僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

31 / 81
 少し遅れましたが第24話です! それではどうぞ!


第24話 熱戦続々! 出揃うファイナリスト!!

Side:Izuku

 

「チユーーー!!!」

 

 リカバリーガールによる右手の治癒が完了した。一応の情けで治癒前の事前手術は局所麻酔をしてもらった。

 

「とりあえず歩けるくらいには治癒を進めたよ」

「ありがとうございます……」

 

 何回も味わってきた治癒後特有の疲労感を感じながら、治癒を受けた右手に目をやる。

 

 ……歪な形になってしまった右手。

 

()()は短期間で酷使しまくった報いね」

「……」

「雄英ヒーロー科に来ている以上その辺りは多少覚悟はしていると思うが……それでも自分の身体を粗末に扱うのは感心しないよ……。今どき『結婚』を女の幸せと言うつもりはないけど、それでも若い女の子がボロボロになるのは心苦しいよ……」

「……」

 

 リカバリーガールの言葉でテレビで雄英体育祭を観ていたであろうお母さんを思い出す。ヒーローへの進路を応援してくれているけど、戦闘訓練や襲撃された時みたいに……怪我をする度に辛そうな顔をしていた。

 

「こういう怪我は今後もう治癒しない」

「「!」」

「こういう破滅的な方法じゃなくて、この子のやれる別の方法を模索しなさい」

 

 

「方法か」

「……っ」

 

 治癒後の影響でフラフラしながらオールマイトと2人で通路を歩く。先ほどのリカバリーガールの忠告が僕達に重くのしかかる。確かに今回の怪我はいろいろと感情的になって無茶をしてしまった。こうならないようもっと強くならないといけない……。胸を張って、オールマイトの後継者と言えるくらいに……。

 

 『オールマイトの後継者』

 

 その言葉に足を止める。

 

「どうした緑谷少女?」

「オールマイト……雄英の先生になったのは……元々後継を探す為だったんですよね?」

 

 そこで今日体育祭を戦いながら……観戦しながら感じたことをオールマイトに話していく。

 

「今回……雄英(ここ)で本気で全力で挑んで……皆譲れない強い思いがあるのを感じました」

 

 かっちゃん、轟君、飯田君、麗日さん……発目さんや心操君のようなヒーロー科以外の生徒も自分の夢や叶えたいことの為に必死で頑張っているのがわかった。

 

「それで僕……」

「『後継になるべき人間が他にいるんじゃ?』って?」

「………………ハイ………」

 

 そのこと自体は何も今日初めて思ったことじゃない。雄英の入試を受けた時、授業を受けた時にも感じていたことだ。でも、今日は他の人の個性だけじゃなくて、ヒーローにかける思いも肌で感じた。僕よりも……ワン・フォー・オールを受け継ぐべき人がいるかもしれない。そう……思ってしまっていた……。

 

「…………確かに()()は素晴らしいヒーローの卵達ばかりだ。ワン・フォー・オールは力の結晶……。『個性』あるもの……例えば轟少年が引き継げば半冷半熱の上超パワーを持ったスーパーヒーローになるだろう」

「じゃあ……「けどな……」

 

 言葉を続けようとしたらオールマイトに遮られた。何で!? オールマイトも他に強い個性を持った人に引き継ぐのがいいってわかってるのに!?

 

「私も『無個性』だったんだぜ」

「……え?」

 

 なん……だって……? オールマイトが……NO.1ヒーローが無個性だった?

 

「君の世代程じゃないが、『珍しい』部類だったよ。先代(マスター)は『個性』持ちだったが、それでも私を信じ育て上げてくれた」

「そんな話一度も……!」

「聞かれなかったからね。聞かれると思ってたのに!」

「オールマイトも……『無個性』だった……!?」

「Yeah!」

 

 オールマイトも元々無個性で……それをオールマイトの先代から受け継いで鍛えて……NO.1ヒーローまで上り詰めたってこと!? 今まで明かされたことのないことなんだろうけど、それでも信じられない!

 

「最初はかつての自分と重ねていたよ……。しかし、君は私の想像を何度も超えてきた。君に()()導き出せないものがあると私は思ってるぞ」

 

 こんな……こんな風に思ってくれて、信じてくれてたなんて! それなのに僕は、他にワン・フォー・オールを受け継ぐべき人がいるなんて!

 

「……すみません……!」

「負けた直後だから気落ちしているとは思う。だが、まだまだ始まったばかりだ。これから頑張って行こう。あと君、まだ体育祭は終わってないぞ。しっかり見届けて来な」

「っはい!」

 

 そうだ! オールマイトが僕を信じて選んでくれたんだ! 僕がオールマイトを信じなくてどうする! もっともっと頑張ってならなくちゃ、OFAの立派な後継者に!

 

 でも、あんまり大怪我しないように……。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

『カァウゥンタァ〜〜〜〜〜!!! 切島、爆破をモロともせず打ち返していくーーー!!!』

 

 

「切島君とかっちゃん……! ってことは飯田君対塩崎さん、芦戸さん対常闇君は……ああ、やっぱり見たかった」

 

 出久が手術・治癒を受けている間に試合は順調に進んでおり、二回戦最後の切島対勝己が今スタジアムで行われていた。

 

「(よろけもしねえ。さすがに固ぇだけじゃねえな)」

「効かねーっての爆発さん太郎があ!!」

 

 試合の流れは切島が優勢だった。硬化の個性で全身を固めて勝己の攻撃を防ぎそのまま攻撃を繰り出していくという強引な戦術だったが、硬化は強力で勝己の爆破でもビクともせず度々繰り出されるカウンターに被弾して勝己も攻めあぐねている状況だった。

 

「切島ァ、アゴだアゴォ!!!」

「昨日の敵は今日の友」

 

 

『切島の猛攻になかなか手が出せない爆豪!! このまま切島が押し切るのかーーー!!!』

「オラアアア!! 早よ倒れろ!!」

「クソが! 調子に乗んなよ!」

 

 

「切島君が押してる……。でも、かっちゃんがこのまま負けるとは思えない。おそらく……」

「緑谷君!」

「あ、飯田君」

 

 スタジアムの階段入り口で観戦していた出久は飯田に声をかけられた。飯田はどこかに電話をかけていたらしく、持っていたスマホをポケットにしまいながら歩いてきた。

 

「手術、無事成功したんだな! 良かった!」

「うん、ありがとう。手術自体は関節から骨の破片を取り出すものだからそこまで大掛かりなものじゃなかったよ」

「そ、そうなのか? 聞くだけで痛くなってくるのだが、何にせよ良かった」

 

 出久の説明に飯田は顔を引き攣らせながらそう言った。出久は飯田の表情に気づかないまま、気になっていた試合内容を尋ねた。

 

「それより、どうやって塩崎さんのイバラに勝ったの!? あの個性はかなり強力なのに!?」

「機動力に勝るモノなし! 開幕『レシプロバースト』で背を取り場外さ。というか、見逃した分は後にVTRで確認できるぞ」

「なるほど、自分が相手より有利・勝ってる部分で勝負するのか……。となると轟君との試合はやっぱり僕が速攻を仕掛けた方が良かったのかも……」

「負けた直後なのにもう分析なんて緑谷君はすごいな……」

「いや、これはもう趣味みたいなものだから……」

「…………ベスト4まで来たよ」

「……」

「君と轟君との戦い、糧にさせてもらうぞ」

「……うん。飯田君の活躍、お兄さん(インゲニウム)も見てるかな」

「さっき電話したんだが……」

「あ、したんだ。だからさっきスマホ持ってたんだね」

「仕事中だったよ。でも逆に良かった。ここまで来たらNO.1で報告しないとな」

 

『ああーーー!! 効いた!!?』

 

プレゼント・マイクの声で2人の視線がスタジアムに移る。見ると今まで勝己の攻撃に耐えていた切島がダメージを受けたようで呻いててぐらついていた。

 

「って……!!」

「てめぇ、全身ガチガチに気張り()()()んだろ。その状態で速攻仕掛けてちゃ、いずれどっかで()()わ」

 

 BOOOM!!!

 

「くっ……!!?」

「オラァ!!」

 

 BBBBBBB……!!

 

「死ねえ!!!」

 

 BOOOM!!!

 

「まァ、俺と持久戦やらねえってのもわかるけどな」

 

『爆豪、エゲツない絨毯爆撃で三回戦進出!! これでベスト4が出揃った!!』

 

 切島の硬化の限度を見抜いた勝己は一瞬の隙をついて連続攻撃し、切島を倒した。切島としては途中までは上手くいっていたが、速攻で仕留めきれなかったことが敗因となった。

 

「……よし、行ってくる」

「うん、頑張って飯田君」

 

 二回戦が終わったので間も無く次の試合が案内される。飯田は出久と別れて控室へと向かった。

 

 

 

 

『準決! サクサク行くぜ! お互いヒーロー家出身のエリート対決だ! 飯田天哉! (バーサス)! 轟焦凍!』

 

 準決勝第一試合が始まる。

 飯田と轟。お互いが対戦相手を見据える。どちらも第一線で活躍するプロヒーローを家族に持っている。しかし、両者が彼らに抱く思いは全く異なるものだった。

 

 尊敬・憧れ・憎悪・敵視……。

 

 その事情を知るものはほとんどいないが、彼らの対決はある意味必然であったかもしれない。

 

『START!!!』

 

 ブアッ! パキパキパキパキ……!

 バッ!

 

「おおっ! 立ち幅跳び!!」

 

 開幕直後に轟が氷結を繰り出すが、それを想定していた飯田は立っていた位置から自身の個性を活かした跳躍で避けた。

 

「(緑谷君のような打ち消しは出来ん!! 炎も使うようになったのなら択を迫られる! ならば!!)レシプロバースト!!」

 

 DRRR……! バッ!

 

「(エンジンが止まるまでに約10秒ある! その間に……)決める!!!」

 

 着地間際に左足の蹴りを轟に見舞うが、轟もこれをしゃがんで躱す。しかし、レシプロバーストによって加速している飯田は右手地面につけそれを軸に一回転してさらに蹴りを放つ。

 

 ガンッ!

 

「っぐっ!?」

 

 

「すげえ! 速すぎだろあの蹴り!」

「だいぶ重そうなの入ったぞ!!」

 

 

 パキパキ……! バッ! ガシッ!

 

 蹴りを受けた轟は氷結を返すが、飯田はそれも避けて轟の背中を掴む。

 

「(あと8秒! 行ける! このまま場外へ投げ飛ば……)」

 

 プスン! ガクッ

 

 轟を捕まえて場外まで後わずかというところで飯田の動きが止まる。何事かと自身の足を見ると排気筒(マフラー)が氷に覆われていた。

 

「排気筒が詰まっ……)いつの間に!!!!」

「蹴りん時」

 

 パキパキパキ……!

 

 動きが止まった瞬間、轟は背中を掴まえていた飯田の左手を右手で掴み返してそのまま氷結で凍らせた。

 

「範囲攻撃ばかり見せていたから……こういう小細工は頭から抜けてたよな」

「ぐうっ……」

「警戒はしてたんだが……レシプロ。避けられねえなさすがに……」

「くっ……兄さん……」

「……」

 

「飯田君……」

 

 

『飯田、行動不能! 轟、炎を見せず決勝進出だ!』

 

 ワアアアアアア!!!

 

 プレゼント・マイクの言葉で会場が盛り上がる中、エンデヴァーは勝利した轟を厳しい目で見ていた。

 

 『少し考える』

 

「(迷っているのか……馬鹿者め)」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

東京都保須市

 

ウゥ〜〜〜〜〜

 

『こちら保須警察署、至急応援頼む!』

 

 保須市内でサイレンを鳴らしたパトカーが次々と道路を走っていく。東京都内ではあるが、新宿や渋谷ほどの煌びやかさ、猥雑さのないこの場所でこれほどのパトカーが出動するのはほとんどない。住民や近くで働く人々も何事かと不安な表情を浮かべていた。

 

 大通りから少し離れた路地裏に2人の男がいた。1人は地面に倒れており、ピクリとも動かなかった。怪我を負って大量に出血しており、その手元には彼のものであろうスマホが落ちていた。

 

 『着信履歴:天哉』

 

 もう1人の男は倒れた男を見下ろしていた。男の姿は街中にはそぐわないものだった。袖なしのシャツ、両腕を覆う包帯、黒のズボンにミリタリーブーツ。これだけならまだサバイバルゲームをする格好としてあり得るだろう。だが、それだけではなかった。鉢巻状の赤のプロテクター、目だけを覆う白布のマスク、マフラーのように巻き付けた赤い布、そして……両脇・腰・背中に携えた大小様々な刀・ナイフ類。男は明らかに()()を想定・経験した装備をしていた。

 

「名声……金……どいつもこいつもヒーロー名乗りやがって……。ハア……ハア……てめェらはヒーローなんかじゃねえ……」

 

 男は血走らせた目に常軌を逸した輝きを宿らせていた。

 

「彼だけだ……。俺を殺っていいのは、ハア〜〜……オールマイトだけだ」

 

『『ヒーロー殺し』が現れた!!』

 

 サイレンの音が近づいて来たのに気づいて、男はその場を後にした……。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「うっぜえなぁあーーーーそれ!!!」

 

 BOOM!!

 

「っ! 修羅め……!!」

 

『爆豪対常闇! 爆豪のラッシュが止まんねえ!! 常闇はここまで無敵に近い『個性』で勝ち上がってきたが、今回は防戦一辺倒!! 懐に入らせない!!」

 

「常闇何でェ!? 私達んときは超攻撃してきたのに!!」

「何かタネが……?」

 

 準決勝第二試合、勝己と常闇の試合はプレゼント・マイクのいう通り、攻める勝己に対して常闇が防戦一方になる展開となっていた。

 光が黒影(ダークシャドウ)の弱点であることを知っている生徒は1ーAの出久・麗日・口田の3人のみ、サポート科の発目を加えても4人しかいない。事情を知らない芦戸や八百万、他の観客はこの一方的な展開に首を傾げていた。

 

「爆発の光で攻撃に転じられん。相性最悪だ……」

「僕らに明かしてくれた弱点、かっちゃんにバレてなければ転機はあるよ」

「うん。ていうか、デクちゃん普通に見るんだね。怪我大丈夫?」

「うん、必要最小限だけど、リカバリガールにはちゃんと治癒してもらってるから大丈夫」

「ならいいけど……無茶はしないでね」

「ありがとう、麗日さん(それにしても……かっちゃんにバレずに攻撃に転じられるかな。その辺りかっちゃん勘がいいし……)」

 

 常闇の弱点を知る2人だが、その2人にもその後の展開は予測できなかった。

 

「チッ……!!」

「(読みが甘かったか、黒影の体力(やみ)を補充する暇がない! 疲弊を狙う気が、こいつますます機敏に……!)」

 

 繰り出す攻撃を次々に防がれる勝己はイライラを募らせるが、常闇も防御を強いられていて焦りが募る。しかも勝己の攻撃は光を伴うため、黒影とは相性最悪であるので状況が好転する見通しが立たなかった。

 

 BOM!

 

「掴め黒影……!」

 

 少しでも流れを変えるため勝己の動きを止めようとするが、疲弊している黒影の動きは鈍くあっさりと逃げられ背後を取られる。

 

『裏を取ったあ!!』

 

 常闇はすぐさま黒影を迎撃に向かわせるが、勝己はそれを待っていたかのように両手を前に構えた。

 

閃光弾(スタングレネード)!!」

 

 カッ! BOOOM!!!

 

 勝己が両手で個性を発動させて強烈な光を伴った爆発と煙幕が発生する。これまでの煙幕と違って巨大であったため、なかなか煙幕は晴れなかった。

 

『煙幕ばっかだな……!! どうだどうだ!!?』

 

 BBBBBBB……!

 

 煙幕が晴れると左手で嘴を抑えられながら地面に倒された常闇と右手で爆破を準備する勝己の姿が現れた。

 

「…………知っていたのか……」

「数撃って暴いたんだバァカ! まァ……相性が悪かったな、同情するぜ。詰みだ。」

「…………まいった……」

 

「常闇君降参! 爆豪君の勝利!!」

『よって決勝は爆豪対轟に決定だあ!!!』

 

 ワアアアアアア!!!

 

「常闇君悔しいな……」

「俺常闇行くと思ったわ」

「彼も無敵ではないということか」

「何頭良く見せようとしてんのよ! 全国にアホ面晒しておいて」

「う、ウェイ……」

「光が弱点か? なるほど……爆豪(あいつ)そういうとこ突くの好きだな」

 

「おまえ、とんでもない奴にケンカ売ったな」

「いやいや、あいつ『個性』の相性、運が良いだけ」

「結局A組パラダイスだぜクッソゥ!!!」

「あんまり行きたくないパラダイスだなあれ」

 

「勝敗はともかく、今年の1年は粒揃ってるよ」

「ドラフト指名が盛り上がりそうだ」

 

 A組・B組共に決勝に勝ち上がった面々について意見を交わしていた。特に勝己は印象最悪の選手宣誓を行った上での決勝進出であり、嫉妬混じりで注目も高まっている。スカウト目的で来ていたプロヒーローも例年以上に盛り上がった体育祭を見れて数年後の彼らのプロデビューに期待を寄せていた。

 

「あの2人が……クラスでも実力はトップクラス。どうなるんだろ……」

「しっかり見てリベンジだな!」

「「うん!」」

 

 ヴヴヴヴヴヴヴ……!

 

「「うわあ! 何だ!!?」」

 

 突然の大きな音に2人が声を上げる。音と振動で飯田が若干揺れている。

 

「電話だ」

「電話か」

「そんなに振動するもん?」

「(……母さん!)すまないが、電話に出てくる」

「うん、わかった」

 

「もしもし負けてしまいました。母さん……ふがいないです……」

『違うの! その事じゃなくて……ごめんなさいね』

 

 飯田が電話に出て、試合結果を謝罪すると電話口にいる母親の様子がおかしかった。妙に慌てており、後ろから聞こえてくる音も騒々しいものだった。

 

『天哉、落ち着いて聞いて……! 天晴が……兄さんが(ヴィラン)に……!!!』

「!!!」

 

 その言葉を耳にした飯田にはスタジアムにいるはずなのにその歓声が遥か遠くに聞こえた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「おまえらは気付きもしない」

 

 保須市内では至る所でパトカーが警戒に回っているが、ヒーローを襲撃した犯人を見つけられる気配はなく、当の犯人は雑居ビル屋上の貯水タンクから街を見下ろしていた。

 

「偽善と虚栄で覆われた……ハア……歪な社会。ヒーローと呼ばれる者ども……俺が気付かせてやる……」

「探しましたよ、『ヒーロー殺し』“ステイン“」

 

 ジャッ! ドッ!

 

 突然の声にステインは動揺せず背中の刀を瞬時に抜き、声をかけた者に突き刺した。

 

「落ち着いて下さい……。我々は()()……」

「!」

 

 突き刺したはずの人物から何事もなかったよう再度声をかけられてさすがのステインも驚く。手応えはあったはず、と刺した刀の先を見るとそこに人の胴体はなく、黒いモヤ状の物体が一塊になっていた。

 

「悪名高い貴方に是非とも会いたかった。お時間少々よろしいでしょうか?」

 

 『敵連合』黒霧と『ヒーロー殺し』ステイン……、悪は着実に歩みを進めようとしていた……。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 決勝前、控室2で轟は待機していた。だが、特に神経を集中させるとか気分を盛り上げるとかそんなことはしてなく、出久と戦った時のことを思い返していた。

 

 『君の力じゃないか!!』

 

「(緑谷(あいつ)と戦うまで『考える』なんて……考えもしなかった。お母さん、俺は……)」

 

 バアン!

 

「!」

 

 静寂はあっさりと破られた、決勝の相手・爆豪勝己によって……。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Katsuki

 

 ここまで来た! 次は決勝、相手はあの轟だ。あいつの半冷半熱は厄介だが、それを真正面からぶっ潰してこその完璧な1位だ! 障害物競走や騎馬戦では遅れを取ったが、最後の最後で勝つのはこの俺だ!

 

 気合を入れて決勝前の時間を過ごすため、控室に向かう。会場を盛り上げるために時間を少し空けるとか言ってた。すぐにでも試合がしたかったが、観客が盛り上がれば俺の知名度も上がるから悪くねえ。柄にもなく興奮しながら控室のドアを蹴って入った。

 

「……お」

「あ?」

 

 決勝で当たるはずの紅白頭、轟がそこにいた。

 

「あれ!? 何でてめェがここに……! 控室……あ、ここ2の方かクソが!!」

 

 チッ! 素で間違えちまった! しかもよりによって轟に見られるとか!

 

「…………」

 

 こいつ! 興味ありません、ってか! ふざけやがって!

 

「部屋間違えたのは俺だけどよ……決勝相手にその態度はオイオイオイ……どこ見てんだよ半分野郎が!!」

 

 BOOM!!

 

 轟の目の前の机で爆発させる。それにも無反応を決め込んでる。マジでなんなんだこいつ、ムカつくぜ……!

 

「……緑谷から聞いたのか?」

「あ?」

「俺が『左側を使わずに勝つ』って言ったこと……」

「……」

 

 しまった……。ついあの時大声で言っちまったが、話聞いてたことは言ってなかったな。デクもそんなことこいつに言うわけねえしそんな時間なかっただろうし……。

 

 ……誤魔化してもしょうがねえ。

 

「……てめえがデクを連れ出してるところ見て、後を追ったんだよ。そこで聞いた、てめえとてめえの家の話もな……」

「……そうか」

「てめえの家や家族のことなんて何も言えねえし、もっと言えば知ったこっちゃねえ。だが、それを理由に全力出さねえのは我慢ならねえ! デクとの戦いでは最後使ったが、クソメガネの時は使わなかったよな。まだ、ふざけたこと考えてんのか!」

「……」

「てめえとエンデヴァーの確執なんて俺にはどうでもいい! そんなもん全部投げ捨てて、なりふり構わず全力で戦え! でねえと後でぶっ殺すぞ!!!」

「……」

「何とか言えや!」

 

 そう言って机を蹴飛ばす。ちょっとは反応してみろや!

 

「緑谷、勝手に連れ回して悪かった……」

「……は?」

「俺の個人的な因縁で呼び出しちまった。あいつすげえな。無茶苦茶やって他人が抱えてたもんブッ壊していきやがった。幼馴染なんだってな、昔からあんななのか? 緑谷は……」

 

 こいつ何言ってんだ! 何で今デクの名前が出てくんだよ!

 

「てめえ、何言って……」

「あ、そういえばあの時、エンデヴァーを『万年2位ヒーロー』って言ってくれてありがとう……。なんか胸がスッとした」

「…………はあ!?」

 

 こいつ今何言った!? 俺に『ありがとう』つったのか!? マジで何だこいつ!

 

「てめえ頭おかしいのか! この状況で俺に礼を言うとか馬鹿にしてんのか!?」

「……頭おかしいのは緑谷も爆豪もだろ?」

「ああ!?」

「対戦相手に塩送ったり、全力出すよう発破かけるなんて普通じゃねえ」

 

 ……よし、こいつここでぶっ殺す!

 

『さあ、ついに決勝!!! 決勝に進んだ1年の暴れ馬の入場だーーー!!! おめえらアゲてけーーーーー!!!』

 

 ……チッ!!! もう時間か! クソが!

 

「……ウダウダとどうでもいいんだよ! てめえの家事情も気持ちも……! どうでもいいから俺にも使ってこいや炎側(そっちがわ)! そいつを上から捩じ伏せてやる!!!」

 

 そう吐き捨てて、控室からスタジアムへ向かう。……マジで何なんだあいつ! 

 

 ……まあいい! これで心置きなくぶっ飛ばせるぜ! 見てろよクソデク! 俺がトップになるところを!!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

『さァいよいよラスト!! 雄英1年の頂点がここで決まる!!』

 

 会場中がざわついている。大会前から注目の集まっていた雄英1年A組。奇しくも決勝はA組生徒同士というものであり、どちらも今大会で目立つ活躍を見せているので、観客の期待は最高潮に達していた。

 

『決勝戦!! 轟! (バーサス)! 爆豪!』

 

 雄英体育祭、最後の戦いの幕が……。

 

『今!! START!!!!』

 

 切って落とされた……!




はい、またまた長いですねw決勝戦の組み合わせは変わらずですが、その直前は変えてみましたw 轟君の天然炸裂で流石のかっちゃんも困惑でしたねw轟君的にはかっちゃんに若干懐いてる感がありますがかっちゃんは心底ウザがってますw今後どうなるのか、要チェックです♪そして、いよいよあの方も登場して今後の流れに大きく関わっていきます。話の流れは大きく原作から外れませんが、ちょくちょく変わる部分はあるのでその辺りを注目いただければと思います。今後も応援よろしくお願い致します!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。