ボゴォ!! ゴオン!
突然、爆発とそれに伴う轟音が鳴り響いた。
「マジかよ!このご時世に馬鹿だな!」
パトロールをしていたマニュアルが険しい表情をして爆発した方向を見ている。周囲は爆発でパニックになっているが、別でパトロールをしていたヒーローが既に避難誘導を始めている。
「天哉君! ここは他のヒーローに任せて現場に行く! 走るよ!」
「はい!」
事件が起こったのならその事態収拾に努めなければならない。パトロールをしながらステインを探していた飯田もマニュアルに続こうとした。その瞬間、ふと視線を向けた先……ビルとビルの間で何かが動くのが見えた。既にマニュアルが走っていてそれに付いていかなければならないのに、それが気になり足を止めて目を凝らしてみると……。
…………!
「騒々しい……。阿呆が出たか……? 後で始末してやる……。今は……俺が為すべき事を為す」
裏路地でステインはヒーローと対峙していた。戦闘は既に終わっており、ネイティヴアメリカンを彷彿とさせるヒーローはステインに顔を掴まれ壁に押し付けられている。身体に力が入らないのか、まったく抵抗ができない状態であった。
「身体が……動かね……。クソやろうが……!! 死ね……!」
「ヒーローを名乗るなら、死際の台詞は選べ」
ヒーローの苦し紛れの声にそう返して、とどめを刺そうと刀を握った右手を動かした。
バッ! ギィィィィイン!!
動いた右手はヒーローには向かわず、背後から迫ってきた人影……飯田に向かって振るわれた。高速で向かってきたにもかかわらず寸分違わず頭に当てており、ヘルメットがなければ飯田の命はなかっただろう。
「スーツを着た子ども……何者だ?」
「ぐっ!」
「消えろ。子どもの立ち入っていい領域じゃない」
ステインの放った言葉は飯田を気遣っているようでもあった。不意打ちをカウンターで返された飯田は地面に弾き飛ばされたが、ステインから視線を外さずゆっくりと身体を起こす。
「血のように紅い巻物と全身に携帯した刃物……ヒーロー殺しステインだな! そうだな!?」
「!」
「おまえを追ってきた! こんなに早く見つかるとはな!! 僕は……」
飯田はその先の言葉を続けられなかった。ステインは飯田の眼前に刃を向け、飯田を睨みつけた。
「その目は敵討ちか? 言葉には気を付けろ。
「今は……標的、ですら……ないと言っているのか」
飯田は徐々に立ち上がるが、ステインはそれを止めず、しかし刀を向けて警戒は怠らない。
「では聞け、犯罪者! 僕は……! おまえにやられたヒーローの弟だ! 最高に立派な
飯田の脳裏には兄の姿が思い浮かんだ。真剣に仕事に取り組む姿、家族に向ける笑顔、そして……病室での憔悴した姿。
『この名……受けとってくんねえかな?』
「(授業では名乗ることはできなかった! だが……名乗るならこれしかない!)僕の名を生涯忘れるな!」
顔を上げ……飯田はステインをまっすぐ見据えた。
「インゲニウム、おまえを倒すヒーローの名だ!!」
「そうか、死ね」
怒気も怨嗟もなく……ただ殺意だけを含んだ言葉をステインは吐いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ワアアアアアア!!?
複数回の爆発によって街は既にパニックに陥っていた。一応ヒーローや警察の避難誘導はあるが、混乱した群衆の動きは簡単にコントロールできるものではなかった。
出久はその群衆の中を逆走していた。先に飛び出したグラントリノの心配もあるが、保須市で職場体験をする飯田のことが気がかりだった。
「(流れの元が騒ぎの中心だ。何で脳無みたいな奴が……。もしあれがUSJの時みたいなデタラメな力を持ってたら……グラントリノ、どころかこの街が危ない!! ここで職場体験してる飯田君だって!!!)」
出久は考えながら必死で走り続けた。『騒ぎの中心』に近づいているのか人の姿が少なくなってきている。一般人が巻き添えになる心配は減ったが、逆に自分はその危険に踏み込んでいるのかもしれない。
「(僕はどう動けばいい!!? 考えろ! どう動くのが最善だ!?)」
思考しながら走っていると知った名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「天哉くーん!!!」
「!」
声のした方を見ると多くのヒーローが敵と交戦していた。
2体の脳無と……。
「(そんな……!! なんだ……コレ……!!?)」
出久は驚愕した。脳無が2体、その内1体はUSJに襲撃した奴と似ていて、もう1体は翼を有していた。既に何人かのヒーローが打ちのめされており、戦況は芳しくないように見えた。
「何でこんな時に限ってどっか行っちゃうんだ!!」
「(飯田君を呼んでた声!!ノーマルヒーロー、飯田君の訪問先!!)」
「ちょっと君! 邪魔だよ! 下がってて!!
「わっ! すいっすいません!」
女性ヒーローに押されて慌てて後ろへ下がる。下がりながら周囲を見渡すが、マニュアルが言っていたように飯田の姿が見えない。
「(どこかに行った……? あの真面目な飯田君が……!? おかしいよ、こんな大事件前にして……!)」
そこまで考えて、出久の頭の中で先ほど感じた予感と今までに見た現状が少しづつピースのようにハマっていく。
「(保須市……脳無……らしき奴ら……飯田君……保須……ヒーロー殺し……!)」
ドクン!
「(まさか……! でも! 探さなきゃ!)」
出久は自分が導いた『答え』に半信半疑だったが、すぐ頭を切り替え反転してその場から駆け出した。
「くっそ、何なんだこいつらは……!!」
「『ザ・フライ』がやられた!! オイどうなってんだ!! 何が目的だ、この化け物共は!!」
2体の脳無にヒーローは徐々に押されつつあった。
「やっぱ……良いね、脳無」
ステインを見送った貯水タンクの上で死柄木は保須市の惨状を眺めていた。その声は上機嫌で、まるで新しく手に入れたゲームキャラの性能を確認するような口ぶりだった。
「あなたは参戦なさらないので?」
「馬鹿か、怪我してんだよ。だから奴らを持ってきたんだ」
黒霧にそう答えながら、脳無を持ってくるまでのやりとりを思い出した。
『先生……脳無は何体出来てるんだ?』
『雄英襲撃時ほどの奴はいないが、6体まで動作確認完了してるよ』
『よこせ』
『何故?』
『ヒーロー殺しが気に入らないからだよ。気に入らないモノはブッ壊して良いんだろ、先生!』
『………………3体までだ。……これを機に学んでくるといい』
「ハハハハ……夜が開ければ世間はあんたの事なんか忘れてるぜ、ヒーロー殺し」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Tenya
「あああああ!!!」
ブオン!! スカッ!
「なっ!?」
避けられた!? どこに……!?
「インゲニウム……ハァ……兄弟か……ハァ……」
上!?
「奴は伝聞の為に生かした。おまえは……」
ヒュッ! ザクッ!
「あ“っ!?」
蹴られた!? でも、この痛みは……靴に棘が……!
「ぐ……!!」
体勢を整えなければ……!
フッ……ガン!
「ぐあ!?」
「弱いな」
くっ……! 押さえつけられ……!
ザクッ!
「あ“あ“っ!!」
ぐっ! 左腕が!! くそっ!!
「おまえも、おまえの兄も弱い……。偽物だからだ」
刺された腕と踏みつけられた頭が痛むが、ステインの放った言葉に怒りが増す!
弱い? 偽物だと……? 兄さんが! 偽物のはずがない!!
「黙れ悪党……!! 脊髄損傷で下半身麻痺だそうだ……! もうヒーロー活動は適わないそうだ!!」
あんなに……絶望した兄は見たことがなかった……!
「兄さんは多くの人を救け……導いてきた、立派なヒーローなんだ!!」
『天晴! 父は誇り高いぞ! その若さで独立し多くの
『いやーー、従えるっつか……逆だよ父さん。俺一人じゃまだ何も出来ないからさ、支えてもらってんの』
幼い頃、食卓での父と兄の会話……。
『その分俺もしっかり働いて彼らに返さねぇと。俺はあんまセンスとか優れたもんないけどさ……ヒーローなんて肩書き背負ってんだもん。自分の働きがたくさんの人間の為になるのは……嬉しいよ』
若くして事務所の代表としての責任を背負い、謙虚に戦う。
そんな兄さんが憧れだった!
「僕のヒーローだ……。僕に夢を抱かせてくれたヒーローだったんだ!!!」
そんな兄さんを! あんな風に傷つけて!! 憎い!!!
「殺してやる!!!」
「あいつをまず救けろよ」
あいつ……?
ヒーロー殺しが示す先には奴にやられたヒーロー……まだ息はあるのか……!?
「自らを顧みず他を救い出せ。己の為に力を振るうな。目先の憎しみに捉われ
こいつ……!! 知ったような口を……!!
「だから死ぬんだ」
ズボッ
ぐあっ……! 左腕の刀が……、だがこれで左腕が動かせ……!
……ゾワッ!
「ぐっ……!!」
何だ!? 体が……動かない……!?
「じゃあな、正しき社会への供物」
「黙れ……黙れ……!!!」
『天哉が憧れるっつーことは俺、すげえヒーローなのかもな!! ハハ!』
くそっ! ここで死ぬのか!? いや、今は死ぬことよりも兄さんの仇を討てないことが何よりも悔しい!!
「何を言ったっておまえは! 兄を傷つけた犯罪者だ!!!」
僕の言葉を意に介さず刀が突き立てられる気配がする。
これまでか!?
ヒュッ! ガッ!
「!?」
「はあ!!」
ドガッ!!
な!? 何が起こった!? 誰かが来てくれたのか!?
視線を上に向けると、数日前に駅で別れて以来見ていなかった、クラスで最も仲のいいクラスメイトの1人……。
「緑谷……君……!?」
「救けに来たよ、飯田君!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Izuku
考えすぎかもしれない! 確証も全くない!! でも、だからって動かずにはいられない!! ヒーロー殺しが現れた街で脳無みたいな奴が暴れてる。てことはヒーロー殺しもこの街にいるんじゃないのか!?
さっき感じた……この街で恐らく僕だけが考えられる不安……。
『
雄英を襲撃した敵連合について、主犯格の死柄木や黒霧の名前は出ているけど、何故だか知らないけど脳無についてはそこまで目立ってない。敵連合とヒーロー殺し、この二つを結びつけて考えられるのはこの街には現時点で僕だけ……。脳無はさっき見たけど、ヒーロー殺しはまだ見ていない。
もしかして飯田君が現場にいないのは……ヒーロー殺しを
とにかく人目につかない路地裏を片っ端から探して行かないと!
……………!!! いた!!
あれがヒーロー殺し!! 飯田君が危ない! 間に合え!
OFAフルカウル5%!
ヒュッ! ガッ!
「!?」
「はあ!!」
ドガッ!!
「緑谷……君……!?」
「救けに来たよ、飯田君!」
よかった、間に合った!
「(こいつ……死柄木の持っていた写真の……)」
「緑谷君!? 何故君がここに……!?」
「ワイドショーでやってた……! ヒーロー殺し被害者の6割が人気のない街の死角で発見されてる。だから……騒ぎの中心からノーマルヒーロー事務所辺りの路地裏を虱潰しに探してきた!」
何とか間に合ったけど、当てた一撃が浅かったからまた襲ってくる……! 僕達だけじゃ厳しい、早くこの場から逃げなきゃ……!
「動ける!? 大通りに出よう、プロの応援が必要だ!」
「身体を動かせない……! 斬りつけられてから……恐らく奴の『個性』……」
「身体が!? それも推察されてた通りだ……。斬るのが発動条件ってことかな……?」
飯田君を抱えて逃げる? 飯田君の方が身体が大きいけど、OFAフルカウルなら何とか……。
……!! もう1人……!? 飯田君だけならまだ担いで逃げられたかもしれないのに……!
「緑谷君、手を……出すな」
「え……?」
「君は関係ないだろ!!」
「何……言ってるの……?」
こんな! 死ぬかもしれない状況なのに!!
「仲間が『救けに来た』、良い台詞じゃないか」
「!」
ヒーロー殺し……もちろん実物を見るのは初めてだけど……USJで対峙した連中とは纏う雰囲気が違う。
「だが俺にはこいつらを殺す義務がある。ぶつかり合えば当然……弱い方が淘汰されるわけだが……。さァ、どうする?」
ゾワッ!
何だ、この悪寒は……!?
『そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの』
USJの連中とは違う……確固とした意志を持つ殺人者の眼……!
何の確証もない推測でも何でも……やっぱりプロを説得して一緒に来てもらうべきだった。身動き取れない2人を守りつつ僕1人で
……できるのか、僕に……? いや、できるのかじゃない! やるんだ!
ヒーロー殺しから視線を逸らさず、身体の後ろでスマホを操作する。現在の位置情報をクラス全員に一斉送信して……。運任せだけど……誰かがこれに気づいてくれれば……!
「やめろ!! 逃げろ!! 言ったろ!! 君には関係ないんだから!」
「そんなこと言ったらヒーローは何も出来ないじゃないか!」
飯田君、やっぱり……お兄さんの……! でも、今はそれどころじゃない!
「い……言いたいことは色々あるけど……後にする……!」
ヒーロー殺し……何人ものヒーローを殺してきた殺人者……。怖く手足も震えるけど、やるしかない!
『いいかい? 怖い時、不安な時こそ笑っちまって臨むんだ!!』
オールマイト、やってみます……!
「オールマイトが言ってたんだ……余計なお世話はヒーローの本質なんだって」
ニッと笑顔を……恐怖で引き攣ってる笑顔を作って、ヒーロー殺しに向かって構える。
「ハァ……」
その瞬間、ヒーロー殺しは満面の笑みを浮かべた。その笑顔は怖かったけど捕食者が獲物を見つけた時のような残忍なものではなく、なぜか……新しいおもちゃを見つけた時の子供のような純粋さが感じられた。
よし、行くぞ!
ダッ!
武器を持つ相手に先手を取らせたらダメだ! 僕から動いて撹乱させてかなきゃ!
「良い」
迎え撃つヒーロー殺しが右手に持った刀を横振りしてくる。このままだと斬られちゃうけど……!
OFA、フルカウル!! 一気に懐へ!!
バリバリ……! ダンッ!
「!(長物に対し間合いを詰める……良い判断だ)」
よし、右手の刀は掻い潜れる! 相手もわかってるなら次は……!
サッ
空いてる左手で別のナイフを掴んだ! 予想通り!
「ダメだ! 斬りつけられたら……!」
わかってるよ飯田君! そんでえええええ!!
バッ! スカッ!
「(背後に回ったか……だが!)」
グルッ!
やっぱり対応が早い! でも、ここから……!
ブンッ! スカッ! ギィィィイン!
「(消えた? いや……)」
急加速からのスライディング、そして背後に回ってからのジャンプ! これだけ撹乱すれば……!
「5%デトロイト……SMASH!!」
ゴッ!
「(何だ、あの動きは! まるで爆豪君のような……!)」
くそっ! また浅かった! でも、通じた!? 通じたぞフルカウル! 僕、戦える! このまま上下左右に動いて……!
ゾアッ!
「!! なっ……!?」
体が……動かない!? 攻撃は受けていな……いや、左腕がカスってたのか!! こんな気付かない程のカスリ傷で……!!?
視線をヒーロー殺しに向けると左手のナイフを舐めてる……。そうか、傷の大きさじゃない……! 血か!!
血を舐めた相手の身体の自由を奪う……これがヒーロー殺しの『個性』! こんな個性があるなんて!
「パワーが足りない」
やっぱりダメージが浅かったのか、ヒーロー殺しはすぐに身体を起こした。くそ! 身体を動かせない、殺られる!
「俺の動きを完全に見切っていたわけじゃない。視界から外れ……確実に仕留められるよう画策した……そういう動きだった」
そう言いながら僕の前を通り過ぎる。僕を殺すんじゃないのか?
「口先だけの人間はいくらでもいるが…。おまえは、生かす価値がある……」
生かす価値? どういうこと? それに『おまえは』ってことは……。
「こいつらとは違う」
奴が飯田君の前に立つ。右手の刀を飯田君に向けて下ろしていく。
「そんな! ちくしょう!! やめろ!!」
「……うぅ!」
くそ! 動いてくれ! 動け!
ゴオオ! パキパキパキ!
「「「!!」」」
もう駄目かと思った時、熱風と冷気が周囲に巻き起こり、ヒーロー殺しに炎と氷が向かっていった。ヒーロー殺しはそれを躱して一旦距離を取る。僕や飯田君は炎と氷の発生源に目を向けるとそこには……。
「緑谷、こういうのはもっと詳しく書くべきだ。遅くなっちまっただろ」
「轟君!? 何で君が……!?」
「轟君まで……!」
戦闘訓練の時とデザインが大きく変わったヒーローコスチュームを身に纏った轟君がいた。誰かに伝わればいいと思って位置情報を送ったけど、まさか轟君が来るなんて……!
「次から次へと……今日はよく邪魔が入る……(そろそろ……誰かが時間かな)」
「何でって……こっちの台詞だ。数秒『意味』を考えたよ。一括送信で位置情報だけ送ってきたから」
轟君がヒーロー殺しに向かって構える。ヒーロー殺しも轟君を警戒しながら地面に落ちたナイフを拾い上げる。
パキパキパキ……!
「意味なくそういうことする奴じゃねえからな、おまえは。『ピンチだから応援呼べ』って事だろ」
轟君の氷結が地面を這ってヒーロー殺しを襲う。ヒーロー殺しはあっさりそれを回避するけど、やっぱり遠距離から攻撃できるとだいぶ有利だ。……って轟君!? 僕らを凍らせちゃってるよ!? どうすんのこれ! わ! なんか山になって……!
「大丈夫だ。数分もすりゃプロも現着する」
ゴオオオ!
「あっち!」
「うおっ!」
ツルー
氷結に続けて炎でもヒーロー殺しを攻撃する。その一部で僕らを覆った氷の山を溶かしていく。なるほど! これで自分のそばに集めるってわけか! それにしても、
「わっ! だっ!」
「情報通りのナリだな。こいつらは殺させねえぞ、ヒーロー殺し」
滑るスピードが思いの外早くて地面に投げ出される。まだ、身体が動かないから受け身が取れなかった、ちょっと痛い……。でも、バラバラだった僕達を集められたから、これで守りやすくなるはず! 後は轟君に相手の情報を……!
「轟君、そいつに血ィ見せちゃ駄目だ! 多分血の経口摂取で相手の自由を奪う! 皆やられた!」
「それで刃物か。俺なら距離保ったまま……」
ヒュッ!
「!?」
「なっ!?」
ナイフを投げつけてきた!? 複数のナイフを持っているのもこのためか!
「良い友人を持ったじゃないか、インゲニウム」
「しまっ……」
ナイフを投げて気を逸らせてから接近してきた! 直撃はしなかったけど、カスリ傷でも出血したら不味い!
パキパキパキ……ガギッ!!
氷結でガードできたけど距離を詰められると厄介だ! 何とか奴を押し返さないと……!
……? ヒーロー殺しが上を見てる? ……刀!
「!(ナイフと同時に投げて……)」
バッ!
な! 刀も囮!? 不味い! 血を舐められたら轟君も!
「くっ!」
「!」
ゴアッ!
よかった! 炎で距離を空けられた。でも……何度も来られるといつかやられちゃう! どうにかして体を動かせるようにならなきゃ!
「っぶねえ!(一つ一つの動きが二択三択を迫ってくる)」
パキパキパキ……! バッ!
「(こいつ、強え……!)」
轟君! 不味い……! 早く……! この個性はどうやったら解けるんだ……!
「何故……2人とも……何故だ……。やめてくれよ……。兄さんの名を継いだんだ……僕がやらなきゃ! そいつは僕が……」
「飯田君……」
飯田君……何を言ってるんだ……? こんな状況なのに!!
「継いだのか、おかしいな……。俺が見たことあるインゲニウムはそんな顔じゃなかったけどな」
「……」
「おまえん家も裏じゃ色々あるんだな」
「轟君……」
ズオッ!
やばい! 氷が増えてこちらも視界が防がれたり逃げる隙間がなくなってきてる! くそ……!
ピクッ
……あれ!?
ガッ! ガッ! ギィィン!
「己より素早い相手に対し自ら視界を遮る……愚策だ」
「そりゃどうかな」
ボオッ! ヒュッ! トトッ!
「ぐ!?」
「おまえも良い……」
「上……! くそ……!」
OFA、フルカウル!
ヒュッ! ダッ! ダッ!
「させない!!」
ガ! ガガガガガ!!
「緑谷!」
「なんか普通に動けるようになった!!」
「時間制限か?」
「いや、あの子が一番後にやられたハズ! 俺はまだ動けねえ!」
このまま引きずり回して……!
「(こいつ、Oか)」
ガッ!
「ぐ!? ぐへっ!!」
肘打ちをくらってバランスを崩して地面に落ちてしまう。ヒーロー殺しはもう体勢を整えてる、不味い!
「下がれ緑谷!」
「ひえ!」
轟君が氷結で牽制してくれる! 急いで氷の後ろに退避する。
「大丈夫か!」
「うん! それより、奴の個性……。血を摂り入れて動きを奪う。僕だけ先に解けたってことは……考えられるのは3パターン。人数が多くなる程効果が薄くなるか、摂取量か、……血液型によって効果に差異が生じるか……」
3パターンの内、摂取量は舐められた量が先に戦ってたヒーローや飯田君と僕とでそれほど大きく変わるとは思えないから可能性は低い。となると人数か血液型になるけど……。
「血液型……俺はBだ」
「僕はA……」
「僕はOだよ……」
「……血液型……ハァ……正解だ」
やっぱりそうか! となると、判明している中でO型の僕が一番早く動けるようになるわけか……! と言っても……。
「わかったとこでどうにもなんないけど……」
「さっさと担いで撤退してえとこだが……氷も炎も避けられるほどの反応速度だ。そんな隙見せらんねえ。プロが来るまで近接を避けつつ粘ろのが最善だと思う」
轟君の言う通り、粘って時間を稼げば他のヒーローも来て数的優位を作れる。そのためには……。
「轟君は血を流しすぎてる。僕が奴の気を引きつけるから後方支援を!」
「相当危ねえ橋だが……そうだな」
轟君の
「2人で……守るぞ」
「うん!」
覚悟を決めてヒーロー殺しを見ると、体勢を整えている。奴にとっても時間との戦い……ここからはさっきみたいにはいかないはず!
「2対1か……甘くはないな」
奴の雰囲気が変わった!
でも……守るんだ! 僕らの手で!!
―――――――――――――――――――――――――――――
Side:Shoto
兄貴がやられてからの
ダッ!
「轟君、お願い!」
「ああ!」
バッ! パキパキパキ……!
母を訪ねたあの日、今までの事を……自分の今の事を全部話した。母は泣いて謝り、驚くほどあっさりと……笑って赦してくれた。俺が何にも捉われずにつき進む事が幸せであり、救いになると言ってくれた。
ダンッ! ダンッ! ダッ!
「はあ!」
「! フッ!」
「させねえ!」
ブオオオ!
「く!(付け焼き刃の連携だが、やはり厄介だな……!)」
「いいぞ緑谷! そのまま動き続けろ!」
以前のままの俺だったら……職場体験で親父の事務所を選ぶなんてことは絶対なかった。赦したわけじゃないし赦す気もない。ただ、奴がNO.2と言われている事実をこの眼と身体で体験し受け入れる為だった。
『準備しろ、出かけるぞ』
『どこへ? 何しに?』
『前例通りなら保須に再びヒーロー殺しが現れる。しばし保須に出張し活動する! すぐ保須市に連絡しろぉ!』
どんだけクズでも……NO.2と言われるだけの判断力と勘の良さは認めざるを得なかった。
簡単なことだったんだ、全部! 簡単なことなのに見えてなかった!
『君の力! じゃないか!!』
たった一言……!! その一言が……!
「(活かすべき人材と思うが……腕や足の一つは覚悟してもらうぞ!)」
バッ! ヒュン! ズバッ!
「あっ!?(さっきまでと動きが全然……!)」
「緑谷!」
ブオオ!
「止めてくれ……もう……僕は……」
飯田……! 真面目すぎて融通が利かねえけど……おまえは委員長、人を導ける人間だろ!
「止めて欲しけりゃ、立て!!!」
「っ! また動けなく……! 轟君!?」
俺がおまえに言える一言……!!
「なりてえもんちゃんと見ろ!!」
こんなところで……蹲ってるんじゃねえ!
というわけで第30話でした! 職場体験編は後1話か2話くらいで終わります。今年の3月末から投稿し始めてここまで続けられて自分でもびっくりですw ペースはなかなかあげられそうにはありませんが、それでも少しずつ書いていこうと思いますので、今後も応援よろしくお願い致します!