「補習組、動き止まってるぞ」
「オッス……!!」
「すいません……。ちょっと……眠くて……」
「昨日の……『補習』が……」
「だから言ったろ、キツイって」
林間合宿三日目、続・『個性』を伸ばす訓練。相澤・ブラドキングの2教師とプッシーキャッツの4人の指導を受けながら各々に組まれたメニューをこなしていく。連日の訓練で生徒達の疲労も溜まってきていることが動きから見てとれるが、期末テスト赤点のA組5人、B組1人の計6人は特に顕著だった。
それもそのはずで、補習組に課せられた補習は夜9時開始で途中休憩を入れて深夜2時の計5時間というものだった。起床時間は7時となっているため睡眠時間は5時間であり、座学だけであったとはいえ10代の回復力をもってしても厳しいものがあった。
「砂藤・上鳴は
5人の顔を見ながら各々の弱点・課題点をあげていく。厳しい指摘だがヒーローは常に危険と隣り合わせの職業、失敗は生死に関わるため指導する相澤の言葉が強くなるのも当然であった。
「麗日! 青山! お前らもだ。赤点こそ免れたがギリギリだったぞ。30点がラインだとして35点くらいだ」
「ギリギリ!」
「心外☆」
「気を抜くなよ。皆もダラダラやるな」
一旦言葉を切って、周囲で特訓に取り組む生徒を見渡しながら全員に聞こえるように言葉を続ける。
「何をするにも原点を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何の為に汗かいて何の為にこうしてグチグチ言われるか、常に頭に置いておけ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Izuku
原点……か。僕の原点は、小さい頃に見たオールマイト……。ん?
「そういえば相澤先生。もう三日目ですが……」
「言ったそばからフラっと来るな」
「す、すみません。今回オールマイト……あ、いや他の先生方って来ないんですか?」
一応、と言ったら語弊があるけどオールマイトも雄英の教師でヒーロー科1年のヒーロー基礎学を見ているから合宿にも一緒に来るかなって思ってたんだけど……。
「合宿前に言った通り、
「よってあちしら4人の合宿先ね」
「そして特にオールマイトは敵側の目的の一つと推測される以上、来て貰うわけにはいかん。良くも悪くも目立つからこうなるんだ、あの人は……」
『悪くも』の割合が大きそう……。あと相澤先生、『ケッ』って言っちゃダメだと思いますけど……。
……そっか。オールマイト来ないのか……。
「ねこねこねこ……それより皆! 今日の晩はねぇ……クラス対抗肝試しを決行するよ! しっかり訓練した後はしっかり楽しいことがある! ザ! アメとムチ!」
「ああ……忘れてた!」
「怖いのマジやだぁ……」
「闇の饗宴……」
確かに肝試しがあるって話忘れてたなあ……。やっぱり、この辺りの森の中を通ったりするのかな……? 幽霊とかには懐疑的だけど、それでも怖いものは怖いよ……。耳郎さんもめっちゃ嫌がってる……。常闇君のあの言葉、どっちの意図なんだろう? 望むところなのか、それとも反対に恐怖を表してるのか、どっち?
「イベントらしい事もやってくれるんだ」
「対抗ってところが気に入った」
物間君が不敵な笑みを浮かべてるけど……もの凄く体調悪そう……。芦戸さんの話だと深夜2時まで補習だったみたいだから寝不足気味なんだと思うけど、それでも対抗って言葉に目を輝かせてるのは……うん、どうなんだろうね……。
「というわけで、今は全力で励むのだあ!!!」
「イエッサァ!!!」
おお! 皆のやる気が上がった気がする! やっぱり楽しいことがあるとモチベーションも上がるもんね! ……肝試しが楽しいかは個人の感覚によるけど……。
それにしても……原点を意識する、か……。オールマイト……。僕にはまだOFA100%は無理だけど、少しずつ使える比率を高めていかなきゃ! 時間は待ってくれない!
「おい!」
「ひゃい!?」
「プルスウルトラは?」
「は、はい!」
虎さんが腕組んでめちゃくちゃこっち見てる!? さすがに凄い威圧感だ! 回原君や宍田君も凄い必死だ! よし! 僕も頑張るぞぉ!
「はあ……はあ……はあ……」
合宿も三日目、虎さんのメニューにもついてこれるようになってきたけど、まだまだ足りない……! もっと頑張らなきゃ!
「はい、緑谷。水分補給も大事だよ」
「拳藤さん! ありがとう!」
「なんか、気合入れ直したって感じ?」
「うん。さっきの相澤先生の原点って言葉で自分がなんでヒーローに憧れたかを思い返して……」
「そう……。ちなみに緑谷ってどうしてヒーローになろうって思ったの?」
「僕は……小っちゃい頃にオールマイトの活躍をテレビで見て……それからはずっとオールマイトオタク・ヒーローオタクで……」
「なんか珍しいね。女子でオールマイトに憧れるなんてさ」
「そうかな? 僕の周りが男の子が多かったからそうだったのかもしれない……」
「まあでも、やっぱりNO.1ヒーローってのは皆の憧れだからね、ファンじゃなくてもあんな風になりたいって少しは思うもん」
「拳藤さんは憧れのヒーローっていたの?」
「私は特定のこの人、ってヒーローはいなかったけど身を挺して頑張るヒーローってやっぱりカッコいいなって思ってさ。緑谷とは違って一途ではないかもしれないけどね」
「そんなことないよ。きっかけは少し違うけど同じヒーローを目指してるんだから」
「……そうだね」
「そうだよ! ……それにしても……なんか回原君と宍田君、今日口数少ないね?」
「確かに……でも、動きは昨日と特に変わりなく……というか昨日より動いてる気がするから疲れが原因ってわけじゃないと思うけど……」
「回原君、宍田君。大丈夫? 熱中症とかなってない? 僕が言うのもなんだけど無理したらダメだよ?」
「あ、ああ。ありがとう緑谷」
「気遣いに感謝しますぞ緑谷氏」
「? どういたしまして……」
なんだろう? なんか昨日に比べて少し距離があるような……?
「(昨日の男子会で顔や身体の話したから緑谷と拳藤の顔がまともに見れない……! 緑谷、マジで目パッチリしててよく見たら結構かわいいんじゃねえか!?)」
「(2人とも身長や見た目は華奢っぽく見えますが、引き締まった身体をしていて……! それに、私は個性で嗅覚も強化されるから2人の、……匂いが……!?)」
「「(このままじゃマズい!!!)」」
「虎さん! 俺達と組手してくれ!」
「是非お願いしますぞ!」
「お、男子ども気合が漲っているな!! よし、来い!」
うわあ、回原君達凄いなあ……! 結構長い時間トレーニングしてるのにまだ動けるなんて! よおし! 僕だって!
「拳藤さん! 僕らも組手やろう! 回原君達が虎さんとやってる間は2人で、その後は僕ら2人で虎さんに挑もう!」
「いいよ! 私らもあいつらに負けてらんないしね!」
一度汗を拭ってから、立ち上がって拳藤と向かい合う。……行くぞ!
午後5時、三日目の訓練が終了した。すぐにお風呂に入ってすぐに夕食の準備に取り掛かる。今日のメニューは肉じゃがだ。鍋を使う煮込み料理は大人数で食べる場合も作りやすいよね。
「爆豪君包丁使うのウマ! 意外やわ……!!」
「意外って何だコラ! 包丁に上手い下手なんざねえだろ!!」
「出た! 久々に才能マン」
「皆元気すぎ……」
かっちゃんすご!? 昔から器用だったもんね……。でも、包丁に上手い下手は確実にあるよ……。僕なんか指切り落としちゃいそうだもん……。出来る人が上手い下手ないっていうのは嫌味でしかないよ……。
まあ、適材適所はあるから僕は僕にできることをしようっと。薪を運んで窯に入れて……。
「オールマイトに何か用でもあったのか?」
「あ、轟君……」
「相澤先生に聞いてたろ」
「ああ……っと、うん。洸汰君のことで……」
「洸汰? 誰だ?」
「ええ!? あの子だよ、ホラ! えと……」
あれ? またいない……。『ひみつきち』かな……? 本当に……嫌なんだな……。
「マンダレイのいとこの子なんだけど。その子がさ、ヒーロー……いや、『個性』ありきの超人社会そのものを嫌ってて、僕は何もその子の為になるような事言えなくてさ。オールマイトなら……何て返したんだろって思って……」
まだ何物でもない、ただの高校生の僕と違ってNO.1ヒーローのオールマイトが話していたら洸汰君の反応も違ったのかな?
「……轟君なら、何て言う?」
「…………場合による」
「っ……そりゃ場合によるけど……!!」
「素性もわかんねえ通りすがりに正論吐かれても煩わしいだけだろ。大事なのは『何をした・何をしてる人間に』言われるか……だ。言葉単体で動くようならそれだけの重さだったってだけで……言葉には常に行動が伴う……と思う」
「轟君……」
『小心者で『無個性』の君だったから!!! 私は動かされた!!』
『君はヒーローになれる』
そうだ。あの日、僕がかっちゃんを助けようと動いたことが……オールマイトの心を動かしたんだ……!
「……そうだね。確かに……通りすがりが何言ってんだって感じだね」
「お前がそいつをどうしてえのか知らねえけど、デリケートな話にあんまズケズケ首突っ込むのもアレだぞ。そういうの気にせずぶっ壊してくるからなお前、意外と」
「……なんか、すみません……」
体育祭の時はほんとにズケズケ突っ込んでいっちゃったから気を付けないとなあ……。
「君達手が止まってるぞ!! 最高の肉じゃがを作るんだ!!」
飯田君は今日もフルスロットルだなあ……。
「……さて! 腹もふくれた! 皿も洗った! お次は……」
「肝を試す時間だーーー!!」
「「「「試してーーー!!!」」」」
食事も終わり後片付けも一段落したところでいよいよ本日のメインイベント、肝試しの時間だ。それにしても、芦戸さんテンションが高い。上鳴君、切島君、瀬呂君、砂藤君もめっちゃノリノリだ。
「その前に、大変心苦しいが……補習連中はこれから俺と補習授業だ」
「ウソだろお!!?」
ええ!? 今から肝試しなのに補習授業に連れて行かれちゃうの!? 芦戸さん達あんなに楽しみにしてたのに……。
「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたので
「「「「「うわああ!? 堪忍してくれえ!? 試させてくれえ!!」」」」」
叫びもむなしく捕縛布に拘束されて5人が相澤先生に引きずられていく。その様子に脳内でドナドナが聞こえてきちゃった……。っていうか、相澤先生の力凄いな!? 5人を余裕で引きずって行ってる!?
「あー、残念ながらあの子らは不参加ということで。んじゃ、気を取り直して肝試しのルールを説明していくよ! まず脅かす側先攻はB組。A組は2人一組で3分置きに出発。ルートの真ん中に名前を書いたお札があるからそれを持って帰ること! B組はもうスタンバってるよ!」
ピクシーボブが大きな地図を見せながら説明してくれる。全体の所要時間は約15分か。思ったより長いかも……。
「闇の饗宴……」
「(また言ってる)」
常闇君また言ってる……。あとでどんな意味か聞いてみようかな? それにしてもいつもの賑やかしメンバーが全員いないから空気が神妙になっちゃってる。
「脅かす側は直接接触禁止で、『個性』を使った脅かしネタを披露してくるよ」
「創意工夫でより多くの人数を失禁させたクラスが勝者だ!」
「やめて下さい、汚い……」
確かに……失禁は嫌かな……するのもされるのも。行く前に一度トイレに行っておこうかな……。
「なるほど! 競争させることでアイデアを推敲させその結果、『個性』に更なる幅が生まれるというワケか。さすが雄英!!」
飯田君、相変わらず都合よく解釈するよね……。でも、あながち間違ってなさそうでもあるし、本当にそんな狙いもある、のかな……?
「さあ! クジ引きでパートナーを決めるよ!」
そう言ってピクシーボブが持ったクジを近くの人から順序良く引いていく。誰とペアになるかな? 麗日さんや蛙吹さんと一緒だといいけど……。男子だと……飯田君はうるさそうだし、轟君はリアクション薄そうだし、峰田君は……うん、考えないでおこう。かっちゃんはうんと小っちゃい頃お化け屋敷に一緒に入ったことがあったと思うけど、もしペアになったらその時以来になるのか……。うん? 2人一組……? 20人で5人補習だから……1人余っちゃう!? まあ、でもその確率はそんなに高くないはずだし……。
「余っちゃった……」
「クジ引きだから……必ず誰かこうなる運命だから……」
「さすがに女子1人はなあ……どこかを3人一組にしちゃおうか?」
「緑谷! こっち来い! オイラ達の組になれ!」
「必死過ぎるだろ峰田……」
「いや、峰田のところに緑谷入れるのはちょっと……尾白には悪いけど」
「おいデク!」
「かっちゃん? 何」
かっちゃん何だろ? もしかして、自分達の組に入るようにとか!?
「変われ!!」
「え、えぇぇ……?」
「こいつと2人で行くくらいなら1人の方がマシだ!」
「爆豪、俺とは嫌なのか?」
「なんでてめえは残念そうなんだよ! 気色悪いわ!」
「うーん、爆豪君と轟君の中にデクちゃん入れるのも2人に気ぃ遣うと思うからデクちゃん気の毒だわ……」
「なら私達かお茶子ちゃん達、ヤオモモちゃん達のどちらかに組み込もうか?」
「異議あり! ただでさえ女子2人のチームに入れるのは明らかに偏り過ぎなので反対!」
「あんたは女子と一緒にまわりたいだけでしょ! つーかあんたと一緒だったらなにされるか分かったもんじゃないじゃん!」
「ならこうしよう! 緑谷君は委員長の俺と口田君の組に入れる。スタートする順番的にも問題ないと思う。口田君、どうかな?」
「ぼ、僕はそれでいいよ。緑谷さんは大丈夫かな?」
「う、うん。僕もそれで大丈夫だよ」
「てめえ飯田ぁ!! ふざけんなよ!! 強権使ってんじゃねえよ!! 民主主義守れや!!!」
「峰田うるっさい!!!」
「ぎゃあああ!!?」
飯田君に抗議する峰田君は耳郎さんのドックン攻撃で黙らせられた。こう言う時容赦ないよね耳郎さん……。
かっちゃんに呼ばれた時、一緒に回れるかもって……ちょっと期待しちゃったんだけどな……。
「よおし! 組も無事決まったところで肝試し、START!!!」
「では、行ってくる」
「いざ行かん……漆黒の闇の中へ……」
「常闇君がどんな心境なのか、めちゃくちゃ気になるわー」
「麗日さんも? 僕も気になるから後で聞いてみようかなって思ってるんだ」
「そうなんや! そん時私も一緒でいい?」
「あー、2人ともそれはちょっと……」
「そっとしておいた方がいいんじゃないかな?」
「耳郎さん、葉隠さん? なんで?」
耳郎さんが複雑そうな表情をしてる。なんか聞いちゃいけないことなのかな?
「なんでって言われても……ねえ?」
「尾白君、説明してあげて」
「え!? 俺!? いや、俺も説明なんてできないし……」
「尾白君、どういうこと?」
「えーっと、ほらなんというか俺ら男子ってカッコつけたがるというか……常闇に聞くのはなんというか、芸人に一発ギャグやダジャレの解説をさせるみたいな……」
「? よくわかんないねデクちゃん」
「そうだね麗日さん。尾白君、やっぱり常闇君に直接聞くことにするよ」
「そ、そっか。ならいいんだ……」
「尾白、お前はよくやったよ。何も悪くない」
「すまん常闇。俺にはどうすることもできなかった……」
尾白君が何やら項垂れて峰田君に励まされている。トレードマークの尻尾も力なく垂れてて元気がない。どうかしたのかな?
「尾白君、どうかしたの? 昼の訓練で疲れちゃったのかな?」
「ああ……うん」
「まあ、そう、かもね……」
「? あ、そうだ! かっちゃん!」
耳郎さんと葉隠さんが微妙なトーンで話すのを疑問に思ったけど、急に思い出してかっちゃんに声をかける。
「あ゛あ゛!?」
「驚かされても個性で爆破しちゃダメだよ? 相手の人が怪我しちゃうから」
「てめえ俺がビビると思ってんのか!? てめえこそガキの時みたいにションベン漏らさねえようにせいぜい気をつけな!」
「な!? それにそれはうんと小っちゃい時の話でしょ!?」
「はい、次の組スタート!」
「ちょっと!? なんとか言ってよかっちゃん!? ほんっとにデリカシーないんだから!」
「デリカシーないというか、あれガキだよね、完璧に」
「ほんと、素直じゃないというかなんというか……」
「あかん、私トイレ行っておこうかな……?」
「お茶子ちゃん私も行くわ」
「ありがと梅雨ちゃん。じゃあ、ちょっと行ってくるね」
「時間はまだ大丈夫だけど、すぐ戻ってきてねー」
麗日さんと蛙炊さんはそう言ってトイレに向かった。ほんとにかっちゃんデリカシーないんだから……! ……かっちゃんこそ大丈夫かな? 轟君もいるから大丈夫だと思うけど、ほんとに個性発動させたらB組の人達が危ないからなあ……。
そんなこんなで順調に進んでいき、5組目の麗日さん達まで出発して行った。
遠くから女の子の悲鳴が聞こえる。アレは耳郎さんと葉隠さんかな? アレだけ反応いいと脅かしてる側は楽しいだろうなあ。
「暗闇に響く女子の声、いいな」
「何言ってんだよ峰田。そろそろ俺達の番だから準備するぞ」
「それじゃあ、6組目……ん? ちょっと待って。何焦げ臭いの……」
「え? ……でも確かに……」
「アレは……黒煙?」
「何か燃えてんのか?」
「マンダレイ、ラグドールやB組の皆に連絡を……ちょっと!? 何これ!? 後ろに引っ張られ……きゃあ!?」
「ピクシーボブ!?」
周囲に漂ってきた焦げ臭い匂いと遠目に見える黒煙にピクシーボブが全員にテレパスを送るよう指示を出そうとしたところで、何かに引っ張られるように急に後ろに飛んでいってしまった。慌てて全員で追いかけていくと日中訓練を行なっているひらけた場所に辿り着く。すると、そこには…………!!
「本当は『テレパス』のマンダレイを引き込みたかったけど、こいつの『土流』も厄介だからまあ、結果オーライってとこかしら」
「何で……! 万全を期したはずじゃあ……!! 何で……何で
「ピクシーボブ!!」
そこにいたのは長身に長い髪を靡かせたサングラスの男と異形型、おそらく爬虫類の動物の個性をもつ男が立っていた。ピクシーボブは男達に足元に倒れていて、攻撃を受けたのか頭から血を流していた。
何で……! こんなところに敵が!!
「やばい……!」
敵が現れた原因を考えているとマンダレイの呟きが聞こえた。やばい……確かに敵に合宿場所がバレてしまった現状は確かにやばいけど……。
……!? 洸汰君!!?
食事の時も肝試しの時も洸汰君の姿は見えなかった。おそらく『ひみつきち』にいるんだろうけど、敵が来ている中で1人でいるのは危険だ! すぐにでも保護に向かわないと……!
『皆!!!』
これは、マンダレイのテレパス!! そうか!? これで全員に危険を知らせられる!
『敵2名襲来!! 他にも複数いる可能性アリ! 動ける者は直ちに施設へ!! 会敵しても決して交戦せず撤退を!!』
交戦せず……! やっぱり、プッシーキャッツの私有地とはいえここは雄英の外! 個性による攻撃は制限を受けるか……!
「ご機嫌よろしゅう雄英高校!! 我ら敵連合開闢行動隊!!」
「敵連合……!? 何でここに……!!」
敵連合……! ヒーロー殺しの事件からしばらくは動きを見せてなかったのに……!
「この子の頭、潰しちゃおうかしらどうかしら? ねえどう思う?」
「させぬわこのっ……!!」
「待て待て、早まるなマグ姉! 虎もだ、落ち着け」
異形型の敵がサングラスと虎さんを制止する。一体何が目的なんだ……!?
「生殺与奪は全て、ステインの仰る主張に沿うか否か!!」
「ステイン……!
ステイン……ヒーロー殺し! やっぱり、あいつの主張に感化された連中が敵連合に加わってるんだ!
「そして、アァそう! 俺はそうお前、君だよ
異形型敵、スピナーは飯田君を名指しして背に携えた……いくつもの刃物を繋ぎ合わせた大剣を抜き取って構えた。あんな物を扱えるのか……!
「何でもいいがなあ貴様ら……! その倒れている女、ピクシーボブは最近婚期を気にし始めててなあ……。女の幸せ掴もうって……いい歳して頑張ってたんだよ……。そんな女の顔キズモノにして、男がヘラヘラ語ってんじゃあないよ!!!」
虎さんが鬼の形相に……!? そうだよ、学生の頃から一緒に頑張ってきた仲間がこんな風にやられて怒らないはずがない!
「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」
「虎!! 『指示』は出した! 他の生徒の安否はラグドールに任せよう。私ら2人はここを押さえる!! 皆行って!! 良い!? 決して戦闘はしない事! 委員長引率!」
「承知致しました! 行こう!!」
スピナーを迎え撃つ虎さんとマンダレイ。マンダレイが僕らに避難の指示を出すけど、おそらく……洸汰君が心配なんだ!
どうする!? マンダレイはここを押さえなきゃいけない! 洸汰君の居場所を知っているのは、洸汰君を助けられるのは……僕しかいない!
「……飯田君、先行ってて」
「緑谷君!? 何を言ってる!?」
「緑谷!!」
「いいから行って! マンダレイ!!」
飯田君達に先に行くよう伝えて、マンダレイに呼びかける。
「僕、
その言葉にマンダレイがこちらを向いて驚いた表情を見せるが、すぐにスピナー達に向き直って言葉のみで伝えた。
「っ……お願い!」
返事は返さず、すぐに小高い丘……洸汰君の『ひみつきち』を目指して駆け出した。
「緑谷君!? どこに行くんだ!? 単独行動は危険だ!!」
飯田君の声を振り切って洸汰君の元へ向かっていく。本当なら複数名で行きたいところだけど、急ぐには森の中や斜面を登らなきゃならない上に場所もわからないと迷っちゃう。今は一刻を争うんだ。ごめん、飯田君! 皆!
OFAフルカウル5%で森の中を抜けて、斜面を駆け上っていくと遠目に洸汰君の姿が見えた。思った場所にいたことにホッとするけど、視界の中には……マントを纏った大柄の敵!? 今にも洸汰君を殴ろうと……! 間に合え!!!
「はあ!」
「!?」
ドガッ!!
「ぐあっ!?」
なんとか洸汰君を庇えたけど、代わりに敵の拳が僕の背中に当たる。クリーンヒットは免れたけど、それでも背中のダメージが大きい……! こんなの直撃したら骨なんて簡単に折れちゃう……。
「お前!? 何で……!?」
「ぐっ!? た、救けに来たんだよ……!」
「お前……!」
「んん? お前は……
リスト? もしかして狙いは僕ら生徒なのか!? ……くそっ! 今のでスマホ壊れた! とにかく、この場を何とか切り抜けて相澤先生達に伝えなくちゃ!
舌舐めずりしながら僕らを伺う敵に視線を向けながら、必死で頭を働かせる。
皆に
1人だ……僕1人……! 僕1人で何とかこの敵を!!
でも、洸汰君を守りつつ……やれるかどうか……。
後ろにいる洸汰君を見ると……恐怖に歪んだ表情で涙を浮かべて震えてる……!
……やれるかどうかじゃない!!
「だいっ……大丈夫だよ洸汰君……」
やるしかないんだ……僕1人で!!
「必ず、救けるから!!」
というわけで第39話でした! 回原君と宍田君には男子高校生らしくドギマギしてもらいましたw 描写はありませんが、おそらく他の所でも似たようなことはあったかもしれません、描写はしませんがw そして、肝試しからのいよいよ敵連合との戦いです。この辺りは特に描写したい部分があるので、楽しみにしていただければと思います! 今後もマイペースで頑張っていきますので、応援よろしくお願い致します!