僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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少し遅れました! 第33話です! ここから期末試験編になります。それでは、どうぞ!


第33話 久しぶりの授業(そして、ささやかなガールズトーク)

 職場体験終了後の翌日。久しぶりにクラスメイトと顔を合わせる1ーAからは楽しげな会話と……。

 

「「アッハッハッハ!!! マジか!! マジか爆豪!!」」

 

 大きな笑い声が響いていた。

 

「笑うな! クセついちまって洗っても直んねえんだ。おい笑うな、ぶっ殺すぞ!」

「「やってみろよ8:2坊や!! アッハハハハハハ!」」

「てめえら笑うなっつってんだろーが!!」

 

 BOMB!!!

 

「あ、あははは……」

 

 怒り狂う勝己の様子を見ながら、子供の時の髪型の話はやめておこうと出久は密かに誓った。

 

「へえー、(ヴィラン)退治までやったんだ! うらやましいなあ!」

「避難誘導とか後方支援で実際に交戦はしなかったけどね」

「それでもすごいよー!」

「私もトレーニングとパトロールばかりだったわ。一度隣国からの密航者を捕らえたくらい」

「「それすごくない!!?」」

「お茶子ちゃんはどうだったの? この一週間」

 

 芦戸、耳郎、蛙吹も他の生徒たちと同じように職場体験での話に花を咲かせていた。

 

「とても……有意義だったよ……」

「目覚めたのねお茶子ちゃん」

「バトルヒーローのとこ行ったんだっけ」

 

 武道の達人を彷彿とさせる気配を纏いながら独特の呼吸を行う麗日は、確かに何かに目覚めたようだった。目の前に正拳突きをするが、職場体験前よりキレが格段に上がっていた。

 

「たった一週間で変化すげえな……」

「変化? 違うぜ上鳴。女ってのは……元々悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!!」

「Mt.レディのとこで何見た? あとそれやめろ、見てて痛々しいから」

 

 麗日の様子を見て、トラウマが刺激された峰田はそれを押さえつけるように自分の人差し指を噛み始めた。

 

「俺は割とチヤホヤされて楽しかったけどなー」

「あんた電気系個性で重宝されるもんね」

「まあな。でも、一番変化というか大変だったのは……お前ら3人だな!」

 

 上鳴の声に周囲の視線が件の3人……出久、飯田、轟に向く。瀬呂と切島をしばいている勝己さえもそちらに視線を向ける。

 

「そうそう、ヒーロー殺し!!」

「命あって何よりだぜ、マジでさ」

「……心配しましたわ」

「エンデヴァーが助けてくれたんだってな!」

「凄いね、さすがNO.2ヒーロー!」

「……そうだな、()()()()()

「うん」

 

 勝己に抑えられる切島、瀬呂、出久達の周囲にいた八百万、砂藤、葉隠が事件を知った感想を口にする。ニュースでの内容は概ねその通りであるが、事の真相を知る3人はそれを話すことはしなかった。

 

「俺ニュースとか見たけどさ、ヒーロー殺しって敵連合ともつながってたんだろ? もしあんな恐ろしい奴がUSJ来てたらと思うとゾッとするよ」

「ああ、俺たちも無傷では済まなかっただろうな……」

「でもさあ、確かに怖えけどさ。尾白も障子も動画見た?」

 

 2人の言葉を受けて上鳴が話を続ける。

 

「アレ見ると一本気っつーか執念っつーか……『かっこよくね?』とか思っちゃわね?」

「上鳴君……!」

「え? あっ……飯……ワリ!」

 

 出久に言われて上鳴はようやく失言に気づく。飯田は家族をヒーロー殺しに襲撃されており、そのことが今回の事件に巻き込まれる原因となっていたのである。

 

「いや……いいさ。確かに信念の男ではあった……。彼をクールだと思う人がいるのも……わかる」

 

 飯田は自身の左腕……ヒーロー殺しに傷つけられ未だ後遺症が残るそれを見ながら飯田は言葉を続ける。

 

「ただ、奴は信念の果てに『粛清』という手段を選んだ。どんな考えを持とうともそこだけは間違いなんだ」

 

 そう力強く言いながら立ち上がり、いつものように……いつも以上に右手を振りながら言い放つ。

 

「俺のような者をもうこれ以上出さぬ為にも!! 改めてヒーローへの道を俺は歩む!!!」

「飯田君……!」

「飯田……」

 

 兄の復讐に囚われていた飯田が、改めてヒーローを目指すことを宣言した。あの日共に戦った出久も轟も飯田のその姿を見て自身も決意を新たにするのだった。

 

「(かっこいいよ、飯田君!)」

「さァ、そろそろ始業だ! 席につきたまえ!!」

「五月蝿い……」

「なんか……すいませんでした」

「ほんっとにあんたって馬鹿だね! 飯田もだけど、緑谷も轟も怪我してるんだからね!」

「そうだよ! 緑谷なんてスカートだと足の傷目立つから今日は丈の長いニーソックス履いてるんだよ!」

「私とお揃いや! ええやろ!」

「そうだったの!? 緑谷マジでごめん! 無神経だった!」

「え!? いや、別に気にしてないから大丈夫だよ」

「それにしても! 普段生足の緑谷がニーソ履いてるってのもなかなかいいnグハッ!?」

「言った側から無神経よ峰田ちゃん」

「峰田君……」

 

 重苦しい雰囲気が普段のものに戻り、各々が席に戻ると予鈴が鳴り雄英高校のいつもの日常が始まった。

 

 

 

「ハイ、私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね。ハイ、ヒーロー基礎学ね! 久しぶりだ少年少女! 元気か!?」

「ヌルっと入ってきたな」

「久々なのに」

「パターンが尽きたのかしら」

 

 午後に入りヒーロー科お馴染みのヒーロー基礎学の授業が始まる。オールマイトの久しぶりの授業であるが、いつも趣向を凝らした登場をしていたので生徒たちから少なからず疑問の声が上がっていた。

 

「コホン、職場体験後ってことで今回は遊びの要素を含めた救助訓練レースだ!!」

「救助訓練ならUSJでやるべきではないのですか!?」

黄金時代(ゴールデンエイジ)のコスだぁぁ!」

 

 オールマイトの言葉に飯田がすぐさま質問をする。救助訓練であるならば、さまざまな災害状況を再現できるUSJが最適である。敵連合襲撃によって被害を受けた箇所も修繕を終えているため、使用については何の問題もないはずである。

 

「あすこは災害時の訓練になるからな。私は何て言ったかな? そう、()()()!!」

 

 右手人差し指を立てながらオールマイトは今回の授業の説明を続けていく。

 

「ここは運動場γ! 複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯! 5人4組に分かれて1組ずつ訓練を行う! 私がどこかで救難信号を出したら街外から一斉スタート! 誰が一番に私を助けに来てくれるかの競争だ!! ……もちろん、建物の被害は最小限にな!」

 

 最後にそう付け加えて、流れるような動作で人差し指を前科のある生徒……勝己に向けた。

 

「指差すなよ」

「(確かに、指差すのはあまり良くないと思いますよオールマイト……)」

 

 

 

『じゃあ初めの組は位置について!』

 

 オールマイトの場内アナウンスに従い、最初の組のメンバー『出久・尾白・飯田・芦戸・瀬呂』は各々がスタートしやすい位置で合図に備える。他の生徒はモニターが設置された『OZASHIKI』でレースの展開について意見を交わしていた。

 

「飯田まだ完治してないんだろ。見学すりゃいいのに……」

「クラスでも機動力良い奴が固まったな」

「うーん、強いて言うなら緑谷さんが若干不利かしら……」

 

 八百万の言葉に周囲の者は概ね同意した。飯田の個性『エンジン』は言わすもがな、瀬呂・尾白はそれぞれテープ・尻尾を使って三次元的な移動が可能であり、芦戸も持ち前の身体能力と濃度・粘度を調整した酸を使ったスムーズな移動を行うことができる。それとは対照的に出久については、シンプルな増強型個性で瞬間的な力は凄まじいが細かな調整が課題と見做されていた。

 

「確かにぶっちゃけあいつの評価ってまだ定まんないんだよね」

「何か成す度に大怪我してますからね……。あの分析力は目を見張るものがありますが……」

「後は最初の訓練の時、爆豪との戦いで見せた動きだよね。読みとかは確かに凄いんだけど、それと個性が噛み合ってないというか」

「トップ予想な。俺、瀬呂が一位」

「あー……うーん、でも尾白もあるぜ」

「オイラは芦戸! あいつ運動神経すげえぞ」

「爆豪、お前どう思う?」

「デクが最下位」

「いや、トップ予想っつってんだからさー……」

「怪我のハンデがあっても飯田君な気がするなあ」

「ケロ、私もそう思うわ」

 

 八百万・耳郎の出久についての分析の横で他の生徒は誰が一位になるかの話をしており、2人の分析と大きく外れず出久以外の誰かが取るだろうとの予想が大方を占めていた。

 

 

『それでは……START!!!』

 

「ホラ見ろ! こんなごちゃついたとこは上行くのが定石!」

「となると、滞空性能が高い瀬呂が有利か」

 

 オールマイトの合図で救助訓練レースがスタートした。各自が自らの個性を駆使してオールマイト救出に向かう。最初に目立った動きを見せたのは瀬呂だった。彼の個性『テープ』は文字通り、テープ(厳密にはテープに酷似した物質)を両肘から射出するものであり、直接的な攻撃力は高くないが拘束や補強や罠、移動など非常に汎用性に優れている。つまり……。

 

「ちょーっと今回俺にうってつけ過ぎ……る?」

 

 そう、テープで高所に移動できる瀬呂にはうってつけ過ぎる……はずであった。

 

 ダンッ! ダンッ!

 

 誰もがそう思った瞬間、モニターの中で緑色の影が高速で動いていくのが見えた。

 

「うってつけ過ぎる! 修行に!」

 

 出久であった。出久はグラントリノとの職場体験で学んだ『常時全身5%OFA』を駆使して複雑な構造をした建物をパルクールするかの如く駆け抜けていく。

 

「!!」

「「「おおお緑谷!?」」」

「何だその動きィ!!?」

 

 モニターを見ていた上鳴・切島・峰田が誰もが予想に入れなかった出久が瀬呂を抜いてトップに立ったことに驚愕の声を上げる。

 

 

「ッソだろ!!」

「緑谷ー!? 跳んでんのー!?」

「骨折克服かよ!」

 

 自分の独壇場になると思っていた瀬呂も上から進もうとしていた芦戸・尾白も今まで見たことない出久の動きに驚きを隠せず、追い上げるべく必死で移動速度を上げる。

 

 

「(ああ、言われてみりゃ、何だあの動き……)」

「すごい……! ピョンピョン……何かまるで……」

「(俺の動き……!!)」

 

 

 モニターを見ていた轟・麗日・勝己は気づいた。その動きが勝己自身の跳躍や空中で移動するときの動きに酷似していることに。

 

「(俺がバカみてえな時間過ごしてる間に……また……また!!!)」

「一週間で……変化ありすぎ……」

 

 他の者が出久の変化を驚愕と称賛混じりで見る中、勝己は歯軋りしながらモニターの中の出久を見続けた。

 

 

「(落ち着け!! いける落ち着け!! 常に5%!!)」

 

 出久は大いに手応えを感じていた。職場体験ではグラントリノとの組手をしてはいたが、その後はヒーロー殺し『ステイン』とのぶっつけ本番しかできていない。圧倒的に経験の足りない出久にとって今回の授業はまさに『うってつけ』であった。

 

「(よし! 集中を保て! 常に緊張と冷静を保て!!!)」

 

 

 ダッ……ズル

 

「ってうわあ!?」

 

 

 

「フィニーーッシューー! ありがとう、そしておめでとう!」

「あざーす!」

「はー、疲れた」

「キー! 悔しい!!」

「緑谷君、大丈夫か?」

 

 好事魔多し。順調に進んでいた出久だったが、配管で足を滑らせて落下してしまい、結局クラスメイトの大方の予想通り瀬呂が一位となった。

 

「(なるほど。足場の不安定な状況では飛ぶ先への注意も加味すべし……。学ぶことは多い……)」

「一番は瀬呂少年だったが、皆入学時より『個性』の使い方に幅が出てきたぞ!! この調子で期末テストへ向け準備を始めてくれ!!」

 

 一組目へ労いの言葉をかけて次の組への準備を促していく。他の4人は残りの組を見学するため『OZASHIKI』に向かう。

 

「そっか、期末もうすぐか」

「驚いたぜ、見違えたよ!」

 

 出久も立ち上がり皆について行こうとするとオールマイトに小声で声をかけられた。皆には見えない角度で左手でサムズアップしながら小声で話を続ける。

 

「この授業が終わったら私の元へ来なさい」

「? はい……」

「君に話さなければならない時が来た……私とワン・フォー・オールについて」

「!!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 『君に話さなければならない時が来た……私とワン・フォー・オールについて』

 

 更衣室で着替えながら、先ほどのオールマイトの言葉を思い返す。改まった言い方……。何だろう……何か怖いな。

 

「久しぶりの訓練楽しかったねー! 何か、自分や他の皆のレベルアップが感じられてさ!」

「そうですわね。皆さんも職場体験先で指導してもらったヒーローから得た知識や経験を糧にしているみたいでとても有意義な時間でしたわ」

「でも、私や耳郎ちゃんは移動に有効な個性じゃなくて素の身体能力で挑まなきゃいけなかったからレースの成績自体は散々だったね」

「確かに、ウチはまだ詳細な位置の把握とかで使えたけど、葉隠なんて今回は特に難しかったよね」

「まあ、こればっかりは仕方ないわね。今は皆の得手不得手を見極める段階でもあると思うから」

「それにしても、今回一番びっくりしたのはデクちゃんだよねー!」

「へ? 僕が何?」

 

 考え事してて皆の話全然聞いてなかった!

 

「今日の救助訓練レース! ピョンピョン跳んですごかったねって話!」

「ああ、そうだったんだ……」

「一週間見ない間で何かものすごく変わってて、モニターで見てた皆もびっくりしてたよ!」

「以前までの緑谷さんは瞬間的なパワーはすごいですが不安定な部分も見られました。それが今日の訓練では足を踏み外すミスはありましたが、終始安定していたように見えましたわ」

「職場体験先で何か掴んだの!? 教えて教えてー!」

「ていうかさ、緑谷って何箇所か指名あったけど、その中からじゃなくて結局別のところに行ったんだよね。何でなの?」

「確かに、あまり聞いたことないヒーローの事務所だったわよね……」

「え、えーっと……」

 

 どうしよう? 別にグラントリノさんのこと話しても大丈夫だよね? オールマイトの先生ってことも言っていいのかな? まあ、いっか。

 

「えっと、職場体験に行ったヒーロー事務所の人と特訓したんだ。グラントリノってヒーローなんだけど……」

「聞いたことないなあー。皆知ってる?」

「私知らなーい」

「私も」

「私も聞いたことないわ」

「ウチも全然聞いたことない。ヤオモモは?」

「私も聞いたことありませんわ。もちろん私も全てのヒーローを存じ上げてるわけではないのですが……」

「ヤオモモでも知らないヒーローの事務所なんて……どんなきっかけでそこに行くことになったわけ?」

「じ、実は……その人、オールマイトの担任だった人なんだ」

「「「「えーーーー!!!?」」」」

「うわ!?」

 

 麗日さん・芦戸さん・葉隠さん・耳郎さんの声が更衣室に響く。蛙炊さんと八百万さんも声こそ出してなかったけど、とても驚いた顔していた。

 

「そんな凄い人のとこに職場体験行ったの!? 緑谷すごいじゃん!!」

「なんでその人の事務所へ?」

「えーっと、雄英体育祭で僕のことを見たみたいで……」

「それで有望だと見られたと!?」

「いや、オールマイトの指導がなってないから自分が鍛えてやるってことで直接連絡があって遅れて指名したみたい……」

 

 本当は違うけど、完全に間違いでもないからこういうことにしておこう。

 

「ええ!? あのオールマイトのことをそんな風に言えちゃうの!?」

「ちょっと待って。オールマイトの先生だったってことは、その人一体幾つなのかしら?」

「確かオールマイトは年齢不詳ですけど、少なくとも30年以上のキャリアになりますからおそらく50歳は超えてるかと」

「で、そのオールマイトを教えてたってことは雄英にいたんだよね。先生達の平均年齢が30代だからどう少なく見積もっても60半ばから70近く、下手したら80歳くらいかも!」

「そんな人と組手して大丈夫だったの? デクちゃんの超パワー受けたらプロヒーローでも危ないのに」

「攻撃はほとんど当たらずボコボコにされました……」

「すご……」

「それほどの実力を持つ方が名を知られていないのは不思議ですわね……」

「もうほとんど隠居してるみたいだから、今回のも暇つぶし……みたいな感じだったのかも」

「なるほど、世間は広いんだねー」

「それで組手に慣れたところでパトロールに出たらヒーロー殺しの事件に巻き込まれちゃって」

「あんたツイてないわねー。いや、その程度で済んだのはむしろツイてるのかな?」

 

 耳郎さんがそういうと皆の視線が下の方に移る。ヒーロー殺しの攻撃を受けた左足の脛。一応、リカバリガールに治癒を施してもらえたけど、授業もあって疲労が残るとまずいということで最低限の治癒のみだったから傷跡自体はまだ残ってる。

 

 流石に切り傷を見せて歩くのは僕も嫌だったから普段履かないようなニーソックスを履いてる。登校時に麗日さんはお揃いって言って喜んでたけど、理由を話すと驚きと悲しげな表情をしていたのを思い出した。

 

「あんた増強系で近接戦闘多くてただでさえ怪我しやすいんだからさ、もっと気をつけなよ」

「そうだよー。私達確かにヒーロー科だけど、女の子でもあるんだからさ」

「安定性が増せば、怪我の頻度も減ると思いますわ」

「まだまだやること多いけど、一緒に頑張りましょう、出久ちゃん」

「緑谷ならできるよ!」

「デクちゃんがんばろ!」

「……うん、ありがとう皆……」

 

 皆の優しさに思わず泣きそうになる。オールマイトからOFAを受け継いだ時から覚悟してたけど、やっぱり身体に傷が残るのはお母さんを心配させるから思うところはある。

 

 これ以上そんなことがないようにもっともっと頑張らなくちゃ!

 

「ところでところでー、その特訓の成果で気になったことがあるんだけどー」

 

 そう言う芦戸さんを見ると悪戯っぽい笑顔を浮かべてる。2ヶ月近く付き合ってきてわかったけど、こんな顔する時は碌なこと考えてない!

 

「救助訓練での動き、めちゃくちゃ爆豪に似てたよね!」

「ええ!? そ、ソウカナー?」

「あ、それ私も思った。爆豪君が爆破で跳んだり空を飛んだりする時、あんな動きしてるよね」

「麗日さん!?」

「確かに、緑谷さんは爆破の個性ではありませんが、空中での身体の制御や着地後の身のこなしは爆豪さんの動きに酷似してましたわ」

「八百万さん!?」

「後、モニターで出久ちゃん見てた爆豪君、めちゃくちゃ怖い顔してたよー」

「ほらほら、爆豪本人にもバレてるじゃん♪」

「ううう……」

 

 皆にまでわかっちゃうなんて、確かに動きの参考にはしたけどここまでバレるとは予想外だよ……!

 

「えーっと、確かにかっちゃんの動きを参考にしたけど昔から見慣れていたからで……」

「でもでもー! こんな短期間で皆にわかるまで動き真似できるなんて普通じゃないよ!」

「何でかなー? 何でなの出久ちゃん♪」

「芦戸さん、葉隠さん……」

 

 芦戸さんも葉隠さんもニヤニヤしてる。もちろん透明人間の葉隠さんの顔は見えないけど、声色や雰囲気から容易に想像できる。

 

「ゲロっちまいな。自白した方が罪は軽くなるんだよ」

「ゲロなんて……そんな麗日さんみたいな」

「デクちゃん……」

「ああ!? ごめん麗日さん! そういう意味じゃなくて……」

「じゃあ、どういう意味なん?」

「お茶子ちゃん、笑顔が怖いわ」

「ほらほら、さっさと観念……ん?」

 

 話してる途中で耳郎さんの動きが止まった。どうしたんだろう?

 

「耳郎ちゃん? どうしたの?」

「静かに!」

 

 小声で僕らに言うと壁の方を向いて何かを探してる。あっちって、確か男子更衣室があったような……。

 

「……あった」

「あったって……何が?」

「これ」

 

 耳郎さんが指し示した場所には……壁にできた500円玉ほどの穴。どうやら、隣の部屋に繋がってるらしい……ってそれって!

 

「耳郎さん! それってもしかして!」

「そう、覗き穴よ。いつ誰が作ったか知らないけど、今ちょうど峰田が気づいたみたい」

「峰田が!」

「それじゃあ間違いなく……」

「覗いてくるわね峰田ちゃん」

「耳郎さん! 早く塞いでしまいましょう!」

「ちょっと待って、今ふざけたこと言ってやがるから」

「ふざけた事?」

 

 疑問符を浮かべる僕らにも覗き穴を通してその声は聞こえてきた。

 

『八百万のヤオヨロッパイ!! 芦戸の腰つき!! 葉隠の浮かぶ下着!! 緑谷のムチムチムキムキボディ!! 麗日のうららかボディに蛙炊の意外おっぱァアアアイ!!!』

 

 ムチムチムキムキボディって……峰田君、最低……。

 

「……死ね……」

 

 そう小さく呟いて、耳郎さんはイヤホンジャックを覗き穴に差し込み、即座に振動を叩き込んだ。

 

『アアアアアア!!??』

 

 覗き穴を通じて峰田君の断末魔が聞こえる。流石に擁護の余地も弁解の余地もないよ峰田君……。

 

「ありがと響香ちゃん」

「さあ、耳郎さん。すぐ塞ぎましょう!」

「う、うん。お願いヤオモモ……(ウチだけ何も言われなかったな)」

「……ってちょっと! もう休憩時間少ししかないよ!」

「あかん! おしゃべりに夢中になり過ぎちゃった」

「皆急ごう! 次相澤先生だから遅刻はまずいよ!!」

「相澤先生じゃなくても遅刻はまずいけどね!!」

 

 そうして僕らは猛スピードで着替えを終えて、次の授業へと急いだ。




というわけで第33話でした。保須編での重苦しい雰囲気を変えることができたかなと思います。訓練後のガールズトークは書いてて楽しかったですw 来月末で投稿から1年を迎える予定でここまでのペースで続けられるとは思ってませんでした。今後もマイペースで続けていくので、応援よろしくお願い致します!
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