僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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USJ事件後編②です。


第13話 各々の胸に

 USJを襲撃した(ヴィラン)連合、その主犯格である死柄木と黒霧がワープゲートの個性で逃亡したこともあり、施設内では他の敵の制圧もあらかた完了していた。

 

「なんてこった……」

「これだけ派手に侵入されてしまうなんて……」

「完全に虚をつかれたね……」

 

 根津校長の言葉が全てを物語っていた。敵が徒党を組んで犯行や襲撃をするのは珍しいことではないが、その襲撃先が国内におけるヒーロー養成の最高峰である雄英高校ヒーロー科になるとはプロヒーローである教師陣や動物ながら人間以上の知性を発揮する『ハイスペック』の個性を持つ根津でも予測できないことであった。

 

「それより今は生徒らの安否さ」

「それと……」

 

 根津が1ーA生徒の安否確認の指示を出すと同時に教師陣は動き出すが、セメントを自在に操る『セメント』の個性を持つセメントスは他の教師とは違う動きを取っていた。

 

 

「(まずいな……)」

 

 オールマイトは焦っていた。死柄木達を撃退できたのはよかったが、その代償として活動限界を超えてトゥルーフォームに戻ってしまっている。近くには出久以外の生徒もいるため、現在の姿を見られる危険性が高まっていた。

 

教師陣(プロヒーロー)か……。これだけここに集まるってことは学校全体に仕掛けて来たってことじゃなさそうだ」

「緑谷ぁ!! 大丈夫か!?」

「クソデクぅ!! そこ動くなあ!!」

 

 

「切島君……! かっちゃん!? (かっちゃんなんかめちゃくちゃ怒ってる!?)」

「(切島少年に爆豪少年!! なんて素晴らしい心持ち!! なぜか爆豪少年は怒っているが!! しかし待ってバレてしまうやばい待ってくっそおおおおお!)」

 

 切島と勝己が出久に近づいていく。切島は純粋に出久を心配しているとわかったが、怒りの形相で走ってくる勝己に出久とオールマイトは困惑していた。かろうじて土埃に覆われているが、近くに来てしまったら確実にバレてしまう。

 

「切島君、かっちゃん待っ……!」

 

 ズズズッ

 

 出久が2人を静止しようとした時、出久と勝己・切島の間に突如地面が盛り上がって大きな壁が出来上がった。

 

「! んだこの壁は!?」

「生徒の安否を確認したいからゲート前に集まってくれ。ケガ人の方はこちらで対処するよ」

 

 出来上がった壁はセメントスの個性によるものであり、ギリギリのところでオールマイトの姿が見られるのを防いでいた。

 

「そりゃそうだ! ラジャっす!! 行こうぜ爆豪!」

「……ちっ!!!」

 

 教師であるセメントス言われた以上、勝己は不満を口にすることはできず切島の呼びかけに舌打ちをして出入口へ向かった。

 

「ありがとう、助かったよ……セメントス」

「俺もあなたのファンなので……このまま姿を隠しつつ保健室へ向かいましょう。しかしまァ、毎度無茶しますね……」

「無茶をしなければやられていた……それ程に強敵だった」

「そうでしたか……とりあえず今は保健室へ。緑谷君、君も重症だ。今搬送ロボを呼ぶから少し待っていてくれ」

「はい、ありがとうございます」

 

 セメントスと搬送ロボの随行で出久とオールマイトは保健室へ向かった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

某県某所、(ヴィラン)連合アジトであるBAR

 

 ズズズ

 

「ってえ……」

 

 BARのフロアにワープゲートが現れ、死柄木が中から這い出てくる。逃走間際にスナイプから受けた銃撃はかろうじて急所を外していたが、両手両足に打ち込まれており動けないほどではないが軽くない怪我を負っていた。

 

「両腕両足撃たれた……完敗だ……。脳無もやられた……手下共は瞬殺だ……子どもも強かった……平和の象徴は健在だった……!」

 

 傷が痛む死柄木がうめきながらカウンターに置かれているモニターに悔しさをぶちまける。

 

「話が違うぞ先生……」

『違わないよ』

 

 音声がつながっているのか、モニターから男の低い声が聞こえた。

 

『ただ見通しが甘かったね』

『うむ……なめすぎたな。敵連合なんちうチープな団体名で良かったわい。ところで……ワシと先生の共作『脳無』は?』

『回収してないのかい?』

 

 モニターは複数の回線につながっているようで『先生』と呼ばれた男とそれとは別の男がそれぞれ死柄木達に問いかけた。

 

「吹き飛ばされました。正確な位置座標を把握出来なければいくらワープとはいえ探せないのです。そのような時間は取れなかった」

『せっかくオールマイト並みのパワーにしたのに……』

『まァ……仕方ないか……残念』

 

 黒霧の返答に1人は本当に残念そうに、『先生』はそれほど残念さを感じさせない感想を述べた。

 

「パワー……そうだ……」

 

 モニター越しの男の声で思い出したように死柄木が言葉を続ける。

 

「1人……オールマイト並みの速さを持つ子どもがいたな……」

『…………へえ』

 

 『先生』は興味深そうに死柄木の言葉を待つ。死柄木は悔しさを滲ませながら『オールマイト並みの速さを持つ子ども』出久への恨み言を続ける。

 

「あの邪魔がなければオールマイトを殺せたかもしれない……ガキがっ……ガキ……!」

『悔やんでも仕方ない! 今回だって決して無駄ではなかったハズだ。 精鋭を集めよう! じっくり時間をかけて!』

 

 死柄木を慰めるよう、『先生』がアドバイスを交えながら語りかける。

 

『我々は自由に動けない! だから君のような『シンボル』が必要なんだ。死柄木弔!! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』

 

 

 悪の芽は着実に成長しようとしていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……16、17、18、19……両足重傷の彼女を除いて……ほぼ全員無事か」

 

 USJの外では警察によって1ーA生徒の安否確認が行われていた。両足と左手の指を骨折した出久以外は切り傷や打撲程度の軽傷であったので、救急隊による処置がすでに完了していた。

 

 生徒達はそれぞれ自分がどこでどんな状況で敵と相対したか、そしてどんな対応をしたか意見を交えていた。

 

「とりあえず生徒らは教室に戻ってもらおう。すぐ事情聴取ってわけにもいかんだろ」

「刑事さん、相澤先生は……?」

 

 現場を指揮する警部、塚内がそう告げたところで蛙吹が相澤の安否を尋ねる。今回の襲撃で一番の大きなダメージを受けており、クラス全員が怪我の具合を心配していた。

 

『両腕粉砕骨折、顔面骨折……幸い脳系の損傷は見受けられません。ただ……眼窩底骨が粉々になっておりまして……眼に何かしらの後遺症が残る可能性もあります』

「だそうだ……」

「ケロ……」

 

 想像していた以上の怪我の具合に、またそれを相澤に負わせる程の敵に襲撃されたという事実に生徒達は言葉が出なかった。

 

「13号の方は背中から上腕にかけての裂傷が酷いが命に別状はない。オールマイトも同じく命に別状なし。彼に関してはリカバリーガールの治癒で充分処置可能とのことで保健室へ」

「デクちゃん……」

「緑谷君は……!?」

 

 オールマイトの名前が出たことで彼と共に敵に対峙していた出久が気がかりだった麗日と飯田が尋ねる。この場に出久だけがいないのを妙に思っている者もいて皆が塚内の言葉を待った。

 

「緑……ああ、彼女も保健室で間に合うそうだ。私も保健室に用がある。三茶! あとは頼んだぞ」

「了解」

 

 塚内の言葉に生徒達は胸を撫で下ろす。1()()()()憮然とした表情を崩さないが、それに気づくものはいなかった。

 

 

 

「セキュリティの大幅強化が必要だね」

「ワープなんて『個性」、ただでさえものすごく希少なのによりにもよって敵側にいるなんてね……」

 

 根津とミッドナイトが今後の展望を話していると1人の警官が塚内に話しかけてきた。

 

「塚内警部! 約400m先の雑木林で敵と思われる人物を確保したとの連絡が!」

「様子は?」

「外傷はなし! 無抵抗でおとなしいのですが……呼びかけにも一切応じず口がきけないのではと……」

「校長先生、念の為校内を隅まで見たいのですが」

「ああもちろん! 一部じゃとやかく言われているが、権限は警察の方が上さ! 捜査は君達の分野! よろしく頼むよ!」

 

 根津の許可を得て、塚内率いる警察は雄英内の更なる捜査を始めた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 セメントス先生の指示で僕とオールマイトはすぐ保健室へ運ばれた。到着後控えていたリカバリーガールに治癒を施してもらい、今はベッドの上で安静にしている。

 

「今回は事情が事情だけに小言も言えないね」

 

 ……すみませんリカバリーガール。入学前からお世話になりっぱなしでもう頭が上がりません……。

 

「多分だが……私、また活動限界早まったかな……。1時間くらいはまだ欲しいが……」

「オールマイト……!」

 

 1時間って……。一日でそれだけじゃほとんど何も出来ないんじゃ……! 

 

 ……そんな……。

 

「まー仕方ないさ! こういう事もある!」

 

 そう明るくオールマイトは言った。空元気で無理矢理言っている感じはしない。こういうポジティブなところもオールマイトらしさなんだろうな……。

 

「失礼します」

 

 背の高いスーツにコート姿の男の人が挨拶しながら保健室に入ってきた。誰だろう、この人……。格好からすると警察の方だと思うけど……。

 

「……オールマイト、久しぶり!」

「塚内君! 君もこっちに来てたのか!!」

 

 オールマイトと塚内と呼ばれた男の人が親しげに挨拶を交わす。知り合いだったんだ……って!

 

「オールマイト……! え……良いんですか!? 姿が……」

「ああ! 大丈夫さ 何故って!? 彼は最も仲良しの警察、塚内直正君だからさ!」

「ハハッ! 何だその紹介」

 

 何だかよくわからないけど、オールマイトの秘密を知っているみたいだ。かなり親密そうだから、これなら問題ないだろう……。

 

「早速で悪いがオールマイト、敵について詳しく……」

「待った、待ってくれ。それより……生徒は皆無事か!? 相澤……イレイザーヘッドと13号は!!」

 

 ……そうだ。クラスの皆もいろんな場所に飛ばされていたから、どうなっているかわからない! 相澤先生も敵にやられていたし、もしかしたら13号先生もどこか怪我しているかも!?

 

「……生徒はそこの彼女以外で軽傷数名、教師2人はとりあえず命に別状なしだ。3人のヒーローが身を挺していなければ、生徒らも無事じゃあいられなかったろうな」

 

 塚内さんの言葉にひとまず安堵する。生徒の皆は無事だし、相澤先生や13号先生も怪我はしているけど大丈夫そうだ。敵の襲撃にあってこの程度で済んだのは幸運だったかもしれない。

 

「そうか……。しかし、一つ違うぜ塚内君」

 

 オールマイトが塚内さんにそう言った。どこが違うんだろう?

 

「生徒らもまた戦い、身を挺した!!」

 

 オールマイトがチラリと僕を見て言葉を続ける。

 

「こんなにも早く実戦を経験し生き残り、大人の世界を、恐怖を知った1年生など今まであっただろうか!? 敵も馬鹿なことをした!! 1ーA(このクラス)は強いヒーローになるぞ! 私はそう確信しているよ」

 

 そう言ってオールマイトは僕に向かって親指を立て、塚内さんもそれを見て頷いていた。

 

 ……そうだ。入学して間もないのに敵の襲撃なんて普通じゃ考えられない経験をした。このことが今後の僕達の糧になることは間違いない。まだまだやれることは少ないけど、少しでもできるようにしていかなくちゃ!

 

 

 

「それじゃあ、ありがとうございました!」

「気をつけて帰りなよ」

 

 リカバリーガールの治癒に伴う疲労の回復に時間がかかってしまって、もう外はすっかり暗くなっていた。麗日さんが荷物を持ってきてくれていたので制服に着替え終えてから保健室を後にした。

 

 こんな時間まで学校に残ったことは中学校以前でもなかったから、何だか不思議な感じがする。ちょっと探検でもしたくなるけど、これ以上遅くなるとお母さんも心配するから早く帰ろう。そう気持ちを切り替えて校舎を出た。

 

 

 

「あ、デクちゃん!」

「緑谷君、怪我は大丈夫か?」

「麗日さんに飯田君……待っててくれたんだ」

「……おせえ」

「へ?……かっちゃん!? なんでかっちゃんもいるの!?」

「ああ!? 俺がいちゃあ悪いってか!? ああ!!」

「そ、そんなことはないけど! でも……本当に何で?」

 

 麗日さんと飯田君が待っててくれたのは嬉しかったけど、まさかかっちゃんまでいるなんて全く予想できなかった。僕が尋ねるとどこかバツが悪そうな、苦々しい顔をしている。これは一体……?

 

「さっきから私達が聞いても教えてくれんのよ」

「黙ってろ丸顔!」

「爆豪君、もう時間も遅いんだから大声を出すのはやめたまえ!」

「飯田君も十分うるさいよー。でも爆豪君、どの道デクちゃんにはちゃんと説明せんとあかんやろ?」

「……ちっ!!!」

 

 麗日さんにそう言われてかっちゃんが特大の舌打ちをした。不承不承だけどかっちゃんが人に言い返さない状況もかなり珍しいな……。

 

「……ウチのクソババアにてめえのお袋さんから襲撃のニュース見たって連絡があったんだよ。そんで、帰りにてめえを家まで送り届けるように言われたんだよ、クソが!!!」

「ああ、なるほどね」

「デクちゃんどういうこと?」

「ウチのお母さんと光己さん、かっちゃんのお母さん仲が良くてね。心配したお母さんが光己さんに頼み込んだ、というよりは光己さんがかっちゃんに家まで送らせるから安心してって言ったんだと思うな」

「へえ、母親同士仲が良いんだね。それがどうしてこうなったんだろ……?」

「なんか言ったか丸顔!!!」

「爆豪君、人を蔑称で呼ぶのはやめたまえ! それにもうそろそろ校門も閉まる、早く外へ出よう!」

 

 飯田君の合図で僕らは校門から出た。かっちゃんは僕らの少し前を歩いて、僕と麗日さんと飯田君はお喋りしながら駅へと向かった。2人からは襲撃の後クラスの皆でいろいろ話したことや他愛のないことを話して、その中で明日は臨時休校ということを知った。

 

「そうか、流石にそうなるよね」

「USJ内や校内の森も捜索するみたい、後は校内の警備システムの再検討とか何とか……」

「前回のマスコミ侵入事件といい、警備の不備が続いているから仕方ない。僕らにとっても気持ちを落ち着ける時間が必要だ」

「……そうだね」

 

 その後は会話が途切れ、僕らは駅まで無言で歩いた。

 

 

「爆豪君、ちゃんとデクちゃんを送り届けるんよ! 襲っちゃあかんよ!!!」

「爆豪君、ヒーローを目指すものとしてしっかり送り届けるんだぞ!」

「うっせえわ! てめえら俺を何だと思ってんだ!! デクなんか頼まれても襲わんわ!」

「あははは……」

 

 2人の言葉に僕は苦笑いしながら、かっちゃんはキレながら帰りの電車に乗った。電車の中でも僕らは会話をすることはなく、降りてから家に向かうまでも同じだった。

 

 

 かっちゃんが僕の数歩前を歩く。僕を置いてけぼりにするでもなく、適度な距離を取りながら……。

 

 会話のないまま、とうとう僕の住む団地まで辿り着いた。

 

「かっちゃんありがとう、ここまでで大丈夫だから……」

「ああ!? てめえの家の前まで送るよう言われてるんだわ、早く歩けやボケ!」

「そんなに言わなくても良いのに……」

 

 そんな会話とも言えない会話をしながら移動して、僕の家の前に着く。

 

「お母さん、ただい「出久! ああ〜、よかった! 無事だったのね! 私ニュース見てもう怖くなっちゃって!」

 

 鍵を開けるとお母さんが普段の何倍もの速さで玄関まで来て僕を抱きしめてくれた。

 

 今回のことは相当心配をかけちゃったみたいだ……。

 

「勝己君、出久を送ってくれてありがとう! 気が動転して光己さんに電話したら勝己君に送らせるから安心してって、本当にありがとう……!」

「……いえ、大したことじゃないっす」

 

 お母さんの言葉にかっちゃんが控えめに返す。小さい頃に面倒を見てもらったりしたから、流石のかっちゃんもお母さんには頭が上がらないみたい。

 

「さあ、もう遅いから気をつけて帰ってね! あ、これ持っていって! 大したものじゃないけど帰りに飲んでね! 出久、下まで見送ってきてね」

「いや、ここで大丈夫っす……」

「いえ、そうもいかないわ。出久お願いね」

「うん、わかった。行こ、かっちゃん」

 

 お母さんからペットボトルのお茶を受け取って、僕らは階段を降りていく。一階に着いて、そのまま何も言わずに行こうとするかっちゃんに声をかける。

 

「かっちゃん! あの、送ってくれてありがとう……。また明後日、学校でね」

「…………」

「あの、かっちゃん?」

 

 僕の言葉にかっちゃんは何も返さない。でも、僕の顔をじっと見たまま無言で立ち続けている。

 

「……本気か?」

「え?」

「てめえは()()()()で、ヒーローとして本気でやっていく気か?」

 

 かっちゃんが僕を綺麗な赤目で射抜くように見つめる、僕の心の内を探るように……。

 

「……うん、本気だよ……。雄英でたくさん勉強して経験を積んで、オールマイトみたいな最高のヒーローになるんだ……」

「……フンっ!」

 

 返事の代わりなのか、鼻を鳴らし反転してかっちゃんは帰っていった。最後の質問は何だったんだろう……? かっちゃんの姿が見えなくなった後、僕も階段を上がって自分の家へと戻った。

 

 

 食事やお風呂を済ませた後、早めに休むことをお母さんに伝えて部屋に戻る。今日は本当に疲れた……。災害救助訓練のはずだったのに、まさか敵に襲撃されることになるなんて……。

 

 あれが……オールマイトが、多くのプロヒーロー達が対峙している相手……。夢中で気にならなかったけど、今更ながら少し怖くなってきた。でも……これから学んでいくこと、体験していくことは全て、とは言わず災害対策とかもあるけど、敵を退治・制圧して市民を守ることに繋がっていく。1人だと少し心細いけど、オールマイトやナイトアイさん、ミリオさんやクラスの皆が一緒ならきっと乗り越えられるはず!

 

 

『てめえは()()()()で、ヒーローとして本気でやっていく気か?』

 

 

 帰り際のかっちゃんの言葉を思い出す。あれって、僕を心配してくれてるのかな……?

 

 もし、そうだったとしたら……少し嬉しいかな……。

 

 いろいろ物思いに耽ってたらスマホが鳴った。着信相手はナイトアイさん、すぐに通話ボタンを押す。

 

『こんばんは緑谷君、夜分遅くにすまない』

「こんばんはナイトアイさん。僕は大丈夫です」

『今日のことは大変だったね、大丈夫だったかな?』

「はい、オールマイトのおかげで敵を退けることができました」

『ああ、彼とも話したよ。ただ、かなりの難敵だったみたいだね』

「ええ、オールマイトでもギリギリでした。無理してしまったみたいで、活動限界も今までより短くなってしまうかもって言ってました」

『君や他の学生も頑張ったと聞いた。よく無事だったね』

「いえ、他の皆に勇気づけられたり励まされたり助けられてなんとかやれただけです」

『それでも、生き残ってくれてよかった。センチピーダーやバブルガール、ミリオも心配していたよ』

「ご心配おかけしてすみません。皆さん今日はもう帰られたんですか?」

『ああ、明日にでもまた連絡を入れるよ』

「いえ、明日は臨時休校になったので僕の方から連絡します」

『そうか、君の声を聞くと皆安心すると思う。……緑谷君』

「はい」

『これまでにも敵がヒーローへの復讐のため襲撃するということはあった。だが、今回のような規模での襲撃、それも雄英のヒーロー科を襲うなんてことは考えれらなかった。……理由は恐らく、オールマイトだろう』

「…………」

『今後もこのようなことが起こるかもしれない。それに対する有効な対策は君が、君達自身が強くなることだ。大変だと思うが、気をつけて頑張ってほしい』

「……はい、頑張ります」

『こんな時間に電話してすまなかったね。今日はもう休んで、明日以降また事務所に連絡してくれ』

「はい、ありがとうございました。お休みなさい」

『ああ、お休み』

 

 

 通話を終えてため息を一つつく。センチピーダーさんやバブルガールさん、ミリオさんもニュースを見てやっぱり心配だったんだろうな。明日すぐに電話しよう。僕も事務所の皆の声が聞きたいし。

 

 そんなことを考えているとまたスマホが鳴った。しかも何回も。確認すると赤嶺さんや青木さん浅黄さんからメッセージがいろいろ届いてる。内容は今日の事件の話が聞きたいとのことだった。とりあえず赤嶺さんに返事を返すと今からボイスチャットで話せないかとメッセージが届く。明日は臨時休校だし、時刻も9時過ぎだから大丈夫と思いOKと返事を返す。しばらく待っているとチャットルームのURLが書かれたメッセージが届き、すぐに入室した。

 

 

「こんばんは〜」

『こんばんは緑谷さん』

『緑谷さんお疲れ様〜』

『お疲れ緑谷さん。今日の事件大変だったね、大丈夫だった?』

 

 卒業して以来メッセージでやり取りしてたけど、ボイスチャットとはいえ久しぶりに聞く3人の声に懐かしさが込み上げてくる。その温かさを噛み締めながら会話を続ける。

 

「うん、大丈夫かどうかでいうと一応大丈夫だったけどいろいろ大変だったよ」

『ニュースで見たときびっくりしたわ。雄英が襲撃されたこと自体もだけど、まさか緑谷さんのクラスだったなんてさらに驚いたわ』

『ねえねえ、敵ってどうだった? やっぱり怖かった?』

「うん、やっぱり怖かったけど、他の生徒の皆とも力を合わせてなんとか無事だったよ」

『どんな敵がいたの!?』

「う〜ん、これ言って良いのかな? 刑事さん達も僕らに事情聴取するって言ってたからあんまり詳しく話すと不味いかも」

『あ〜、やっぱりそこんところは制限があるんだね』

『仕方ないか〜』

『それじゃあ、クラスにどんな人達がいるか教えて! すごい個性の人とかかっこいい人とかいた!?』

『あ、それ聞きたい!』

「うん、それならいいよ」

 

 入学してまだ間もないけど、『個性』豊かな同級生達について3人にいろいろ話していった。

 

『やっぱり雄英に入ってくる生徒はいろいろすごい個性の持ち主がいるのね』

『透明人間なんて漫画とか小説だけじゃなかったんだね』

『それにしても、轟君ってそんなにすごいんだね。個性複数持ちなんて聞いたことないよ』

「うん、相反する二つの個性だけどそれを使いこなしているのはやっぱり訓練の賜物だと思う。彼の父親、NO.2ヒーローのエンデヴァーだから」

『ええ、あのエンデヴァーの!? ものすごく強面そうだね……』

「うーん、そんなことはないかな。確かに身長は高いけど、表情が変わらなくてクールって感じで強面ではないと思う。顔立ちも整ってるから、プロデビューしたら相当人気出ると思うよ」

『緑谷さんがそこまで言うなんて、興味あるわね』

『写真ないの、写真!』

「しゃ、写真はないかな……」

『そのうち見れる機会も来るでしょ、緑谷さんにお願いすれば、ね?』

『あ、いいねそれ! 雄英高校ヒーロー科との合コン♪』

「ええ!? そんな合コンだなんて!? 僕そんなのしたことないし、まだ高校生だし、それにそんな時間も取れないだろうし……」

『ああ、緑谷さん落ち着いて。半分は冗談だから』

『と言うことは半分は本気なのね……』

『まあ、そこは少しでも希望を持たないとね。それにしても、話し聞いてて思ったけど、相変わらず爆豪君は爆豪君なのね』

『ああ、それ思った。少しは丸くなるのかなと思ったけどそんなことはなかったね』

『緑谷さん、大丈夫? 変に絡まれたりしてない?』

「うん、大丈夫だよ。入学してすぐの戦闘訓練で殴り合ったりしたけど、その後は比較的普通だし。今日も帰りは家まで送ってもらったし。それにクラスの皆もかっちゃんに気後れすることなくイジって『緑谷さん、今なんて?』

 

 話の途中で赤嶺さんに止められちゃった。なんだか、さっきと少し空気が変わったけどおかしいこと言ったかな?

 

「ええと、雄英だとかっちゃんもイジられるって」

『そこじゃなくてその前。いや、そこもめちゃくちゃ気になるんだけどそれよりも大事なことがあったから』

「ええと、戦闘訓練で殴り合ったり、今日は帰りに送ってもらっ、たり……」

『『『そこよ!』』』

「ひゃあ!?」

 

 3人がユニゾンしてきてびっくりした。こんなにタイミング合うことあるんだなあ、と呑気に思ってたら……。

 

『入学前はあんなに険悪というか変な感じだったのに、殴り合ったってどういうこと!?』

『それに今日家まで送ってもらったって、あんなに2人きりになるの怖がってたのに!? もうそんな仲になったの!?』

『大丈夫!? 襲われたりしてない!?』

「ちょ、ちょっと3人とも落ち着いて!? 殴り合ったことにも今日あったことにもちゃんと理由があるから!」

『それじゃあその理由、洗いざらい話してもらうわよ♪』

「(しまった、口が滑っちゃった!)え、え〜と、もう夜も遅いし明日も早いからそろそろ終わりに……」

『緑谷さん、明日臨時休校って言ってたよね? だったらまだ時間は大丈夫でしょ?』

「ええと、でも、3人とも明日学校あるんじゃ……」

『そんなことは今はどうでもいいの、今は緑谷さんの話が重要だから』

 

 赤嶺さん、青木さん、浅黄さんの声は柔らかいけど、なぜか口答えできない強力なプレッシャーが感じられた。

 

『『『それじゃあ緑谷さん、話してちょうだいね♪』』』

「は、はい……」

 

 

 チャットルームから退室するという選択肢が思い付かず、日付が変わる直前になって僕はようやく3人の『事情聴取』から解放された。

 




というわけでUSJ事件編終了です。なかなか長かったですねー。話の後半で久々にオリキャラ三人娘を登場させました。ガールズトークに出久ちゃんもタジタジでしたねw今後も時々出していけたらな〜と思います。
 次からは雄英体育祭編になります。こちらもボリューム詰め詰めで行くと思うので、楽しみにしていただけたらと思います♪引き続き、応援よろしくお願い致します!
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