僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

22 / 81
今回も短めですが、何とか間に合いました!


第15話 うなれ! 雄英体育祭!

「入場検査長いねぇ……」

 

 雄英高校校門前には多くの人でごった返していた。4月上旬のオールマイト就任時にも多くのマスコミが取材に来ていたが、今回はそれ以上の人数が集まっている。なぜなら今日は現代日本における一大イベントの一つ、雄英体育祭の当日だからである。マスコミ関係者以外にもスカウト目的のヒーローやヒーローサポート会社の招待客、一般の観戦者がそれぞれの専用ゲートで入場検査を受けていた。

 

(ヴィラン)の襲撃受けてっからな、厳重にすんのは仕方ねえさ。今年に限っちゃ開催に批判的な声も上がってる」

「『物議をかもす』(イコール)『数字が取れる』よ! 今年の目玉はやっぱ、『1年A組』ね!!」

「ラストチャンスに賭ける熱と経験値から成る戦略等で例年メインは3年ステージだけど」

「今年に限っちゃ1年ステージ大注目だな」

 

 

「ねえ知ってる? 今年の1年の中にエンデヴァーの息子がいるって」

「ウッソマジで!? すげえ」

「やっぱ期待だな1年ステージ」

 

 入場ゲートを通過した者は会場となるステージまでの道にある屋台を楽しみながら、開演までの時間を過ごしている。そんな中でスタッフ証を首に下げたヒーロー、デステゴロ・シンリンカムイ・Mt.レディがパトロールで周囲を見回っていた。

 

「たこ焼き一つくださいな♪」

「おお! Mt.レディじゃねーか!!」

「青のり抜きで」

「一つね!! 500円だぜ!!」

「え……あの、今持ち合わせがなくて……」

「エロッ!!! 無料(タダ)で!!!」

「ありがとー!!!」

「プライドないのか」

 

 あざとい仕草でたこ焼きをタダで手に入れたMt.レディ。その姿はとても今注目の若手女性ヒーローとは思えないが、実力やプロ意識があるのを知っているためデステゴロもシンリンカムイも窘める程度に留めている。

 

「我らもスカウトに勤しみたいとこだが……」

「警備依頼がきた以上仕方ねえよ」

「なんか全国からプロヒーロー呼んだらしいですね、今年は」

「それだけ雄英も警戒しているってことだ。流石にこれ以上醜態を晒すわけにもいかないからな」

「有名どころはこういう時辛いものだな」

「まあ、適当にパトロールしつつ会場にあるモニターで確認しましょ、今年期待の1年生って子達を♪」

「いや適当はダメだろ……」

「はいはい、わかってます」

 

 軽口を叩きながらも周囲に気を配りながら3人はパトロールを続ける。すると、デステゴロが不意に足を止めた。その視線の先には1人のサラリーマンの格好をした男性が真剣に屋台を物色していた。

 

「……こいつは珍しい客が来たもんだ……」

「先輩、どうしたんですか?」

「あのサラリーマンが何か?」

「ああ、お前ら若いからわからないか。彼は以前オールマイトのサイドキックをしていたプロヒーロー、サー・ナイトアイだ」

「彼があのサー・ナイトアイ? 名前は聞いたことありますが……」

「なんというか、あまりヒーローっぽく見えないですね」

「活動方針上、あまり目立たないようにしているらしいからな。俺は以前一度チームアップしたことがあるからわかるが知らなかったらヒーローでもわからないだろう、お前らみたいにな」

 

 2人に説明しながらデステゴロはナイトアイに近づいていき、声をかけた。

 

「サー・ナイトアイ。覚えてるかな? 以前チームアップしたデステゴロだ」

「……ああ、確か3年前でしたね、お久しぶりです。今日はスカウトで?」

「いや、今日は会場の警備だ。本当だったら噂の1年A組を見てみたかったんだがな。ああ、こっちは同じ地域から警備に来ているシンリンカムイとMt.レディだ」

「若手の中でも注目の2人ですね。初めまして、サー・ナイトアイです」

「初めまして、お会いできて光栄です」

「初めまして、今日はスカウトに来たんですか?」

 

 デステゴロに2人はサー・ナイトアイと挨拶と握手を交わす。ヒーローであるサー・ナイトアイが来ているからにはスカウト目的かとMt.レディが尋ねる。

 

「ええ、スカウトもありますが、それ以外にも目的がありまして」

「それ以外? 誰かの応援とかですか?」

「そういえば、雄英ビッグ3の1人の通形ミリオがそちらがインターン先だったな」

「なるほど、3年生の彼にとっては最後の雄英体育祭、応援に来るのも不思議ではないですね」

「確かにミリオの応援もありますが、他にもいましてね……」

 

 シンリンカムイの言葉を肯定しつつ、ナイトアイはそう付け加えた。ナイトアイの予想外の言葉に全員が興味を引かれる。

 

「他? 他にもインターン生がいるんですか?」

「いや、インターン生ではないですが……まあ、目をかけている生徒、といったところですね」

「へえ、あんたがそういうんなら結構な注目株だな」

「ちなみにちなみに! 誰なんですか!? 学年は!?」

「それは……秘密にしておきましょうか。私としては彼女本人に頑張ってもらって『私が来た!』とアピールしてもらいたいですからね。……では、そろそろ行きます。今後チームアップする際はよろしくお願いします」

「ああ、楽しんできてな」

 

 ナイトアイは別れの挨拶のあと、屋台の食べ物を購入して会場へと向かった。後に残された3人はナイトアイの気にかけている生徒が誰なのか気になっていた。

 

「目をかけている子って誰なんでしょうね? 彼女って言ってましたから女の子なんでしょうけど……」

「学年だけでも聞いておけばよかったな……」

「まあ、彼が目をかけているなら相応の活躍をするだろう。合間合間で確認していけばわかるかも知れねえ」

 

 デステゴロの言葉を合図に3人はパトロールへと戻っていった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

「あーあ。やっぱコスチューム着たかったなー」

「公平を期すため着用不可なんだよ」

「予選の種目ってなんなんだろうな……」

「何が来ようが対応するしかない」

「ああ……」

 

 皆良くこんな状況でしゃべれるなあ……。僕なんて緊張で心臓飛び出しそうなのに。でも、この2週間でやれるだけのことをやったんだ。深呼吸して心を落ち着かせて……。

 

「皆準備は出来てるか!? もうじき入場だ!!」

 

 ちょっと飯田君!? もうそんな時間なの!? 待って待って落ち着け落ち着け僕ならできるやればできる。落ち着いて深呼吸して………………ふう、これで大丈夫、かな? 峰田君も緊張して人の字を掌に書いてる。自分より緊張しているのを見ると不思議と落ち着いちゃうってやっぱり本当なんだな……。

 

「緑谷」

 

 不意に呼ばれて、声がした方を向くと轟君が僕に向かって歩いてきた。何か話があるのかな?

 

「轟君……何?」

「え? 何、轟君もしかして体育祭前に愛の告白!?」

「えー! マジでー!? 皆の目の前でなんて、さすがイケメン……!」

「ちょっと!? 葉隠さん芦戸さん何言ってるの!? 轟君が僕なんかに告白なんてそんな……!」

「いや、告白とかじゃないが……客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う」

「へ!? うっうん……」

 

 轟君が気にしてなくて良かった……。そして、轟君が言ってることは正しい。二つの相反する個性『半冷半燃』を高い精度で使いこなしている彼と、OFAをやっと5%の出力で使えるようになった僕とじゃ実力差は歴然だ。でも、なぜ今それを……?

 

「おまえ、オールマイトに目ぇかけられてるよな」

「!!」

「別にそこ詮索するつもりはねえが……お前には勝つぞ」

「おお!? クラス最強が愛の告白じゃなくて宣戦布告!?」

 

 轟君、まさかこんなところで宣戦布告してくるなんて……。オールマイトとの関係が気になってるみたいだけど、OFAのことはバレてないよね? あと上鳴君、告白からは離れて……。

 

「おい、待ちやがれ」

「おおっと! これは某恋愛番組でお馴染みの『ちょっと待った』だー!! まさかこんなところで見られるとはー!」

「まさかの出久ちゃんを巡っての男の争い!? これは目が離せない!」

「ちょっと!? 2人とも悪ノリするのやめて!!?」

 

 僕を巡っての争いって、何言ってんのさ!? っていうかかっちゃんなんで会話に割り込んできたの!? 余計ややこしくなるでしょ!!

 

「おめー俺を差し置いてデクに宣戦布告するとか舐めてんのか? 俺は眼中にないってかオイ!」

「お、おいおいお前ら急にケンカ腰はどうした!? 緑谷いろいろこまってんだろ? こんな直前にやめろって……」

「三奈ちゃん達が言ってるみたいに轟君と爆豪君の2人が緑谷を巡って争ってるように見えるのはなんかオモロいね」

「話の内容にそんな色気全然ないけどね」

「2人の殿方が1人の女性を取り合うシチュエーション、これも少女漫画で見ましたわ!」

「百ちゃん、よっぽど少女漫画が気に入っているのね」

 

 麗日さんも耳郎さんも八百万さんも蛙、梅雨ちゃんもやめて……。どうしてこうなったの……。

 

「仲良しごっこじゃねえんだ、なんだっていいだろ。それに爆豪、別におまえが眼中に入ってねえ訳じゃねえ」

「ああ? だったらなんだってんだよ!?」

「俺はここにいる全員、いや1年全員に勝って優勝する、そのつもりだ。緑谷に言ったのは……まあいいだろそんなのどうでも」

「ふっざけんな! 全員ぶっ飛ばして優勝すんのは俺だ!」

 

 ……轟君もかっちゃんも、本気で勝ちに来てる。

 

 僕だって!

 

「……轟君が何を思って僕に勝つって言ってるのか……はわかんないけど……そりゃ君の方が上だよ……。実力なんてクラスの皆や他のクラスの人達にも敵わないかもしれない……」

「緑谷もそーゆーネガティブなこと言わねえ方が……」

「でも……!!」

 

 拳を握って、轟君・かっちゃんを見て力強く言葉を紡ぐ。

 

「皆……他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって……遅れを取るわけにはいかないんだ!」

 

 最高のヒーローになるために! オールマイトの跡を引き継げるように!

 

「僕も本気で獲りに行く!」

 

 気持ちでは絶対に負けない!

 

「……おお」

「……クソデクのくせに生意気な……!」

「皆時間だ! 控え室を出て会場に向かうぞ!」

 

 ちょうどいいタイミングで飯田君が入場の時間を知らせてくれた。妙な空気が一気に引き締まり、皆が控え室から出ていく。

轟君は僕を一瞥して先に部屋を出た。かっちゃんが僕を睨んでいたけど、その視線を振り払うように部屋を出て会場へ向かった。

 

 

 

『群がれマスメディア! 今年もお前らが大好きな高校生達の青春暴れ馬……雄英体育祭が始まディエビバディアァユウレディ!!??』

 

 ステージに進む途中で放送席のプレゼント・マイクの声が響き渡る。プロヒーローの傍ら、ラジオでDJもやってる彼のトークでこれから入る会場のボルテージも高まっていくのがわかる。

 

 

 ――――君が来たってことを知らしめてほしい!!――――

 

 

 オールマイトの言葉を思い出す。この雄英体育祭での頑張りが今後の学校生活、ひいてはヒーローへの道に大きく影響していく。

 

「了解、オールマイト」

 

 僕はオールマイトへの言葉を口にしながら、ステージへと足を踏み入れた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『雄英体育祭!! ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!! どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!? 敵の襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!』

 

 会場中どころか会場の外までプレゼント・マイクの声が響く。いよいよ1年生の入場が始まる、そのタイミングで観客の待ち望んだ言葉を口にする。

 

『ヒーロー科!! 1年!!! A組だろぉぉ!!?』

 

 それを合図に雄英高校の1年生が次々と入場していく。会場中から歓声が沸き起こる中を出久達A組は指定の位置まで歩いていく。

 

「わあああ……人がすごい……」

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか……! これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」

「めっちゃ持ち上げられてんな……なんか緊張すんな……! なァ爆豪」

「しねえよ、ただただアガるわ」

 

『B組に続いて普通科C・D・E組……!! サポート科F・G・H組も来たぞー! そして経営科……』

 

「俺らって完全に引き立て役だよなぁ」

「たるいよねー……」

 

 雄英体育祭はヒーロー科以外の他の科も入り混じっての総当たり戦であるため、当然乗り気でない生徒もいる。それでも大多数の生徒が全国中継されるテレビで目立つため、あるいはヒーロー科の鼻を明かすために徐々に気持ちを高めていた。

 

「選手宣誓!!」

「おお、今年の1年主審は18禁ヒーロー『ミッドナイト』か!」

「校長は?」

「校長は例年3年ステージだよ」

 

 1年生全員が所定の位置に集まったところで1年生ステージの主審であるミッドナイトが鞭を振りながら選手宣誓を宣言する。

 

「18禁なのに高校にいてもいいものか?」

「いい」

「静かにしなさい!! 選手代表!! 1ーA爆豪勝己!!」

 

 常闇と峰田のアホな会話に注意してからミッドナイトが選手宣誓を行う生徒、勝己の名前を呼ぶ。

 

「え〜〜〜、かっちゃんなの!?」

「あいつ一応入試一位通過だったからな」

「そうだとしても、選手宣誓させるにはちょっと問題があるような……」

()()()()()()()()な」

 

「せんせー」

 

 

 1ーAのみならず先日1ーAを見て勝己の傍若無人ぶりを知った他クラスの生徒も壇上の勝己がどのような選手宣誓を行うか、固唾を飲んで見ていた。

 

「俺が一位になる」

 

「絶対やると思った!!」

「調子にのんなよA組オラァ!!」

「何故品位を貶めるようなことをするんだ!!」

「ヘドロヤロー!」

「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ」

「どんだけ自信過剰だよ!! この俺が潰したるわ!!」

 

 勝己の前代未聞の選手宣誓に他クラスだけでなくA組からも非難の声が上がる。しかし、1人だけ異なる見方をしていた。

 

「(自信……違う……。以前のかっちゃんならああいうのは笑って言ってた……。自分を、追い込んでいるんだ……。A組(ぼくら)を巻き込んでるのがかっちゃんっぽいけど……)」

 

「さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう!」

「雄英って何でも早速だね」

「いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!」

 

 ミッドナイトの合図で会場内のモニターでルーレットが回転する。ルーレットで決まった項目により予選の種目が決定していく。

 

「さて、運命の第一種目!! 今年は……コレ!!!」

 

 モニターに表示されたのは『障害物競走』の文字。1年生のみならず、会場中がざわついている。

 

「障害物競走……!」

「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周約4km!」

 

 ミッドナイトのアナウンスに合わせてステージが動いていき、あっという間にスタートの設備が整った。

 

「我が校は自由さが売り文句! ウフフフ……コースさえ守れば()()()()()()構わないわ! さあさあ、位置につきまくりなさい……」

 

 スタートを知らせるシグナルが点灯する。会場中のボルテージがさらに高まっていく。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 『君が来たってことを世の中に知らしめてほしい!!』

 

 ……オールマイト。現実的に考えればようやく5%の出力制御ができたからって……無茶振りにも程があるよ。

 

 だから、超えていかなきゃ!

 

 シグナルが残り一つ、それが消えたらスタートする。

 

 息を一つ、吸って……吐いて……。

 

「スターーーーーート!!!」

 

 見ててください、オールマイト!!!




次回で障害物競走を書いていきます!ちなみにナイトアイ事務所はサー・ナイトアイが応援に来てます。やっぱり事務所の代表ですからねw応援の描写もしていきたいと思いますので、よろしくお願い致します♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。