僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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 今回は飯田君が頑張る回です。


第9話 決めろ学級委員長! そして……

 関東地方のとある繁華街にある雑居ビル。各階には居酒屋や創作ダイニング、キャバクラなど様々な業態の飲食店が平日から賑わっていた。その中の一つにシンプルに『BAR』と看板が掲げられた店があった。時間帯としては客が入ってきてもおかしくなかったが、ドアには『Closed』の板がかけられており、入ろうとした男性がそれを見ると残念そうに頭を振って別の店へと向かっていく。

 

 閉まっているはずの店の中には人がいた。1人はカウンター内におり、1人はカウンターに座り、もう1人は少し離れた位置で佇んでいた。

 

 その者たちは三者三様に異様な風貌をしていた。カウンター内の男はよくあるバーテンダーの格好をしていたが首の部分に金属製の首輪のようなものをつけており、彼の顔や手はなく代わりにその位置には黒色をしたモヤ状の物質が漂っていて、鮮やかな手つきでカクテルを作っていた。

 

 カウンターに座る男は黒で統一されたシャツとスウェットに白のスニーカーというシンプルな服装だが、7()()()()()()が彼の頭、首、肩、脇腹、上腕、前腕を掴んでいた。手首から先は何もなく、アタッチメント状の金具が付けられており、遠目から見るとよくできたオブジェにしか見えなかった。

 

 離れた位置にいる男、人、いや()()()()()は他の2人とも違い、ある意味最も異質に見えた。全身黒色の肌で剥き出しの上半身は筋骨隆々であり、無数の切り傷が刻まれていた。これだけでも異様だったが、頭部はさらにその上をいった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。かろうじて人型と言える姿は悍ましく、グロテスクであった。

 

「見たかこれ? 教師だってさ……」

 

 身体中に手をまとった男が手に持っていた新聞をカウンターに置き、バーテンダーに話しかけた。内容はNO.1ヒーロー、オールマイトの雄英高校への赴任に関するものだった。バーテンダーは返事をせず、代わりに出来上がったカクテルの入ったグラスを男へ差し出した。カクテルの色は鮮血を思わせる鮮やかな赤色をしており、薄暗い部屋とのコントラストが不気味さを醸していた。

 

「なァ、どうなると思う? 平和の象徴が……(ヴィラン)に殺されたら」

 

 男は楽しげに笑い、グラスを手に取り一息に飲み干した。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「オールマイトの授業はどんな感じです? 『平和の象徴』が教壇に立っているということで様子など聞かせて!」

 

 雄英高校の校門前は複数のマスコミによる人混みでごった返しており、生徒達からオールマイトのことを聞き出そうと我先にインタビューを試みていた。2、3年生の上級生はそもそも担当学年ではないためマスコミの追求をサラリと躱して校門をくぐっていき、1年生もヒーロー科でないものが大多数のため、ありきたりなことを話して足早に去っていく。

 

「様子!? えーっと、筋骨隆々!! です!」

「は?」

 

「教師オールマイトについてどう思いますか?」

「最高峰の教育機関に在籍しているという事実を殊更意識させられますね。威厳や風格はもちろんですが、他にもユーモラスな部分等我々学生は常にその姿を拝見できるわけですから……」

「ごめん、君話が長すぎ」

 

 授業を受けた中に真面目に答えてしまう生徒もいた。マスコミも答えてくれそうな生徒の傾向を把握していき、そんな中でモサモサ頭にそばかすの少女、出久にマイクが向けられた。

 

「オールマイトの授業、どんな感じですか? ……あれ? 君って確か1年前ヘドロヴィランに向かっていった……」

「あ、えーっと、はいそうです……」

「うわあ! 雄英に進んだんだね! 授業とかはやっぱり大変かな?」

「えーと、はい、毎日ついていくので必死です……」

「その怪我も授業で!? 女の子なのに大変だね〜」

「あの、これはその……」

「あ、そうだった! オールマイトの授業はもう受けたのかな? 私たちも世間もNO.1ヒーローがどんな授業してるか気になるから、そこのところ教えて欲しいんだけど?」

 

 断りきれない出久は足を止めてしまったことで質問攻めにあっていた。1年前のことで少々苦手になってしまっていたが、今回もすっかり囲まれて身動きが取れなくなっていた。

 

「……邪魔だ、とっとと歩けクソが!」

「え? かっちゃん!?」

 

 後ろから声をかけられ振り向くといつも通り不機嫌そうな顔の勝己が立っていた。

 

「チンタラしてるから絡まれるんだよ。おら、とっとと行け!」

「ちょっとかっちゃん!? 押さないでよ!」

「あ! ちょっと君! もう少し話聞かせて! もう、あなた何なの!? って君も『ヘドロ』の時の!!」

「…………」

 

 勝己はマスコミの質問を無視して出久を押しやり、途中から引きずるようにしながら校門へと進んでいく。進んだ先には細布をマフラーのように巻いた男、相澤が登校する生徒に早く校舎へ行くよう促していた。

 

「相澤先生……」

「……ったく。お前は何してるんだ。あんなもんは無視していればいいんだよ」

「すみません……」

「爆豪、緑谷を連れて早く教室へ行け」

「言われなくてもわかってるわ」

 

 勝己はそのまま出久を引きずって校舎へ入っていき、相澤が入れ替わるようにマスコミの前に立った。

 

「君達! ちょっとー! もう、行っちゃった……。まあ仕方ないか、別の人に、あのオール……って小汚っ!! 何ですかあなた!?」

「彼は今日非番です。授業の妨げになるんでお引き取り下さい」

 

 相澤は犬猫を追い払うようなジェスチャーをして、校舎へと引き返す。

 

「オールマイトに直接お話しお伺いたいのですが!! あとあなた小汚すぎません!?」

「(よくこんな中でヒーロー(しごと)出来てたな、あの人……)」

「ちょっと!! 少しでいいのでオールマイトに……」

「あ、バカ」

 

 ガゴガガガ!!

 

 なおも食い下がろうとする女性記者が校門を通ろうとした瞬間、校門のシャッターが大きな駆動音を響かせながら閉じた。

 

「うわあああ!? 何だあ!!!?」

「『雄英バリアー』だよ、俺らはそう呼んでる」

「ダサ!! なんスかそれ!」

「学生証とか通行許可IDを身につけていない者が門をくぐるとセキュリティが働くんだ。校内のいたるところにセンサーがあるらしいぜ」

「なにそれー! お高くとまっちゃって!! 一言くらいくれてもいいのにさ!」

「ったく本当によー! 二日も張ってんのにウンともスンとも言わねー!!」

 

 勝手なことを言いながらもマスコミは帰る様子を見せない。下校時もまた同様に生徒に聞き回ろうと考えているのだろう。

 

 そんなマスコミの様子を離れたところから伺う一つの影があった。

 

「『雄英バリアー』ね……、確かにダサい名前だわ……」

 

 男はニヤリと笑うとマスコミに近づいていき、その姿は集団に紛れて判別がつかなくなっていった。

 

 

「かっちゃん! もう大丈夫だから! 手離して!」

 

 無言で歩いていた勝己は言われてずっと出久の手を掴んでいたことを思い出した。すぐに手を離したが、力が入っていたせいか掴んでいたところが赤くなっていた。

 

「ごめんね、僕鈍臭くて。それと、ありがとう……」

「……ボケっとしてんじゃねえよ。1年前と言い、学習能力ねえんかてめえは」

 

 そう言って勝己は出久を置いて教室へ向かう。出久はしばらくその場に立ち尽くしていたが、予鈴が鳴ると慌てて教室へ駆け出していった。

 

 

「昨日の戦闘訓練、お疲れ。Vと成績見させてもらった、……爆豪」

 

 HRが始まった。労いもそこそこに相澤は戦闘訓練を見たことを告げると真っ先に勝己を見た。

 

「おまえもうガキみてえなマネするな。能力あるんだから」

「…………わかってる」

 

 訓練の映像と講評で勝己は散々だったが、彼の能力の高さは相澤も認めるものがあり、精神部分を鍛えられればかなりの実力になることを見込んで発破をかけた。

 

「……で、緑谷はまた腕ブッ壊して一件落着か?」

「!?」

「『個性』の制御……、いつまでも『出来ないから仕方ない』じゃ通させねえぞ」

 

 戦闘訓練第一組目で勝己と対戦した出久にも相澤は言及した。今回の戦闘訓練で怪我をしたのは出久だけであり、自然と相澤の語気も強くなる。

 

「俺は同じ事言うのが嫌いだ。()()さえクリアすればやれることは多い。焦れよ緑谷」

「っはい!」

 

 勝己同様、個性の汎用性が高い出久に対する期待は大きい。叱るだけでなく、問題点の改善を促すための指導も教師にとって大切な務めである。相澤はため息を一つついて次の話題に進んだ。

 

「さて、HRの本題だ……。急で悪いが今日は君らに……」

「「「!!」」」

 

「(何だ……!? また臨時テスト……!?)」

 

「学級委員長を決めてもらう」

「「「学校っぽいの来たーーー!!!」

 

 学級委員長。クラスをまとめる役割とされているが、実際は雑務役としての役割が強く他の高校や雄英でも普通科ではなかなか成り手はいない。

 

「委員長!!!やりたいですソレ俺!!」

「ウチもやりたいス」

「オイラのマニフェストは女子全員膝上30cm!!」

「ボクの為にあるヤツ⭐︎」

「リーダー!! やるやるー!!」

「俺にやらせろ!」

「(人前に立つのは得意じゃないけど、赤嶺さんがそうだったみたいにクラスをまとめる役割を担ってみたい!)ぼ、僕もやりたいです!」

 

 だがここはヒーロー科。集団を導くというトップヒーローの素地を鍛えられると言うこともあってクラスのほぼ全員が手を挙げていた。

 

「静粛にしたまえ!!」

「ん!」

 

 飯田の一際大きな声が教室に響いた。

 

「『多』をけん引する責任重大な仕事だぞ……! 『やりたい者』がやれるモノではないだろう!!」

 

 我先にと手を挙げていた生徒も()()()()()飯田を見ながら話を聞いていた。

 

「周囲からの信頼あってこそ務まる聖務……! 民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら……、これは投票で決めるべき議案!!!」

 

 飯田はクラス全員にそう提案した、()()()()()()()()()()()……。

 

「そびえ立ってんじゃねーか!!何故発案した!!」

 

 飯田の矛盾した行動に多くの者がツッコミを入れる。

 

「日も浅いのに、信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

「そんなん皆自分に入れらぁ!」

「だからこそ、ここで複数票を獲った者こそが真にふさわしい人間という事にならないか!? どうでしょうか先生!?」

「時間内に決めりゃ何でも良いよ」

 

 相澤のやる気のない一言で学級委員長を決める投票が行われた。

 

 

「僕三票ーーーーー!!!?」

 

 結果は出久に三票、八百万に二票となりそれぞれ委員長、副委員長ということに決まった。

 

「なんでデクに……!! 誰が……!!」

「まー、おめぇに入るよかわかるけどな!」

「(爆豪君にバレたら恐いな……)」

「0票……、わかってはいた!! さすがに聖職といったところか……!!」

「他に入れたのね……」

「おまえもやりたがってたのに……、何がしたいんだ飯田……」

 

 投票結果に様々な反応がある中、選ばれた出久と八百万が教壇の前に立つ。

 

「じゃあ委員長緑谷、副委員長八百万だ」

「うーん、悔しい……」

「ま、マジなの!? まさかなれるとは思ってなかったから今から緊張が……!」

「緑谷、なんだかんだアツイしな!」

「八百万は講評の時のがかっこよかったし!」

「…………」

 

 投票の結果は概ね好意的に捉えられており、そのままHRは終了した。

 

 

 午前中の授業が終了した昼休み、食堂には多くの学生が昼食を摂るために集まっていた。

 

「人すごいなあ……」

「ヒーロー科の他にサポート科や経営科の生徒も一堂に会するからな」

「お米がうまい!」

 

 出久は麗日、飯田と同じテーブルで食事を摂っていた。3人は入試会場が同じだったこと、戦闘訓練を一緒に行なったことから自然と行動を共にすることが多かった。

 

「確かに立候補したけど、いざ委員長やるとなると務まるか不安だよ……」

「ツトマル」

「大丈夫さ。緑谷君のここぞという時の胆力や判断力は『多』をけん引するに値する。だから君に投票したのだ」

「投票してくれた1人は飯田君だったの!?」

「でも、飯田君も委員長やりたかったんじゃないの? メガネだし!」

「麗日さん、何気にざっくりいくよね……。あとメガネ関係ないよね?」

「『やりたい』と相応しいか否かは別の話……。僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ」

「『僕』……!」

「ちょっと思ってたけど、飯田君て坊ちゃん!?」

「坊!!!」

「麗日さん、ズバズバ言うね……」

 

 麗日は優しい性格をしているが思ったことをズバッと言ってしまう、良くも悪くも裏表のない性格の持ち主。飯田は規則やマナーに厳しいが、それは真面目な性格ゆえであること。まだ3日間の学校生活ではあるが、出久も何となく2人の人となりをわかってきていた。

 

「……そう言われるのが嫌で一人称を変えてたんだが……。ああ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」

「「ええーー!! 凄ーー!!!」」

 

 ヒーロー科には親がヒーローということで進学してくる、いわゆる2世も当然いるのだが周囲にいなかったため、クラスメイトにその2世がいたことに出久と麗日は声を上げて驚いた。

 

「ターボヒーロー、インゲニウムは知ってるかい?」

「もちろんだよ!! 東京の事務所に65人もの相棒(サイドキック)を雇ってる大人気ヒーローじゃないか!! まさか……!」

「詳しいね緑谷君……、もしかしてヒーローオタクなのかい?」

「う、うん。いろんなヒーローが好きで雑誌やテレビでいろいろチェックしているから……」

「なるほど。そう、そのインゲニウムが俺の兄さ!」

「あからさま!!! すごいや!!!」

 

 家族が誉められるのはやはり嬉しいのだろう。真面目な飯田にしては珍しく自慢げで誇らしげな表情を浮かべて話を続ける。

 

「規律を重んじ人を導く愛すべきヒーロー!! 俺はそんな兄に憧れヒーローを志した。人を導く立場はまだ俺には早いのだと思う。上手の緑谷君が就任するのが正しい!」

「「…………」」

 

 大人気ヒーローが自分の家族。近い存在であるが故にヒーローとしての大変さや苦悩を目にしたこともあるだろう。それでも、それだからこそヒーローとして活躍する兄を尊敬し、同じ道へ進もうと努力する。飯田のヒーロー像や規律正しい真面目な性格はそのような環境で育まれたモノだった。

 

「なんか初めて笑ったかもね、飯田君」

「え!? そうだったか!? 笑うぞ俺は!!」

「(……そっか。僕にとってのオールマイトが、飯田君にはインゲニウムなんだ! でも、やっぱり……)」

 

 ウウーーーーーーーー!!!

 

「警報!?」

 

 突然けたたましい音が学校中に鳴り響いた。通って日が浅い1年生だけでなく、2、3年生も何が起こっているかわかっていない様子だった。そんな中に生徒へ避難を呼びかける放送が流れた。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい』

 

「セキュリティ3て何ですか?」

「校舎内に誰か侵入してきたってことだよ! 3年間でこんなの初めてだ!! 君らも早く!!」

 

 3年生が質問に答えながら出久達にも避難を促した。彼にとっても初めての経験なのか、困惑と焦りが表情に表れていた。

 

「いてえいてえ!!」「押すなって!」「ちょっと待って倒れる!」「押ーすなって!!」

 

「いたっ!! 急に何!!?」

「さすが最高峰!! 機器への対応が迅速だ!!」

「迅速過ぎてパニックになっちゃってるよ!」

 

 出久のいう通り、全員が素早く行動に移しているのは本来良いことだが、そのことでかえってパニックが伝染してしまい、狭い出入り口に人が集中する形になり、身動きが取れないことでさらにパニックが誘発される悪循環となっていた。

 

「わーーー!? しまったーーー!! ちょっと!? 押さないでーーー!!」

「デクちゃん!?」

「緑谷くーーーーーん!!! 一体何が侵入したと言うんだ! ……ぐわ!」

 

 出久が群衆の波に飲まれて麗日・飯田から離れていく。飯田自身も他の学生に押しのけられ、食堂の窓に押しつけられてしまうがそのおかげで騒ぎの原因を見ることができた。

 

「あれは……、報道陣じゃないか! 何かと思えばただのマスコミ! 皆さん落ち着、あ痛!!!」

 

 騒ぎの原因がわかった飯田は周囲に知らせようとするが、パニックに陥った生徒達の耳にはなかなか入らない。

 

「(先生方は!? 対処に追われているのか!? この場で『大丈夫』なことを知っている者は!? 皆気づかすパニックに陥っている!!)」

 

 こうしている間にも怪我人が出てしまうかもしれない。焦る飯田は必死に頭を働かせる。

 

「飯田くーーーーーん!!!」

「(麗日君! 彼女の個性なら……! 緑谷君なら……! 兄なら……! こういう時……!!!)俺を……浮かせろ麗日君!」

「へ!? なんかわからんけど、タッチ!」

 

 飯田の言葉に麗日は困惑するが言う通りに個性を発動、飯田の体が浮き上がり始める。

 

「(皆の視線が集中する場所!!!)」

 

 飯田の視線の先には『EXIT』の案内板。

 

「エンジン、ブースト!!!」

 

 浮いた状態で自身の個性『エンジン』を飯田は発動させる。普段と異なる浮遊状態であるためか、縦に回転しながら目的の案内板まで飛んでいく。

 

「ぶっ!!!」

 

 狙い通り案内板のすぐ上の部分にぶつかり、配管を掴みつつ案内板の上に何とか立つ。視線を下に向けると未だにパニック状態の生徒達が出入り口に殺到している。

 

「(ここは短く!! 端的に!! それでいて……大胆に!!)皆さん……大丈ー夫!!」

 

 頭上からの放送ではない大きな声にその場にいた生徒の視線が一気に声のした方へ集まる。そこには非常口に向かう人を表現したピクトグラム、それと同じ体勢を取った飯田の姿があった。

 

「ただのマスコミです! なにもパニックになることはありません、大丈ー夫!! ここは雄英!! 最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」

 

 飯田の言葉に皆落ち着きを取り戻し、上級生を中心に落ち着いた避難誘導が進められていった。

 

 その後、警察が到着し、マスコミは一部の暴走した記者を参考人として警察署へ連行、その他大勢は撤退していった。

 

 

 

「ホラ委員長、進めて」

「は、はい……」

 

 外部からの侵入者という雄英創設以来の事件があったが、そんなことで雄英の授業が滞るはずはなく、若干の時間の繰り下げがあったものの予定していた午後のHRが始まった。

 

「で、では他の委員決めを執り行って参ります。……けど、その前にいいですか!」

 

 八百万に促された出久だったが、始める前に言っておくことがあるらしく、生徒全員の顔を見渡して意見がないことを確認してから話を続けた。

 

「委員長はやっぱり、飯田君が良いと……思います!」

 

 出久の言葉に推薦された飯田だけでなく、他の生徒も驚きの表情を浮かべる。

 

「あんな風にかっこよく人をまとめられるんだ。僕は……、飯田君がやるのが()()()と思うよ」

「あ! 良いんじゃね!! 飯田食堂で超活躍してたし!! 緑谷でも別にいいけどさ!」

「非常口の標識みてえになってたよな」

「何でもいいから早く進めろ……。時間がもったいない」

「ひっ!!!」

「委員長の指名ならば仕方あるまい!!」

「任せたぜ非常口!!」

「非常口飯田!! しっかりやれよー!!」

 

 相澤の投げやりな賛成もあったことでヒーロー科1年A組の委員長は就任数時間で出久から飯田へと引き継がれた。

 

 

「あの、緑谷さん。さすがにこれでは私の立つ瀬がありませんわ……」

「その、ごめん……。あの光景を見たら、それが一番なのかなと思っちゃって……」

「……仕方ありませんわね。例えば私が委員長だったとして、あの場であれほど的確で大胆な指示が出せたとは思えません」

「八百万さんはもう十分に大胆だと思うけど……」

「??? まあ、クラスの皆さんや相澤先生も納得しているようですし、私は飯田さんを支えるべく副委員長としての仕事を全うしていくだけですわ!」

「八百万さん……、うん! 八百万さんならやれるよ! 頑張ってね!」

「! ありがとうございますわ、緑谷さん!」

 

 出久の説得により副委員長・八百万百の心のモヤモヤはあっさりと解決した。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 雄英高校校門、通称『雄英バリアー』前。校長である根津を含めた数名の教師達が『ソレ』を見ていた。

 

「ただのマスコミに()()()()()出来る?」

 

 視線の先にはボロボロに崩れた雄英バリアーがあった。単純な破壊とも老朽化とも違う、異様に()()()()としか言えない有様であった。

 

「そそのかしたものがいるね……。邪なものが入り込んだか、もしくは宣戦布告の腹づもりか……。いずれにせよ警備システムについて見直しが必要だね……」

 

 

 日常の()()はすぐそこまで迫っていた。

 




 というわけで委員長を決めるお話でした。もう少しコンパクトにまとめようと思ってたんですが、なんでこんなに文量多くなっちゃうんでしょうねwさて、次回から大きく物語が動きます! おそらくそれに伴って文量もまた増えちゃうかもしれませんが、よろしくお願い致します!
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