僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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お待たせしました! 第40話です! 今回の出久ちゃん、いろいろ『落として』ますw それでは、どうぞ!


第40話 What is a "Hero"?

Side:Izuku

 

「必ず救けるって……? はぁははは……さすがヒーロー希望者って感じだな。どこにでも現れて正義面しやがる」

 

 大柄の(ヴィラン)が不敵な笑みを浮かべながらこちらを見ている。……こいつは確か、ウォーターホース夫婦を殺した犯人の敵『マスキュラ―』!? よりによってなんでこいつが洸汰君のところに!?

 

「緑谷ってやつだろおまえ? ちょうどいいよ。おまえは率先して殺しとけってお達しだ」

 

 

 『次会う時は殺すと決めた時だろうから』

 

 

 敵連合……死柄木の指示か! 

 

「じっくりいたぶってやっから、血を見せろ!!」

 

 そう言い放って、マスキュラ―はマントを脱ぎ捨てた。来……!?

 

 速い!? あんな巨体で!? まず……!

 

 ドン!!!

 

「ぐあっ!?」

「あ、いけね」

 

 くっ! なんとかガードが間に合ったけど、左腕が折れた……! 動きは予測できていたのに、それ以上のスピードで反応が遅れた。……あいつの身体に見えるのは……何かの繊維? もしかして、筋肉なのか!?

 

「そうそう。知ってたら教えてくれよ。爆豪ってガキはどこにいる? 一応仕事はしなくちゃあ……よ!」

 

 ドン!!!

 

 かっちゃん!? 目的はかっちゃんなのか!? 何で!?

 

「答えは『知らない』でいいか? いいな? よし、じゃあ……遊ぼう!」

 

 ドガ!!

 

「ぐあっ!!?」

 

 マスキュラ―の蹴りが僕の腹部に入り、数m飛ばされる。あの繊維状のものが筋肉だとしたら、この馬鹿げた筋力やスピードもあり得る!

 

「はっはは! 血だ! いいぜ、これだよ! 楽しいや! 何だっけ? 必ず救けるんだろ!? 何で逃げるんだよ!? オッカシイぜおまえ!」

 

 ダメだ! 今はかっちゃんの事は考えるな! 集中しろ! 目の前の敵に!

 

「はあ!」

 

 ブン! ガッ!

 

「なんだ? それが個性か!?」

 

 な!? OFA5%のスマッシュがこんなにあっさりガードされた!?

 

「いい速さだが……力が足りねえ!」

「ぐあっ!?」

 

 ガードした腕の無造作な振りで吹っ飛ばされた! ダメだ! こいつのパワーにOFA5%じゃ対応できない!

 

「俺の『個性』は筋肉増強、皮下に収まんねえ程の筋繊維で底上げされる速さ!! 力!!」

 

 やっぱり……あの繊維は筋繊維だったのか! それにしても……OFA5%であることを考慮してもこの力の差は……!

 

「何が言いてぇかって!? 自慢だよ! つまりおまえは俺の、完全な劣等型だ! わかるか俺の今の気持ちが!? 笑えて仕方ねえよ! 必ず救ける!? どうやって!? 実現不可のキレイ事のたまってんじゃねぇよ!」

 

 くっ! 衝撃で身体が動かない……!

 

「自分に正直に生きようぜ!!」

 

 マスキュラ―が左腕を振りかざしている。このままじゃやられる!?

 

 

 コツン

 

 

 左腕が振り下ろされそうなところでマスキュラ―の動きが不意に止まる。小さい音がして見ると小石が転がっている。視線をマスキュラ―の後ろに向けると……洸汰君!? マスキュラ―に投げたのか!? なんでそんな注意を引くようなことを!

 

 

「ウォーターホース……パパ……ママ……も、そんな風にいたぶって……殺したのか……!」

「洸汰君……!!」

 

 洸汰君、マスキュラ―が犯人だってことを知って……!

 

「ああ……? マジかよ……、あのヒーローの子どもかよ? 運命的じゃねぇの。……ウォーターホース、この俺の左眼を義眼にしたあの2人だ」

 

 マスキュラ―が洸汰君に向き直る。奴にとっても洸汰君がウォーターホースの子どもだったのは予想外だったみたいだ。

 

「おまえのせいで……おまえみたいな奴のせいで、いつもいつもこうなるんだ!!」

 

 洸汰君……!

 

「…………ガキはそうやってすぐ責任転嫁する。よくないぜ。俺だって別にこの眼のこと恨んでねえぞ? 俺は『殺す(やりたい)』ことやりたかっただけで、あの2人はそれを止めたがった。お互いやりてえことやった結果さ」

 

 ため息をついて、マスキュラ―は自分本位の考えを口にする。こいつ……! ウォーターホースを……趣味や運動を楽しむみたいな感覚で洸汰君の両親を殺したのか!

 

「悪いのは出来もしねえことをやりたがってた……てめえのパパとママさ!」

 

 こ、この野郎!!!

 

 バッ!!

 

「……っとなったら、そうくるよなボロ雑巾!」

 

 読まれてた! けど、そんなことはどうでもいい!!

 

「悪いのはおまえだろ!!」

 

 スピードも劣る、ダメージも与えられない! こいつは強い! 救けは来ない! なら……!!

 

 ヒュッ! バチン!

 

「!?」

「捕まえた! これで速さは関係ない」

「(折れて使えねえ腕を筋繊維に絡めて……!!)で何だ!? 力不足のその腕で殴るかのか!?」

 

 マスキュラ―も拳を振りかぶっている! やるしかないんだ!

 

「できるできないじゃないんだっ! ヒーローは!! 命を賭して……キレイ事実践するお仕事だ!!」

「(何だ!? さっきまでと様子が……!?)」

 

 OFA100%!!

 

「SMASH!!!」

 

 ドォオオン!!!

 

 

 ぐぅっ! でも……、手応えあった! これでこいつは……。

 

「う、うわあ!?」

 

 しまった! 衝撃で洸汰君が!? 間に合え!

 

「うわああああ!? ……あれ?」

ごえん(ごめん)っ! ふっおあひえ(ふっとばして)……!」

 

 よかった! なんとか口で捕まえられた! 引っ張り上げて……!

 

「あ、ありが……!?」

「ハァ……ハァ……。洸汰君大丈夫?」

「(何で……ここまで!? それに……服破けて胸が!?)」

「? とにかく施設に行こう……。ここなら近……」

 

 ドンッ!! ガラガラ……!

 

「!?」

 

 この音は……!? まさか……!

 

 振り返ると、瓦礫の中からマスキュラ―が立ち上がっていた。嘘でしょ!? OFA100%……オールマイトの力なんだよ!!?

 

 よく見ると筋繊維が先ほどより多く増殖している。攻撃を受ける瞬間に生やしたのか!? それでも100%のスマッシュに耐えるなんて……!

 

「テレフォンパンチだ。しかしやるなあ! 緑谷……!!」

 

 くっ! 両腕はもう折れてる! これからどうする!?

 

「おまえ面白いなぁ、気に入ったぜ! ……俺のモンになれ!」

「……………………はあ!?」

 

 マスキュラ―が!? 敵が!? 僕に!? 『俺のモンになれ』だって!? 

 

「い、一体どういう意味!?」

「どうもこうもそのままの意味だ。俺のモンになれ」

「だから!? なんでそうなるのさ!?」

「おまえが気に入ったからさ。感情の高ぶりか何か知らねえが、見た目はほとんど変わんねえのに完全とはいかないまでも俺にダメージを与えるほどのパワーを出しやがった、筋肉の層を超えてな。さっきは俺の劣等型なんて言ったが、あれは間違いだったな。俺とは違うタイプの個性だ。そこに興味が湧いた。自分で言うのもなんだが、俺が戦う・殺す以外で他人に興味を持つのは滅多にないぜ」

 

 意味が全くわからない! なんで、戦ってて殺されそうになってる敵から告白……なのか? されてるの僕!? 横を見ると洸汰君も『何言ってんだこいつ!?』って顔してるよ!

 

「てめえが俺のモンになりゃあ、これ以上戦わねえし他の連中を説得して引き上げてやってもいい。おまえの腕ボロボロだが、()()()()なら治す個性を持ってるか知ってるだろうからその腕も治せるだろうな。あ、爆豪ってガキはどのみち連れて行くがな」

 

 くっ! こいつが敵連合でどれほどの地位で力を持ってるかわからないけど、小細工するようなタイプに見えないからおそらく本気なんだろう。

 

「お、おまえが敵連合を抜けるってことはないのか!?」

 

 これが無理なこと、あり得ないことはわかってる! でも、少しでも時間を稼いでこの状況を抜け出すための策を考えなくちゃ!

 

「はあ? それは無理な話だ。俺は俺のやりてえことやるために敵連合に入ったんだ。そこから抜けるなんてことは……反りが合わなくならない限りあり得ねえな。そもそも、ダメージは受けたがまだ余裕のある俺と両腕ボロボロで満身創痍のお前とじゃ立場が違う」

 

 当然と言えば当然か! 今こんな話している状況だけでもマスキュラ―はかなり譲歩している。これ以上奴がこっちの有利なことをするなんてあり得ない!

 

「さあ、どうする? 俺のモンになって(こっち)側に来るか? それとも……ここで死ぬか? さっきも言ったが、俺が他人に興味示すのは滅多にねえし、ましてやこんだけ譲歩するのなんてほとんどねえぞ。よーく考えるんだな」

 

 奴の言う通り、僕は満身創痍! 一方あいつにはまだ余力がある! 

 

 どうする!?

 

 

 

 

 

「……正直、そんな風に言われたことないからかなり戸惑ってるよ」

「まあそうだろうな。おまえ見た目地味で芋っぽいもん」

「くっ! て、提案されてることも……今の状況を考えれば破格の条件だ」

「……それで? 答えは?」

「……僕は、おまえの、モノには……ならない……!」

「……………」

「僕は……オールマイトみたいなヒーローになりたいんだ! 敵になることは絶対にない……!」

「……なるほど」

「……それに」

「それに?」

「僕には憧れる、大切に想う人がいる。だから、おまえのモノにはならない」

「……」

 

 

 敵になるつもりはないけど、今の現状を考えたらすぐに答えを言えなかった。……でも!

 

 『僕はあなたみたいになりたいんだ……! あなたみたいな最高のヒーローに……!!』

 『……いつかアンタを追い越してみせる、必ずな!』

 

 僕の……僕だけのじゃない。人々を救ける……僕とかっちゃんの夢、最高のヒーローになる夢。

 

 それだけは絶対諦めない! 諦めさせない!

 

 

「……おまえの答え、よーくわかったぜ」

「……」

「……ああ、思ったより堪えるな、断られるってのは」

「……意外だね」

「ああ、自分でも女々しいと思うぜ」

「……」

「さて、結論が出たところで仕切り直すとするか。……せっかく一度は興味持ったんだ。せめて、苦しまない様に殺してやるよ!!」

「!? 洸汰君つかまって!」

「え……!? わっ!?」

「おらああ!!!」

 

 ドォオオオン!!!

 

 なんだ!? さっきまでとは比べものにならない……! さっきまでのは遊びだったんだ、本人も言ってたように!

 

「そこかぁ!」

「くっ!?」

 

 ドン! 

 

「うわ!?」

「クソ、勢いあまった」

 

 ぐっ! 隙を見て逃げられるかもと思ったけど、甘かった!

 

 

 ……洸汰君を抱えて、しかも庇いながら逃げるのは無理だ!

 

 今! ここで! 戦って! 勝つしか!!!! おまえに道はないんだ、緑谷出久!!

 

 救けるんだろ!! おまえの原点を思い出せ!!

 

「下がってて洸汰君。離れ過ぎると的になっちゃうから……うん……7歩くらい……。で、()()()()()()全力で施設へ走るんだ」

「ぶつかったらって……おまえまさか! ムリだ、逃げよう! おまえの攻撃効かなかったじゃん!! それに……両腕折れて……!」

「っ、大丈夫!」

 

 OFA100%!!!

 

「緑谷ーーー!!!」

「デトロイト、スマッシュ!!!」

 

 ドンッ!!!

 

「ってええ! どうしたぁ! さっきより弱えぞ!!!」

 

 バキ…! ボキ…! 

 

 ぐぅっ!? 骨が……砕けて……! でも……!

 

「大丈夫! ()()()()後ろには絶対行かせない!! っだから、走って!! 走れ!!」

「緑谷ぁ! てめぇ最高だな!!!殺すのが惜しくなっちまうじゃねえか!!!」

「ゔゔ……っるせええええ!!!」

「血ィイイ、見せろやあ!!!」

 

 バキバキ……!

 

 ぐぁっ!!? もう……腕治らないかも……!!

 

 『出久……もうやだよ。お母さん心臓持たないよ……』

 

 ごめんお母さん!! お母さん!!! ごめん!!

 

 『こういう破滅的な方法じゃなくて、この子のやれる別の方法を模索しなさい』

 

 ごめんなさいリカバリーガール!!

 

 『ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!』

 

 オールマイト!! オールマイト!!!

 

「潰れちまえぇ!!!」

 

 『デク……!』

 

 ……かっちゃん!!!

 

 

 ドォオオオン!!!

 

 クソッ! まだ、力が足りない!!!

 

 

 ブシャアア!

 

「な、水!?」

「や、やめろオオオ!!」

 

 洸汰君!? なんで!? 逃げたはずじゃあ!

 

「後でな! な!? 後で殺してやっから待っ……!?」

 

 グググ……グンッ! 

 

 殺させてたまるか!

 

「(気を取られた一瞬に……! いや待て、しかし……)パワー上がってねえか!?」

「ころっさせてたまるかあああ!!!」

 

 まだ、まだ出せるぞ出久!

 

 

 OFA、10,000,000%!!!

 

「デラウェア・デトロイトスマッシュ!!!」

 

 ドガッ!!! ドォオオオオオン!!!

 

 

「うわあああああ!!!」

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Kouta

 

 もじゃもじゃ髪のあいつと敵が激突して、一度つぶされたけどその後に敵以上のパワーでぶっ飛ばしやがった……!

 

 信じられない……! あの敵を……あんなにパワーがあった敵をぶっ飛ばすなんて……!

 

 『えっと、僕雄英高校ヒーロー科の緑谷、よろしくね』

 『っと! どうしたの? いきなり殴りかかったらダメだよ?』

 『『個性』に対して色々な考えがあって一概には言えないけど……そこまで否定しちゃうと君が辛くなるだけだよ』

 

 何も知らないくせに……!

 

 僕はいきなり殴りかかったのに! 何でそこまで……!

 

『洸汰、あんたのパパとママ……ウォーターホースはね。確かにあんたを残して逝ってしまった。でもね、そのおかげで守られた命が確かにあるんだ』

 

「何で何も知らないくせに……!」

 

 『あんたもいつかきっと出会う時がくる。そしたら、わかる。命を賭してあんたを救う、あんたにとっての……』

 

「何でっ……そこまで……!」

 

 あんなに酷いこと言ったのに! ボロボロになるまで僕を守ろうとして……!

 

 涙が止まらない……! あいつが……マンダレイが言ってた!

 

 僕の、僕のヒーロー……!!!

 

 

「ハア……ハア……」

 

 フラッ

 

「あ! おい!」

 

 肩で息をしていたあいつが急にふらついて倒れそうになる。慌てて声かけるとなんとかその場に踏みとどまる。

 

「おまえ大丈夫か!?」

「大丈夫……! まだやらなきゃいけないことがある……」

「そんなボ……!? ボロボロで何をしなきゃいけねえんだよ……!」

 

 こいつ……! 両腕折れてるのに……! 夢中で気が付かなったけど服だってボロボロで……む、胸も見えちゃってるのに……!? 何で……ここまで……!?

 

「防御されるのはわかってた……だからこそ撃ったんだ」

「? 何言って……」

「そこを差し引いても大ダメージを与えると思ってた。でも……思ったより遥かに強い敵だったんだよ。もし、この夜襲に来た敵全員がこのレベルなら皆が危ない。その上狙いは僕ら生徒かもしれない。その事を相澤先生やプッシーキャッツに伝えなきゃ」

 

 こいつ、怪我で意識が朦朧としているんじゃないか? それを途切れさせないよう、自分に言い聞かせてるんじゃ……?

 

「僕が動いて救けられるなら……動かなきゃいけないだろ」

「……」

 

 こんな……まだ高校生なのに……そこまで考えているなんて……。

 

「ひとまず、この敵は放置しとく。ボロボロの腕で威力は落ちたろうけどそれでも相当なダメージのハズ……。すぐには起きないと思うし起きてもまともに動けないと思う」

 

 確かに……アレだけすごい攻撃だったらしばらくは起きないかも……。

 

「何よりまず、君を守らなきゃいけない」

「え? 僕?」

「君にしか出来ないことがある」

 

 僕に……僕にしか出来ないこと?

 

「森に火をつけられてる。あれじゃどの道閉じ込められちゃう」

 

 こいつの言うように、周辺の森のあちこちで火が燃えてる。まだ火はそこまで大きくなってないけど、風向き次第ではもっと大きくなっちゃう。

 

「わかるかい? 君のその『個性』が必要だ」

 

 そう言ってしゃがみ、膝立ちで僕と目線を合わせる。

 

「僕らを救けて、さっきみたいに」

 

 両腕折れてボロボロで、身体中傷だらけなのに……初めてあった時みたいなちょっと弱々しい笑顔を浮かべて僕に救けてって言ってくれる。あんなに酷いこと言ったのに……何でこんなに優しいんだよ!

 

「さぁ、おぶさって! まず君を施設に預けなきゃ!」

「え゛!? その怪我で……動けるのかよ……!?」

 

 それにおぶさるって……こいつの……身体に触るのか!? 上……裸なのに!?

 

「その為に足を残した! 早く!」

「で、でも……その……」

「? どうしたの?」

「〜〜〜っ! おまえ、裸だろ! それなのに、おぶさるなんて……!」

「? あ!? そっか! ご、ごめん! 夢中で気付かなかった! ……洸汰君も男の子なんだね」

「〜〜〜っ!?」

「大丈夫! これぐらい気にしてちゃヒーローになれないから! それに今は緊急事態だから! 早くおぶさって!」

「……っわかったよ!」

 

 一瞬恥ずかしがって赤くなった癖に、すぐ真剣な表情でそんなこと言われたら気にするこっちがバカみたいじゃないか!

 

「っごめん! 僕腕折れて君を支えられないから、しっかり掴まってて!」

「う、うん!」

 

 こいつ、緑谷……の背に乗っかって首が締まりすぎないように掴まる。身体が密着すると……どこか安心するような匂いが……。……!? これってこいつの!?

 

「行くよ! 洸汰君! ……洸汰君? 大丈夫?」

「だ、大丈夫だから! 早く行け! 急ぐんだろ!」

「うん、それじゃあ行くよ!」

「う、うわあ!?」

 

 僕を乗せた緑谷……姉ちゃんはものすごいスピードで坂を下り、建物に向かっていった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Eraserhead

 

 炎を使う敵を一応退けた後、避難してきた峰田達に施設に入っておくよう指示をして周囲の捜索・生徒の保護に向った。

 

 完全に後手に回っちまってる! あの敵、あの場から姿を消したがあれが個性とは考えにくい。最初に使った炎が奴の個性でその後に姿を消したのは他の敵の個性と考えるのが自然だろう。となると、他にも敵がいると考えて間違いない。先ほどの衝撃音も敵によるものだとすれば生徒の命が危ない! 急いで保護せねば!

 

 

「おい! あれ!」

「……先生!」

 

 肝試しのコースを目指して衝撃音のした方向よりに向っていくとA組(うち)の生徒、緑谷の声が聞こえた。呼ばれてその方向へ目を向けると……。

 

「緑……!」

「先生! 良かった!」

 

 そこにはマンダレイのいとこの子、洸汰君を背負った緑谷がいた。土ぼこりと血に塗れた全身、ボロボロの……おそらく折れているであろう両腕、服が破けてしまったのか……裸の上半身。一眼見ただけで敵と交戦した後とわかる状態だった。このバカ! あれほど交戦するなと……いや、こいつのことだ。洸汰君を守るために戦ったんだろう。それでも、こんなにボロボロになるまで……あの両腕、戦闘訓練や体育祭の比じゃないな……。

 

「おい……」

「大変なんです……! 伝えなきゃ行けないことがたくさんあるんです……! けど、とりあえず僕マンダレイに伝えなきゃ行けないことがあって……! 洸汰君をお願いします! 水の『個性』です、絶対に守ってください!」

「おいって……」

「お願いします!」

「待て緑谷!!!」

 

 早口にそう言い残してすぐに走り去ろうとする緑谷を大声で止める。言いたいことだけ言いやがって……怪我のせいかハイになってやがる。

 

「その怪我……またやりやがったな」

「あ……いやっ……でも」

 

 こいつもわかってはいるんだ。それでも、身体が動いちまうんだろう……。ヒーロー科にいる奴は大体そうだが、こいつは少し飛び抜けている。ここで止めても止まらないだろう。なら……。

 

「だから……彼女に()()伝えろ」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ドッ! ガガガ……!!!

 

「あーん、もう近い! アイテム拾わせて!!」

「(此奴……我のキャットコンバットを読んだ動きを……!)」

 

 合宿所の訓練スペースではプッシーキャッツの虎と敵連合の敵『マグネ』が一進一退の攻防を行なっていた。どちらも肉体を直接強化する『増強型』の個性ではないが、己の鍛えた身体能力でそれらに匹敵するほどの肉弾戦を繰り広げていた。

 

 そこから少し離れてプッシーキャッツのマンダレイと敵連合のスピナーも戦っていた。個性『テレパス』のマンダレイも肉弾戦は得意ではないが、幾つもの刃物を組み合わせた大型の剣を振り回すスピナーの攻撃を躱しながら、反撃の機をうかがっていた。

 

「しつこっ……」

「い……のはおまえだニセ者! とっととされちま……」

 

 ドッ! ガッシャァアン!!

 

「ええ!? なん……ぶ!?」

 

 大きく振りかぶった大剣がマンダレイに振り下ろされた時、森の中から人影……出久が猛スピードで飛び出して大剣に両足で飛び蹴りを喰らわせた。蹴りを受けた大剣はバラバラになり、スピナーは驚愕の表情を浮かべた。

 

「マンダレイ! 洸汰君! 無事です!」

「君、緑谷さん……ってあなたその格好!?」

「い゛っ!!! っ!!! 相澤先生からの伝言です! テレパスで伝えて!!」

「! わかったわ!」

 

 上半身裸の出久の姿に一瞬戸惑うが、出久の言葉にすぐ気を取り直し言われたままテレパスを発信する。

 

 

『A組B組総員、プロヒーロー『イレイザーヘッド』の名に於いて……戦闘を許可する!!』

 

 

 出久から託された洸汰を抱え、施設へ走りながらマンダレイのテレパスが伝える己の指示を聞く。

 

「(あの(敵の)言い草は完全に生徒がターゲット……。ならやむを得ないだろう、生存率の話だ! 自衛の術を……! あとで処分受けんのは俺だけでいい。……こんな訳もわからんままやられるなよ、卵ども!)」

 

 出久達の……ヒーロー科1年の長い夜はまだ終わらない……。




というわけで第40話でした♪ 林間合宿編で出久ちゃんにモテ期来ちゃいましたかねw(1人はアレですが……w)マスキュラ―は『可愛さ余って憎さ100倍』ってタイプじゃなさそうなので、いたぶらずに一撃で殺しそうな印象がありますw 洸汰君、今回のことで好きなタイプや性癖が偏ってしまいそうですね(自分でしておいてw)少し駆け足で進めた感がありますが、原作の戦闘描写もこれぐらいかなと思っているのでまあ、大丈夫かなと。

 今後もマイペースで続けていくので、応援よろしくお願い致します!
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