僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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続き一気に仕上げちゃいました! それではどうぞ!


第23話 二回戦!!②〜轟焦凍:オリジン〜

「君も()()でかかって来い!!!」

「……」

 

 轟は出久を見ていた。直前に一瞬動揺したがすぐに落ち着きを取り戻し、出久の現状を分析していた。

 

「(相変わらず体調は悪そうだな……。開始前からだったみたいだが、あれはそうすぐに治るもんじゃなさそうだ。あの衝撃波は厄介だが、遠距離から削って最後に近接で仕留めるか……)」

 

 バッ! パキパキパキ……!

 

 そう判断した轟はすぐさま氷結を放つ。

 

「(来た!! OFA100%……!)SMASH!!」

 

 グッ! ドォオオオオオン!!

 

 対する出久は左手人差し指を折りながら衝撃波を放ち、氷結を相殺する。

 

 ブワァ!

 

「うわ寒……!!」

「あいつら、どっちもやべえな!」

「ケロ、この寒さはちょっと堪えるわね……」

「梅雨ちゃん大丈夫?」

「それにしても、轟さっきまで接近戦してたのにまた遠距離からの攻撃かよ」

「短期決戦に持ち込むんじゃなかったのか?」

 

 冷気と衝撃による風がスタジアム中に吹き荒れる中、1ーA生徒は試合展開を見て訝しんでいた。先ほどまでは轟が出久を翻弄し、勝利まで後もう少しのところまで来ていたが、ここに来て氷結を繰り返す単調な攻撃になっている。

 

「状況が変わったんだよ」

「どういうことだ?」

「最初デクは轟の情報を集めるため攻撃を回避しながらの長期戦を狙っていた。だが、動きが崩れた隙に轟が速攻、デクをもう一歩のとこまで追い詰めた。だが、あいつが自損覚悟の攻撃を始めた。あのパワーに迂闊に近づけなくなったんだ」

「なるほど、それじゃあ今は緑谷が考えてた長期戦の形になったわけか!」

「全く同じじゃねえはずだ。あいつも自爆攻撃はしたくなかったはずだからな」

「……つまり、今の展開は爆豪君が作ったってことになるね」

「ああ?」

「いやだって、爆豪君が2人にえ〜っと、応援? 檄? 叱咤激励? を入れてからデクちゃんが衝撃波撃つようになったから……」

「…………………………」

「「「…………………………」」」

「…………あの隙に攻撃しねえ轟が悪い……」

「責任転嫁しやがった!?」

「男らしくねえぞ爆豪!」

「てめえらやっぱデキてんだろ! リア充爆発しろ!!」

「うっせえてめえを爆破すっぞクソブドウ!!」

「君達静かにしたまえ!! クラスメイト同士が真剣に戦ってるんだぞ!!」

 

 収拾が付かなくなりかけてた状況を飯田が何とか収める。何人かが興味と疑惑の目で勝己を見るが、勝己はそれを無視してスタジアムに目を向け直した。

 

「(ここまで俺が発破かけてやったんだ! 負けたら承知しねえ!)」

 

 

 パキパキパキ……!! ドォオオオオオン!!

 

『緑谷、また破ったーーー!! だが、自損必至の攻撃、どこまで続けられるのかーーー! 一方轟もワンパターンで攻めあぐねているか!! まだまだ勝負は分からねえーーー!!!』

「(個性の制御、体育祭までの期間で3年の通形に師事してだいぶ上達したと聞いている。今は無茶苦茶やっているワケじゃなく、轟と自身の力量を分析・判断し、勝つための最善の方法を取っている。……とはいえ、いくら『治るから』と言っても自ら激痛に飛び込むのは相応の覚悟がいるもんだ。何が緑谷(あいつ)をつき動かす……?)」

 

 

「俺、サーが出久ちゃんに事務所へ来るよう誘った理由が分かりましたよ……」

「……」

「オールマイトファン同士ってのはもちろんありますけど、……出久ちゃん、オールマイトみたいですよね。怪我を厭わず、誰かのため、何かのために戦うところが」

「……ああ、そのとおり。彼女の中に……オールマイトと同じものを感じたよ。狂気的と言えるほどのものをね……」

「……この勝負どうなりますか?」

「それは私へのジョーク、というわけではなさそうだな……。勝敗はまるで分からない……が、おそらくもう少しで決着がつくだろう」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Shoto

 

 何が……あいつにここまでさせるんだ……。

 

 パキパキパキ……!! ドォオオオオオン!!

 

「ぐっ!! ……まだ…まだ!」

 

 あんなにボロボロに……指の骨折ってまで……。

 

『これでもう五回目の相殺だーーー!!! 我慢比べ、根比べはどこまで続くのかーーー!!!』

 

 あいつの左手はもう潰れた。右手の指もあと3本……。このまま行けば俺の勝ちだが……俺の方も身体がもたねえ。なら……!

 

 バッ! パキパキパキ……! ドォオオオオオン!!

 

 接近戦で凍らせる! それで終わりだ!

 

 ダッ!

 

『緑谷、またまた破っ……!? ここで轟突っ込んでいった! 完全に不意をつく形に……! っいや、緑谷も来てる!? お互いが勝負を仕掛けてきたーーー!!』

 

 何!? こいつも突っ込んできやがった! だが、この距離での氷結は避けられないだろう!

 

 ブワッ!

 

 だが、俺が振るった右腕の氷結を緑谷はギリギリで躱して懐に入り込んできた。

 

「なっ!?」

「SMASH!」

 

 ドン!!

 

「ぐはっ!!」

 

 緑谷からカウンターの右ストレートを喰らい、数メートル後方へ吹っ飛ばされる。

 

 なんだこいつのパワーは……。

 

『おおーー!!! 緑谷起死回生の一撃を入れたーーー!!! 反撃の狼煙となるかーーー!!!』

 

 ちっ! また氷結で動きを止めてから!

 

 !? こいつさらに突っ込んできて!?

 

「はああ!!」

「くそっ!」

 

 迎撃に右手で氷結を放つが、これも『読まれていたかのように』避けられ、再び右ストレートを身体に受ける。

 

「ぐうっ!!」

「っっ!!」

 

 今度は吹っ飛ばされなかった。見ると緑谷も右手の指が腫れ上がっており上手く力を伝えられなかったようだ。……この隙に!

 

「これで!」

「……はあ!」

「な!?」

 

 あえて氷結は出さずに右拳を放ち、避けたところに左足で蹴りを入れようとするが、それも読まれていて右手を奴の左手で弾かれてガラ空きの身体に三度目の攻撃を受けてぶっ飛ばされた。

 

 なんで……今になって攻撃が当たるようになったんだ!

 

「っ! 動きが鈍ってるよ轟君。『氷結』の使いすぎで身体が冷えたからじゃないかな?」

「!?」

「『個性』だって身体機能の一つだ。君自身、冷気に耐えられる限度があるんだろう……!?」

 

 ……! ……この戦いの中で気づきやがったのか……!

 

「で、それって左側の熱を使えば解決出来るもんなんじゃないの……!?」

「てめえ……!」

「皆本気でやってるんだ! もう一度言う! 全力でかかって来い!!!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「なんか、急に緑谷の攻撃が当たるようになったな」

「解説のかっちゃん、どういった理由が挙げられますか?」

「黙れアホ面! てめえで考えろ!」

「う、うぇぇい……」

「……2つの理由が考えられます」

「え!? ヤオモモわかったの?」

 

 八百万の言葉に皆の視線が集まる。雄英1年の中で4名しかいない推薦入学者、さらにクラス1位の成績の持ち主の分析がどのようなものか、すでにわかっている勝己以外の全員が八百万の説明を待っていた。

 

「1つは轟さんの個性。先ほど爆豪さんが仰っていた通り、個性も身体能力・機能の1つ。当然その限界・限度がありますわ。そして、轟さんの場合は何になるかといえば、おそらく冷気による体温の低下です」

「体温の低下?」

「ええ。通常私達の身体は体温を一定の範囲に保つようさまざまな調整機能があります。自律神経然り、ホルモン然り……。なんらかの理由でこの範囲を外れると行動に支障が出ます。病気や外気温による高温、そして……低温。轟さんの個性は強力ですが、それゆえその冷気が自身の身体に悪影響を及ぼしているのです」

「なるほど、俺らも寒いと身体の動き鈍るもんな」

「左側の熱を使えばそれも解消されると思いますが、彼がそれを使わない理由は今はわかりません」

「オッケーわかった。もう1つの理由は?」

「もう1つは緑谷さん側の理由です。彼女は試合開始後から動きに精彩を欠いていました。しかし、その後持ち直しています。先ほどお話しした轟さんの話ほど確証はありませんが、おそらく……アドレナリンの影響です」

「あどれなりん?」

「正確にはアドレナリンとノルアドレナリンの両方ですが、一般的にアドレナリンと呼ばれていますね。わかりやすい例で言うと運動時に交感神経が興奮すると分泌されるホルモンで、集中力や注意力が高まります。また、痛みなども感じにくくなるので多少怪我をしていても動くことができるのです」

「あー、なんか受験勉強でやったかも」

「ただ、あくまで感じにくくなっているだけなので、効果が切れると一気に痛みや疲労が襲いかかってきます。緑谷さんがたとえこの試合勝ったとしても次の試合は……」

「あいつ、なんでそこまでして……」

「デクちゃん……」

「……」

 

 八百万の説明を聞いて、1ーA生徒は試合場の2人へ目を向ける。何が理由で左側を使わないのか。何が理由で大怪我をしてまで戦うのか。答えがわからないまま、勝負の行方を固唾を飲んで見守るしかなかった。

 

 

「止めますか? ミッドナイト」

 

 試合場側のセメントスが通信機でミッドナイトに連絡を入れる。

 

「緑谷君、アレ『どうせ治してもらえる』からか……無茶苦茶してる。今はアドレナリンドバドバで痛みも思った程じゃないでしょう。しかしあの負傷……恐らく一度の回復(リカバリー)で全快は……たとえ彼女が勝っても次の試合はムリかもしれませんよ!?」

「…………(確かに、緑谷さんの状態は悪い。でも、ここで止めるのは彼女たちの想いに……)」

 

 戦う2人の気持ちを鑑みて、ミッドナイトは判断を決めかねていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Shoto

 

 あんなにボロボロなのに……なんで……。

 

「何でそこまで……!」

 

 バッ! パキパキ……!

 

 くそ! 冷気を使いすぎて威力が出ねえ……!

 

「期待に応えたいんだ! 笑って……応えられるような……カッコイイ(ヒーロー)()()()()()()!」

 

 ドン!

 

「ぐっ!!」

「だから全力で! やってんだ皆!」

 

 くそ……! どこにこんな力が……。

 

「君の境遇も君の()()も僕なんかに計り知れるもんじゃない……。でも……全力も出さないで1番になって完全否定なんて、フザけるなって今は思ってる!」

 

 

 『立て! こんなもので倒れていてはオールマイトどころか雑魚(ヴィラン)にすら……』

 『やめて下さい! まだ五つですよ……』

 『もう五つだ! 邪魔するな!!』

 

 くっ! 身体が……!

 

「だから……僕が勝つ!! 君を超えてっ!!」

 

 ドッ!

 

「ぐあっ!」

 

『緑谷、怒涛の攻撃!! このまま逆転勝利をモノにできるかーーー!!!』

 

 

 

 『お母さん……私もうダメなの……。焦凍の……あの子の左側が時折とても醜く思えてしまうの……。私……もう育てられない、育てちゃダメなの……』

 『お……母さん……?』

 『……!』

 

 ……俺は……。

 

 『お母さんは……?』

 『おまえに危害を加えたので病院に入れた。全く……大事な時だと言うのに……』

 『…………おまえのせいだ……!』

 

 俺は親父(こいつ)を……!

 

「親父を……」

「君の! 力じゃないか!!」

「!?」

 

 『嫌だよお母さん……。僕……お父さんみたいになりたくない。お母さんをいじめる人になんてなりたくない』

 『……でも、ヒーローにはなりたいんでしょ?』

 『……うん。父さんが嫌いな……オールマイトみたいになりたい……』

 『まあ……。ふふふ、いいのよ。おまえは血に囚われることなんかない。なりたい自分になっていいんだよ……』

 

 

 ……お母さん。

 

 いつの間にか忘れてしまった……あの日の想い。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 ブワッ! ゴオオオ!!

 

『!? これは……!?』

 

 突如として発せられる熱と光。発生源は轟の左側。

 

 ついに轟が左側の個性(ちから)を解き放った。

 

 

「使った……! 戦闘に於いて使わないと言っていた左側を……!」

「熱やば! デクちゃん大丈夫なんこれ!?」

「…………デク……!」

 

 

「(緑谷少女……君は、轟少年を救おうと……!?)」

 

 

「まさか、これほどのモノとは……」

「サー、こいつはやばいですね……」

「ああ……いよいよ決着の時だ……」

 

 

「あつっ!」

「勝ちてえくせに……ちくしょう……敵に塩送るなんてどっちがフザけてるって話だ……」

 

 高温の炎に出久は一旦距離を取る。そして、改めて正面を見ると左側に高温の炎を纏った轟が立っていた。

 

「…………!」

「俺だって……ヒーローに……!!」

 

 その姿は彼の父親『フレイムヒーロー』エンデヴァーを彷彿とさせた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 これは……これほどの個性(ちから)だなんて……!

 

 

「焦凍ォオオオ!!!」

 

 へ!? エンデヴァー!?

 

「やっと己を受け入れたか!! そうだ!! 良いぞ!! ここからがお前の始まり!! 俺の血をもって俺を超えて行き……俺の野望をお前が果たせ!!」

 

 ……これは……何というか、思ったよりエンデヴァーって親バカなんだね……。

 

『エンデヴァーさん、急に『激励』……? 親バカなのね、付き合いねーから意外だわ』

 

 あ、マイク先生と被った。

 

 って今は目の前の轟君に集中しなくちゃ! 今までの彼と全く違うぞ!

 

 それにしても……。

 

「凄……」

 

 やっぱり他の人の凄い個性を見るのって……楽しい! 試合中じゃなければメモ取りまくってるよ!

 

「何笑ってるんだよ……」

「!」

 

 轟君にまで指摘されちゃった。さっきも集中しなきゃって思ったのに……。悪い癖だな……。

 

「その怪我で……この状況で……イカれてるよ、お前も爆豪も……」

 

 ! 轟君の目つきが変わった! いよいよ……ここで決まる!

 

「どうなっても知らねえぞ」

 

 望むところだよ!!

 

 バッ! パキパキパキ……! ボボボボボ……!

 バッ! ドンッ!

 

「ミッドナイト! さすがにこれ以上はもう!」

「彼女の身がもたない……!」

 

 ズッ! ファッ!

 

 

 

 ぐっ!? 足が折れた! でも、できるだけ近くで!!

 

「緑谷……」

 

 轟君! 何か言ってるけど……!

 

「ありったけを……全力でかかって来い!!!」

「ありがとな」

 

 カッ! ドォオオオオオオオオン!!!!! 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

ゴオオオオオオオオ!!!

 

「うわぁ!?」

「何コレェェ!!!」

「っ峰田!?」

「あいつらマジなんなんだ!?」

「デクちゃん!?」

「轟君!?」

「……!」

 

 

 出久の衝撃波と轟の炎がぶつかり、先ほどまでとは比べ物にならない風……爆風が吹き荒れた。埃だけでなくコンクリートの破片や瓦礫までが飛んでいき、スタジアム中央はまだ目視できないほど煙で覆われていた。

 

「威力が大きけりゃ良いってもんじゃないけど……すごいな……」

 

 

『何今の……おまえのクラス何なの……』

『散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ』

『それで爆風てどんだけ高熱だよ! ったく何も見えねー! オイこれ勝負はどうなって……ミッドナイトさんどうなってますか!?』

「っ〜〜〜……!」

 

 いまだに状況がわからないためプレゼント・マイクはミッドナイトに問いかける。ミッドナイトも爆風に吹き飛ばされていたが、すぐさま起きて確認する。

 

 

「……! 緑谷さん……場外! 轟君三回戦進出!! ……早く担架ロボを!」

 

 ワァアアアアアアアア!!!

 

 

 勝敗は決した。爆風によって出久は場外に飛ばされ、スタジアムの壁に叩きつけられていた。轟は自身の背中を後方を氷で押さえておりかろうじて吹き飛ばされずに済んでいた。

 

 

「緑谷の奴、煽っといてやられちまったよ……」

「策があったわけでもなく、ただ挑発しただけ?」

「轟に勝ちたかったのか負けたかったのか……」

「何にせよ、恐ろしいパワーだぜありゃ……」

「いや、轟の攻撃を躱す動きもなかなかだった」

「だが、攻撃のたびに怪我をするのは……」

「気迫は買う」

「騎馬戦までは面白い奴だと思ったんだがなァ」

 

 戦いを見ていたプロヒーローはすぐさま出久について評価を始めていた。賛否両論、特に不安定さを指摘する声が多かったが、注目されたことには変わりなかった。

 

 

「デクちゃん大丈夫かな!?」

「すぐにリカバリーガールの元へ行こう!」

「私も行く!」

「私も行くわお茶子ちゃん」

「お、俺も行くよ!」

「……峰田ちゃん、変なことしちゃダメよ」

「しねえよ! 俺を何だと思ってるんだ!」

 

 飯田、麗日、蛙炊、峰田が救護室に向かうが、勝己はそれに目を向けずいまだスタジアム中央を見ていた。

 

「行かなくて良いのか爆豪……」

「ああ!? なんで俺がクソデクんとこに行くんだよ!?」

「いや、あんだけ応援しておいて声かけないって……」

「うっせえ、負けたやつにかける言葉なんてねえよ」

「かー! 厳しいこと言うねー!」

「だが、負けた直後に言われると辛いのも事実だ」

「そうだね、今はお茶子たちが行ってるからまあ大丈夫でしょ」

「…………負けてんじゃねえよ、バカが……」

 

 勝己の小さな呟きに気付くクラスメイトはいなかった。

 

 

「…………」

「『邪魔だ』とは言わんのか」

 

 試合後、控室へ引き返す通路でエンデヴァーは轟を待っていた。上半身の服が千切れるほどの衝撃を受けていたが、思ったほどダメージはなく、また試合が始まる前の険しい表情はだいぶ薄らいでいた。

 

「『炎熱(ひだり)』の操作(コントロール)……ベタ踏みでまだまだ危なっかしいもんだが、子どもじみた駄々を捨ててようやくお前は完璧な『俺の上位互換』となった!」

 

 そう語るエンデヴァーの言葉からは嬉しさが滲み出ていた。

 

「卒業後は俺の元へ来い!! 俺が覇道を歩ませてやる!」

「捨てられるわけねえだろう」

「!」

 

 水を差すように轟がエンデヴァーの言葉を遮る。

 

「そんな簡単に覆るわけねえよ……。ただ、あの時あの一瞬は……お前を忘れた」

 

 さまざまな想いがよぎるのか、自分の左手を見ながら、一つ一つ言葉を選ぶように話す。そして、エンデヴァーを一瞥し、そのまますれ違って奥へと歩き出した。

 

「それが良いのか悪ィのか、正しいことなのか……少し……考える」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

「右手の粉砕骨折。もうコレ、キレイに元通りとは行かないよ。破片が関節に残らないよう摘出しないと……治癒はその後だ」

 

 気絶していた僕は救護室で目を覚まして、リカバリーガールから怪我の説明を受けた。指先でのOFA100%に加えて腕全体でのOFA100%はかなりのダメージになったみたいだ。

 

「憧れでこうまで身を滅ぼす子を、発破かけて焚きつけて……嫌だよあたしゃあ……。やりすぎだ、あんたもこの子も……。アンタこれを誉めちゃいけないよ」

 

 リカバリーガールが僕とオールマイトに厳しく忠告する。自分でもわかってる。こんな無茶を繰り返すなんて、どうかしてる……。

 

 それでも……。

 

 バンッ!!!

 

「「「デ緑ク谷くくん!!!」」

 

 ドアが大きく開かれると麗日さん達が救護室に入ってきた。

 

「皆……次の試合……は……」

「ビックリした……」

「? えーっと、初めまして……。その……急にすみません、心配できました」

「ステージ大崩壊の為、しばらく大補修タイムだそうだ」

 

 大崩壊……大補修……そっか。そんなに壊しちゃったか……。

 

「怖かったぜ緑谷ぁ。あれじゃプロも欲しがんねーよ」

「塩塗り込んでくスタイル感心しないわ」

「でもそうじゃんか」

 

 峰田君……蛙炊さんも……僕を心配してくれて……。

 

「うるさいよホラ! 心配するのは良いがこれから手術さね」

「「「ええ!? シュジュツーー!!?」」」

 

 『手術』と言う単語にビビる皆をリカバリーガールが部屋から追い出した。

 

 手術……か? 痛いのは……やっぱり嫌だな……。……お母さんにまた心配かけちゃったな……。っ……! 時間が経ったら痛みが……!

 

 

 『君が来た! ってことを世の中に知らしめてほしい!!』

 

「すみません……」

「……」

 

 痛みと……それ以外の何かで涙が溢れてくる。

 

「果たせなかった……。黙っていれば…… 轟君にあんなこと言っておいて僕は……」

「…………君は彼に何かもたらそうとした」

 

 オールマイトが言葉を選んでくれているのがわかる。でも……。

 

「……確かに……轟君……悲しすぎて……余計なお世話を考えてしまいました……。でも違うんです……。それ以上にあの時、僕はただ……」

 

 『クソ親父の『個性』なんざなくたって……いや……使わず『一番になる』ことで奴を完全否定する』

 

「悔しかった。周りも先も……見えなくなってた……ごめんなさい……」

「…………」

 

 こぼれ落ちた涙は止まることなく流れていく。あの時、あれ以外にやりようがあったのかもしれないし、または何をしても変わらなかったかもしれない。

 

 それでも……何かをせずにはいられなかった……。

 

「確かに、残念な結果だった。馬鹿をしたと言われても、仕方のない結果だ……」

「……っ!」

 

 オールマイトの言葉に胸が締め付けられる。僕がしたことは無駄だったのか……?

 

「でもな……余計なお世話ってのはヒーローの本質でもある」

「…………っ!!」

 

 

 コンコン…

 

「ん? また誰か来たのかい? ……今からこの子はしゅじゅ……おや、あんたかい?」

「……よお婆さん、運良くまた会ったな……」

「おやおや、覚えててくれたかい?」

 

 ? また誰か来たのかな? リカバリーガールとやけに親しげな感じに聞こえるけど……。

 

「緑谷、彼氏が来たよ」

 

 カレシ? そんな名前の生徒いたかな?

 

「婆さん、俺はこいつの彼氏でも何でもねえんだよ!」

「おや、そうなのかい? 私ゃてっきり……」

「かっちゃん!!?」

「うっせえ黙れ!」

 

 何でかっちゃんが来てるの!? っていうか何で僕怒鳴られてるの!?

 

「フンッ! ……アンタ誰だ?」

「わ、私はその……救護室のスタッフだよ、リカバリーガールの手伝いさ!」

「……そうは見えねえな」

 

 ヤバい! トゥルーフォームだからまだ気づかれてないけど、オールマイトってバレたらまずい!

 

「……まあ、別にいいわ。……負けてどんな顔してるか見に来たら、昔と変わらず泣いてやがる。相変わらずガキだな……」

「っ! そんな言い方しなくたって!」

「はっ! 負け犬の遠吠えなんか全然何とも思わねえわ」

「っ……!」

「あの野郎が舐めプしてる間に全力でボコれば良かったんだよ。それをしなかったてめえのミスだ」

「…………」

「てめえの弱さを棚に上げてメソメソ泣いてんじゃねえ。泣くぐらいだったら血ヘド吐いてでも勝ちやがれ!」

 

 ……悔しいけど、かっちゃんは正しい。あの場に立ったら死に物狂いで勝たなきゃいけなかったんだ……。

 

「負け犬はそこで俺が優勝するのを指咥えて見てな!」

 

 そう吐き捨て、乱暴にドアを開けてかっちゃんは救護室を出て行った……。

 

 

「何というか……だいぶ強烈だね……彼」

「ありゃただ口の悪い捻くれたガキだよ。全く素直じゃないねえ……」

 

 オールマイトもリカバリーガールも呆れてる。幼馴染の僕には見慣れた光景だけど。…それにしても素直じゃないってどういうことだろ?

 

「さて、それじゃあ手術を始めるとするかね!」

「その……お手柔らかにお願いします……できれば痛くない方法で」

「おや、麻酔ありだとあんたこの後の試合全部見れないけどそれで良いのかい?」

「…………麻酔なしでお願いします……」

 

 

 こうして、僕の初の雄英体育祭は『ベスト8』という成績で終わった。




えー、だいぶ長くなりました(想定の倍以上w)あんまり轟がオリジンしてる感じがしませんね。いろいろ詰め込み過ぎちゃうのは悪い癖ですが、そこは勢いということでご了承くださいw一応出久の試合は終わりましたが、まだまだ体育祭は続くので今後もよろしくお願い致します♪
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