僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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毎度お待たせしました! 第34話です! もうテストとは縁遠い年になりましたが、いまでもテストって言葉を聞くと緊張しますよね? 出久達はどのように期末テストに臨むのか! それでは、どうぞ!


第34話 知れ!! 昔の話!! そして、備えろ期末テスト!!

Side:Izuku

 

「失礼します」

 

 ヒーロー基礎学終了後、オールマイトといつも話をする仮眠室に行くとすでにオールマイトがソファに座っていた。

 

「掛けたまえ」

 

 雰囲気が……いつもと違う。なんだか、ちょっと怖い……。

 

「いろいろ大変だったな。近くにいてやれず、すまなかった」

「そんな……オールマイトが謝ることでは……。それより……あの、ワン・フォー・オールの話って……」

 

 オールマイトにそう返しながらテーブルを挟んだ位置に座る。授業中、自分の番が終わってからずっと気になってた。着替えてる時はそんな場合じゃなかったけど……。

 

「君、ヒーロー殺しに血を舐められたと聞いたよ」

「!? あ、はい。血を取り入れて体の自由を奪う『個性』で……それが何か……」

「力を渡したときに言ったこと、覚えているかい?」

 

 力を渡した時……実技試験当日に多古場海浜公園だったから、確か……。

 

「『喰え』……」

「違う、そこじゃない」

 

 むっ。せっかく渾身のモノマネだったのに……。

 

「『DNAを取り込められるなら何でも良い』と言ったはずだ」

「!?」

 

 言ってた。髪の毛のインパクトで忘れてたけど、たしかにそう言ってた。

 

「え!? じゃあまさか……ヒーロー殺しにOFAが……!?」

「いや、ないよ。君ならそれを憂慮しているかと思ったが……そう……忘れてたのね」

 

 あの時は戦うのに必死でそれどころじゃなかったから、全く思い至らなかった……。

 

「OFAは持ち主が『渡したい』と思った相手にしか譲渡されないんだ。無理矢理奪われることはない、無理矢理渡すことは出来るがね」

 

 そうなんだ。でも、最初に聞いたときOFAは『個性(ちから)を『譲渡』する個性(ちから)』と言っていた。その個性単体じゃ役に立たないし、ましてや存在すら把握できないのに、どうしてわかったんだろう……。

 

「特別な『個性』なのさ。そう、その成り立ちもね」

 

 僕の内心の疑問に答えるようにオールマイトの言葉が続く。

 

「OFAは元々()()()()()()()』から派生したものだ」

 

 個性から派生したもの? 一体どういう……。

 

「オール・フォー・ワン、他者から『個性』を『奪い』己がものとし……そしてそれを他者に『与える』ことのできる『個性』だ」

「オール……。皆は……一人の為……?」

 

 OFA(ワン・フォー・オール)AFO(オール・フォー・ワン)。確かチームスポーツ、ラグビーを表す言葉だったと思う。それにしても……AFOってとても強力で……支配的な個性だと思う。まさに『全ては一人の為に』。でも、そんなAFOからどういう経緯でOFAが生まれたんだろう。それに、どうしてオールマイトはそのことを僕に話すんだろう……。

 

「これから話すことは個性が初めて確認された『超常黎明期』の頃まで遡る。私自身が直接体験してはいないし資料も残されていない部分もあるが、私たちの『先達』が語り継いできたことで多くが事実であると認識している。君のこれからのことにも大いに関係がある。心の準備はいいかな?」

 

 これは僕がOFAを受け継いでいくのに必要なことなんだろう。僕を真っすぐに見据えるオールマイトに僕も目を合わせて答えた。

 

「……はい、お願いします!」

 

 

 

 オールマイトが話した内容は俄かには信じられない内容だった。

 超常黎明期、人類の混乱。それを自身の『個性(オール・フォー・ワン)』でまとめ上げていった悪の支配者。続く暗黒時代。それに抗おうともがいたOFAの最初の持ち主、AFOの……弟。語られる内容は以前なら……それこそ雄英に入学する前ならSF小説や映画で読んだり観たりするようなものと言えたけど、これまでのオールマイトと過ごしてきた時間、ナイトアイさんやグラントリノさんから聞いたこと、それに僕自身が雄英に入学して体験したUSJ事件やヒーロー殺しの事件を思い返すとそれは作り話なんかじゃないと理解できた。

 

「皮肉な話さ。正義はいつも悪より生まれ出ずる」

「そ、そんなこと……」

 

 でも、昔何かの本で読んだことがある。

 

 『勇者は最初から勇者として存在するのではない。悪に立ち向かうことによってはじめて勇者と呼ばれるのである』

 

 ヒーローも最初からヒーローだったわけじゃない。事故や事件、(ヴィラン)に対応するために生まれたんだ。オールマイトの言っていることは間違いじゃないんだ……。

 

「で、でも……その成り立ちはよくわかったんですけど……。そんな大昔の悪人の話……なんで今それが……」

 

 

 僕の疑問にオールマイトは至極当然のように答える。

 

「『個性』を奪える人間だぜ? 何でもアリさ。成長を止める『個性』……そういう類を奪い取ったんだろう」

 

 そんなこと、あり得るのか…? いや、今までの話からすると十分あり得たことだろう。実際に現代でも長生きする個性の持ち主は確認されている。遥か昔に同じような個性があったとしても不思議じゃない。

 

「半永久的に生き続けるであろう悪の象徴……、覆しようのない戦力差と社会情勢……。敗北を喫した弟は後世に託すことにしたんだ。今は敵わずとも……少しずつその力を培って……いつか奴を止めうる力となってくれと……と」

 

 あの日、オールマイトと会った日に言われた言葉を思い出す。

 

 『1人が力を培いその力を1人へ渡しまた培い次へ……、そうして救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶!!!』

 

 オールマイト、だけじゃない。それ以前の……超常黎明期にまで遡る純然たる悪に立ち向かおうとした人たちが紡いできた……培ってきた個性、ワン・フォー・オール。

 

 こんなにも重いものだったなんて!

 

「そして、私の代で遂に奴を討ち取った!! ハズだったのだが……奴は生き延び、『敵連合』のブレーンとして再び動き出している」

 

 オールマイトが大怪我をして、その活動時間が大きく制限されることとなったのが約6年前。恐らく、その原因がAFOとの戦い……。

 

「OFAは言わばAFOを倒す為受け継がれた力! 君はいつか奴と……巨悪と対決しなければならない……かもしれん」

「……」

 

 ナイトアイさんが言っていた……。『オールマイトの()()()()()()()のは荷が重すぎて、認められない』と。

 

 ようやく意味がわかった。オールマイトはそれほどまでに大きなものと戦い続けてきたんだと。そんな巨悪にただの無個性が、木偶の坊が立ち向かうなんて無理だ。ナイトアイさんの抱いていた懸念も当然だ。

 

 でも……それでも……!

 

「酷な話になるが……」

「頑張ります……!!」

 

 申し訳なさそうに言うオールマイトに間髪入れずに答える。

 

「オールマイトの頼み……何が何でも応えます! あなたがいてくれれば僕は何でも出来る……出来そうな感じですから!!」

 

 僕はオールマイトに、絶体絶命の状況でも諦めないあなたに憧れたのだから!

 

「…………ありがとう」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Almight

 

「……そろそろ次の授業だな。時間を取らせてすまなかったね」

「いえ、大丈夫です! オールマイト。その、この話はナイトアイさんやグラントリノさんは……」

「……ああ、当然彼らも知っている」

「そう……ですか」

「これから、彼らにもいろいろ協力してもらうと思う。時間は限られているが我々で君を育てていくつもりだ。一緒に頑張って行こう!」

「……!? はい! お願いします!!」

「……ハハハ。ほら、授業に遅れてしまうよ?」

「あ、はい! 失礼しました!」

 

 そう言って緑谷少女は急いで教室へと向かっていった。

 

 先ほどまで真剣な表情をしていたのに、慌てて走る年相応の表情に思わず顔がほころぶ。

 

 彼女の姿が見えなくなると、深くため息をつく。私自身も無意識に緊張していたことが今になってわかる。

 

 『頑張ります……!! オールマイトの頼み……何が何でも応えます! あなたがいてくれれば僕は何でも出来る……出来そうな感じですから!!』

 

 本当に健気で真面目ないい子だ……。

 

 ……だからこそ、私は彼女に伝えるべき言葉が言えなかった。

 

 『私は……多分、その頃にはもう君のそばにいられないんだよ』

 

 緑谷少女のおかげでナイトアイとも和解できたが、私も彼も彼の視た予知が気になりそのことについて話せていない。だが、敵連合の存在が大きくなり、今後もその活動が活発になることが予想されるなら、私達もそれに向き合わなければならないかもしれない……。

 

 胸元のスマホ……私用のものではなく、ナイトアイとの連絡のために用意したものを取り出しコールする。

 

『こちらナイトアイ。オールマイト、何かあったのか?』

 

 数コールでナイトアイが電話に出る。業務中だというのにありがたい。

 

「急に連絡して済まない。今時間は大丈夫かな?」

『ちょうど書類整理が終わったところだよ。それで、要件は?』

「緑谷少女についてだ。……さっき、私とAFOとの因縁について話したよ」

『……緑谷君は何と?』

「……頑張ります、と。私の頼みなら応えてみせると、言っていたよ……。」

『彼女らしいね……』

「ああ……。だが、そのために私の未来について……伝えることができなかった……」

『……』

「……ナイトアイ、今度会って……私の未来を『視て』くれないか?」

『!! オールマイト、それは……』

 

 ナイトアイの戸惑いがスマホ越しにも伝わる。無理もない。私達が一度袂を分かつことになったのも未来予知が原因だった。

 

「緑谷少女と出会い和解してから敢えて話題にすることを避けてきたが、AFOの暗躍が見え隠れする中私も手をこまねいてはいられない。予知を引き延ばすにしろ覆すにしろ、それがどんな状況だったか詳細を確認しなければならない。協力してくれ、ナイトアイ!」

 

 目の前にナイトアイはいないのにそれでも頭を下げて協力を願う。こんな時に自分も日本人なのだなと自覚してしまい少しおかしく感じる。私の問いにナイトアイが考えを巡らせていて時間が刻一刻と流れていく。

 

『……わかった、協力しよう』

「!! ナイトアイ、ありがとう!!!」

『ほかならぬ貴方の頼み、それに緑谷君のためだ。私にできることならいくらでも手を貸そう』

「ああ、恩に着るよナイトアイ」

『ただ、今少し立て込んでいてね。しばらくは時間が取れそうにないんだ』

「そうなのかい?」

『ヒーロー殺しの一件以来、チンピラ崩れの敵の起こす事件が増えてきてね。組織だった動きなどは今のところまだ見当たらないが、今後もそうとは限らない。全国的に協力体制を取れるようにHN(ヒーローネットワーク)を通して周知しているが、まだそこまで考えている事務所は多くない』

「なるほど、わかった。私の方も試験前で忙しくなるから、時間が作れるのはもう少し後になるだろう。落ち着いたらまた連絡を取っていこう」

『ああ、そのようにしよう。また、なにかあったら連絡を』

 

 そうして、通話を切った。

 

 ……今までのことについて葛藤もあっただろう。それでも、協力してくれると言ってくれたナイトアイに感謝は尽きない。

 

 私もできることを精一杯やっていこう。

 

 先達にしてくてくれたこと……お師匠がしてくれたことに報いれるように!!!

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 日々の授業をこなしていき、気が付けば季節は初夏を過ぎ、まさに夏本番を迎えようとする中1-Aは放課後のHRを行っていた。

 

「えー……そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らが30日間……一ゕ月休める道理はない」

「「「まさか……」」」

 

 相澤の不穏な言葉に教室中に緊張が走る。ヒーロー養成の国内最高峰・最難関の雄英高校ヒーロー科であれば、噂を抜きにしてもそのカリキュラムの多さ・厳しさは広く知れ渡っている。それゆえ、生徒達は続く相澤の言葉を固唾を飲んで待っていた。

 

「夏休み、林間合宿やるぞ」

「知ってたよーーー!! やったーーー!!!」

 

 相澤の言葉に教室中に歓喜の声が響く。無論学校の授業であることに変わりはないのだが、普段と異なる環境に身を置くことは大きな刺激になるので生徒達は大喜びだった。

 

「肝試そー!!」

「風呂!!」

「花火」

「風呂!!」

「カレーだな……!」

「行水!!」

「自然環境ですと、また活動条件が変わってきますわね」

「いかなる環境でも正しい選択を……か。面白い」

「寝食皆と!! ワクワクしてきたぁあ!!」

 

 テンションが上がり、普段はクラスを諫めるはずの飯田・八百万の委員長・副委員長も含めてまだ先の林間合宿への期待……一部ややおかしな者もいるが……を口々に話していた。

 

「ただし……」

 

 そんな空気も相澤の一睨みで一瞬のうちに静かになる。

 

「その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は……学校で補習地獄だ」

「「みんな頑張ろーぜ!!」」

「クソ下らねー」

 

 成績に不安のある者は危機感を感じて互いに発破をかけあう。勝己は林間合宿自体に興味は無いが、それでも期末テストは一学期の集大成であるため、それに意識を向けているのは彼をよく知る出久にはわかった。

 

「(期末テスト、林間合宿か……。期末テストがどんなものになるかはわからないけど、林間合宿は集中的に訓練できるはずだから絶対に落とせない。頑張らなきゃ!)」

 

 期末テストへの意欲をにじませながら、出久はまだ続くHRに耳を傾けていた。

 

 

 

「全く勉強してねーーー!!」

「全く勉強してなーい!!」

 

 そして時は流れ、6月最終週……期末テストまで残すところ一週間を切っていた。

 

「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねーーー!!」

「あっはっはっは!」

 

 そんな中で上鳴と芦戸の絶叫が教室に響き渡る。彼らとて国内最難関の雄英に合格しているので学業の面では優秀なのだが、カリキュラムの多さと実技のため予習復習まで手が回らず、悪戦苦闘することになっていた。もちろん、彼ら自身の性格や習慣にも理由はあるのだが……。

 

「確かに、行事続きではあったが」

「中間はまあ……入学したてで範囲狭いし特に苦労なかったんだけどな……。行事が重なったのもあるけどやっぱ、期末は中間と違って……」

「演習試験もあるのが辛えとこだよな」

 

 上鳴・芦戸以外にも日々の授業に付いて行くのに精一杯の生徒が多いので、二人の不安に共感できる部分はあった。

 

「あんたは同族だと思ってたのにー!」

「おまえみたいな奴はバカではじめて愛嬌出るんだろが……! どこに需要があんだよ……!」

「『世界』かな」

 

 クラス内9位と意外な高順位の峰田に最下位を争う二人のしょうもない悪口雑言が飛んでくるが、峰田はどこ吹く風でそれを聞き流していた。

 

「芦戸さん、上鳴君! が……頑張ろうよ! やっぱ全員で林間合宿行きたいもん! ね!」

「ウム! 俺もクラス委員長として皆の奮闘に期待している!」

「普通に授業受けてりゃ赤点は出ねえだろ」

「言葉には気をつけろ!!」

 

 そんな二人を励ます出久・飯田・轟だったが、クラス内でも上位の三人に悪意なく言われて上鳴はより惨めな気持ちになったようだった。

 

「お二人とも、座学なら私お力添え出来るかもしれません」

「ヤオモモーーー!!!」

 

 項垂れる二人に八百万が助け舟を出す。クラス内成績1位の彼女は二人にとってまさに救いの女神に見えただろう。

 

「演習の方はからっきしでしょうけど……」

「?」

 

 そんな彼女は彼女で悩みを抱えているのだが、それを知る者はほとんどいなかった。

 

「お二人じゃないけど……ウチもいいかな? 2次関数ちょっと応用つまずいちゃってて……」

「わりィ俺も! 八百万古文わかる?」

「おれもいいかな? いくつかわからない部分あってさ」

「え?」

「「「お願い!!!」」」

「あああ……! 皆さん……! 良いデストモーーー!!!」

「「「やったーーー!!!」」」

 

 人は頼られれば誰しも嬉しいもので、先刻までの心の憂いもどこかにやって八百万は級友の助けとなるよう全力で励む決意をしたのだった。

 

「この人徳の差よ」

「俺もあるわてめェ、教えころしたろか!」

「おお! 頼む!」

「(あんなかっちゃんを気にかけてくれる切島君の方が人徳あると思うけど……。それにしても、かっちゃんも少しは丸く……なったのかな……)」

 

 キレながらも試験勉強を手伝うことになった勝己を見て、出久は中学の頃とは全く違う光景になんとも言えない気持ちが沸き起こるのを感じていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

「普通科目は授業範囲内からだからまだなんとかなるけど……演習試験、内容が不透明で怖いね……」

「突飛なことはしないと思うがなぁ」

「普通科目はまだなんとかなるんやな、さすがデクちゃん……」

「一学期でやったことの総合的内容」

「とだけしか教えてくれないんだもの、相澤先生」

「今までやったことって、戦闘訓練と救助訓練……あとはほぼ基礎トレだよね」

 

 昼食時間に皆で食事をしながら試験内容についてあれこれと会話をする。やっぱり演習試験の内容がどんなものになるかが皆気になるみたい。4月の体力テストみたいなことをするのかな? でも、あれはあくまで入学直後の僕たちを測る目的があったから期末テストでそれを課すのはいささか応用に欠ける気がするなあ……。

 

「試験勉強に加えて体力面でも万全に……あイタ!!」

「ああ、ごめん。頭が大きいから当たってしまった」

 

 話してる途中で何かが頭にぶつかった。振り返るとB組のやたら突っかかってくる男子生徒が微笑みながら立っていた。B組の人、まだ顔と名前が一致しないんだよね、えっと確か……。

 

「君は確か……物間君! わざとぶつかってくるなんて酷いじゃないか?」

「おっと、わざとだなんてしんgガッ!?」

 

 その後を続けることは出来ずに物間君は地面に倒れた、麗日さんの右フックを喰らって……。

 

「って麗日さん!? いきなり何を!?」

「デクちゃんにぶつかるなんて許せんやん? 大丈夫、峰打ちだから♪」

「いや、パンチに峰打ちなんてないでしょ……」

 

 仮にあったとしてもそんなに腰の入った峰打ちは割と致命傷になりかねない気がするんだけど……。っていうか蛙吹さん、物間君のご飯が落ちないように持っててくれてる。何このコンビネーション、もしかして示し合わせてた?

 

「え~っと、物間が迷惑かけてごめんって言おうと思ったんだけど……」

「あ! B組の拳藤さん! え~っと、これはなんて言ったらいいのか……」

「いいのいいの! 何かあったら私がこうするつもりだったから。こいつ心がちょっとアレなんだよ」

「拳藤君、彼大丈夫なのかい? ものすごく理想的なKOだったが……」

「あ~……一応大丈夫そう」

「うん、峰打ちだからね!」

「そ、そうだね……」

 

 あ、拳藤さんも顔が引きつってる。体育祭でちらっと見たけど、拳藤さんは両拳が大きくなる個性で近接戦闘を主体とするタイプだから、麗日さんの的確なパンチに驚いてるんだろうな……。

 

「そういえばあんたらさ、期末の演習試験不透明とか言ってたね」

「うん、そうだけど……」

「入試ん時みたいな、対ロボットの実戦演習らしいよ」

「え!? 本当!? 何で知ってるの!!?」

 

 拳藤さんから演習試験の内容を聞いて驚いた。本当に何で知ってるんだろう……。

 

「私先輩に知り合いいるからさ、聞いた。ちょっとズルだけど」

「ズルじゃないよ! そうだきっと前情報の収集も試験の一環に織り込まれてたんだ。そっか先輩に聞けばよかったんだ。聞ける先輩はミリオさんに波動さん、天喰さんもいるのになんで気付かなかったんだろう」

 

 最近忙しすぎてミリオさんに連絡どころじゃなかったからなあ……。一応ナイトアイさんのところにはたまに電話してるけど、ミリオさんもインターン中だからそんな気軽に……話したりはするだろうけど、やっぱり日中にかけるのはなあ……。

 

「あー、あんたも聞ける先輩いるんだね……」

「え? あ、うん。入学前からお世話になってる人がいるんだ」

「そうなんだ、こういうの結構貴重だし大事らしいから今度から聞いてみたらいいかも」

「うん、ありがとう、拳藤さん。参考になったよ」

「それじゃあ、邪魔して悪かったね。あ、コレ持ってくね」

 

 そう言って、未だ目覚めない物間君のご飯を片手に持ちながら彼を引きずってその場を後にした。う~ん、面倒見のいい姉御肌タイプな子だな。赤嶺さんをもう少しアグレッシブにした感じかも。そういえば、赤嶺さんは傑物学園だけどあっちのカリキュラムとか試験ってどんな感じなのかな? 青木さんや浅黄さんはヒーロー科じゃなくて違う高校の普通科と商業科に進んだけどそっちの授業もどんな内容かな? 今度チャットで聞いてみようかな……。

 

「っていうかデクちゃん! 先輩に知り合いがいたの!?」

「どんな人!? カッコいい!? カワイイ!?」

「あ、えーっと。一人は雄英に入る前からの知り合いで……」

「おい、しゃべるのもいいけど飯食う時間なくなっちまうぞ」

「あ、そうだった。物間君のせいで時間かかっちゃったから」

「あー!? ラーメン伸びちゃう~!」

 

 思わぬ出来事で思わぬ情報を得た僕達は急いで食事をして、午後の授業へと向かっていった。

 

「「やったあ!!」」

 

 A組に歓声が響く。

 

「んだよロボならラクチンだぜ!!」

「ほんとほんと!!」

 

 昼食時間に拳藤さんから聞いたことをクラスで話したら上鳴君と芦戸さんは手放しで喜んだ。

 

「おまえらは対人だと『個性』の調整大変そうだからな……」

「ああ! ロボならぶっぱで楽勝だ!!」

「私は溶かして楽勝だー!!」

「あとは八百万に勉強教えてもらえば期末はクリアだ」

「「これで林間合宿バッチリだー!!」

 

 確かに上鳴君と芦戸さんの個性は対人戦で調整をミスったら大怪我に繋がっちゃう。もちろんそれは僕も同じだけど……むしろ僕は自分の身体を壊さないような調整をさらに身につけなきゃならない。

 

 『君はいつか奴と……巨悪と対決しなければならない……かもしれん』

 

 備える意味でもこれからのすべてを糧にしなきゃ。

 

「人でもロボでもぶっとばすのは同じだろ。何がラクチンだアホが」

 

 考え込んでた意識がかっちゃんの声で現実に戻る。見ると鞄を担いで今から帰るみたいだけど、僕達の話を聞いててイラついてるみたい。

 

「アホとはなんだアホとは!!」

「うるせえな、調整なんか勝手に出来るもんだろアホ!」

 

 さすが才能マンのかっちゃん、勝手に出来るって言えるなんて……。もっとも、そんなかっちゃんも小さい頃からいろいろ訓練して今の実力を身に着けたんだ。僕にはそれを重ねる時間が足りない。もっと、内容を濃くしていかなきゃ……。

 

「なあ!? デク!」

「!」

 

 不意に名前を呼ばれた。かっちゃんに呼ばれたのは最近は忙しくてあんまりなかったかも。普段の授業でもプリントの手渡しはいつも無言だし……。

 

「『個性』の使い方……ちょっとわかってきたか知らねえけどよ。てめェはつくづく俺の神経逆なでするな」

「あれか……! 前のデクちゃん、爆豪君みたいな動きになってた」

「あー確かに……! あの話更衣室で盛り上がったよね!」

「え! なにそれ詳しく!」

 

 ちょっと!? 芦戸さん何言ってんの! ここでそのこと話さないでよ! ただでさえかっちゃん機嫌が悪いのに!

 

「体育祭みてえなハンパな結果はいらねえ……! 次の期末なら個人成績で否が応にも優劣がつく……!」

 

 そう言って、僕を指差す。人に指差しちゃだめだよかっちゃん。前に君もオールマイトに言ってたでしょ。

 

「完膚なきまでに差ァつけて、てめェぶち殺してやる!」

 

 鋭い視線と強い意志を僕に向けてくる。体育祭までは僕が怪我して光己さんのお願い(命令)で家まで送ってくれたりしたけど……こんなに激しく当たってくるのは久しぶりだ。……救助訓練でのことが原因かな?

 

「……それで、俺が勝ったらてめェが隠してること話せ、洗いざらいな!」

「! それは!」

「ちょっと爆豪、また賭け!? っていうか、前緑谷が勝った奴はちゃんとやったの!?」

 

 芦戸さん! 余計なこと言わないで! 僕もちょっと忘れてたけど!

 

「ああ!んなもん言わねえデクが悪ィんだよ! 俺に言うんじゃねえ!」

「踏み倒すなんか無しだからね!」

「当たり前だ、俺をなめんな!」

 

 一応、勝ち負けに関する約束は守るんだよね、かっちゃんは……。

 

「轟ィ。澄ました顔してっけどてめェもだからな!!」

「……俺爆豪に隠し事何てないぞ?」

「そこじゃねえわバカか!!! 完膚なきまでにぶっ殺してやるからな!!!」

 

 そう言ってドアを乱暴に開けてかっちゃんは帰っていった。……轟君、ここであんな返しするなんて……。

 

「……俺なんか悪いこと言ったか?」

 

 小首を傾げる仕草、う~ん……イケメンは何しても絵になるなあ……。他の皆も何とも言えない表情で轟君と出ていったかっちゃんのいる方向を交互に見ていた。

 

「……久々にガチなバクゴーだ」

「焦燥……? あるいは憎悪……」

 

 切島君がその場にいる皆の気持ちを代弁するように言葉をした。けど、常闇君の言ったこと……焦燥、確かにそれはあると思う。でも、憎悪……僕に対しては昔からきついけど、憎しみとはまた違う気がする。悔しさ……なのかな? 何から来る……劣等感? かっちゃんが? 僕に? そんなことがあるわけ……。

 

「……ちゃん、デクちゃん!」

「わ!? ああ、麗日さん。どうしたの?」

「どうしたの、じゃないよ。話しかけても上の空だったし」

「なんかこの間の救助訓練以来ずっとイライラしてるみたいだったし。真似されたくらいでみみっちい男だね」

 

 麗日さんと耳郎さんが僕を心配してくれてたみたい。

 

「っていうか出久ちゃん、あの賭けのお願いまだやってないんだね」

「てっきりもうやってたかと思ったのに……。そうだ、今回爆豪が勝ったらお願いで『チャラ』にしてもらおうよ!」

「それやったら絶対かっちゃん怒るからやめておくよ……」

 

 まず間違いなく爆破されるだろうなあ……。中学校でも直接やられることはほとんどなくなってたし、雄英に入ってからも訓練以外ではそんなことなかったし……。

 

「それにしても出久ちゃんよかったのかしら? 承諾はしてなかったみたいだから賭け自体無効になると思うのだけど……」

「う~ん、どうだろう? もちろん僕も負けるつもりはないけど……」

「大丈夫ですわ♪」

 

 僕と蛙吹さんの会話に八百万さんが満面の笑みで加わってきた。……なんだろう。笑顔なのになんだか『凄み』があるような……。

 

「揉めた場合は私達が証人になりますわ! それにこのICレコーダーで録音もバッチリ……」

「八百万さん!?」

 

 ちょっと待って!? 女子皆の笑顔……葉隠さんは透明だからわからないけど、纏ってる雰囲気が怖い! これは……かっちゃんの身の為にも僕が絶対に勝たなきゃ!

 

 

 

 そして、全員でどうにか筆記試験をやり抜いて、とうとうやってきた演習試験当日。

 

「それじゃあ、演習試験を始めていく。この試験でももちろん赤点はある。林間合宿行きたけりゃみっともねえヘマはするなよ」

 

 体育館・運動場への移動の中継地点となってるバス乗り場。そこにA組一同揃って相澤先生の話を聞いているん……だけど。

 

「先生多いな?」

「……5、6、……9人?」

 

 耳郎さんも葉隠さんも、当然皆も気づいてると思う。先生の数が明らかに多い。これは一体……?

 

「諸君なら事前に情報を仕入れて、何するか薄々わかってると思うが……」

「入試みてぇなロボ無双だろ!!」

「花火ー! カレー! 肝試しーーー!!」

 

 筆記試験を乗り越えて上鳴君と芦戸さんはかなり気分がハイになってるみたい。だけど、……なんかこの感じは……。

 

「残念!! 諸事情があって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

「「「校長先生!」」」

「変更って……」

 

 言いながら校長先生が相澤先生の捕縛布の中から顔を出す。どこにいるんですか!? ああ! 上鳴君と芦戸さんが真っ白に!? でも、他の皆も驚きを隠せないみたい。一応僕もミリオさんに聞いて昨年までの内容は確認していたのに、内容変更だなんて……。

 

「それはね……敵活性化のおそれ、いや、USJでの一件以降それは確実に起こっている。そんな中でロボを使用した戦闘訓練は実戦的ではない。そこで……これからは対人戦闘・活動を見据えたより実戦に近い教えを重視するのさ! というわけで……諸君らにはこれから二人一組(チームアップ)でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

「先……生方と……!?」

 

 麗日さんの声が漏れる。でも、そこも大事だけど……二人一組。これも重要なポイントだよ。誰と組むのか、どう戦うのかが勝敗の鍵になる。

 

「尚、ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績・親密度……諸々を踏まえて独断で組ませてもらったから発表していくぞ」

 

 皆が内容を理解しようとする中で相澤先生が淡々と説明していく。既にペアが決まっている、それなら僕は誰と組むんだろう……。親密度なら麗日さんや飯田君になるのかな? でも、一学期の成績を出すのにその部分だけでペアを組ませるとは思わないけど……。

 

「まずは轟と八百万がチームで……俺とだ」

 

 轟君と八百万さんがチームで相澤先生と!? 推薦入学組でなおかつ成績もA組でも上位の二人、だけど相手は『抹消』の個性の相澤先生だ。あの二人でもなかなか厳しいんじゃないのか?

 

 

「そして緑谷と……爆豪がチームだ」

 

 みどりやとばくごう……、緑谷は当然僕だからばくごうって……かっちゃん!!? 僕とかっちゃんがチーム!!?

 

 かっちゃんを見るとかっちゃんも信じられないような顔で僕の方に向き直っていた。なんで……かっちゃんと……!

 

「で……相手は……」

「私がする!」

 

 頭上から大きな人影が降りてきて僕らの前に着地した。その人は……オールマイト!? 僕とかっちゃんで、オールマイトと戦うの!?

 

「「オールマイトが!?」」

 

 図らずもかっちゃんと声が重なってしまう。普段ならかっちゃんが怒りそうだけど、あまりの驚きにそんな反応はできないみたいだ。こんな……これが演習試験だなんて……!

 

()()()()勝ちに来いよ、お二人さん!!」

 

 いつものように不敵に笑って……僕らを挑発するように言うオールマイト。

 

 この演習試験……突破できるのか!? 僕達二人に!?




というわけで第34話でした♪ また長くなっちゃいましたねw各話ごとの文量のバランスが上手くいきません、何故なんでしょうw まあ、一応曲がりなりにも定期的に投稿できているので良しとしましょうw そんなこんなで期末試験に臨む出久とかっちゃんですが、果たして期末テストを無事突破できるのでしょうか!? 今後もマイペースで続けていくので、応援よろしくお願い致します♪
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