僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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騎馬戦本番です!ひたすら長いですが、よろしくお願いします!


第18話 奪え! 騎馬戦!

Side:Izuku

 

『START!』

 

 ついに騎馬戦が始まった。僕達のチームは麗日さん・発目さん・常闇君の4人で合計保持P(ポイント)は10,000,325P。これだけのPを持ってるなら当然……。

 

「実質それ(1000万)の争奪戦だ!!!」

「はっはっはっ!! 出久ちゃんいっただくよーーー!!」

 

 僕達を狙ってくるよね!

 

『おおーっと!! 他のチームが一斉に緑谷チームに向かっていくー! モテる女は辛いが、困難は雄英生の宿命! この状況をどう乗り越えていくかー!!?』

 

 ……こんなモテ方はしたくなかったよ!!!

 

「いきなりの襲来とはな……まず2組。追われし者の運命(さだめ)……選択しろ緑谷!」

「サダメ……!」

「センタク……!」

「もちろん!! 逃げの一手!!!」

 

 一気に大勢に囲まれたらあっという間にハチマキを取られちゃう! まずはこの場から離れて……!

 

「けっ……!!」

 

 ズブ

 

「「「!!!」」」

「沈んでる! あの人の個性か! 麗日さん、発目さん!! 顔避けて!!」

 

 2人に声をかけると同時に胸元のスイッチを押す。

 

 ピッ! ボッ! バシュウウ!

 

 発目さんのサポートアイテム『バックパック』からジェットが噴出して僕らの組んだ騎馬は勢いよく空中に飛び出す!

 

「飛んだ!? サポート科のか! 追ぇえ!!」

「耳郎ちゃん!!」

「わってる」

 

 ギュン! バシッ! バシ!

 

 空中を通り過ぎるときに耳郎さんがイヤホンジャックで攻撃を仕掛けるが、黒影(ダークシャドウ)が2つとも防御する!

 

「いいぞ黒影、常に俺たちの死角を見張れ」

「アイヨ!!」

「すごいよ、かっこいい!! 僕らに足りてなかった防御力……それを補って余りある全方位中距離防御!! すごいや常闇君!」

「選んだのはお前だ」

「着地するよ!」

 

 ボワ! 

 

「どうですかベイビー達は!! 可愛いでしょう!? 可愛いはつくれるんですよ!!」

「(麗日さん以外を浮かして総重量は麗日さん+装備や衣類分のみ!)機動性バッチリ! すごいよベイビー! 発目さん!!」

「でしょー!?」

「浮かしとるからやん……」

 

 よし! 常闇君の黒影、麗日さんの無重力(ゼログラビティ)、発目さんのサポートアイテム(ベイビー)達! 全てが噛み合って上手くいってる。このまま時間一杯まで粘れれば!

 

「私達も追うよ! さァ耳郎ちゃんリベンジ……」

「つーかおい! 葉隠!! ハチマキねえぞ!!」

「はっ!!? いつの間に〜〜〜!?」

「漁夫の利」

 

 あのB組の人、物間君だったか。葉隠さんが僕らに意識が向いてる間にハチマキを奪ってた。抜け目がなくて侮れないな……。それに、まだ他のチームがいるから全然気が抜けない! 何とか状況を良くしていかないと!

 

『さ〜〜〜まだ2分も経ってねえが早くも混戦混戦!! 各所でハチマキの奪い合い!! 1000万を狙わず2位〜4位狙いってのも悪くねぇ!!』

 

 まだ2分も経ってないの!? あと10分以上もあるなんて、このまま奪われずに行けるのか!?

 

「アハハハ! 奪い合い……? 違うぜこれは……一方的な略奪よお!!」

 

 この声は峰田君!? 一体どこから……って!

 

「障子君!? アレ!? 一人!? 騎馬戦だよ!?」

「一旦距離を取れ! とにかく複数相手に立ち止まってはいかん!」

 

 常闇君の言う通りだ。ここでまた囲まれたら今度こそハチマキが取られちゃ、っと! バランスが、何で!?

 

「何!? 取れへん!」

「それ峰田君のモギモギ!! 一体どこから……」

「ここからだよ緑谷ぁ……」

「なァァ!? それアリィ!!?」

『アリよ!』

 

 ビュッ!

 

「わっ!!!?」

「わ!!?」

 

 何か飛び出してきた!? 一体なんなの!?

 

「さすがね出久ちゃん……!」

「蛙吹さんもか!! すごいな障子君!!」

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

 2人を背負い複製腕で覆うことでハチマキをガードしてさらに移動もこなすなんて、1ーAクラスで1番の体格の持ち主の障子君だからこそできる芸当だね! しかも峰田君のモギモギで動きを妨害しつつ蛙吹さんの舌でハチマキを奪おうとするなんて、地味にコンビネーションがいい! 早くこの場を離れなきゃ!

 

 バキャッ! バシュウウ!

 

『峰田チーム、圧倒的体格差を利用しまるで戦車だぜ!』

 

「ああベイビーが引き千切れたあ!!!」

「ごめん!! でも離れられたよ!」

 

 空中なら誰も追ってこれない! 一度体勢を立て直して……。

 

 BOOM!

 

 ! この音は、まさか!?

 

「調子乗ってんじゃねえぞクソデクぅ!」

「かっちゃん!!!? 常闇君お願いっ!」

 

 BOOM!!!

 

「何だこいつ!」

 

 危なかった! そうだ、かっちゃんは爆破で飛べるんだった……! でも、アレってありなの!?

 

『おおおおおお!!? 騎馬から離れたぞ!? 良いのかアレ!!?』

『テクニカルなのでオッケー!! 地面に足ついてたらダメだったけど!』

 

 良いのか!? ちょっと判定アバウトすぎないミッドナイト先生!

 

「チッ」

「ナイキャッチ!」

 

 しかも瀬呂君のテープで回収可能なんてずるい! 毎回こんな攻撃されたらさすがに無理だよ!

 

「派手な動きで見てるこっちも楽しいやなー!」

「敵と戦ったってだけでこうも差が出るかねぇ!」

 

 観客の能天気な声が聞こえてくる! こっちは必死なのに!

 

『やはり狙われまくる1位と猛追をしかけるA組の面々共に実力者揃い! 現在の保持Pがどうなってるか……7分経過した現在のランクを見てみよう! ……あら!!?』

 

「あれ……? なんか」

 

 ? 何か会場の様子がおかしい? 何かあったのかな?

 

『ちょっと待てよコレ……! A組緑谷以外パッとしてねえ……ってか爆豪あれ……!?』

 

 マイク先生の声で気になって周囲を注意しながら目線だけでモニターを見ると、保持Pランクが大きく入れ替わってる! A組の編成チームでPを保持してるのは僕と轟君のチームだけで、あとはB組の人達のチームだ! っていうかかっちゃんのチームも!? これは一体……。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「単純なんだよ、A組」

「! んだてめェコラ!! 返せ殺すぞ!!」

「やられた!」

 

 勝己の一瞬の隙をついてB組の物間がハチマキを奪い取った。彼の表情はこうなるのは当然と言わんばかりのものだった。

 

「ミッドナイトが『第一種目』と言った時点で予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいと思わない?」

「!?」

「だからおおよその目安を仮定し、その順位以下にならないよう予選を走ってさ、後方からライバルになる者達の『個性』や性格を観察させてもらった。その場限りの優位に執着したって仕方ないだろ?」

 

 物間達B組は先を見越して中下位の順位をとり、直接Pを奪い合うであろう本選でのアドバンテージとなるよう情報を収集していたのである。

 

(クラス)ぐるみか……!」

「まあ全員の総意ってわけじゃないけど、良い案だろ? ()()()()()()()馬みたいに仮初の頂点を狙うよりさ。あ、あとついでに君有名人だよね?」

 

 そう言って物間は勝己を見てあからさまに挑発をする。

 

「『ヘドロ事件』の被害者! 今度参考に聞かせてよ、年に一度敵に襲われる気持ちってのをさ」

 

 ……ブチ!!!

 

 安い挑発だったが効果は覿面だったようで、勝己の大して強くない堪忍袋の緒が見事に千切れた。

 

「切島……予定変更だ」

「な、爆豪おまえ何言って……」

「デクの前にこいつら全員殺そう……!!」

 

 

 

「なるほど、1位の緑谷君のチーム自体は狙わずその周りのチームを狙っていく作戦か……」

 

 観客席から俯瞰で見ていたサー・ナイトアイにはB組チームの一部が出久達を狙わずにその周囲のチームを追っているのがわかった。出久達が空中へと逃げるなど派手な動きをしていてそれを追う他のチームの意識もそちらへ向いたため、その隙に物間チームは難なくハチマキを奪うことができたのである。

 

「通常は1位になるべくそのチームを狙っていくもの、それをせずに次戦に進むためのPを獲得していく。確かに次に進むためなら作戦としては悪くない。……だが、その選択が必ずしも最適となるかは……」

 

 ナイトアイはいまだに1000万Pを保持し続ける出久、物間チームに対して激昂する勝己を見ながら、勝敗の行方がどうなるか思案を深めていった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 物間君の口ぶりからすると、B組は予選を捨てた長期スパンの策ってわけか! 確かに体育祭前からA組が食っていた空気を覆すことでより強い印象を与えられるよね……。

 

 でもそれは、発想から察するに僕を狙うことに必ずしも固執していない……!! B組全員が賛同しているわけじゃないらしいけど、それなら……。

 

「皆、逃げ切りがやりやすく……」

 

 ザッ オオオオオ!

 

 正面に一つの騎馬が立ちはだかる。それに伴って会場からも歓声が沸き起こる。

 

 ……こうなることはわかってたけど……。

 

「……そう上手くは、いかないか……」

「そろそろ奪るぞ」

 

 来たか、轟君!

 

『さァ残り時間半分を切ったぞ!! B組隆盛の中、果たして……1000万Pは誰に頭を垂れるのか!!!』

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Katsuki

 

「あんま煽んなよ物間! 同じ土俵だぞそれ」

 

 サイドテール女が俺のハチマキを奪った奴にそう言ったが、もう手遅れだよ。そいつは俺をコケにしやがったからな!

 

「ああ、そうだね。ヒーローらしくないし……よく聞くもんね。恨みを買ってしまったヒーローが()に仕返しされるって話」

 

 敵だと! 俺のことか! こいつ!!!

 

「おっ、おっ、おおォォ……」

「爆豪落ち着け! 冷静になんねえとP取り返せねえぞ!!」

「おォオオ……! っし進め切島……!! 俺は今……すこぶる冷静だ……!!!」

「頼むぞマジで」

 

 俺を怒らせたこと、後悔させてやるぜ!!!

 

 

「てめえまちやがれ!!!」

 

 BOOM!!!

 

「おっと危ない危ない。後ろから不意打ちなんて卑怯じゃないか、ますますヒーローらしくないね」

「な、どの口が言うのそのセリフ! 爆豪、こいつちゃっちゃとヤっちゃって!!!」

「てめえに言われなくても殺ってやるよ!」

 

 黒目に言われるまでもなく、こっちはさっきから殺る気満々なんだよ!!!

 

「オラあ!!!」

 

 右腕を突き出すと同時に爆破させるが、動きが読まれていたのか避けられてさらに腕を掴まれる。くそ、これも予選で俺達を観察してたおかげか!

 

「ふふ、気付いたみたいだね。君の動きの傾向はある程度わかってたよ。それじゃあ、()()()()()()()()()()()、反撃といかせてもらうよ!」

 

 もらった? 何言ってんだこいつ! 反撃っつーならそこにカウンターで……!? なんかやべえ!?

 

 BOOM!!!

 

「がっ!!!」

「ははぁ……へえ! すごい! 良い『個性』だね!」

 

 BOOM!!!

 

 この攻撃は俺と同じ、爆破!

 

「こいつ、俺の……!!」

「爆豪おめーもダダ被りか!!」

「くそが!!!」

 

 俺の個性と全く同じだなんて、あってたまるか!

 

 ブン! BOOM!!!

 

 手応えあり!!! このまま連打で……!

 

「まあ、僕の方が良いけどさ」

「!?」

 

 ガードしやがった!! しかもこの硬さは……そういうことか!!!

 

「んなあー! 俺の!? また被っ……」

「違え、こいつコピーしやがった」

 

 でなけりゃこんなに個性被りもするはずがねえし、仮に複数個性だったとしても全く同じものが被るなんてそうそうあるわけねえ!

 

「正解! まあ、バカでもわかるよね」

 

 ち、条件はわからねえが厄介なことに変わりはねえ! つーかこいつまた俺を馬鹿にしやがったな!!

 

 バッ! ドバアア!!

 

 なんだこれ! 切島の足について固まった! ボンドか!

 

「凡戸! 仕掛けて来たな」

「物間、あとは逃げ切るだけだ。このP数なら確実に4位以内に入る!」

 

 こいつら! こんな小細工しやがって!

 

「固まった! すげえ! 動けねえ!」

「ちょい待ち! 私の『個性』で溶かすから!」

「早く! 0Pだぞ早く!」

 

 下でギャーギャーうるせえんだよ! 早くしやがれ! 早くこいつを……!

 

「あ、怒らないでね。煽ったのは君だろ? ホラ……宣誓で何て言ってたっけ……恥ずかしい奴……えー……まあいいや、おつかれ!」

 

 ブチ!!!

 

 『俺が1位になる』

 

「1位だ……ただの1位じゃねえ。俺がとるのは完膚無きまでの1位だ……!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

「良い策だったからあなたでも組んだのに……いつハチマキ失ったの?」

「わかんねえよ! けどこれでもう失うもんはねえ! あの2組のP!! 全力で掠め取るぞ! 障子フルアタックモード!!」

 

 峰田君達の声が聞こえる。周囲に他のチームもいるみたいだ。そっちも厄介だけど、目の前の轟君たちが一番手強いな……。

 

「もう少々終盤で相対するのではと踏んでいたが……随分と買われたな緑谷」

「時間はもう半分! 足止めないでね! 仕掛けてくるのは……一組だけじゃない!」

 

 ここが踏ん張りどころだ、頼むよ皆!

 

 

「飯田、前進」

「ああ!」

「八百万、ガードと()()を準備」

「ええ!」

「上鳴は……」

「いいよわかってる! しっかり防げよ……」

 

 轟君達が仕掛けてくる! 

 

「無差別放電130万V(ボルト)!!」

 

 BZZZZ!!!

 

「〜〜〜〜〜!!」

「上……鳴!!」

「ぐあああ!!」

「…………!!」

 

 これは、上鳴君の放電!! 僕らは黒影がガードしてくれてるけど、他のチームはモロに受けちゃってる!

 

「残り6分弱、あとは引かねえ。悪いが我慢しろ」

 

 ザザ キイイイイイン! 

 

「「「ぐっ!!?」」」

 

『何だ何した!? 群がる騎馬を轟一蹴!』

『上鳴の放電で()()()動きを止めてから凍らせた……。さすがというか……障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな』

『ナイス解説!!』

 

 そうか! 電撃で痺れさせてる間に氷結で凍らせる……考えたな轟君。これで僕達との一対一に持ち込んだってことか。

 

「あーハチマキ! くっそぉお!」

「一応貰っとく」

 

 しかも動けないチームのハチマキも奪っていく、抜け目ないな!

 

 バチバチ

 

「なっ! バックパックがイカれた!!?」

「ベイビー!!! 改善の余地アリ!」

「強すぎるよ! 逃げ切れへん!」

「牽制する!」

 

 常闇君が黒影に指示して攻撃を仕掛ける!

 

「八百万!」

 

 ズッ! ガン!

 

「……!!」

「『創造』……! 厄介すぎる!」

 

 それに轟君の指示も的確! このままじゃ……!

 

「いや……それ以上に上鳴だ」

「え!?」

「あの程度の装甲、()()()ならば破れていた……」

「……! そうか……! 上鳴君の電光……!」

「奴の放電が続く限り、攻めでは相性最悪だ。黒影も及び腰になっている」

「(クスンクスン)暴力反対……」

 

 黒影が萎縮しちゃってる……、確かに相性最悪だ……。

 

 でも……。

 

 

「攻撃力低下……それ向こうには知られてないよね?」

「恐らくな、この欠点はUSJで口田に話したのみ。そして、奴は無口だ」

「……知られてないなら、牽制にはなる……! 大丈夫……! 何としても1000万は持ち続ける!」

 

 それに、轟君の癖、というか傾向からすると……。

 

「皆! 轟君達が近寄って来たら距離を保ちながら右側に動いて!」

「右側? デクちゃんどうして?」

「理由はわからないけど、轟君は右側の氷結をメインに使っていて左側の炎はほとんど使ってきてない! もしかしたら力をセーブしてるだけかもしれないけど、今の時点でほとんど使ってないからその方法をとるのが最善だと思う!」

「良いですねえ! 情報を客観的に分析した戦術!」

「リーダーはお前だ! お前の判断を信じる!」

 

「よし、行くぞ。飯田」

「わかった! エンジン、ブースト!」

 

 轟君達が飯田君のエンジンで急加速してきた! 動きを見極めて……!

 

「今! 避けて!」

「はい!」「了解!」「承知!」

 

 皆に指示して突撃を回避する。さっきの作戦通り、轟君の左側に避けるが個性を使ってくる気配はない。予想通りだ! このまま距離を取りつつ、時間まで粘る!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

『残り時間約1分!! 轟、フィールドをサシ仕様にし……そしてあっちゅー間に1000万奪取!!! とか思ってたよ5分前までは!! 緑谷、なんとこの狭い空間を5分間逃げ切っている!!』

 

 出久はその後も突撃のタイミングを読んで3人に指示を出し、轟チームの度重なる猛攻を凌いでいた。轟もタイミングをずらしたり先に氷結を使って牽制しているが、ナイトアイ直伝の読みと予測によって阻まれていた。

 

「キープ!!」

「! (常に距離を置いて左側に……よく見てやがる。これじゃ最短で凍結させようにも飯田が引っかかる。こう動かれちゃ無闇な凍結は自分の首を絞める。上鳴の放電も常闇に防がれる……。残り1分……! こいつ……!)」

 

 

 

()()()()んじゃないか……阿呆め」

 

 観客席で眺めるエンデヴァーは息子の戦いぶりに歯噛みした。自身の個性を受け継いだ左手を使えば楽に戦えるのにそれをしない。()()()()()()()で己に制限をかける轟にさらに舌打ちした。

 

 

 

「上手く距離を取りつつ、相手の視線で次の動きを予測する。実践できてるね緑谷君……」

 

 ナイトアイは出久と轟の一対一に目を向けていた。出久と出会ってからこれまで、ミリオと共に自身の持つ戦闘時テクニックやノウハウ、経験を伝えてきた。これまでの出久との話で自分の教えたことが活かされたと聞いてはいたが、障害物競走に引き続いて実践しているところを目の当たりにすると彼女の成長が感じられ思わず目を細める。

 

「それにしても、彼は確か複数個性の持ち主で左手は炎を扱えたはず……。使わないのは何か理由があるのか……?」

 

 出久の勝利を祈りつつ、未だ手の内を見せない轟にナイトアイも疑問を抱いた。

 

 

 

「皆、残り1分弱……()()()()()使()()()()()()。頼んだぞ」

「飯田?」

「しっかり捕まっていろ。奪れよ轟君!」

 

 突然の飯田の言葉に轟は疑問を感じるが、その言葉で最後の突撃をすることを感じ取り出久のハチマキを取るべく集中を高める。

 

「トルクオーバー! レシプロバースト!!」

 

 

 

「(? 雰囲気が変わった? 何か来るかも!)皆後もう少し、集中を切らさないで!」

 

 轟チームの変化を感じ、他のチームメンバーに気を引き締めるよう伝える。

 

 ……その刹那!

 

 

「トルクオーバー! レシプロバースト!!」

 

 ビュン!!! DRRRRRRRRR!!!

 

「は?」

 

 飯田の個性によって目にも止まらぬ速さに加速し、すれ違いざまに轟がついに出久のハチマキを奪い取った!

 

『なーーーー!!? 何が起きた!!? 速っ速ーーー!! 飯田そんな超加速があるんなら予選で見せろよーーー!!!」

 

「飯田! 何だ今の……」

「トルクと回転数を無理やり上げ爆発力を生んだのだ。反動でしばらくするとエンストするがな。クラスメイトにはまだ教えてない裏技さ」

「そんな……動きが見えなかった……。初見じゃ読みや予測ができない……」

「言ったろ緑谷君、君に挑戦すると!」

 

『ライン際の攻防! その果てを制したのは……逆転!! 轟が1000万!! そして緑谷、急転直下の0Pーーー!!」

 

 

「突っ込んで!!」

 

 終盤でハチマキを取られてしまい、出久は焦る。残り時間も後わずかしかない中で0Pと絶望的な状況に追い込まれてしまった。

 

「上鳴がいる以上攻めでは不利だ! 他のPを狙いに行く方が堅実では……」

「ダメだ!! Pの散り方を把握出来てない! ここしかない!!」

「……よっしゃ!」

「!?」

 

 出久と常闇の意見が異なる中、麗日が後方から押して轟チームに向かっていく。

 

「取り返そうデクちゃん!! 絶対!!!」

「麗日さん……!」

 

 『絶対ヒーローになって、父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ』

 『あなたの立場利用させて下さい』

 『託したぞ緑谷』

 

「(そうだ!! 自分のだけじゃない!! 『僕』を信用してくれた……3人の思いを!! 僕は今!! 背負ってんだーーー!!!!)あああああああああ!!!」

「(! この感じは……!?)」

 

 出久の、『思い』の込もった叫びが響いた!

 

 

 

『残り1分を切って現在轟ハチマキ4本所持!! ガン逃げヤロー緑谷から1位の座をもぎ取ったあ!!! 上位4チームこのまま出揃っちまうか!?』

 

「2位か……ちょっと出来すぎかも。まァキープに専念だ」

「客うるせ〜〜〜」

 

 勝己と葉隠のPを奪って2位の位置に着いた物間チームはPを奪われない作戦を取ることにした。残り時間を考慮すればその作戦は最善である。

 

 ……だが。

 

「待てえええ!! 待って!!」

「! しつこいなあ。その粘着質はヒーロー以前に人として……」

「勝手すなぁあ爆豪ーーー!!!」

「円場! 防御(ガード)!」

「っしゃあ!!」

 

 フッ ブン

 

「てっ!」

「ハハ! 見えねー壁だ! ざまァみろ!」

 

 円場の個性『空気凝固』によってできた壁で勝己の突撃を妨害する。普通であればこれで諦めるが、相手はこの程度で止まる男ではなかった。

 

 ガッ! バリッ! ベリッ!

 

「!? 取られた! 2本!」

 

『爆豪チーム2本奪取で3位に!! この終盤で順位が変わりゆく!! 若気の至りだあ!!』

 

 

「くそっ……」

「大丈夫だ4位だ! 拳藤は凍らされて動けないから……」

「ああ……! この一本死守すればもう確実に……」

 

 

「跳ぶ時は言えってば!!」

「でもこれで通過は確実……」

「まだだ!!!」

「はあ!!?」

「完膚なきまでの1位なんだよ取るのは! それにあそこまで馬鹿にされた分も返さなきゃ気が済まねーんだよ!!! さっきの俺単騎じゃ踏ん張りが効かねえ、行け!! 俺らのPも取り返して1000万へ行く!!」

 

 切島の頭を叩きつつなおもPを奪いに行くという勝己の言葉に他の3人は驚きの声を上げる。次戦への勝ち抜けを考えれば十分であるが、完全勝利を狙う勝己の気迫に3人も覚悟を決める。

 

「ったく!」

「しょうゆ顔! テープ!!」

「瀬呂なっと!!」

「!? 外れだ」

「黒目! 進行方向に弱め溶解液!」

「あ・し・ど・み・な!」

「行くぞ!!」

 

 BOOM!

 

 

「(爆豪少年! 君は()()()()()()非常によくわかっているんだろう。常にトップを狙う者とそうでない者、その差……)」

 

 

「物間……B組の作戦は確かに合理的で良い。だが一つ惜しむらくは……常にトップを狙う者とそうでない者、その差……執念の差を考慮していなかったことだな」

 

「死ねえ!!!」

 

 BOOM!!!

 

「ぐあっ!?」

 

 

『爆豪!! 容赦なしーーー!!! やるなら徹底! 彼はアレだな、完璧主義だな!!! さぁさぁ時間ももうわずか!!』

 

「次!! デクと轟んところだ!!」

 

 

――――残り時間、20秒――――

 

「あああああああああ!!!」

「(この感じは……!? やばい!)」

 

 出久の気迫とOFA5%の右腕の攻撃に危機感を感じ取った轟は無意識のうちに左手の個性で炎を出し防御の体勢を取る。

 

「(初めて左手を使った!? でもどのみち()()はしない。空を切るように……その手(防御)を……崩して!!!)」

 

 ブワッ!!!

 

「(左……俺は何を……!)」

「(ミリオさんとの特訓のおかげでコントロールに乱れはない! このままイケる! 裏返しにしてP数を隠してるけど……1000万は最後に取って巻いた一番上のそれだ!!) ああああ!!!」

 

 轟を怯ませ、さらにOFA5%の右腕で防御を崩してからの一閃! 奪われたハチマキを出久は即座に取り返した!

 

「とった!! とったあああ!!」

『残り17秒! こちらも怒りの奪還!!』

 

 ……かに思えた。

 

「待って下さい。そのハチマキ……違いませんか!?」

 

 発目の指摘に出久は奪い取ったハチマキを確認する。書かれていたP数は……70P。

 

「やられた……!!」

「轟君しっかりしたまえ!! 危なかったぞ!」

「……」

「万が一に備えてハチマキの位置は変えてますわ! 甘いですわ緑谷さん!」

「(70Pじゃ……圏外……!)」

 

『そろそろ時間だ、カウントダウンいくぜ! エヴィバディセイヘイ!』

『10!』

 

「まだだ! 諦めないで最後まで!」

「よっしゃあ! もう一度!』

「トライアンドエラーは科学者の嗜み!」

「……」

 

『9!』

 

 BOOM!

 

「いた!! ……1000万は誰が持ってんだ!?」

 

『8!』

 

「来るぞ轟君! 凌ぐんだ!」

「上鳴さんも、後少しですわ!」

「う、ウェーイ……」

「……!」

 

『7!』

 

「(もう一度! OFA5%!)」

 

『6!』

 

「(デクが轟に仕掛けてるってことは……!)1000万はこっちか!」

 

『5!』

 

「(緑谷! さっきと言い……こいつの圧力(プレッシャー)の強さは……!)」

 

『4!』

 

「あああああ!!!」

 

『3!』

 

「デク! 邪魔だあああ!!」

 

『2!』

 

「(かっちゃん!? 今は気にするな! 轟君に集中しろ!)」

 

『1!』

 

「届けえええ!!!」

 

TIME UP(タイムアップ)!』

 

 出久の手が轟に届く前に終了が告げられる。勝己も後少しのところで届かず、空中でバランスを崩して地面に落ちた。

 

『早速上位4チーム見てみよか!!』

 

 項垂れる出久達に構わずプレゼント・マイクが結果発表に移っていく。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 くそ! 最後に届かなかった! あの時、僕が飯田君の動きに対応できていれば……!

 

『1位轟チーム!!』

「…………くそっ……」

 

 やっぱり1位は轟君達、当然だ……。でも、なんで悔しそうなんだろう?

 

『2位爆豪チーム!!』

「だああああ! くそが!!」

 

 かっちゃん、2位に上がってたんだ……。一度は0Pに追い込まれてたのに、やっぱり、かっちゃんはすごいや……。

 

『3位鉄て……アレェ!? オイ!!! 心操チーム!!? いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!』

 

 心操って、あの普通科の人か……。一体どんな作戦で勝ち残ったんだろ? でも…僕達にはもう関係ないか……。

 

「デクちゃん」

 

 麗日さんが声をかけてきた。せっかくチームを組んでもらったのに、僕のミスで負けてしまって……申し訳ない。そういえば、発目さんのバックパックも壊しちゃったな……。

 

 

「あの……ごめんなさい……本当に……僕がもっと注意してれば」

 

 そう言って顔を上げると麗日さんは嬉しそうに、発目さんはちょっと壊れたバックパックを見ながらムスッとした顔で後ろにいる常闇君を指差してる。そういえば、常闇君も謝らなきゃ……アレ? どうしたんだろ?

 

「お前の初撃から轟は明らかな動揺を見せた。1000万を取るのが本意だったろうが……そう上手くはいかないな」

 

 ? 常闇君何言ってるんだろう? 1000万は結局取れなかったし……。

 

「それでも一本」

 

 そう言って常闇君が黒影を指差す。黒影が口に咥えているのは……615Pのハチマキ!? それって……!?

 

「警戒の薄くなっていた頭の方(持ちP)を頂いておいた。緑谷、お前が追い込み生み出した轟の隙だ」

 

『4位緑谷チーム!! 以上4組が最終種目へ……進出だああーーーーー!!!』

 

「うわああああああ!!!」 

 

 やった! 残れた!! 皆のおかげで! ありがとう、麗日さん! 発目さん! 常闇君! 黒影!

 

 オールマイト! ナイトアイさん! 僕やりましたよ! 最終種目まで残りましたよ!!

 

 

『それじゃあ今から一時間程昼休憩を挟んでから午後の部だぜ! じゃあな!』

 

 午後の部……ここまで残れた! もうダメだと思ったけど、チームの皆に救われた! もう後は行けるところまで行くだけ!

 

 オールマイト! ナイトアイさん! 僕頑張りますよ!

 

 『僕が来た!』って胸張って言えるように!




というわけで騎馬戦本番でした!出久や勝己はモノローグ、轟は台詞で騎馬戦での心理描写を入れてみましたが、いかがでしたか? それが原因で長くなってしまいましたが臨場感が出せたかなと思ってます♪ 次は決勝トーナメントになりますが、間に幕間を挟もうか悩んでます! どちらにするかは未定ですが、楽しみにしていただければと思います♪ 今後も応援のほど、よろしくお願い致します!
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