(ここ、前にナイトアイさんと入った喫茶店に雰囲気が似てるかも……)
出久はサー・ナイトアイの案内でオールマイトとともに喫茶店に来ていた。雲ひとつなく太陽が照りつける屋外は、春先に関わらず非常に暑かったためエアコンが適度に効いた喫茶店の中は快適だった。
サー・ナイトアイが受付で少し話すと奥の席へ案内される。他の客の目につかず、移動の際も交わらない席となっており、サー・ナイトアイが奥の席の通路側に座る。対面する席の奥側に出久、サー・ナイトアイの正面にオールマイトが座った。
「まずは注文しよう。まだ、食事をしていないのではないかな?」
時刻は午後3時を周ろうとしていた。出久は学校を出てからの出来事が濃密過ぎて、昼ごはんを食べていなかったことにようやく気付いた。意識した途端、空腹を知らせるように出久の腹が鳴り、気恥ずかしさに彼女は頬を赤らめた。
「ここのメニューはどれも美味しいから、好きなものを頼むといい。オールマイトもどうかな?」
「そ、それじゃあ、……僕はこのカツサンドセット、アイスココアでお願いします」
「私はこのチキンドリアセット、アイスミルクティーで」
「私は特製サンドイッチセット、ホットコーヒーで」
注文を取り終えた店員が席を後にすると、しばらく沈黙が続く。どうしたらいいか出久が悩んでいると、オールマイトがサー・ナイトアイに話しかけた。
「久しぶりだね、ナイトアイ。5年は経つかな?」
「そうだな。あの日病院で別れて以来だから、それくらいになるな」
(あの日? 病院? 確か、サイドキックを解消したのもだいたいそれくらいだから、何かあったのかな?)
「今日、何故あの場所にいたんだ? しかも君は彼女、緑谷少女と顔見知り、『同好の士』と言っている。一体、どういう関係なんだ?」
「あの、僕も気になってました。なんで、ナイトアイさんがあの場所に来たのか。しかも、あらかじめわかっていたような……」
オールマイトと出久、2人は自身が疑問に思っていたことを口にした。しかし、2人の質問の中身、『何故・なんで』の部分は少々
「……まずは、オールマイトの質問、私と緑谷君の関係について説明しよう。あの場所に来た理由もそこから繋がってくる」
サー・ナイトアイが言い終えたところで、見計らったように店員が注文された料理を持ってきた。サー・ナイトアイが言っていたようにどれも手が込んでいてとても美味しそうに見える。
「せっかく料理が来たんだ、ゆっくり食べながら話そう」
サー・ナイトアイの言葉を合図に3人は食事を始めた。出久の注文したカツサンドは店長が肉からパン粉から拘って作った店の看板メニューだったらしく、カツ丼の代わりで頼んでしまったことを彼女は少し申し訳なく思った。
3人は出久のサー・ナイトアイの出会いを話し、聞きながら各自の料理を食べ進めていった。
出久がサー・ナイトアイ事務所に不定期で遊びに行くようになった話のところで、3人とも料理を食べ終えた。
「なるほど、2人が顔見知りである理由がよくわかったよ。私がきっかけというところは少々気恥ずかしいが」
「あれからもナイトアイさんの事務所でちょっとしたお掃除やお手伝いしたりしながら、オールマイト談義を続けてますよ」
「ここまで語り合える人は今までいなかったからね、私としても楽しませてもらっているよ」
「……ナイトアイ、君は変わったね」
オールマイトは思ったことをそのまま口にした。2人がコンビを組んでいた頃は、オールマイトが事件・事故現場にてヴィラン制圧や救助活動を行い、サー・ナイトアイは主に事前の情報集めや各機関との連絡調整、事後の報告書作成や提出などを担当していた。2人が出来る力を最大限に発揮できる体制ではあったがそれ故激務が続き、食事や雑談をともにする時間もほとんどなかった。たまに食事などを一緒にするときも急な連絡に備えながらであったため、リラックスとは無縁であり、今のように和らいだ表情を浮かべることはなかった。
「むしろ戻ったというべきなのかな? 本来の君はユーモアを大切にしてよく笑う人だったからね」
「いや、貴方の言う通り、私は変わったよ。確かにユーモアを大切にしてはいるが、以前はこうして穏やかに話せてはいなかった。事務所でともに働くセンチピーダー、バブルガール、インターン生のミリオ、そして緑谷君のおかげで私は今の私を得ることができたんだよ……」
「ナイトアイさん……」
サー・ナイトアイとの出会いは出久にとって転機だったが、サー・ナイトアイにとっても出久との出会いは転機となっていた。
「さて、私と緑谷君のことを説明できたと思う。ここからは何故今日、私があの場所に来たのかについて話していこう」
サー・ナイトアイはコーヒーを飲んだ後、そう言った。オールマイトへの説明として一通り2人の話をしたが、このことは出久も気になっていたのでこの場での本題の1つと言えた。
「まずは、緑谷君。私の個性について、知っているかね?」
唐突にそう質問されて出久は首を傾げた。これからの話にどう関係するのか、不思議に思ってオールマイトに視線を移すと何かを悟ったような表情を浮かべていた。そのことにますます疑問を膨らませながら、出久は答えた。
「ええと、わかりません。他のヒーローの個性も調べたりするんですけど、ナイトアイさんの個性についてはなかなか情報がなくて。噂レベルで聞いたことあるのは、『テレパシー』や『クレヤボヤンス』などの五感を強化するものですね」
「ふむ、当たらずとも遠からずだね。以前に少し言及したが、私をサー・ナイトアイとして認識できる人は少ない。その理由は情報を制限しているためだが、その一番大きな要因が私の個性が特殊だからだ」
「ナイトアイさんの、個性……」
ヒーローの持つ個性はヒーロー名と併せてそのヒーローを象徴するものであり、多くのヒーローは公表している。公表しないまでもヒーロー活動中で発揮されれば人目につくため、周知の事実として知れ渡ることとなる。
その一方で自分の個性を秘匿するヒーローも一部存在する。彼らは非肉体強化系で最前線ではなく後方支援するタイプのヒーローが一般的であり、情報を制限することで日常での安全を確保する理由が挙げられる。それでも口コミや噂、SNSなどである程度予想されており、後に公表されてその予想が大きく外れていないことも多い。
だが、サー・ナイトアイの個性はヒーローオタクの出久でさえ、知らなかった。様々なヒーロー雑誌や図鑑、検証サイトを見たが、手掛かりとなるものはなく、せいぜい非肉体強化系だろうということしかわからなかった。事務所を訪れる程の関係になったとはいえ、直接聞くのは憚られたため、それを知る機会が得られたことを出久は不謹慎と感じつつ嬉しく思った。
「私の個性、それは『予知』だ」
「予知……」
『予知』。現在もっている知識をもとにした推論では予測不可能と思われる未来のできごとをあらかじめ知ること。
超常社会が成立する以前から広く知られた超能力であり、超常社会の現在でも持っている人がいるのか不明とされている個性の1つ。その個性をサー・ナイトアイが持っている事実に出久は驚き、興奮した。
「凄いです!! 古くから、それこそ未来を知る手段として占いをしていた有史以来から人々が求めてやまない超能力の1つ!! 超常社会のはるか昔からその存在は指摘されていても再現性や検証が難しかったため、確証が得られなかった力!! そんな希少な個性をナイトアイさんが持っているなんて!! 凄いです!!」
「み、緑谷少女。少し落ち着いて……」
「す、すみません!?」
出久のヒーローオタクっぷりにオールマイトが若干引いた。その様子に出久は赤面し、サー・ナイトアイは苦笑しつつ咳払いを1つして話を続けた。
「そう、その『予知』だ。当然、無制限で使えるわけではなく、いろいろと条件が必要だが非常に強力な個性で、犯罪捜査で特に力を発揮する」
「その、条件というのは? この個性で僕とオールマイトが会うのを予知したんですか?」
出久の問にオールマイトはサー・ナイトアイに目を向けた。個性発動の条件を他人に話すのは秘密が漏れる危険性がある。出久と良好な関係を築いているとはいえ、自分の個性の詳細を話すだろうか?オールマイトはそんな疑問を抱いたが、それはあっさりと霧散した。
「私の個性の発動条件、それは『予知を行う対象者に触れ、目を合わせる』こと。それでその後1時間は対象者の未来を視ることができ、予知した未来は100%実現する。」
「100%……」
「もちろん予知から外れた行動を取ることもあるが、その場合でも最終的に迎える結果は同じものとなる。目的地へ着くまでの道筋が少し変わるようなものだ。……そして、遠い未来を予知する程、その未来の実現時期は大きくブレる。数ヶ月程度ならほとんどズレないが、1年を超えるとそこに至る過程や時期は変わってくる」
「……」
そこまで話して、サー・ナイトアイはカップを手に取り、コーヒーを飲んだ。
オールマイトは驚いた。サー・ナイトアイの個性を知っているのはオールマイトを含めたごく一部のヒーローだけであった。無個性の出久にそれを話すとは、サー・ナイトアイも彼女に何かを感じている、オールマイトはそう判断した。
「緑谷君、謝罪と言い訳、さらに別の謝罪をさせて貰えないかな?」
「え?」
「まず、君の未来を見てしまったこと、すまなかった」
「ナ、ナイトアイさん!?」
「ナイトアイ……」
「君と初めて会った日の別れ際、握手した時に個性が発動した。普段は暴発することはないのだが、何故か発動してしまった。オールマイト展を観られて気分が高揚していたからかもしれないが、はっきりした理由はわからない」
「……」
「そして、その時視た未来が君が少年を助けにヴィランへ向かっていくところ、オールマイトがそのヴィランを制圧するところ、2人が向かい合っていたあの場所だ。予知した映像を記憶して日時を割り出し、念のため君が事務所に来た時に再度予知を行って場所と時間を確定した。その確定を出す機会を得るために、君に事務所へ遊びに来るよう提案した。重ねて、すまなかった」
「どうして、そんなことを……」
出久は訳がわからなくなっていた。以前、バブルガールに家まで送ってもらったとき、『サー・ナイトアイは善人だが、無駄なことはしない。何か理由があるはず』と言われた。出久も全くの無償の善意よりいくらか理由かある方が気が楽だと思っていた。その理由が自分とオールマイトが会う瞬間に立ち会うためと言われて、事務所でサー・ナイトアイとのオールマイト談義を楽しみにしていた出久は自身の心がザワつくのを感じた。
「以前も言ったように君は体力はないが優しさと頭の良さを持っている。たとえ無個性でもヒーローになり得る資質だと、思っていた。そのように思っていたが、それでも、君が『平和の象徴』であるオールマイトの
サー・ナイトアイはそこまで言い切ってから、オールマイトを見た。2人の間で視線がぶつかり合い、様々な想いが渦巻く。
「『個性を受け継ぐ』、さっきオールマイトも言ってました。一体どういうことなんですか? それを受け継ぐのが僕ということなんですか?」
出久は疑問を口にした。個性とは身体機能の1つであり、一般的に父親や母親のどちらかの個性、または両親の個性の合わさったものが子に遺伝していく。これが表現として『個性を受け継ぐ』と言えるかもしれないが、オールマイト達が語っていたのは別の意味合いが感じられた。
「言葉通りの意味だよ。私の『個性』は聖火の如く引き継がれてきたものなんだ」
「引き継がれてきた、……もの!?」
「そう。そして次は君の番ということさ」
「ちょっ……!ちょっと待ってください!!オールマイトの『個性』は確かに世界七不思議の1つとして喧々囂々と議論されてきましたよ。ネットじゃ見かけない日はないぐらいに。……でも……あの、個性を引き継ぐって……ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ」
衝撃の事実に出久は混乱した。出久の言うようにオールマイトの個性の詳細は誰もわからず、雑誌やテレビ、ネット上でも議論の対象となってきた。シンプルな肉体強化系に見えるが、それでは説明がつかないパワーやスピードを誇るオールマイトの個性について、一定の見解が出ることはなかった。
「はいはい落ち着いて。君が信じられないのも無理はない。だが、私は隠し事は多いが嘘はつかん!」
出久を見据えて、オールマイトは力強く言った。
「
「ワン・フォー……オール……」
「1人が力を培いその力を1人へ渡しまた培い次へ……、そうして救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶!!!」
名は体を表す。『ワン・フォー・オール』に込められている想いと責任の重さを出久は感じた。
「そんな大層なものを、何で僕に……」
「元々後継は探していた……、そして君になら渡しても良いと思ったのさ!!」
オールマイトはサー・ナイトアイを一瞥した後、再び出久に目を移し力強く伝えた。オールマイト自身が彼女を後継とした理由を。
「『無個性』で只のヒーロー好きな君は
憧れのオールマイトにそう言われて、出久は今日何度目かわからない涙を流した。
無個性じゃヒーローになれねえよ!
ごめんね出久!ごめんね!
ふと幼馴染と母の顔が思い浮かぶ。
諦めたはずの夢。それが憧れのオールマイトの手助けでまだ追い続けられる。そう思ったが、続くオールマイトの言葉で出久は我に返った。
「私はそう考えているが、君はどうすれば納得してくれるかな、ナイトアイ」
「……」
(そうだった。ナイトアイさんはオールマイトの真意を見極めるって言ってた。もし、ナイトアイさんが反対したら僕は……)
出久とオールマイトの視線がサー・ナイトアイに集まる。沈黙が続いたが、それを破るようにサー・ナイトアイは彼らしくない深くため息をつき、言葉を紡いだ。
「私は緑谷君が少年を助けに行くところを見ていた。少年の個性を発動させなおかつ人質とするヴィランにヒーローが手をこまねいている中、恐怖を感じながらも飛び出していき、自分ができる中で最善の手段を取って少年を救おうとした。その姿はまさに『ヒーロー』、私も感じた」
「!?」
「!? ナイトアイそれでは……」
「貴方が選ぶのなら、それが緑谷君なら私はこれ以上何も言うことはない」
「ナイトアイさん、ありがとうございます!」
「ナイトアイありがとう。そして、わがままを言ってすまない」
出久とオールマイトから感謝て謝罪が述べられるが、サー・ナイトアイは小さく微笑みつつ首を横に振った。
「元々私が『ワン・フォー・オール』についてどうこう言える立場ではない。お礼を言われる筋合いはないさ」
「それでも、ありがとうございます、ナイトアイさん」
「ありがとう、ナイトアイ。それじゃあ、緑谷少女。一応聞くけど、どうする?」
ここまでお膳立てされて、断る理由なんてない!!
目元の涙を拭って、出久は力強く答えた。
「よろしくお願いします」
―――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Izuku
僕とオールマイト、ナイトアイさんの3人で喫茶店の外に出る。時刻は5時前、だんだん日の高さが低くなってきて日没が近づいていた。
「今日はありがとうございました! オールマイト、これからよろしくお願いします! ナイトアイさん、また遊びに行ってもいいですか?」
「こちらこそ、よろしく。今後のスケジュールを決めたら連絡するから、少し待っていてくれ」
「ああ、事務所のみんなも楽しみにしている。だが、
2人からそれぞれの言葉を受ける。こんな日が来るなんて、過去の自分に言っても絶対信じないだろう。あのオールマイトが僕に、自分の個性を渡してくれる。未だに現実感がない。ナイトアイさんはこれまで通り接してくれる。これからの日々が楽しみになってきた!!
「それじゃあ、僕は帰ります。また、よろしくお願いします。ありがとうございました!」
そう言って帰り道へ足を向けた。これからは特訓を、OFAを受け取る特訓のために一緒にいられる。少し前ならオールマイトのサインが貰えたら幸せだと思っていたのに。……ん? サイン?
「あ――――――――――――――――!!?」
「ど、どうした緑谷少女!?」
「緑谷君、一体何が!?」
僕の絶叫に2人も驚きの声を上げる。すぐに踵を返して大声で告げた。
「僕! まだオールマイトのサイン貰ってません!!」
僕の言葉に2人はポカンとした表情をした。そしてオールマイトは苦笑いをして、ナイトアイさんは口元を隠して笑っている。……ナイトアイさん、肩を震わせるほど笑わなくてもいいじゃないですか? そんなにおかしなこと僕言いました?
「緑谷君、やっぱり君は面白いね。これからその本人といろいろ関わっていくというのに」
「本当に君は根っからのオタクなんだな。」
「いや、その、確かにおっしゃるとおりなんですけど、オールマイトに会えた暁には絶対サインを貰おうと心に決めていて、それに日々の特訓で関わっていくとしたらそれに忙殺されてサインのことを忘れてしまいそうで、実際に今のいままで忘れていましたし」
早口で説明する僕に2人は顔を見合わせて再び笑う。しかも、今度は声を上げて! 失礼な!!
「オールマイト、彼女と関わっていくと退屈することはないよ」
「確かに、そのようだね。よし! 君は後継者だがファンでもある。ファンのリクエストには応えなきゃね! サインをしてあげよう。何か書くものはあるかな?」
「はい!」
確かサインペンは常備していたから大丈夫。サインはノートに書いてもらって、……そっか。ノートまだ学校で回収してなかった。……もう、捨てられちゃったかな。
「? 緑谷少女、どうかしたのかね?」
「……いえ、なんでもありません。今サイン書くもの出します。」
そう言ってカバンの中を探す。サインペンはすぐ見つかった。あとは何か書くもの、授業用のノートでもいいかなと思って中身を漁っていると、今
かっちゃんに爆破されて、窓から投げ捨てられたヒーローノートが。
「なん、で、これが……?」
そこで女性警察官が言ってたことを思い出した。
『はい、これ。あなたのカバンでしょ?彼が中身を拾ってくれてたわよ』
かっちゃんがわざわざ学校で拾って持っていた? 自分で爆破したノートを? しかもそれを僕のカバンに入れてくれた?
疑問がいくつも湧いてくるが怪訝な顔の2人の視線に気付いて、平静を装ってノートとサインペンを渡した。
「これに、お願いします」
「オーケー。む、このノート焦げてるね。何かあったのかな?」
「ええと、その、鍋敷きにしちゃったらそうなっちゃって……」
「ふむ、これは凄いね。いろんなヒーローの個性について分析されているね。大事なものを雑に使ったらダメだよ」
「はい、気をつけます」
「…………」
ナイトアイさんは何か勘づいたみたいだけど、その視線は無視した。オールマイトがさらさらとサインを書いて、僕にノートを返した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます! 我が家の家宝にします!!」
「サインだったらいくらでも書いてあげるけどね」
「そんな!? そしたらこのサインの価値が薄れちゃいます!」
「……君はなかなかめんどくさいオタクだね」
「緑谷君、もうそろそろ日も暮れてしまうよ」
「ああ、そうでした! それじゃあ、オールマイト! 連絡待ってます! ナイトアイさん! 行く前にまた連絡します! さようなら!」
2人にそう言って、今度こそ家路についた。
「今日は本当にジェットコースターみたいな1日だったなあ。オールマイトとの特訓、頑張ろう! ……それにしても、どうしてかっちゃんは僕のノート拾ってくれたんだろう。……明日、話してみようかな?」
これからの日々への期待と不安、かっちゃんへの疑問を胸に、僕は帰り道を歩いていった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
出久を見送った後も2人はその場に佇んでいた。隣り合ったまま、視線は合わせないが険悪ではなく、穏やかな空気が漂っていた。
「……緑谷少女、いい子だね」
「ああ、優しくて、賢い子だ」
「本当は反対するつもりだったんじゃないかな?」
「……そのつもりだった」
「では、何故……」
オールマイトは隣に目を向けた。サー・ナイトアイも目を向け、自身の考えを伝えた。
「……あのヘドロヴィランに向かっていくのを見た瞬間、私は彼女がOFAを受け継ぐのに納得せざるを得なくなった」
「……」
「自身に力がなくとも、助けを求める人にその身を投げ出す、自己犠牲の精神。その姿は紛うことなく、間違いなく『ヒーロー』そのものだった」
「……」
「……彼女に貴方と同じものを感じたよ。狂気にも感じられる、平和への想い。それだけに、彼女の行く末が不安でならない」
「ナイトアイ……」
「しばらくは彼女を予知するつもりはないさ。だが、いずれ彼女も対峙することになるかもしれない。貴方にその傷を負わせた存在、『オール・フォー・ワン』に……」
「時間はあまり多くはないかもしれない。それでも彼女を鍛えなければならない。次の『平和の象徴』として」
「……私にもできることがあれば協力しよう。私も、事務所のみんなも、彼女を大切に想っているからね」
「わかった、そのときはよろしく頼むよ」
そう言うと、オールマイトは手を差し出した。サー・ナイトアイが一瞬目を見張ると、オールマイトはニヤリと笑った。
「今は私を予知しないでくれよ?」
「……そんな無粋なことはしないさ」
2人は握手を交わした。実に約5年振りの和解となった。
「……ミリオには謝らないといけないな」
「事務所のインターンの子かい? 何故かな?」
「彼を貴方の後継者にと思って、インターン生として指名したんだ。それが結局は緑谷君が後継者となった」
「謝る必要はないと思うよ」
「それはどうして……」
「会ったことはないが、君が見出して、君が育てているんだ。それだけで彼が君の中でどれほど大切なのかがわかるよ」
「……そうだな」
「一応、話してみるといい。きっと彼もそう思っているはずさ」
「……ありがとう、オールマイト」
その後、2人は場所を変え夜更けまで語り明かした。離れていた約5年分の親交を取り戻すように。
なかなか文章まとめるって難しいですねw次から特訓編、入試編となっていきますが、どうにかサラッといけないか考えてみます。多少のダイジェスト方式はありかなと思っていますが、どうなることやらwGWが間近ですが、その時で2話くらい投稿できたらいいですね。
今後も応援よろしくお願い致します♪