僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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お待たせしました! 第37話です! 今回も長いです、というか今後は結構長くなっていくと思います! それではどうぞ!


第37話 林間合宿 〜始まり〜

「……とまあ、そんなことがあって(ヴィラン)の動きを警戒し、例年使わせて頂いてる合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」

「「えーーー!!」」

 

 休み明けのHR、開口一番に相澤は1ーA生徒にそう告げた。木椰区ショッピングモールで出久と死柄木が遭遇したことは半ば偶然だったが、学校側が敵連合の動きを警戒するのはこれまでの事件を考えれば当然であった。

 

「もう親に言っちゃってるよ」

「故にですわね……。話がどう伝わっているのか、学校側が把握できませんもの」

「合宿自体をキャンセルしねえの英断すぎんだろ!」

「当然だ。林間合宿は諸君がヒーローを目指す上で重要なカリキュラムの一つ、雄英体育祭同様おいそれと中止にできるものではない」

 

 相澤の言う通り、雄英のカリキュラムはヒーローになるためのものを合理的に組み込んでおり、特に1年生の夏休みに組まれている林間合宿は2学期に行われる仮免試験へのステップとして外せないものとなっている。

 

「おい、爆豪」

「ああ?」

「おめえ、今日静かだな。いつもなら緑谷に『骨折してでも殺しとけよ』ぐらい言いそうなのに」

「てめえ俺をなんだと思ってんだ! クソデクがそんなこともできないくらいすっとろいのはわかってるわ!」

「ちょっと、爆豪君もっと言い方ってあるでしょ! 出久ちゃん、敵に脅されて身動き取れなかったんだから」

「……」

 

 出久は事情聴取後に勝己や爆豪家に送ってもらったことを黙っていた。勝己も言わなかったのであえて口にすることもないだろうとの判断である。もちろん、口にすると芦戸や葉隠が乗っかってきて面倒になるのもわかるからでもあるが。

 

「何度も言ってきているがお前らはまだ学生の身、仮免を取得しているならともかくそうでないなら公共の場での個性使用は制限されている。仮免を取得するまでは無闇に行動を起こそうとするな。……緑谷」

「は、はい」

「事情は警察から聞いた。よくパニックにならずに振る舞えたな」

「……僕も、本当は怖かったですけど、何をするかわからない奴と知っていたので……無理に逆らわずに行動しました……」

「今回はそれが最適だった。これからも思いつきじゃなくて、しっかり考えて動くようにな」

「……はい!」

「よし、HRは以上だ。さっさと授業の準備をしろ。期末試験は終わったが、1学期が終わるまではしっかり授業するからな」

「「ええ〜〜〜!?」」

 

 相澤の無情な言葉に本日二度目の絶叫がA組に響いた。

 

 

 

 1学期が終業した翌日、ヒーロー科1年A組・B組は林間合宿へ向かうため学校に集合していた。普通科・サポート科・経営科は課題をこなしつつ夏休みを過ごすが、ヒーロー科は実力をさらに向上させるため夏休みを満喫する時間はない。

 

「え? A組補習いるの? つまり赤点取った人がいるってこと? ええ!? おかしくない!? おかしくない!? A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ!? あれれれれぇ!?」

「うるさい」

 

 A組の補習人数を知った物間がここぞとばかりに煽ってくるが、B組委員長の拳藤に当て身を喰らい気絶する。他のB組生徒にとってはいつもの光景なので慣れたものだが、A組にはなぜ彼がここまで突っかかってくるのか理解に苦しんでいた。

 

「ごめんな、相変わらず物間がアレで」

「物間、こわ……」

「あ、B組の……」

「アンタ、体育祭でめっちゃ目立ってた緑谷だね。体育祭じゃなんやかんやあったけど、まァよろしくね、A組の人達も」

「ん」

「うん、よろしくね」

 

 普段は関わることが少ないが、共に生活することでお互いの親睦を深めていく、これも林間合宿の目的の一つであった。

 

「バス乗るよー」

「「「はーい!」」」

「…………A組だけじゃなくB組の女子まで……! よりどりみどりかよ……!!」

「おまえダメだぞそろそろ」

「あ、あははは……」

 

 バスに乗り込むB組女子を欲に満ちた顔で舌舐めずりする峰田に出久、切島のみならず他の生徒も一抹以上の不安を抱いたが……。

 

「A組のバスはこっちだ! 席順に並びたまえ!」

 

 空気を読まないクソ真面目な飯田の号令でA組生徒も自分達のバスへと乗り込んでいった。

 

 

「おまえら、1時間後にバスを停車させる。それからしばらく……」

 

 バスを走らせてしばらくしてから相澤が宿泊所までの説明をしようとする、が……。

 

「音楽流そうぜー! 夏っぽいの! 〇ューブだ 〇ューブ!」

「バッカ夏といや〇ャロルの夏の終わりだぜ!」

「終わるのかよ!」

「ポッキーちょうだい」

「しりとりのり!」

「りそな銀行! う!」

「ねえポッキーをちょうだいよ」

「ウン十万円!」

「酷いぼったくり!?」

「席は立つべからず! べからずなんだ皆!」

「うっせー! てめえこそ黙って座れやクソメガネ!」

「かっちゃん! 大声出しちゃダメだよ……」

 

 学校から離れて合宿を行う、その目的がヒーローになるための訓練だったとしても普段と違う環境で行うこととなるため1-A生徒にとってもテンションが高まるものである。それゆえ、バスの中では皆が皆自由にはしゃいだり喋ったりしていた。

 

「……(まァいいか……。わいわいできるのも今のうちだけだ)」

 

 その様子に一時呆然とするも、すぐに気持ちを切り替え生徒たちに『つかの間の』楽しみを味わわせてやる相澤であった。

 

 

「ようやく休憩だー」

「トイレ……トイレどこ……?」

「つか何? ここパーキングじゃなくね?」

「ねえアレ? B組は?」

 

 1時間後、バスは山々を望める広めの空き地に停車した。バスから降りてきた生徒はパーキングエリアに着いたと思っていたが、それと思しき施設や店はどこにも見当たらなかった。

 

「何の意味もなく、では意味がないからな」

「先生、それはどういう……」

「よーうイレイザー!!」

 

 相澤の言葉に出久が質問するが、それはとある人物の登場でかき消されることとなった。

 

「ご無沙汰してます」

「相澤先生が敬語、しかも頭下げてる……」

「あの人達誰?」

「あああ、あれは!?」

 

 生徒の前に現れたのは、メカメカしいがどこか猫耳を彷彿とさせるヘッドフォン、女性アイドルが着るようなノースリーブの上着、膝上10cmほどのヒラヒラしたスカート『チュチュ』、ブーツ、着ぐるみのような大きめの猫の手を身に着けた妙齢の女性2人だった。

 

「煌めく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」

 

 名乗り口上とポーズを決めた2人を本人達と相澤ともう1人を除く面々は唖然と見ていたが、すぐに相澤が声を掛ける。

 

「今回お世話になるプロヒーロー『プッシーキャッツ』の皆さんだ」

「連名事務所を構える4名1チームのヒーロー集団! 山岳救助等を得意とするベテランチームだよ! キャリアは今年でもう12年にもなる……「心は18!!」

 

 久しぶりにオタクモードを披露する出久だったが、プッシーキャッツの1人・ピクシーボブに顔を押さえられその後の言葉を続けることは出来なかった。

 

「心は?」

「じゅっ18!」

「「(必死かよ……)」」

 

 触れてはいけない部分に触れてしまった出久を威圧するピクシーボブに上鳴と切島はなんとも言えない表情を浮かべ、女性にとって年齢はセンシティブであることを胸に刻んだ。

 

「おまえら、挨拶しろ」

「「「よろしくお願いします!!」」」

「はい、よろしく! さーて、ここら一帯は私らの所有地なんだけどね……あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

「「「遠っ!!」」」

 

 プッシーキャッツの1人・マンダレイが指さす場所には確かに建物と思しきものが豆粒ほどに見えていたが、ツッコミを入れた1-A生徒は違和感を覚えた。

 

「え……? じゃあ何でこんな半端なとこに……」

「これってもしかして……」

「いやいや……」

「バス戻ろうか……な? 早く……」

「そ、そうだな。そうすっか」

 

 麗日の疑問に蛙吹がある1つの予想を口にしようとするが、砂藤や瀬呂、上鳴がそれを否定する、いや否定しようと口にするが1-A生徒全員が勘付いた。

 

 林間合宿はすでに始まっていると!

 

「今はAM9:30。早ければぁ……12時前後かしらん」

「ダメだ……おい……」

「戻ろう!」

「バスに戻れ!! 早く!!」

「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」

 

 生徒達は一目散にバスに戻ろうとする、……が。

 

 ゴゴゴゴゴ……!

 

「悪いね諸君……合宿はもう始まっている」

 

 ドドドドド……!

 

「「「うわあああああ!!!」」」

 

 ピクシーボブの個性によって操られた大量の土によって出久達は眼下の森へ押し流されてしまう。

 

「私有地につき『個性』の使用は自由だよ! 今から3時間! 自分の足で施設までおいでませ! この……『魔獣の森』を抜けて!!」

 

 雄英高校ヒーロー科名物「林間合宿」の幕が上がった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

「『魔獣の森』……!?」

 

 そんな、世界で有名な某RPGのステージみたいな名前で……。

 

「なんだそのドラクエめいた名称は……」

 

 上鳴君、一応僕は固有名詞言わないようにしていたのに……。これ大丈夫なのかな……?

 

「雄英こういうの多すぎだろ」

「文句言ってもしゃあねえよ。行くっきゃねえ」

 

 切島君の言う通りだ。相澤先生の言う通り、林間合宿が始まってるならそれを乗り越えていくしかない!

 

「って峰田君、いきなり1人で進むと危な……な!?」

 

 森の駆け出していく峰田君に注意しようとしたら、峰田君の向かう先から……普通の動物とは大きさも形も異なる、まさに『魔獣』と形容するにふさわしい姿の生き物が現れた。

 

 こんなのがいるなんて!? 

 

「「マジュウだー!!?」」

『静まりなさい。獣よ、下がるのです』

「口田!!」

 

 そうだ! 口田君の個性なら動物に命令を出すことができる。これなら……。

 

「グオオオオオ!!」

「!?」

 

 口田君の個性が通じてない!? どうして……あれは、土くれ……! そうか! なら……OFA5%フルカウル!

 

 ダ! ドガ! BOOM! パキパキパキ……! DRRRR……ドン!

 

 僕とかっちゃん、轟君、飯田君の一斉攻撃で大型の魔獣は崩れ落ちた。元が土だから耐久力はそれほど高くない。でも、この辺りは山だから土は豊富にある。ぐずぐずしてたらあっという間に周りを囲まれちゃう。早く移動しないと……!

 

「デクちゃん!? そんな恰好で動いちゃダメだよー!!」

「へ? そんな恰好?」

 

 そんな恰好って……制服だから別におかしくは……。

 

「緑谷、あんたスカートの下にスパッツ履いてないの!? パンツ丸見えだよ!」

「パンチラどころかパンモロだったよ出久ちゃん!」

「緑谷の戦闘スタイルでスパッツ無しはダメだよ!」

「え゛?」

 

 そっか! 普段動くときはヒーロースーツや体操服だから気にならなかったけど、今は制服……スカート! 周りを見ると尾白君や常闇君、障子君達が目を逸らしてる……。他の皆にも見られちゃったんだ……、恥ずかしい……。

 

 って! 上鳴君、峰田君、瀬呂君なんで手を合わせて拝んでるのさ! バカなの!?

 

「出久ちゃん、とりあえず百ちゃんにスパッツを創造してもらいましょう」

「ええ、緑谷さん。私が創造するので見えないところで……」

「そんな暇ねえぞクソども!」

 

 かっちゃんの怒声に反応すると周りから多くの魔獣の気配がする。こんなにたくさんいるの!?

 

「誰もてめえの汚ねえパンツなんて興味ねえんだよクソが!」

「な!? 汚いとか失礼な! 僕がどんなパンツ履いてるかも知らないくせに!」

「どうせオールマイトの顔が刺繍されたキャラクターパンツだろうが!」

「違うよ! それは幼稚園の頃の話じゃないか! 今はオールマイトとコラボしたオールマイト柄の女性用の下着だよ!」

「たいして変わんねえわ、バカかてめえは!!」

「全然違うよ!」

「2人とも! パンツで盛り上がっている場合じゃない! この状況を皆の力で乗り越えるんだ!」

 

 飯田君に言われてハッとする。確かにこんなこと……こんなことで済ませられるのは癪だけど、そんな場合じゃない。早く抜け出さないと皆の体力も持たない。

 

 皆で力を合わせなきゃ!

 

「よし、行くぞA組!!」

「「「おおーーー!!!」」」

「緑谷のパンツ見放題だーーー!!!」

「「おおーーー!!!」」

 

 ……着いたら3人とも殴ろう……!

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……あ、やーっと来たにゃん」

 

 時刻はPM5:20、マンダレイが予想していた時刻を大きく超えていた。森から出てくる生徒は誰も彼も疲労困憊と言った様子で歩くのもやっとであった。

 

「とりあえず、お昼は抜くまでもなかったねえ」

「何が『3時間』ですか……」

「腹減った……死ぬ……」

 

 なんとかマンダレイに返事を返す瀬呂、切島だったが、疲労も空腹も限界といったところで地面にへたり込んでしまう。他の面々も同様で施設の敷地内に入って緊張が解けて次々と動けなくなっていった。

 

「悪いね。私達ならって意味、アレ」

「実力差自慢の為か……やらしいな」

「ねこねこねこねこ……でも、正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった」

 

 砂藤の恨み節にピクシーボブが攻略されたにも関わらず上機嫌で言葉を返していく。

 

「いいよ君ら……。特にそこ4人。躊躇の無さは()()()によるものかしらん?」

 

 そう続けてピクシーボブは出久、勝己、轟、飯田を指さす。4人はUSJや保須で多くの敵と対峙しているため、敵と交戦した経験ではA組の中でも上の方に数えられた。

 

「3年後が楽しみ! ツバつけとこーーー!!!」

「うわ!」

「ちょっ!」

「何してるんですか!」

「ツバつけるって、僕女子ですよ!?」

「大丈夫! 最終手段で性別変更の個性の人に頼むから!」

「え、ええ……」

 

「マンダレイ、あの人あんなでしたっけ?」

「彼女あせってるの、適齢期的なアレで」

「適齢期と言えば「と言えばって!! そう言っている間にあなたも『こちら側』よ?」

「え、えっとすみません! ずっと気になってたんですが、その子はどなたかのお子さんですか?」

 

 ピクシーボブに顔を押さえ付けられていた出久は視線を件の子に向ける。2本の角を思わせるトゲのついた帽子をかぶった男の子がいた。午前中に空き地から魔獣の森に落とされた時にもいたのだが、それどころではなかったので質問が今になっていた。

 

「ああ違う。この子は私のいとこの子だよ。洸汰! ほら挨拶しな。一週間一緒に過ごすんだから……」

 

 マンダレイにそういわれる洸汰だが、一向に挨拶する気配はなく、出久達を睨んでいた。その雰囲気を怪訝に思いながらも出久は洸汰に歩み寄って挨拶をした。

 

「えっと、僕雄英高校ヒーロー科の緑谷、よろしくね」

 

 そう言って右手を差し出したが、それも無視する洸汰。出久が首を捻っていると突然右手で殴りかかってきた。出久は直前で洸汰の動きを察知して握手の為に差し出していた右手で洸汰の拳を受け止めた。

 

「!?」

「っと! どうしたの? いきなり殴りかかったらダメだよ?」

「……うるせえ! ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねえよ」

「つるむって……ちょっと!?」

 

 そう言い捨てて洸汰は足早にその場を去った。

 

「ちょっと洸汰!? ごめんね、あとでちゃんと言っておくから」

「いえ、その何か気に障ることでもあったんですか? ずっと睨んでいるような感じでしたけど……」

「……ちょっと色々あってね」

 

 その色々を尋ねようとした出久だったが、相澤の言葉に遮られてしまう。

 

「さて、もう少しで日も暮れる。バスから荷物降ろせ。部屋に荷物を運んだら食堂にて夕食、その後入浴で就寝だ。本格的なスタートは明日からだ。さァ、早くしろ」

「はーーーい……」

 

 相澤の号令に1-A生徒は力なく返事をして荷降ろしを始めた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Izuku

 

 食事を終えた僕達は揃って浴場に来ていた。日中の対魔獣戦闘で土や泥や汗にまみれてる身体を早くきれいにしたい。本当だったら食事の前にお風呂に行きたいけど、時間帯が決まっているなら仕方ないかな。

 

「普段から更衣室で着替えたりするけど、やっぱり緑谷の身体凄いよねー! めっちゃ鍛えてて!」

「え、そうかな? でも、芦戸さんも身体能力凄いと思うけど……」

「そりゃあ、細かい動きとかキレは私も負けてないと思うけど、純粋な筋力はやっぱり負けるよ」

「そうなんだ。でも、僕もほんのちょっと前は全然身体鍛えてなくてヒョロヒョロでプニプニだったよ」

「ヒョロヒョロでプニプニってなんか面白い表現だね」

「え、それじゃあその身体ってずっと鍛え続けてきたわけじゃないの?」

「うん、1年ちょっとかな? トレーニングメニューと食事メニューをしっかりこなしたらこんな感じになったよ」

「そうなの!? 1年でそのバキバキ腹筋とむっちり太ももとバストを手に入れたの!?」

「じ、耳郎さん? 普段とキャラ違くない?」

「その身体手に入れたトレーニングメニュー教えてよ!」

「えーっと、僕の個性込みだからこんな早くなれただけで、耳郎さんがやっても同じようになるのは難しいんじゃないかな?」

「そっかー。それもそうだよね。増強系は鍛えれば鍛えるだけシンプルに筋量とかも増えるっていうもんね……」

 

 なんか、耳郎さん気落ちしてる……。普段から胸の大きさとか気にしてたもんなあ……。

 

「その……短期間じゃ難しいかもだけど継続していけば効果もでてくるk「ぜひ、教えて緑谷!」

 

 あ、圧が強い……。そんなに切実なんだね……。

 

「う、うん。ちょうど合宿でもあるから差しさわりのないようにトレーニングメニューやってこうか」

「ッシャー!!! 見てろよ峰田!!! 二度と胸がないなんて言わせないからな!!」

「え!? 耳郎さん峰田君に胸見せるの!?」

「違う! 言葉の綾って奴!」

「デクちゃーん、耳郎ちゃーん。先行ってるよー」

 

 麗日さんの声で僕らはまだ更衣室にいることを思い出した。

 

「耳郎さん、早くいこ! お風呂の時間も決まってるから」

「そういえばそうだったね」

 

 

「はー、温泉サイコー……」

「始まり方はアレだったけど、だからこそというか、より身に染みるね!」

「我が家でよく行く温泉とも遜色のないものですわ」

「百ちゃん達の行く温泉、それだけでどんなところか気になるわね……」

「食事も美味しかったし、ただの林間合宿だったら言うこと無しだったんだけどなあ……」

「まあ、そうはいかないだろうね。明日からの訓練、どうなるか……」

 

 温泉が気持ちいい……。疲れた体に暖かさが染みる……。こんなふうに浸かるのも久しぶりだけど、仲の良くなった皆と一緒に入ってることがやっぱり一番いいんだよなあ……。

 

「……や、緑谷!」

「わ! びっくりした……。何耳郎さん?」

「何じゃないよ……。呼んでも反応しないから溺れてないか心配になっちゃったよ……」

「あははは、ごめん……。それで、何かあったの?」

「それがさー、昼間に魔獣の森で爆豪と言い合ってたでしょー?」

 

 芦戸さんの言葉でかっちゃんとパンツのことで言い争いをしたことを思い出した……。

 

「さっき着替える時見たけど……さすがに私もオールマイト柄のパンツを履く気にはなれないよ」

「ええ!? そんなに変かな? ちゃんとコラボしてる商品なのに……」

「確かにいい商品なんだろうけど、なんというか、男子どもが見たいパンツかって言われたら色気がないよねー」

「ちょっと葉隠さん、どっちの味方なのさ!」

「ウチも芦戸や葉隠に賛成。家でならともかくさ、普段使いはないわ」

「麗日さんは!?」

「ごめんデクちゃん……私もこれに関しては耳郎ちゃん達や爆豪君の意見に賛成やわ……」

「私もですわ……」

 

 そんな!? 皆して酷い! これじゃ完全に四面楚歌じゃないか!?

 

「蛙吹さんは!?」

「ケロケロ、私は出久ちゃんが好きなものを着るのがいいと思うわ……」

「あす…梅雨ちゃん!!!」

「でも、私自身が着ようとは思わないわね……」

「そんな……」

 

 なんで皆オールマイト柄パンツの良さを分かってくれないんだ! デザインも肌触りも最高なのに!

 

「っていうか、そもそも男子に見られたいなんて視点がおかしくないかな!?」

「わ! 急にどうした!」

「いや、だって、芦戸さんや葉隠さんの言い方だと男子に見られたいみたいじゃない!?」

「いやいや、そうは言ってないよ?」

「見られたいってわけじゃなくて、女子っぽい下着を履きたいよねってことだよ」

「僕だって普通の下着持ってるよ!」

「いや、別にそこは疑ってないよ。ただ、普段使いにオールマイトコラボの……ん?」

「耳郎ちゃんどうしたの?」

 

 急に耳郎さんの表情が険しくなる。確か、いつだったかの演習後の更衣室でもこんなことが……まさか!?

 

「耳郎さん、もしかして……」

「そう、また峰田だよ……」

「ええ!? また!? っていうかどこから……」

 

「壁とは超える為にある!! 『Plus Ultra』!!!」

 

 壁の向こう側から峰田君の声が聞こえてくる。まさか、この高さの壁を乗り越えて!?

 

「あいつの行動力どうなってんの!?」

「皆さん、湯船に入って隠れましょう!」

 

 八百万さんの指示で湯船に深く入ろうとしたところで壁の上で動く人影が見えた。峰田君と思ったけどあれは……洸汰君!?

 

「ヒーロー以前にヒトのあれこれから学び直せ」

「クソガキィイイィイ!!?」

 

 壁を超える寸前で洸汰君に阻まれて落ちていく峰田君の声がドップラー効果を伴って浴場中に響き渡った。もう……いろいろと酷いよ峰田君……。

 

「やっぱり峰田ちゃんサイテーね」

「ありがと洸汰くーん!」

 

 蛙吹さんや芦戸さんの声に反応した洸汰君がこちらを見る。すると……、びっくしりた顔を真っ赤にして身体をのけぞらせる。そっか、洸汰君も男の子だから女の人の裸見ちゃうし恥ずかしく、……って!

 

 そう思った矢先、のけぞってバランスを崩した洸汰君が壁の向こう側、男湯の方に落ちていってしまった!

 

「洸汰君!!」

 

 BOOM!

 

 バッ!! ダンッ!!

 

 聞きなれた音が響いた中、OFA5%フルカウルで壁に飛び移って男湯の方を見る。洸汰君は!? 大丈夫!?

 

「……覗いてんじゃねえよクソが!」

「かっちゃん!?」

「ガキは大丈夫だ! とっとと降りろや痴女が!」

「な!? 痴女とはなんだ痴女とは!」

 

 僕の言葉に返事をせず、かっちゃんは浴場の出入り口に向かっていく。マンダレイのところに行くんだ! 追いかけなきゃ!

 

「デクちゃん! 洸汰君は!?」

「かっちゃんが助けてた! 僕様子見てくるね!」

「ちょっと緑谷!? ちゃんと服着てって!?」

 

 そう言って、バスタオル一枚を体に巻き付けて女湯の出てマンダレイのところへ向かった。……芦戸さんの言葉を聞き流してしまって……。

 

「マンダレイどこだろ? 事務所のところかな? ……いたいた、マンダレ……」

 

 キョロキョロ周りを見ながら移動していると銭湯の番台みたいなところにマンダレイがいて、かっちゃんと……上鳴君、切島君、瀬呂君もいるのが見えた。っていうか男子着替えるの早! っていうか、僕の格好マズくない!? さすがにバスタオル一枚は!?

 

 ようやく、マズい状況に気付いたが出してしまった声を戻す方法はなく、マンダレイとそのそばにいた全員が僕に気付いてしまった。

 

「ああ、緑谷さん……ってちょっとあなた!?」

「ああ、デク……っ!! てめえなんて格好してやがる!?」

「ああ、緑谷って!? その恰好!?」

「みみみ緑谷!? さすがにその恰好は男らしく、じゃない女らしく……でもなくてえーっと」

「緑谷! この子はもう大丈夫だから早く着替えて来いよ!」

 

 その場にいた皆が僕の格好に驚いてる。そりゃそうだよね! 高校生の女子がバスタオル一枚で歩いてたらビックリするよね! 早く服着て来なきゃ!

 

「ごごごごめんね! 服着てまた来るから!」

 

 そう言って、踵を返そうとしたけどうっかり手がバスタオルに当たって……外れちゃった……。

 

「っっ!? きゃっ!?」

 

 BBBOMB!!!

 

 見られちゃった!? 上鳴君達に!? かっちゃんはちっちゃい頃からお風呂に入ってたからまだマシだけど、他の男の子に見られたもうお嫁にいけない……。どうしよう、ごめんなさいお母さん……。

 

「ぶつぶつ言ってねえでとっとと着替えてこいや!」

「ひゃあ!? え、かっちゃん! 上鳴君達は……あれ?」

 

 かっちゃんに怒鳴られて身体を隠しながら見ると……爆破でやられたであろう煤だらけの顔で仰向けに倒れる上鳴君、切島君、瀬呂君の姿があった。

 

「君、凄い反応速度だね……。この子達、彼女の裸たぶん見れてないわよ……」

「かっちゃん、昔から反射神経が凄いんです! おそらく個性が反射神経にも作用しているかと「グダグダ言ってねえでさっさと行け!!!」

「ご、ごめんかっちゃん! 上鳴君達にも後で謝っといて!」

「こいつらの記憶には何も残さねえわ!!」

「なにそれ怖い!?」

 

 かっちゃんの声に恐怖を抱きつつ、服に着替えるべく脱衣所へ戻っていった。

 

 

「お騒がせしました……。あの……かっちゃん達は?」

 

 着替え終えてマンダレイのところへ戻るとかっちゃん達の姿は見当たらなかった。上鳴君達、気を失ってた思うんだけどどうやって運んだんだろう?

 

「ああ、他の3人なら彼が引きずっていったわよ。あれで起きないならたぶん記憶もないでしょうね……」

 

 マンダレイが苦笑しながらそのときの状況を話す。マジでかかっちゃん……。どんだけ強く爆破したのさ……。

 

「あの子と仲良いの?」

「えーっと、幼馴染です……」

「あらそうなの? よっぽどあなたの裸を見られたくなかったみたいね♪」

「そんなことはないと思いますけど……」

 

 あのかっちゃんがそんなこと考えるかな?……たぶんないと思う……けど。

 

「ところで、洸汰君は大丈夫ですか?」

「ええ、落下の恐怖で失神しちゃっただけだね、ありがとう。イレイザーに『1人性欲の権化がいる』って聞いてたから見張ってもらってたんだけど……最近の女の子は発育良いからねえ、あなたもいい身体してるわよ」

「えーっと、ありがとうございます……」

 

 明日からどんな顔して上鳴君達と会えばいいのさ!? マンダレイやかっちゃんが言うように記憶はないんだろうけど……。

 

「……」

「どうかしたの?」

「その、洸汰君は……ヒーローに否定的なんですね」

「ん?」

「僕の周りは昔からヒーローになりたいって人ばかりで……あ、僕も……。それで、この歳の子がそんな風なの珍しいな……って思って」

「……そうだね。当然世間じゃヒーローを良く思わない人も沢山いるけど……普通に育ってればこの子もヒーローに憧れてたんじゃないかな」

「普通……?」

 

 一体どういうことなんだろう……?

 

「マンダレイのいとこ……洸汰の両親ね。ヒーローだったけど、殉職しちゃったんだよ」

「え……?」

 

 奥からやってきたピクシーボブの言葉に僕は気の抜けた声しか上げられなかった。

 

 

「あ、デクちゃんやっと戻ってきた」

「今までどこ行ってたの?」

「うん、マンダレイのところで洸汰君の様子見てたんだ」

 

 部屋に戻ると、他の皆はおしゃべりしたりトランプをやったりしてだいぶ寛いでいた。僕が洸汰君の様子を見に浴場を飛び出してから結構時間経ってるから、皆の髪も結構乾いていてあとはもう寝るだけって感じだ。

 

「洸汰君、大丈夫だった?」

「うん、気を失っていただけだから、休めば大丈夫らしいよ」

「そっかー、良かったー」

「あの高さから落ちたらウチらでも無事じゃすまないからね」

「爆豪さん、普段の言動は荒々しいですがなんだかんだ言ってもヒーロー志望なのですね」

「あははは……そうだね」

「ねえねえ、緑谷が戻ったら女子トークしようって話してたんだよね!」

「やろうやろう!」

「うーんと、僕疲れちゃったからもう寝るよ」

「ええー!? せっかくの林間合宿だよ! 寝るなんて勿体無いよ!」

「そうだよー! 寝る間も惜しんで語ろうぜー!」

 

 芦戸さんと葉隠さんがどうにかして女子トークを始めようとあれこれ言ってくる。正直なところはやりたい気持ちもないわけじゃないけど、()()()を聞いた後ではとても……。

 

「明日から本格的に始まりますから、今日は早めに休んだ方がいいかと」

「だね、流石に初っ端から寝坊で遅刻とか勘弁したいからね」

「女子トークは明日にしましょ」

「っていうわけでお休みなさい」

「むむむ、でも確かに私も眠い……」

「仕方ないね、それじゃあお休みー」

 

 皆口々にお休みを言ってそれぞれの布団に入る。僕も皆と同じように布団に入るが、先ほどのマンダレイの話を思い出してなかなか寝付けない。

 

『私のいとこ夫婦、2年前に敵から市民を守ってね。ヒーローとしてはこれ以上ない程に立派な最期だし、名誉ある死だった』

『でも、物心ついたばかりの子どもにはそんなことわからない。親が世界の全てだもんね』

『『自分(ぼく)を置いて行ってしまった』のに世間はそれを良い事・素晴らしい事と誉めたたえ続けたのさ……』

『洸汰にとってヒーローは理解できない気持ち悪い人種なんだよ』

 

 小さい頃からヒーローに憧れていた僕にとっては考えもつかない思いつきもしない考え方だった。だけど……。

 

『救えなかった人間などいなかったかのようにヘラヘラ笑ってるからだよなあ!!』

 

 この前遭遇した死柄木もヒーローに対して憎悪に近い感情を抱いていた。立て続けに聞く価値観の相違、今まで当然と思っていたものが他人にとってはそうではないと知って、考えがまとまらなくなっている。

 

 ダメだ。このままじゃ、明日に差し支えちゃう。早く寝なきゃ!

 

 ぐるぐると巡る思考を押さえ込むように布団を頭まで被せて無理やりに眠りについた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「お早う諸君」

 

 合宿二日目、AM5:30。朝日がようやく顔を出し始めた頃、すでに1年A組は体操服に身を包んでいた。……もっともまだ寝ぼけ眼の生徒もちらほらいるが。

 

「本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は全員の強化及びそれによる『仮免』の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かう為の準備だ。心して臨むように」

 

 相澤の言葉に皆が固唾を飲む。USJ事件に端を発し、立て続けに大規模な事件が起こっており脅威は目に見えて増えてきている。それに対抗するための力を身につけるべく、行われる林間合宿である。A組生徒も徐々に気が引き締まってきた。

 

「というわけで爆豪。こいつを投げてみろ」

 

 そう言って相澤が勝己に投げ渡したのは……。

 

「これ……体力テストの……」

 

 入学初日に行われた体力テスト。その際に使用された飛距離を測定できる特注のボールだった。

 

「前回の……入学直後の記録は705.2m……。どんだけ伸びてるかな」

「おお! 成長具合か!」

「この3ヶ月色々濃かったからな!1kmとかいくんじゃねえの!?」

「いったれバクゴー!」

 

 芦戸や瀬呂、上鳴が勝己を囃し立てる。彼らもこの3ヶ月間、雄英のカリキュラムをこなしてきた自負があり、その初日で行われた体力テストへの想いも並々ならぬものがある。勝己にも当然あり、肩を回して入念に準備運動を行う。

 

「んじゃ、よっこら……くたばれ!!!」

 

 BOOM!!!

 

 前回とそう変わらない物騒な掛け声と共に爆破を発動させてボールを投げ飛ばした。ボールはぐんぐん飛んでいきやがて視界から見えなくなった。

 

 

「……709.6m」

「!!?」

「あれ……? 思ったより……」

 

 前回とさほど変わらない記録に勝己だけでなく周囲も困惑の表情を浮かべる。入学からこれまで学んできたことは確かに実感として自分達の中にある。それなのに自分ではないといえ同様に励んできた勝己の記録が伸びていないのはなぜなのか?

 

「約3ヶ月間、様々な経験を経て確かに君らは最長している」

 

 そんな彼らの胸中を読んでいたように相澤は言葉を紡ぐ。

 

「だがそれはあくまでも精神面や技術面、あとは多少の体力的な成長がメインで『個性』そのものはそこまで成長していない」

 

 相澤の言葉に皆がハッとする。確かに授業では個性を使用する際の注意点や立ち回り、技術的な学習はしたが、各々の個性を伸ばすような直接的な言及、アドバイスはなかった。

 

「だから、今日から君らの『個性』を伸ばす。死ぬほどキツイがくれぐれも……死なないように」

 

 相澤が人の悪い笑みを浮かべて忠告をする。

 

 林間合宿、地獄の特訓が幕を開ける……。




というわけで第37話でした! 今回の出久ちゃんはラッキースケベのせいで散々でしたねw 男子諸君には眼福だったでしょうw 上鳴君達はそれ相応の代償を払ってなおかつ記憶にないでしょうがw 今後は1話1話にいろいろ詰め込んでが長くなると思いますが、楽しめるように書いていきたいので今後も応援よろしくお願い致します!
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