僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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今回は間に合いました! でも、予想より長引いたので分けちゃいましたw


第22話 二回戦!!①

「おーう、何か大変だったな悪人面!!」

「組み合わせの妙とはいえ、とんでもないヒールっぷりだったわ爆豪ちゃん」

「現役ヒーローにまでブーイングされるって相当だぞ?」

「うっるっせえんだよ黙れ! あんな有象無象で寝ぼけた雑魚ヒーロー共なんかどうでもいいわ!!」

 

 戻ってきた勝己に瀬呂や蛙吹、上鳴が一応の労いの言葉をかける。麗日との一戦では完全に悪役(ヒール)になっていたが、当の本人は相変わらずの態度でブーイングしたヒーロー達をこき下ろしていた。

 

「まァーしかしか弱い女の子によくあんな思い切りの良い爆破出来るな。俺はもーつい遠慮しちゃって……」

「完封されてたわ上鳴ちゃん」

「……あのな梅雨ちゃん……」

「まあ、あんたのアホ面も全国放送されたからよかったんじゃない? ……プ! フフフ……!」

「耳郎まで!」

「フンッ!!」

 

 上鳴が会話している中、勝己は空いている席へ乱暴に腰を下ろした。

 

「どこがか弱ェんだよ」

 

 先ほどまで戦っていた麗日を思い出し、忌々しげに言葉を吐いた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

「やー、負けてしまった」

「………………れ……」

 

 麗日さん、負けて落ち込んでいると思ってたけど、意外に元気そう?

 

「最後行けると思って調子乗ってしまったよ、くっそー……」

「麗日さん……ケガは大丈夫?」

「リカバリーされた! 体力削らんよう程々の回復だからすり傷とかは残ってるけど」

 

 そう言って顔の包帯を指差した。結構かっちゃんにやられてたから大怪我してないか心配だったけど、よかった……。

 

「いやあーやっぱ強いねえ爆豪君は、完膚なかったよ! もっと頑張らんといかんな私も!」

「…………………………」

「…………………………」

 

 そう言って麗日さんはブンブン腕を振り回していた。

 

 なんだろう……ちょっと空元気を出してるみたい……。

 

「……大丈夫?……無理してない麗日さん……」

「大丈夫! 意外と大丈夫!」

 

 麗日さんの握ってるケータイが鳴るが、麗日さんはそれには出ず話を続ける。

 

「デクちゃんだって先を見据えてやってるし……負けたからって負けてられんよ」

「…………そんな」

『あーーおォ!! 今、切島と鉄哲の進出結果が!!

「!」

 

 そうか! 2人は引き分けだったから、簡単な種目で勝敗を決めるって言ってた!

 

『引き分けの末、キップを勝ち取ったのは切島!! これで二回戦目進出者が揃った! つーわけで……そろそろ始めようかぁ!』

 

 ……! もう始まるのか! 

 

「じゃあ、僕行ってくるね!」

「ああごめん! 私おってデクちゃん全然準備が……! 見とるね、頑張ってね!」

「うん!」

 

 麗日さんに笑顔で返事して、僕は控室を後にした。

 

 

 次は轟君……。障害物競走や騎馬戦でも戦ったけど、純粋に一対一で戦うのは初めて……。

 

 勝てるのか……? 僕に……。

 

 ……ひっく……ひっく……

 

 ! これは……麗日さん? 泣いてるの……?

 

 ……悔しくないわけないのに……!! 『助けになれば』なんて言って……何もしてあげられない。それどころか……。

 

 

『見とるね、頑張ってね!』

 

 

 また背中を……!

 

 頑張らなきゃ……! 

 

 

「おっ」

「!!? え!!?」

「おォ、いたいた」

「エンデヴァー……!? なんでこんなところに……!」

 

 近くで見るとすごい威圧感……。でも、本当になんで……!

 

「君の活躍見せてもらった。素晴らしい『個性』だね。指を弾くだけであれ程の風圧……! パワーだけで言えばオールマイトに匹敵する『個性(ちから)』だ」

「何を……何を言い……たいんですか! 僕もう行かないと……!」

 

 知ってる!? いや……口ぶりからは知らないっぽいような……。とりあえずこの人だけには悟られちゃ……。

 

「ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある」

 

 その言葉に僕の足が止まる。

 

「君との試合はテストベッドとしてとても有益なものとなる。くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまえ」

 

 『親父は母の親族を丸め込み……母の『個性』を手に入れた』

 『記憶の中の母はいつも泣いている……。『おまえの左側が憎い』と母は俺に煮湯を浴びせた』

 

 

 こんな……。本当にエンデヴァーは……自分の子どもにオールマイトを超えさせようと……!そのために轟君のお母さんを……轟君を……!

 

 う、また気分が……!?

 

「言いたいのはそれだけだ。直前に失礼した」

 

 そう言ってエンデヴァーは踵を返すが、僕はそれに言葉を返すことがなかった。

 

「う、うぇぇ……」

 

 通路の壁にもたれかかり、また嘔吐してしまった。

 

「? ……む! どうした!? 大丈夫か君!」

「だ、大丈夫です!」

 

 僕の様子に気づいたエンデヴァーが近寄ってくるが、声を出してエンデヴァーの動きを制した。

 

「ちょっと、緊張してるだけですから……気にしないでください!」

「……だいぶ顔色が悪いが……そんな状態で焦凍と戦う気か?」

 

 その言葉には僕の様子を心配する雰囲気と……こんな状態で僕が轟君と戦うことに対する不満が感じられた。

 

「……この程度の困難、雄英生にはどうってことないです!」

「……『PLUS ULTRA』か……。あまり好きではない校訓だったな」

 

 そうか。確かエンデヴァーも雄英卒業生……いや、今はそんなことはどうでもいい。

 

「こんな僕が轟君と戦うのは不満ですか?」

「……」

「あなたには申し訳ないですけど、僕はオールマイトじゃありません……」

「? そんなものは当たりま……」

「当たり前の事ですよね……轟君もあなたじゃない」

「!」

 

 僕の言葉にエンデヴァーの視線が鋭くなる。

 

 ……これがNO.2ヒーローの威圧感……。でも、今は怯んでいられない!

 

「轟君が戦う理由は轟君自身の想いだし、僕が戦う理由も僕自身の想いです!」

「君は……一体……」

「……すみません、言葉が過ぎました。それじゃあ、僕はこれで……!」

 

 無理矢理話を終わらせて、僕はその場を後にしてスタジアムに向かった。

 

 

「あ、ようやく来たわね。……緑谷さん、顔色が悪いわよ」

 

 スタジアムに入って位置についたところでミッドナイト先生に指摘されてしまった。さっきも吐いてしまったし、はっきり言って体調は良くない……どころか最悪だ。

 

 でも、ここで休むわけにはいかない。僕に負けた心操君に報いるためにも、麗日さんやかっちゃんに応えるためにも!

 

「大丈夫です。少し緊張しているだけですから……」

「そう……。ならいいけど、続行が危険と判断したら止めるからね」

 

 ミッドナイト先生の言葉にうなづき、正面に立つ轟君に目を向ける。集中すべく閉じていた目を開いて彼も僕を見据えた。

 

「来たな」

「……」

 

 そう、ここまで来た。始まる前は自分でも半信半疑だったけど、戦いを進めていく中で他の皆に励まされたり、触発されたりして勝ち進んでこれた。

 

 間違いなく、今回の体育祭で一番の正念場。

 

 僕の全てをぶつける!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「2人まだ始まっとらん?」

「お、うら……」

「見ねば……」

「目を潰されたのか!!! 早くリカバリーガールの元へ!!」

「行ったよ。コレはアレ、違う」

「違うのか! それはそうと悔しかったな……」

 

 戻ってきた麗日の腫れた目を見て飯田が驚きの声をあげるが、麗日は理由は告げず飯田も特に追求はしなかった。

 

「今は悔恨よりこの戦いを己の糧とすべきだ」

「確かに!」

「うん。あの氷結、デクちゃんどうするんだろう……?」

 

 麗日の呟きに誰も答えず、全員が試合の始まりを固唾を飲んで待っていた。

 

 

 

 関東某所、とある雑居ビルの薄暗い部屋にその人物はいた。

 

 雄英高校襲撃事件主犯、死柄木弔。

 

 パソコンモニターに映る体育祭の映像を彼は荒れた首筋をかきながら見ていた。その後ろから1人の男が声をかける。

 

「よく見て備えろ、死柄木弔。()()は……いずれ君の障壁になるかもしれない」

「ハッ……糞みたいな話だな……」

 

 興味なさそうに言うが、それでも死柄木はモニターから目を逸らそうとはしなかった。

 

 

 

「あの2人、共にあなたを救けようと行動したそうですね」

「……うん」

 

 隣に座る13号の言葉にオールマイトはうなづいた。轟は脳無から、出久は死柄木・黒霧からオールマイトを救けようと動いた。

その時の光景がオールマイトの脳裏に浮かんでいた。

 

「何となくだが、あの2人には……何か近しいものを感じるよ」

 

 

 

「恐らく、緑谷君にとってこの試合が大一番になるだろう」

 

 サー・ナイトアイも出久と同じ見立てをしていた。本戦出場者の中で轟と勝己の力は抜きん出ており、出久が勝つためには自分の持ってる力を最大限に出しても断言出来ないものである。

 

「勝機を見出すためには……」

「サー!」

 

 出久が勝つための道筋を考えていたナイトアイに事務所のインターン生、通形が声をかけた。

 

「ミリオ、自分の方は大丈夫なのか?」

「ええ、俺たちのところ他の奴が舞台壊しちゃって。この試合後にセメントス先生に直してもらう予定なんで今は待ちです! それより、出久ちゃんはどうですか? 相手の彼、かなり強そうですけど……」

「ああ、かなり手強い。エンデヴァーの息子だからな……」

「あちゃー、これまた大変ですねー!」

「優勝を狙うならいつかは当たったはず、早いか遅いかの違いだ」

「それもそうですね……。頑張れ、出久ちゃん!」

 

 出久が慕う2人も見守る中、試合開始のゴングが鳴らされようとしていた。

 

 

『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!! まさしく両雄並び立ち今!! 緑谷!! (バーサス)! 轟!!』

 

 プレゼント・マイクの声で一瞬、会場が静まり返り……。

 

『START!!』

 

 戦いの火蓋が切られた。

 

 

「(まず氷結が来る!!)」

「(あの(パワー)を好きに撃たせるのは危ねえ。開始瞬間に……ぶつけろ!!)」

 

 ブワッ! パキパキパキパキ……!

 

「(来た! ギリギリまで引きつけて……今!)」

 

 轟の氷結が出久の当たろうとした瞬間、出久は最小限の動きで氷結を避けた。

 

『緑谷、轟の氷結を躱したーーー! 瀬呂はあっさりやられたが、ギリギリまで見極めて凍らされるのを免れたー!!』

「ひでえ……」

「まあまあ、アレを避けるって結構難しいからね……」

「(……デクの奴、長期戦に持ってくつもりか?)」

 

「(轟少年がどの程度で攻撃してくるかわからないから自損覚悟で100%でぶっ放すと思ったんだが……)」

 

「サー、出久ちゃんはどんな作戦でいくんですか?」

「……恐らくだが、轟君の攻撃を見極めながらできるだけ情報を集めて長期戦にするつもりだろう。これまでの彼の戦いぶりはその優秀な個性で圧倒的だったから情報が少ない。一か八かではなく、より勝率を高めるための選択だと思うが……」

「彼はそうさせてくれなさそうですね……」

 

 

 

「(よし、初撃は何とか躱した。でも、ここからはどうなるか……。轟君の戦いは知る限りいつも一瞬で情報が少ない。情報を……この戦いの中で()を見つけなくちゃ……! 冷静に見極めろ!)」

 

 氷結を避けた出久は轟に勝つための分析をしつつ自分の周囲の氷を5%OFAで弾き飛ばす。氷をそのままにしておけば自分が動けるスペースが狭まるからである。

 

「てっきり、個性(超パワー)でぶっ放してくると思ったが、長期戦を狙ってるのか?」

 

 グッ! パキパキパキパキ……!

 

 轟が先ほどより広範囲の氷結を出久に向けて放つ。

 

「(もう対応してきた! あんまり大きく動きたくはないけど……)」

 

 氷結が当たる寸前で今度は横に避けず、大きくジャンプして避ける。

 

 グラ…

 

「っ!(さっきの影響で着地が……!)」

「!」

 

 ダッ!

 

 着地でバランスを崩した出久を見て轟は一気に距離を詰める。轟の予想外の動きに出久は焦りを見せる。

 

「(しまった! 隙を探るつもりだったのにこっちが隙を見せちゃった!)」

「すぐ終わらせてやるよ!」

 

『轟、緑谷が着地でバランスを崩した隙をついて接近! 近接戦闘で短期決着を狙うかー!』

 

 

「(情報もまだ集まってないのに、近付かせるのはまずい! 何とか距離を!)」

「逃すかよ」

 

 体勢を立て直すため距離を取ろうとする出久に轟は一気に近付き右手を振るう。

 

「(凍らされる!)」

 

 咄嗟に右側に避けるが、その動きを読んでいた轟は左足を蹴り上げそれが出久の腹部に当たる。

 

「ぐあっ!?」

 

 動いた先でカウンター気味に当たり出久は呻くが、右手の追撃を横に飛び退くことで何とか躱した。

 

「ぐ、うげぇ……!」

 

『轟、近接戦闘でもその力を発揮! 左の蹴りがモロに入って緑谷悶絶! 早くも決着かーーー!?』

 

 腹部に受けたダメージで出久は再び嘔吐する。入場前に吐いていたので内容物はほとんどないが、若干の血が混じっていた。

 

 

「ゲッ、始まってんじゃん!」

「お! 切島二回戦進出やったな!」

「そうよ、次おめーとだ爆豪!」

「……」

「おい何とか言えよ」

「今それどころじゃねえんだよ、轟と緑谷の試合終わっちまうかもしれねえんだよ!」

「え、もう!? 轟やべえな! 強烈な範囲攻撃ポンポン出す上に近接格闘も強えんじゃ隙がねえじゃねえか……」

「ポンポンじゃねえよ、ナメンな」

「あ、爆豪一応聞いてたのね」

「どう言う意味だ?」

 

 出久の試合を見ながら、切島達に説明する。

 

「筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息切れる。『個性』だって身体能力だ。奴にも何らかの『限度』はあるハズだろ」

 

 『個性』は身体能力。その定義に例外はなく、常時発動型の個性も極端に酷使したり負荷が加われば一時的に解除されるなどの研究報告もある。

 

「(俺だって出せる威力には限度がある。だからコスチュームで許容超過の爆破をノーリスクで撃てるよう考えたわけだしな……)」

「考えりゃそりゃそっか……。じゃあ緑谷は瞬殺マンの轟に耐久戦を……」

「そのつもりだったんだろうけど、それももう時間の問題かな……」

「っていうか、爆豪も大概だったけど轟も容赦ないな、緑谷の腹に蹴りモロ入ったじゃん」

「デクちゃん……」

「う〜、もう見てられない……。緑谷も勝てないならもうギブアップしちゃえばいいのに……」

「……あいつがギブアップなんかするかよ!」

 

 耳郎が言ったギブアップの言葉に勝己が反応した。耳郎も周囲の者もまさか勝己が反応するとは思わず勝己に目を向ける。

 

「あのバカはクソナードのくせにどんなにぶちのめしても絶対諦めねえ……。そんなところがガキの頃からムカつくんだよ……!」

「お、おう……」

「そんな頃からなんだな、2人とも……」

「……だが、今はそれ以上に轟がムカつくぜ……!」

「え、轟が? っておい爆豪!?」

 

 抑えようとする霧島をどかして、勝己はスタジアムで戦う2人に向かって叫んだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 強い……強すぎる! 『個性』だけじゃない……。判断力……応用力……機動力……全ての能力が……強い!! しかも、まだ左側を使っていない……レベルが違う!

 

 元々無理だったのか……、僕が轟君に勝つなんて……。

 

 轟君を『救けたい』なんて……!

 

 

「てめえらフザケた戦いしてんじゃねえーーー!!!」

 

 へ? この声はかっちゃん!? え、どこから!?

 

 試合中にも関わらず1ーA生徒のいる観客席を見るとかっちゃんが身を乗り出して鬼の形相をしている。会場内のモニターにも映っちゃってるよ!

 

「轟てめえ! 『左側を使わずに勝つ』なんてナメたこと言って俺を、俺達をバカにしてんじゃねえ! 全力でやる気がねえならこの体育祭に出るんじゃねえ!!!」

「爆……豪……」

 

 うっわ! あんなに青筋立ててるかっちゃん久々に見た……。って轟君の話しちゃっていいのかな!? 細かい内容……家族のこととか言ってないから大丈夫だとは思うけど……。流石の轟君も面食らっちゃってるよ……。

 

「てめえもだクソデク! 半分の力しか使ってねえ万年2位のエンデヴァーのクソガキに負けてんじゃねえ!! 元々器用でも何でもねえんだから後先考えずに死ぬ気でやりやがれ!!!」

 

 ちょっと!? プロヒーローのエンデヴァーになんてことを!? 本人も一番気にしているだろうに! 周りのヒーロー達も呆然としてるよ……。

 

 ……相変わらず、無茶苦茶なこと言うんだから……。

 

『な、何というか……先ほど物凄いブーイングを浴びた爆豪が両者に激しく檄を飛ばしたようだが……』

『まあ、よくも悪くも勝負事に対して真面目というか誠実だからな。自分と決勝で戦うかもしれない奴らが腑抜けた戦いするのが我慢できないんだろ』

『なるほど! 問題児の意外な一面ってところね! さあーーー! 優勝候補の一角からの熱い叱咤激励で試合はどう動くか! 緑谷が巻き返すか! それとも轟がこのまま決めてしまうのか! 会場も上げてけーーーーー!!!!!』

 

 ウォオオオオオオオオオ!!!

 

 す、凄い……! さっきまでの熱量と全然違う……。こんなに周りに影響を与えちゃんなんて……やっぱりかっちゃんは凄いね……。

 

 

 おかげで……僕も()()が決まったよ!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「おいおい爆豪! お前何言ってんだよ!」

「言ってることめちゃくちゃだぞ!? めっちゃこっち見られてんじゃん!?」

「はあ? モブどもの視線とかクソどうでもいいわ」

「いやあれ見ろよ! エンデヴァーめっちゃこっち睨んでるぞ!」

「……はっ! 万年2位は事実だろ」 

「どんだけメンタル強いんだよ! ダイヤモンドか!」

「爆豪ちゃん、教えてくれない? 轟ちゃんは本当に半分の力で優勝すると言ってたの?」

「……」

 

 蛙吹の質問に勝己は一瞬口を噤む。それは出久と轟が話していたことを立ち聞きした内容であり、本来であれば2人以外知らないはずである。詳細な内容は轟やエンデヴァーにも関わるため、安易に話すのは憚られた。

 

「……んなのあいつの戦いぶりを見ればわかんだろ」

「戦いぶり?」

「あいつ、騎馬戦の最後以外左手使ってねえんだよ。これが舐めプじゃなくて何だってんだ!」

「騎馬戦を始める前に言っていた。『戦闘に於いて左は使わない』と。最後の方で一瞬左手を使っていたが……」

「確かに……轟さんそのようにおっしゃってましたわ」

「轟の奴、なんでそんな縛りプレイしてんだろうな?」

「……俺が知るかよ……。ただ、俺がしてえのは文句のねえ完璧な優勝だ。全力出さねえ奴がいるのは許せねえんだよ」

「……」

「なんだよ麗日」

「爆豪君って、意外に熱いんだね!」

「……うるせえ、黙ってクソデクの応援でもしてろ」

 

 1ーA生徒がざわつく中、勝己はスタジアム内の2人に再び目を向けた。

 

 

「爆豪君、何と言うか……破天荒だねえ……」

「轟君がらみとはいえ、まさかエンデヴァーにあんなこと言うとは誰も思いませんよね……」

「日本のNO.2ヒーローを万年2位呼ばわりするとは度胸があるな爆豪は!」

「まあ、それだけ真面目というか、一途なんだろうね……」

 

 13号やスナイプと話しながら、オールマイトは出久へ視線を移した。

 

「(このことで流れが変わるか……頑張れ緑谷少女!)」

 

 

「サー、彼面白いですね!」

「彼は緑谷君の幼馴染だそうだよ」

「へーそうなんですか! 見た目も言動も目立つし体育祭が終わったら引く手数多でしょうね!」

「……そうか、ミリオはさっきの試合を見ていないのか……」

「? 何かあったんですか?」

「いや、後で録画で確認するといい。なかなか見られるものではなかったからな。……さて、これで試合の流れがどう変わるか……」

「出久ちゃんがいまだに不利な状況ですが……」

 

 2人もスタジアム内の次の動きを見落とさぬよう意識を集中させた。

 

 

「爆豪……」

 

 勝己の言葉を聞いて轟は動きを止めていた。試合中に動きを止めることは致命的だったが、出久も不意をつくことはせずに体勢を整えていた。

 

「(全力出さねえこと、失礼なことだとは思ってる……。だが、俺は変えるつもりはねえ)」

 

 スタンドの勝己へ向けていた視線を出久に移す。立ち上がったはいいが、自身が与えた打撃が効いており、あとは氷結で押し切れば勝てるように見えた。

 

「(無駄に長引かせる必要もねえ)悪かったな緑谷、ありがとう。奴の顔が曇った。始まる前から体調悪かったんだろ? これで終わりにしよう」

「……」

 

 バッ! パキパキパキパキ……!

 

 出久にそう言って、とどめの氷結を放つ。

 

『ああーーー! 轟、とどめの氷結を……!!」

 

 放たれた氷結が出久に当たろうとした。

 

 ……その時!

 

「まだだよ、轟君!」

 

 グッ! ドォオオオオン!!

 

「ぐっ!」

 

 突如起こった衝撃に轟は飛ばされないように一瞬で自身の後方に氷を作り出して耐える。衝撃の起こった先を見ると……。

 

 左手中指を折りながら個性(OFA)を発動させて衝撃波を打ち出した出久の姿があった。

 

『緑谷、轟の氷結を打ち破ったーーー!!! これで勝負はわからなくなってきたぞーーー!!』

「(ここに来て制御を捨てた!? 勝つために!)」

 

 

「てめえ、正気か? そこまでしてやる意味あんのか?」

 

 出久の左手を見ながら轟は出久に問いかける。リカバリーガールに治癒してもらえるとはいえ、自分から怪我をしてまでやる理由が轟には分からなかった。

 

「……なりたいから」

「何?」

「一番になって、憧れる人に……ヒーローになりたいから!」

「……」

「君も、そうなんだろ!」

「!?」

 

 出久に問われ、轟は動揺を見せる。それに構わず出久は続ける。

 

「さっきまでは踏ん切りが付かなかったけど、僕の全力をぶつける。君も()()でかかって来い!!!」

 

 

 試合は最高潮(クライマックス)に近づいていた。

 




えー、熱いかっちゃんが見られたと思いますw投稿者としてはエンデヴァー決して嫌いではないのですが、この世界の出久は女の子なので個性婚云々はやっぱりキツいしその張本人が目の前にいたらあんな反応になると思うんですよ。試合展開についてはあんなことがあったら万全な体調ではないと思うのであのような形になりました。ここから決着に向けてどうなるか、お楽しみに!
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