄英高校入学初日、緑谷出久に新たな友達ができた瞬間だった。

 

 同じ時、遠くから3人を見る勝己の存在に出久が気付くことはなかった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「相澤君のウソつき!」

 

 校舎に隠れて見ていたオールマイトが戻る途中の相澤に声をかけた。いきなり声をかけられた相澤はオールマイトを一瞥して怪訝そうな表情を浮かべた。

 

「オールマイトさん……見てたんですね……。暇なんですか?」

「『合理的虚偽』て! エイプリルフールは1週間前に終わってるぜ」

 

 努めてフレンドリーに話そうとするオールマイトに相澤はややうざったそうな雰囲気を漂わせている。それを知ってか知らずか、オールマイトは話を続ける。

 

「君は去年の1年生、()()()()()()()()()()にしている。『見込みゼロ』と判断すれば迷わず切り捨てる。そんな男が前言撤回っ!」

 

 ニカっと笑って相澤を指差す。

 

「それってさ! 君も緑谷君(あの子)に可能性を感じたからだろう!?」

「…………君()? ずいぶんと肩入れしているんですね……? 先生としてどうなんですかそれは」

「う……」

 

 至極当然なことを言われてオールマイトは唸ってしまう。相澤はオールマイトとすれ違いながら話を続けた。

 

「『ゼロ』ではなかった、それだけです。見込みがないものはいつでも切り捨てます。半端に夢を追わせる事ほど、残酷なものはない」

 

 これで話は終わりだと、相澤はオールマイトを置いて校舎へ戻っていった。

 

「……君なりの優しさってわけかい、相澤君。……でも、やっぱり合わないんだよな〜、ウマが……」

 

 ため息をつきながら、独言る。今日は何とか乗り切ったが、OFAを継承した愛弟子に対して心配事が尽きない。

 

「安心してる時間はないぞ緑谷少女。……明日からが本番だ」

 

 ここにはいない出久に対する、激励とも警告とも取れる言葉を呟いて、オールマイトも校舎へと戻っていった。

 




 ようやく1ーAのメンバーも出てきましたね。これからキャラの動きを把握するのが大変になりますが、どうなりますかね〜(他人事w)この世界の出久はミリオのトレーニングのおかげで入学時からOFAを不完全ながら1%までコントロールできています。微々たる差ですが、これが今後の物語に少しづつ影響していく、かもしれませんw作者的に大筋以外は作りながら考えているので、当初と全く違う展開になることもしばしばあります。なるべく大きな矛盾が生じないように頑張りますが、投稿期間が空いている時はその辺で苦戦していると思ってくださいw

 今後も応援よろしくお願い致します!
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