僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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お待たせしました!第32話、職場体験編ラストです! それではどうぞ!


第32話 保須事件、その後

Side:Izuku

 

『大丈夫ならよかったよー…デクちゃんも飯田君も轟君も……』

「うん、怪我はしたけど3人とも元気だよ」

 

 ヒーロー殺し『ステイン』と戦った翌日、僕は飯田君・轟君とともに保須病院にいた。轟君はそこまでではなかったけど、僕と飯田君はヒーロー殺しから受けた傷が結構深かったから、その治療のために数日入院することとなっていた。

 

『アドレスだけ来たとき、何かすごくドキドキしちゃったよ。それにしても、エンデヴァーってやっぱり凄かったんだね! アレだけ騒がれてたヒーロー殺しを捕まえちゃうなんて!』

「……うん、凄かったよ……」

 

 新聞やテレビのニュースでは『ヒーロー殺しはエンデヴァーが撃退・拘束した』ということになっている。

 

 

『資格未取得者が保護管理者の指示なく『個性』で危害を加えたこと。たとえ相手がヒーロー殺しであろうともこれは立派な規則違反だワン』

 

 今朝、保須警察署の面構犬嗣署長が僕らに面会に来た(個性が『犬』なんだろうけど、首から上がそのまま犬だったのは本当にびっくりしちゃった!)。僕らの立場はヒーロー免許取得前の学生、当然学校の外では個性は使えず今回の職場体験でも受入先のヒーローの指示・監督の元でのみ使えるということになっている。正当防衛の際はその限りではないけど、個性は人それぞれで千差万別だから正当防衛の認定は厳格さが求められているらしい。僕らは学生とはいえ、ヒーロー殺しと3人で対峙していた。この状況で正当防衛が認められるのは難しく、『そのまま』公表されれば僕らは処分を免れない状況だった。

 

 だけど……。

 

『公表すれば世論は君らを誉め称えるだろうが処分は免れない。一方で汚い話……公表しない場合、ヒーロー殺しの火傷跡からエンデヴァーを功労者として擁立してしまえるワン。幸い目撃者は極めて限られている。この違反はここで握りつぶせるんだワン』

 

 いわゆる……隠蔽。今までその言葉には悪いイメージしかなかったけど、一般人の事件でも似たようなものがあったと思うと悪と断じることは難しいと感じた。

 

『だが、君達の()()()()も誰にも知られることはない。どっちがいい!? 1人の人間としては前途ある若者の『偉大なる過ち』に()()をつけさせたくないんだワン!?』

 

 公表されれば確かに世間は僕らを持ち上げて褒めそやすだろう。でも、それが故に今後僕らがプロヒーローを目指していく中で影響が出ることは間違いない。

 

 

 面構署長の計らいを僕ら3人は素直に受け入れた。

 

 

『入院はいつまでなん?』

「再度検査して……多分明後日になると思う」

『そうなんや。……ちなみにデクちゃん』

「ん? 何、麗日さん」

『病室は一緒ちゃうよね!』

「へ!? な、何言ってるの!? 一緒じゃないよ、別だよ!」

『そっか! よかった……。飯田君も轟君も真面目やからそんなことはないと思うけど、やっぱり同部屋だったら何があるかわからんし……』

「あ、あはははは……」

 

 い、言えない……。轟君が同部屋にするよう勧めてきたなんて……。

 

 

『緑谷、部屋別なのか?』

『う、うん。そうだけど……』

『緑谷だけ1人部屋じゃ寂しいだろ? お前もこっちの部屋に来いよ』

『へ!? と、轟君何言ってるの!?』

『轟君!! 緑谷君は女子だぞ!』

『??? それがどうかしたか?』

『交際していない男女が同じ部屋で眠っていいはずがないだろう! ましてや僕らは学生の身!』

『? よくわかんねえな。なんでだ緑谷?』

『な、な、なんでって聞かれてもそ、そ、それはその……!?』

『とにかく! 轟君と俺はこの部屋! 緑谷君は別の部屋になるということだ! いいな轟君!』

『……まあ、わかった』

 

 

 なんてことが知られたら……。麗日さん、ちょっと口軽いからすぐ芦戸さんや葉隠さんにバレて大変なことになっちゃうんだよ……。

 

『あ、そろそろ休憩終わるから、また学校でね! 大変な時にごめんね、じゃ!』

「うん、またね!」

 

 麗日さんとの電話を終えてため息を一つつく。こうして他愛ないことを話せてるのは昨日あった出来事を考えると奇跡に思えてしまう。

 

 本当に……昨日は運が良かったんだと思う。ヒーロー殺しと相対して、無傷ではないけどこうして生きている。自分だけじゃなくて、飯田君や轟君、襲われてたネイティヴさんも誰1人死ぬことなく。

 

 ヒーロー殺し。

 

 確固たる自分の……狂気的なまでの信念を持った通常と異なる敵。

 

 朝から新聞やニュースで色々流れてるけど、そのことでヒーロー殺しの思想を却って広めることにならないかな? それに感化されてさらに敵が増えていくとしたら?

 

 考えすぎかも知れない。でも……USJからそんな流れになっている気がしてならない……。

 

 ……今の僕らにできるのは、自分を……周りを信じてヒーローを目指すことだけだ……!

 

 

 電話を終えて飯田君達の部屋へ行くと2人がそれぞれのベッドに腰掛けていた。診察に行ってたみたいだけど戻ってきたんだ。

 

「飯田君、今麗日さんと電話で話してきて……」

「緑谷」

 

 途中で轟君に声をかけられる。どしたんだろう?

 

「飯田、今診察終わったとこなんだが……」

「……?」

「左手、後遺症が残るそうだ」

「……!」

「両腕ボロボロにされたが……特に左のダメージが大きかったらしくてな。腕神経叢という箇所をやられたそうだ」

 

 後遺症? 左手? そんな!?

 

「とは言っても手指の動かし辛さや多少のしびれくらいなものらしく、手術で神経移植すれば治る可能性もあるらしい」

 

 治る可能性があるなら良かった! でも、飯田君からはそれに対する安堵感は見られない。どうしてだろ?

 

「ヒーロー殺しを見つけた時、何も考えられなくなった。マニュアルさんにまず伝えるべきだった。奴は憎いが……奴の言葉は事実だった」

「飯田君……」

「だから……俺が本当のヒーローになれるまで、この左手は残そうと思う」

「……あ……」

 

 ……あの時、もっと強く言っておけば……!

 

 いや……よそう。

 

 飯田君は、もう飲み込んだんだ。僕が謝るのは……失礼だ。

 

 戒めをこの手に……!

 

「飯田君、僕も……同じだ」

 

 右手を強く握りしめて言葉を重ねる。

 

「一緒に強く……なろうね」

「……ああ」

 

 そう言って互いに拳を突き合わせる。

 

 そうだ。これから強くなろう。最高のヒーローになれるように……!

 

 

「なんか……わりィ……」

「? 何が?」

 

 轟君が僕らに謝った。どうしたんだろ?

 

「俺が関わると……手がダメになるみてぇな……感じに……なってる……」

「「……」」

「呪いかも……」

「あっはははは! 何を言ってるんだ!」

「轟君も冗談言ったりするんだね」

「いや、冗談じゃねえ。ハンドクラッシャー的存在に……」

「ハンドクラッシャーーー!!」

 

 思わず吹き出しちゃった! 轟君て体育祭前までは物静かなイメージだったけど、怒ったり笑ったりする普通の男の子なんだよね。まあ、ちょっとズレてたり天然なところがあるけど。

 

 これからもっと大変になると思うけど……飯田君や轟君、麗日さんやA組の皆と一緒なら乗り越えられる気がする。

 

 頑張ろう……! オールマイトみたいに……最高のヒーローになれるように!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「(クソデクの奴、また厄介ごとに巻き込まれやがって!)」

「どうした爆豪。いつにも増してイラついているようだが」

 

 勝己が職場体験に来ているNO.5ヒーロー『ベストジーニスト』が代表を務める『ジーニアス事務所』。今勝己はベストジーニストに連れられてパトロールをしていた。

 

 綺麗に8:2に分けられた髪型で……。

 

 パトロール中でも街中の電光掲示板や大型テレビで流れてくるヒーロー殺し『ステイン』逮捕のニュース。それだけならば勝己はイライラすることはない。噂のヒーロー殺しを間近で見てみたかったくらいの感想くらいしかないだろう。

 

 だが、そこに1ーAグループトークが関わってくると話は変わってくる。

 

 事件のあった日、出久はステインと対峙している時に周囲に知らせるために一斉に位置情報を送信していた。幸いにも保須市に来ていた轟が内容を見たことで事件解決に繋がったが、メッセージ受信時に確認できなくて意図がわからなかった者も多かった。事件解決後に出久がメッセージの理由をグループトークに送信するとクラスメイトから矢継ぎ早に質問が来て、普段は内容を確認するだけ、どころか無視することもある勝己でさえもひっきりなしに来るメッセージで詳細を知ることとなったのである。

 

「ああ!? うるせえなんでもねえよ!」

「……ヒーロー殺しの事件かい?」

「あ“あ“!?」

「近頃我々プロヒーローの間でも話題になっていたヒーロー殺しだ。気になるところだろう。ああ、私も大いに気になっている」

 

 敵顔負けの形相で凄んでくる勝己に怯むことなく、ベストジーニストは周囲も見渡しつつ話を続ける。

 

「人は大きな事件に目を奪われる。しかし、こういう時こそヒーローは冷静でいなければならない。混沌(ケイオス)は時に人を惑わし、根底に眠る暴虐性を引きずり出そうとしてくる」

「(いちいち小難しい言い方でしやがって! てめえに何がわかるってんだよ!!)」

「……しかし、どうやらそれだけじゃなさそうだな……」

「ああ?」

 

 含みを持たせた言い方に思わずベストジーニストへ向き直る。ベストジーニストも勝己を正面に見据えながら続ける。

 

「体育祭での君の印象はまさに『天上天下唯我独尊』で、自分以外はただのモブキャラだと考えている人物……と思っていた。だが、君は思いの外周囲を見ているし、また気にしてもいる」

「……何が言いてぇんだ?」

「我々がヒーローでいるためには強い想い……信念が必要だ。だが、強すぎる想いは自身を滅ぼすことにもなりかねない。そのことを頭の片隅に入れておくといい」

「……」

 

 人を射殺せるのではと思うほどの視線を勝己はベストジーニストに向けるが、本人はそれに怯むことなく真正面かる受け止める。

 

「キャーーー!!?」

「誰かーーー!?」

 

 睨み合いが続く中で叫び声が響き渡る。2人は即座に悲鳴がした方向へ走り出した。

 

「(素質は間違いなく一級品、ただ……若いな……)」

 

 学生の身ながら自身に遅れず付いてくる勝己を横目に見つつ、この職場体験期間でどのようにヒーローのなんたるかを教え込んでいくか考えながらベストジーニストは現場へと急いだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

「短い間でしたがお世話になりました」

 

 保須病院を退院した後、一旦グラントリノ事務所へ荷物を回収しに戻った。そんなに時間は経ってないはずなのにだいぶ長い間戻ってなかった感じがする。いや、職場体験自体1週間もしていないんだけど。

 

「何も世話してねえ気がするぜ。『職場体験』もあれだったしな」

「いえ! 発想のご教授と組手ぶっ続けのおかげでヒーロー殺し相手にも何とか動けました!」

 

 ゴッ!

 

「痛!!!」

 

 杖で足叩かれた! なんで!?

 

()()()()()()()()()()()()()()にだ。まァ……100%の一撃必殺を狙って外しちまう……なんてことにならず良かったとはいうべきかな」

 

 確かに……轟君と2人がかりの時もヒーロ殺しは油断はしてなかったと思うけど、僕達を()()()()()()()()。そういう意味ではヒーロー殺しに生かされたと言える……。

 

「だが、その腕! ヒビ入ってんだろ? 土壇場での許容上限(5%)オーバー、まだ焦りで力む、油断で力のコントロールがブレる……。常に緊張と冷静を持て。オールマイトのような『最高のヒーロー』になりてえっつうなら、まだまだ学ぶことは多いぞ」

「っはい!!」

 

 そうだ! まだまだ学ぶこと、やることは多い! 頑張らなくちゃ!

 

「ん! それじゃ……」

「あの!! さ、最後に一つ! い、良いですか!?」

 

 すぐ事務所に入ろうとするグラントリノさんを引き止める。タイミングがなくて聞きそびれてたけど、今なら聞けるかも。

 

「失礼と思って……ずっと聞きそびれてタイミング見つからなかったんですけど……」

「早よしろ! タイ焼き食べたいんだ」

「そんなに強くてオールマイトを鍛えた実績もあるのに……グラントリノ、世間じゃほとんど無……無名です。何か理由(ワケ)があってのことなんでしょうか?」

 

 NO.1ヒーロー、オールマイト。その彼を鍛えたヒーローならもっと知られていてもおかしくない。そりゃ、僕が生まれるかなり前の話だしヒーローの全てを知ってるわけじゃないけど、これまでオールマイトについて調べたりしてきてその名前が出てこなかったことは不思議で仕方ない。

 

「あー……そりゃ俺、元来ヒーロー活動に興味ないからな」

「へ!?」

 

 ええ!? まさかの回答! でも、ヒーロー免許持ってるしだからこそ僕も職場体験で受け入れてもらってるはずだけど……。

 

「かつて、目的の為に『個性』の自由使用が必要だった。資格とった理由はそんだけさ。これ以上は俺からより俊っ……オールマイトが話してくれるのを期待してな」

 

 オールマイトから……ということはオールマイトにも関係があることなのかな? 戻ったら時間見て聞いてみようかな?

 

「じゃあ以上! 達者でな」

「あっはい! ありがとうございました!」

 

 頭を下げてお礼を伝えて、僕はグラントリノ事務所を後にする。またこんなに怪我しちゃって、お母さん心配してるだろうなあ。それに今回はリカバリーガールに治癒してもらってないからまだ傷は完治してないし……。ナイトアイさん達にも一応連絡したけど、詳細は話せてないから久しぶりに事務所に……いやでも結局警察に口止めされてるからどのみち言えないか……。戻ったらA組の皆にあれこれ聞かれるだろうけど、飯田君や轟君とも再度確認とっておこう。……それにしても、グループトークに未だにかっちゃんからのメッセージがないのが怖い……。既読は人数分ついてるから見てはいるんだろうけど……戻ったら何か言われるかな……?

 

「小娘!」

 

 いろいろ考えたらグラントリノさんの声がして振り返る。何かあるのかな?

 

「誰だ君は!?」

「ここで!?」

 

 え!? なんでこのタイミングで!? でも、今小娘って言ったから僕を僕と認識できてはいる? まあ、とりあえず名乗っておこうか? また来た時に忘れられてたら悲しいし……。

 

「えっと、だから…緑谷出…「違うだろ」

 

 途中で遮られちゃった……。っていうかわかってるじゃないですか。『違う』ってどういうことだろ……?

 

 ……あ! そういうことか!

 

「『デク』です!!」

 

 僕がそういうと満足げに笑って手を振りながら事務所に入っていった。

 

 

 これから……少しずつ校外でも活躍していく機会も増えていくと思う。そんな時に胸を張ってヒーロー名言えるように、『デク』って言えるように頑張っていかなくちゃ!

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

関東地方某所某雑居ビル

 

『……ヒーロー殺しと共に保須市で逮捕・拘束された3人の敵はいずれも住所・戸籍不明の男。その外見的特徴がNHAテレビが偶然捉えた2人の男の姿から、先月雄英高校を襲った『敵連合』との繋がりを指摘する声も上がってます』

 

 テレビから流れるニュースはどこもかしこもヒーロー殺し逮捕のもの。一部は既に敵連合との繋がりを指摘するものもあり、その当の敵連合の中心人物、死柄木はニュースを横目に同じような内容の新聞を読んでいた。

 

「どこもかしこも……脳無は二の次かよ」

 

 『ハハハハ……夜が明ければ世間はあんたの事なんか忘れてるぜ、ヒーロー殺し』

 

「忘れるどころか……俺らの方がおまけ扱いか」

「まあ、そう気落ちすることもないでしょう」

 

 バーカウンター内でカクテルを……霧状の手で器用に作りながら黒霧は死柄木へ声をかける。

 

「先生も仰られてたじゃないですか? ヒーロー殺しのネームバリューで敵連合の名がさらに知れ渡り、それに惹かれた者たちが続々とやってくると」

「ヒーロー殺しに惹かれて、ってところが気に食わねえんだよ」

「ただ現時点では人手が足りないですからね。頂いた脳無も全員拘束されてしまいましたから……」

「……ちっ!」

「とにかく今は待ちましょう。『志』を共にする同士が現れるまで」

「……そりゃその『志』の内容次第だな……」

 

 まだ見ぬ『同士』に……複雑な想いを馳せながら、死柄木は黒霧の作ったカクテルを呷った。




というわけで職場体験編ラストでした! いやあ〜、なかなか長くて書くのが大変でしたね。キャラの内面や独白を描写するとなるとそのキャラ視点で地の文を書くのがやりやすいんですけど、視点が変わりすぎると読みづらくなっちゃうんでバランスが難しいです。こればっかりはちょっとずつ調整していくしかないですね。そして次からは期末試験編になります!こちらもまたいろいろと書きたい部分が多くなると思いますが、なんとか忘れ去られないようなペースで続けていきたいので、今後も応援よろしくお願い致します! 
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