僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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 お待たせしました! 第41話です! 出久ちゃん、頑張ってます!
 それでは、どうぞ!


第41話 混沌《カオス》

「(緑谷にすぐ戻るよう伝え忘れた……。マズイな、ホウレンソウのホの字もねえ……。今あの負傷で動いてられんのはエンドルフィンドバドバ状態だからだ。()()()()()()()()落ち着いちまって動けなくなるぞ)」

 

 洸汰を抱えながら施設へ急ぐ相澤は出久の状態を危惧していた。両腕の骨折に頭部や体の傷、戦闘による疲労などで体力を相当に消耗しているのがわかった。しかし洸汰を安全な場所へ避難させること、(ヴィラン)への戦闘許可をマンダレイを通して発することを同時に相澤が行うのは難しく、ヒーロー科1年の中でも機動力の特に高い出久に伝令を任せることしかできなかった。

 

「おじさん……あいつ大丈夫かな」

「うん?」

 

 抱えられていた洸汰が相澤に話しかける。

 

「僕……あいつに殴りかかって……昨日も酷いこと言っちゃって……。なのに……! あんなにボロボロになって救けてくれたんだよ……! それに……あいつの裸見ちゃったりおんぶされるときに抱きついたり……。僕まだごめんも……ありがとうも……! 言ってないんだよ……! あいつ、大丈夫かなあ……!!」

 

 涙をこぼしながら洸汰はそう話した。語る言葉には後悔と反省、感謝と出久の裸を見て触れてしまったことへの罪悪感・気恥ずかしさも感じられた。

 

「(非常時とはいえ、あいつは本当に……)大丈夫……あいつも死ぬつもりなんかないからボロボロなんだろう。……でも大人(おれ)はそれを叱らなきゃいけない。だからこの騒動が終わったら言ってあげてくれ。できれば、ありがとうの方に力を込めて」

 

 一刻も早く出久を含めた生徒達の安全を確保するため、相澤はさらに足を早めた。

 

 

 

『(いいんだね? イレイザー……)A組B組総員、プロヒーロー『イレイザーヘッド』の名に於いて……戦闘を許可する!!』

 

 出久の伝令をマンダレイがテレパスを用いてヒーロー科1年全員に伝える。通常であれば厳しく制限されている個性の対人使用だが、敵襲撃という非常事態であること、プロヒーローである相澤……イレイザーヘッドから許可を出したことで現在襲撃している敵に対して反撃することが可能となった。本来であれば相澤としても許可は出したくなかったが、生徒が標的と考えられる中の苦肉の策であった。

 

「伝令ありがと! でも! すぐ戻って! その怪我尋常じゃない! あと服着て! 女の子なんだから!」

「いやっ……! こんなときに服なんて気にしてられません! それに! まだもう一つ! 伝えて下さい!」

 

 テレパスで伝令を伝えたマンダレイは出久の怪我とボロボロの様子を見て退くよう促すが、出久は飛び蹴り後の着地し損ねた体勢から勢いそのままに立ち上がってすぐさま駆け出していく。

 

「敵の狙い……少なくともその一つ、かっちゃんが狙われてる! テレパスお願いします!」

「かっちゃん、君の幼馴染の爆豪君のこと!? 待ちなさいちょっと!」

「!(さっきの地鳴りのような音……! 派手なパワーバトルが出来るのは私らの中じゃ2人……。情報漏らしたってことは……血狂いマスキュラーをこの小さな子が……!? あれがパワー負けしたってこと……!?)」

 

 早口で伝令内容を告げた出久はマンダレイの制止も聞かず凄まじいスピードで森へと向かっていく。一方、虎と戦いながら会話を聞いていた敵連合のマグネはその内容から情報を分析し出久の危険度を即座に測っていた。

 

「やだ……この子本ト殺しといたほうがイイ!」

「ぬっ!」

 

 敵連合の脅威になり得ると判断し、出久を殺すべく対峙していた虎に一撃を加え、怯ませた隙に出久を襲おうとした。

 

「手を出すなマグ姉!!」

 

 ヒュッ!

 

「!? ちょっと何やってんの!? 優先殺害リストにあった子よ!?」

 

 出久に拳が届こうとした瞬間、マグネの顔目掛けてスピナーがナイフを投げつけた。ギリギリでナイフを避けたマグネはスピナーを問いただす。

 

「そりゃ死柄木個人の意思」

「スピナー何しに来たのよあんた! ていうか何鼻血出してんのよ! これだから童貞は!」

「うるせえ童貞じゃねえわ! とにかく、あのガキはステインがお救いした人間! つまり英雄を背負うに足る人物なのだ!! 俺はその意思にシタガ!?」

 

 自身の行動原理を語るスピナーはその隙にマンダレイの蹴りを受けてその先を続けることはできず、同じく隙を見せていたマグネも虎の拳に沈んだ。

 

「やっっとイイの入った! ……童貞じゃない奴が女の子の裸見て鼻血出すはずがないでしょ! ……仕方ない。とりあえず伝えなくちゃ!」

 

 倒したスピナー達を虎と拘束しながら、マンダレイは出久から聞いた情報をすぐさまテレパスで伝達した。

 

 

『敵の狙いの一つ判明……!! 生徒の『かっちゃん』、爆豪君!! なるべく戦闘を避けて!! 単独では動かないこと!! 後、君の彼女の緑谷さんが君を追って森に入っていったわ! 酷い大怪我してるから合流して施設へ避難して! それから、上に服着てないから何か着せてあげて! わかった!? 爆豪君!!』

 

 

「爆豪が狙われてる!?」

「緑谷が大怪我してるってことは敵と戦ったのか!?」

「B組は!? 皆は無事なのか!?」

「っていうか緑谷と爆豪付き合ったの!? いつの間に!?」

「おい、皆! 緑谷達救けに行くぞ!」

「峰田、お前緑谷の裸見たいだけだろ……」

「そんなわけあるか! 俺は皆が心配で……!」

「お前ら真面目にせんか! 遊びじゃないんだぞ!!」

 

 宿泊施設はマンダレイの3度目のテレパスによって伝えられた諸々の情報により一時的に混乱に陥り、ブラドキングの一喝によってなんとか収まりを見せた。

 

 

 

 ヒュッ! ズガガガガ!! パキパキパキ……!!

 

「不用意に突っ込むんじゃねえ! 聞こえてたか!? おまえ狙われてるってよ」

「うっせえ! 聞こえてるわボケ! どいつもこいつも俺をコケにしやがって!」

 

 勝己と轟は全身黒の拘束具を纏った敵と交戦してた。轟は気を失っている円場を背負っており、また周囲はガスが漂っているため勝己の爆破や轟の炎熱が使えず防戦を強いられていた。

 

「(クソデク……! また、無茶しやがって……! あのクソバカが……!)」

「爆豪」

「あ゛あ゛!?」

「おまえと緑谷、付き合い始めたのか?」

「……はあ!?」

「なんというか、とりあえずおめでとう……」

「付き合ってねえわ!? つーかこの状況で何ふざけたこと言ってやがる!?」

「違うのか? なんか2人とも良かったなと思って……」

「次ふざけたこと言ったらてめえを爆破……うおっ!?」

 

 ヒュッ! ズオッ!

 

 勝己達が対峙している敵『ムーンフィッシュ』は口から歯を鋭利な刃に変化させて矢継ぎ早に襲い掛かってくる。周囲にガスが漂っていて引火の危険があるため、轟の氷結で防御・牽制を行うが夜の闇と森、地形を活かして2対1であるにも関わらず優位に戦況を進めていた。

 

「地形と『個性』の使い方がうめえ」

「見るからにザコのひょろガリのくせしやがってんのヤロウ……!」

「(相当場数踏んでやがる)ここででけぇ火使って燃え移りでもすりゃ火に囲まれて全員死ぬぞ、わかってんな?」

「喋んなわーっとるわ」

「(退こうにもガス溜まり……こりゃわかりやすく『縛り』かけられてんな)」

 

 相澤から戦闘許可は下りているが、それでもなるべく交戦を避けるべきであることに変わりはない。攻撃に縛りを掛けられていてさらに気絶している円場も抱えている中、この状況を打破するための道筋が2人にもまだ思いつかなかった。

 

 

 

 ダーンッ!!

 

「(何だ今の音、銃声……!?)」

 

 さほど遠くない場所で鳴った音を聞きながら森の中を出久は駆けていく。本来の肝試しコースではないため岩や雑草が生えていて走りにくい場所だが、OFA5%フルカウルで猛スピードで勝己達の元へ向かう。

 

「(皆どうなってる……!!? かっちゃんたちは肝試しで2番スタートだった……。動いていないならそう遠くにはいないハズ……)」

 

 

 ズアッ!

 

 

「!? っあ……!?」

 

 走る出久の前に突如黒い影が現れた。なんとか回避しようとするが、折れた両腕の痛みで動きが一瞬止まる。その出久目掛けた黒い影が巨大な拳状となって襲い掛かった。

 

 

 ドォオオン!!

 

 

「……!?」

 

 来るはずの衝撃に耐える為目を閉じて身体を強張らせていたがそれが来ず、また何かに包まれている気配に出久が目を開けるとそこには……土埃にまみれた障子がいて彼の個性『複製腕』によって出久を抱えていた。

 

「障子君……!?」

「その重傷……もはや動いていい体じゃないな……。友を……幼馴染を助けたい一心か、呆れた奴だ……。男の俺に触れられるのは嫌だと思うが我慢してくれ……」

「う、うん。それは大丈夫だけど……今のって……」

「ああ」

 

 2人が話している間も前方から激しい音が響いてくる。注意を払いながら障子が状況の説明を始める。

 

「敵に奇襲をかけられ()()()()()……。しかし、それが奴が必死で抑えていた『個性』のトリガーとなってしまった。ここを通りたいならまずコレをどうにかせねばならん」

 

 

 『俺の個性は闇が深い程攻撃力が増すがどう猛になり制御が難しい』

 

 

「そんな……常闇君!?」

「俺から……っ離れろ! 死ぬぞ!!」

 

 衝撃音がする先から現れたのは、普段と異なる禍々しい様子の黒影(ダークシャドウ)とそれを必死で抑え込もうとしている常闇であった。

 

「どっ、どういうこと!? 障子君……!」

「(静かに……)」

 

 出久が障子に問いかけるが、自身の口からではなく複製腕で作った口から静かにするよう言われる。

 

「(マンダレイのテレパスで敵襲来・交戦禁止を受けすぐに警戒態勢をとった。直後、背後から木々を裂く音が迫り敵に襲われた……。変幻自在の刃だ。俺は常闇を庇い、腕をかっ斬られつつも草陰に身を隠した)」

「(腕……!?)」

「(何、傷は浅くないが失ったわけじゃない。俺の『複製腕』は複製器官も複製が可能。斬られたのは複製の腕だ。……しかし、それでも奴には堪えられなかったのか……抑えていた『黒影(こせい)』暴走を始めてしまった)」

 

 障子と小声で会話しながら出久が常闇の方を見ると、禍々しさを増した黒影が巨大化し常闇をも飲み込んで周囲の木々を次々となぎ倒していった。

 

「(闇が深いと……制御が利かない。こんなピーキーな『個性』だったのか……つっ!)」

「(その上恐らく奴の義憤や悔恨等の感情が暴走を激化させている……。奴も抑えようとしているが……)」

 

 パキ

 

 ブン! ボグ!!

 

「(動くモノや音に反応し、無差別攻撃を繰出すだけのモンスターと化している)」

 

 少しずつ場所を移動していた障子が小枝を踏んでしまい、その音に反応して黒影が攻撃を振るう。なんとか躱すが、躱した場所が抉れており闇夜での黒影がいかに強大かがわかった。

 

「~~~~~!! 俺のことは……いい! ぐっ……!! 他と合流し……! 他を救け出せ!! ……静まれっ……! 黒……影!!」

 

 暗闇で暴走した黒影の力は凄まじく、本体の常闇にとっても暴走状態の黒影を自力で抑えることは非常に困難であった。

 

「(光……火事か施設へ誘導すれば鎮められる。……緑谷)」

 

 黒影の攻撃を受けないように距離を一定に保ちながら障子が出久に語り掛ける。

 

「(俺はどんな状況下であろうと苦しむ友を捨て置く人間になりたくはない。お前は爆豪(おさななじみ)が心配でその体を押して来たのだろう? まだ動けるというのなら俺が黒影を引きつけ道を拓こう)」

「(待ってよ、施設も火事も距離がある。そんなの障子君が危な……!?)」

 

 ブンッ! ドガッ!! バキバキ……!!

 

 小声で会話をしていても黒影が周囲を無差別に攻撃しており、避ける出久達にも余裕はあまりない。そんな中、2人は決断を迫られていた。

 

「(わかってる。救けるという行為にはリスクが伴う、だからこそヒーローと呼ばれる。このまま俺と共に常闇を救けるか、爆豪のもとへ駆けつけるか……お前はどちらだ……? 緑谷……)」

 

 障子が出久へ問いかける。その声音に出久を咎める様子はなく、どちらを選ぼうとも出久を意志を尊重する雰囲気が感じられた。

 

 

「(…………ごめん障子君……)」

「(?)」

 

 出久は決断した。

 

 

 

 ズバッ!! ガガガガ……!!

 

「っ!!」

「近付けねえ!! クソ! 最大火力でブッ飛ばすしか……!!」

「だめだ!」

「木ィ燃えてもソッコー氷で覆え!!!」

「爆発はこっちの視界も塞がれる! 仕留め切れなかったらどうなる!? 手数も距離も向こうに分があんだぞ!」

 

 防戦が続く中で勝己が一か八かの爆破を行おうとするが、轟が制止する。轟の危惧する通り、爆破の炎・煙をガスや木に燃え移らせないための氷結は視界が制限されるため、仕留め切れなかった場合に反撃を受ける可能性が高い。要救助者を抱えている状況で敵に背を向けて逃げることも同様に危険であり、状況は徐々に悪くなっていた。

 

 

 ドゴォッ! バキバキ!!

 

 

「いた! 氷が見える、交戦中だ!」

「「!?」」

「あ……?」

 

 そんな中、突然ムーンフィッシュの後方から別の破壊音と男の声が聞こえてくる。勝己・轟だけでなく、ムーンフィッシュもそちらに目を向けると……。

 

 ドドドド……!

 

 木々をなぎ倒しながら迫ってくる黒い塊……『黒影』とそれから必死で障子とその障子に抱えられた出久が見えた。

 

 

 『ごめん障子君……! このままで……少しいい? ……音だけでも反応するなら、複製腕を複製する形で囮をつくって……本体に攻撃が向かないよう誘導する! ただ、誘導先はかっちゃんだ。爆発で黒影を静められる! どちらかを選ばなきゃいけないなら……僕はどっちも救けたい!』

 

 

 出久の提案を受けて障子が複製腕で黒影を誘導、なんとか勝己達がいる場所まで引き連れてくることができたのだった。

 

「爆豪! 轟! どちらか頼む……光を!!!」

「肉」

 

 走ってくる障子が2人に光……炎を出すよう要請するが、障子を殺すべき雄英生徒と認識したムーンフィッシュが障子と出久に向けて刃を向けた。……その刹那!

 

 ドガッ!

 

「あ゛っ」

 

 暴走した黒影が一撃でムーンフィッシュを叩き伏せた。さすがにその姿が見えれば勝己達にも巨大な黒い塊が黒影であることがわかった。

 

「障子・緑谷……と、常闇!?」

「早く『光』を!!! 常闇が暴走した!!!」

「かっちゃん!」

「デク……!」

「見境なしか……っし。炎を……」

 

 必死で走ってくる障子達の姿で状況を理解した轟が炎で黒影を鎮めようとする、が……。

 

「待てアホ」

「なんだ、早くしねえとあいつらだけじゃなくて俺らも……」

「見てえ……」

 

 轟の動きを勝己が制止する。常闇の黒影は光が弱点であるため、早急に静めなければこの場にいる全員が危ない。そのことに気付かない勝己ではないはずなので轟が疑問を口にするが、勝己は黒影の本来の『力』が見たがっていた。体育祭で常闇と対戦した際には常闇の自身との相性の悪さを残念がっていたが、敵襲撃という不測の事態で黒影の全力が見られるかもしれないとありその様子を注視していた。

 

「肉~~~、駄目だぁああ。肉~~~、にくめんんん。駄目だ駄目だ許せない……」

 

 黒影に叩き伏せられたムーンフィッシュがゆっくりと立ち上がる。ダメージを負いながらも任務と……人を殺したい、肉の断面を見たいという己の衝動を満たすため、黒影にやられた怒りを返すため個性を発動させる。

 

「その子達の断面を見るのは僕だぁあ!!! 横取りするなぁあああああ!!!」

 

 ガッ!!

 

 ムーンフィッシュが黒影に刃を突き立てる。が、黒影には明確な実体はなくダメージは全く受け付けない。ムーンフィッシュの刃を受け止め、徐々に力を加えていく。

 

 ミシミシッ……!!

 

「強請ルナ、三下!!」

 

 ガガガガガ……!!! ドォオオン!!!

 

 勝負は一瞬だった。黒影が左腕を無造作に振るい、周辺の木々をムーンフィッシュごと何本もなぎ倒していく。勢いそのままに投げつけられたムーンフィッシュは木に叩きつけられてそのまま昏倒した。

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛暴レ足リンゾォア゛ア゛ア゛ア゛!!!」

 

 ムーンフィッシュを軽く捻っても満足することなく次の標的となる勝己達へ向かっていこうとした、が……。

 

 BOM! カッ!

 

「ひゃん!」

 

 勝己の爆破と轟の炎によって黒影が一瞬にして大人しくなる。いかに夜の闇で力が増していようが弱点である光に対しては圧倒的に弱く、すぐさま本体である常闇の中へ引っ込んでいった。

 

「ハッ……ハア……」

「てめェと俺の相性が残念だぜ……」

「……? すまん、助かった」

 

 本体である常闇も黒影を抑えようと必死だったため相当に疲弊しており、しゃがみ込みながら勝己に礼を言った。

 

「俺らが防戦一方だった相手を一瞬で……」

「常闇、大丈夫か? よく言う通りにしてくれた」

 

 『常闇君!! 抗わないで、黒影に身を委ねて!』

 

「障子……悪かった……。緑谷も……俺の心が未熟だった。複製の腕がトバされた瞬間、怒りに任せ黒影を解き放ってしまった。闇の深さ……そして俺の怒りが影響され、奴の凶暴性に拍車をかけた……。結果、収容も出来ぬ程に増長し、障子を傷つけてしまった……。『そういうのは後だ』……とお前なら言うだろうな」

 

 常闇の言葉には障子を傷つけた後悔、懺悔、己の未熟さに対する悔しさの念がこもっていた。その言葉に周囲の皆も静かになっていたが、その中で勝己が沈黙を破った。

 

「おいクソデク! てめえまたヤリやがったな!?」

「え!? ええっと……敵の襲撃がわかって、マンダレイの伝令のあとに洸汰君がいないことがわかって……。彼の『ひみつきち』に行ったら運悪く敵に襲われそうになってて、逃げようにも強くてその、全力出さないと倒せなかったんだ……」

「……てめえは大怪我しねえと気が済まねえんか!? 相澤先生にも言われてんだろうが! ……おばさんを、引子さんをまた心配させるのか!?」

「そ、そんなつもりは……」

 

 傍にいた轟・障子・常闇は勝己が出久を叱責する様に目を疑った。普段から一方的に出久にきつく当たっていたが、それでも2人の間に並々ならぬ関係があるのはA組B組男子会も経た今ではなんとなくわかっていた。それでも、これほどまでに勝己が出久を叱るとは3人には予想外であった。

 

「おい、障子。代われ」

「何?」

「へ?」

「俺がデクを背負う。代われ」

「かっちゃん!? 何言ってんの!?」

 

 突然の言葉に出久も他のものも困惑する。先ほどの言葉だけでもインパクトは十分だったが、怪我をした出久を背負うなどこれまでの勝己からは予想外過ぎた。

 

「てめえ今上の服着てねえんだから胸丸出しだろーが! 胸を男に押し付けてんじゃねーよ痴女が!」

「な、何デリカシー無いこと言ってんの!? かっちゃんのエッチ! スケベ! 障子君がそんないやらしいこと考えるわけないでしょ! でしょ障子君!?」

「ああ、そうだな(余計なことは言わないでおこう……)」

「それに……かっちゃんが僕を背負うとかっちゃんの個性が使えなくなっちゃう……。まだ敵が他にいるかもしれないのに戦力を削るわけにはいかないよ」

「俺も緑谷に賛成だ。さっきみたいな奴が複数来たらヤベぇ。それにお前自身も狙われてんだろ。迎撃手段を持つ奴は多い方が良い」

「……クソが!」

「何でそんなに怒ってるのさ……」

 

 勝己の怒りがわからない出久に他の者は賢明にも何も言わず、今後の対応を相談していく。

 

「これからどうする?」

「とにかく……ブラドキング・相澤先生のプロ2名がいる施設が最も安全だと思う。ただ、広場はまだプッシーキャッツが交戦中。道なりに戻るのは敵の目につくしタイムロスになるからまっすぐ森を突っ切るのがいいと思う」

「敵の数わかんねえから突然出くわす可能性があるぞ」

「こっちには障子君の索敵能力がある。それに轟君の氷結・炎、常闇君の黒影、かっちゃんの爆破もある。この面子ならオールマイトにも負けないよ」

「そうと決まったら早速移動開始しよう」

「障子君が先頭になって索敵、轟君は僕らのすぐ後ろにいて、敵が現れたら氷結か炎で牽制して。かっちゃんはその後ろ、常闇君は最後尾で黒影で周囲を警戒してほしい。かっちゃん、黒影が暴走しない様に注意してね」

「わかった」

「御意」

「……俺に指図すんじゃねえ」

 

 出久の指示の下、総勢5人は施設へ向かって移動を始めた。

 

 

 障子に索敵を任せて1団は森の中を進んでいく。途中で敵に出くわすことは無く、不気味すぎるくらいに感じていたがそれでも緊張を切らさず移動を続けた。しばらく歩くと肝試しコースの遊歩道に突き当たり、少しずつ目的地に近づいていることを実感する。そのまま遊歩道へ歩みを進めると……。

 

 

「麗日!?」

「障子ちゃん、皆!」

「あっ、しまっ……」

 

 麗日と蛙炊の姿があった。蛙炊は髪にナイフが刺さり木に吊るされるような形になっていて、麗日は誰かを組み敷くようにしゃがんでいた。麗日が一瞬気を取られた隙に組み敷かれていた相手は抜け出し、反対側の森に逃げていった。

 

「人が増えたので殺されるのは嫌だから、バイバイ」

 

 その人物はどこかの学校の制服を着た少女だった。出久や麗日達と同年代くらいだろうが、全く見たことがない顔・制服であるため敵であることは間違いなく、障子達も警戒体勢を取った。少女は一瞬驚いたような表情をしたが、その後その場から立ち去っていった。

 

「待っ……!」

「危ないわ! どんな『個性』を持ってるかもわからないわ!」

 

 少女を追おうとする麗日を蛙炊が止める。蛙炊の言うように個性がわからない上、暗い森の中では待ち伏せされているか可能性もあった。

 

「なんだ、今の女……」

「敵よ、クレイジーよ」

「麗日さん、ケガを……!?」

「大丈夫、全然歩けるし……。っていうかデクちゃんの方が大怪我してるでしょ……!?」

「立ち止まってる場合か、早く行こう」

 

 轟が2人に尋ねるが2人にも敵である以外の情報がなかった。出久と麗日は互いの安否を気にし合うがまだ移動の途中であり先を急ぐよう障子が提案する。

 

「そうだね、とりあえず無事でよかった……。そうだ、一緒に来て! 僕ら今かっちゃんを護衛しつつ施設に向かってるんだ」

「…………ん?」

「爆豪ちゃんを護衛? その爆豪ちゃんはどこにいるの?」

「え? 何言ってるの? かっちゃんなら後ろに……」

 

 麗日と蛙炊の言葉に出久達は耳を疑う。自分達は陣形を整えて移動してきたので、後ろには勝己と常闇がいる。……いるはずであった。

 

 出久・障子・轟が後ろを見ると、蛙炊の言うように勝己の姿は見えず遊歩道が続くだけだった。

 

 

「彼なら、俺のマジックで()()()()()()()

 

 

 突然頭上からした声に驚いて目を向けると、茶色のロングコートに英国紳士を彷彿とさせるトップハット、笑顔をイメージしたマスクを身につけた男が木の枝に立っていた。

 

「こいつぁヒーロー側(そちら)にいるべき人材じゃねえ。もっと輝ける舞台へ俺達が連れてくよ」

「!? っ返せ!?」

 

 

 混沌の終わりが近づいている、最悪の形で……。




 というわけで第41話でした! 出久ちゃん、ヒーロー気質強すぎてお胸のこと全く気にしてないですw 明確な数字はせってしてませんがCからDカップはあると思うので、猛スピードで走ったらエラいことになるでしょうね、そりゃスピナーさんも鼻血出しちゃいますよw 障子君は賢明でした。あそこで何か言おうものならさらにカオスになってましたからねw
 今後もマイペースで続けていくので、応援の程よろしくお願い致します!
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