僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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 お待たせ致しました! 今回もボリューミーです!
それでは第43話、どうぞ!

7/3 一部修正しました。


第43話 想い

 敵連合の襲撃によってプッシーキャッツの所有する管理する施設・所有地には何台もの警察・消防・救急車が来た。捕らえた敵の移送、怪我をした生徒・ガスを吸った生徒の搬送が行われる合間に相澤とブラドキングが残された生徒に状況の説明を行った。

 

「捕らえた敵3名は警察が移送した。軽傷だった者はすでに手当を終えているが、比較的怪我の程度の大きかった者、ガスを吸って意識の戻らない者は病院に搬送している。今後の行動だが、お前らは雄英に戻ってもらう」

「「「ええ!?」」」

「何故ですか!?」

 

 普段からリアクションの大きい上鳴や峰田、芦戸だけでなく多くの生徒が驚愕の声を上げ、飯田も教師2人に問いかける。

 

「敵連合は去ったが、この場所はワープ個性の敵に知られているため再度襲撃してくる可能性は否定できない。森などの隠れる場所が多いここでは対応が難しく、また朝まで警察を配置させておくわけにはいかない。同じく場所が知られていても多くのヒーローが常駐している雄英高校に移動した方が対応しやすい、そう判断した。すでに雄英に連絡してミッドナイト、プレゼント・マイク、セメントス、エクトプラズムがここへ向かっている。お前達はその4人と2台のバスで雄英に戻り、朝まで休んで帰宅しろ」

「イレイザー先生とブラドキング先生は?」

「俺とイレイザーはここに残って、プッシーキャッツ、警察と実況見分だ。その後朝一で警察署へ行って事情聴取を受ける。そのために応援を呼んだんだ」

 

 拳藤の疑問にブラドキングが答えた。本当は警察としては実況見分に生徒達も立ち会わせたいが、夜間であることと襲撃された生徒の心身の安全を優先させるため、そのような対応となった。

 

「移動中に襲われたりしないですか!?」

「奴らのワープは特定の位置を把握していないとできないと考えられるため、移動中はその危険性は低いと思われる。待ち伏せの可能性もあるが、それを迎撃する意味もあってプロヒーロー4人を招集した」

「あと30分ほどで着くから、帰る準備しておけ。病院に運ばれた奴と……緑谷と爆豪の荷物も運んでやれ」

 

 上鳴の質問にブラドキングが答え、相澤が指示を出すと生徒の視線が足元に落ちる。普段から衝突することが多い、というより勝己が一方的に出久に突っかかることがほとんどだったが、それでもA組の中で2人を中心にすることが多く、また今回の合宿でB組生徒も2人の関係をある程度知ることとなった。そんな中でさらわれてしまった2人。その場にいた生徒全員が2人の身を案じた。

 

 

 

「みんな、着いたわよ」

「……はい」

 

 雄英高校ヒーロー科1年を乗せたバスは日付が変わろうとする時間帯に雄英高校に到着した。ミッドナイトが生徒達に声を掛けるがそれに対する返事は力のない小さなモノだった。襲撃を受けたことによる疲労に移動の疲労も重なり、皆一様に元気がなかった。

 

「OK guys! ここは普段教師が宿直している建物だ。男子は一階、女子は二階だ。明日は起きて朝飯食ったら帰宅、一応夏休み中だが出歩くのはなるべく控えろ。以上、とっと休め!」

 

 プレゼント・マイクの言葉に生徒達は力なく頷き、のろのろと行動を開始した。その様子に一つため息をついてミッドナイトに話しかけた。

 

「つっても、あんなことがあっちゃあなかなか眠れないだろうがなあ」

「いざとなったら私の個性で眠らせてあげるけど……明日からまた大変ね」

「またマスコミが集まって大騒ぎでしょうね。生徒達は別の入り口から帰宅させられるでしょうが」

「生徒達ガ眠ッタラ我々モ交代デ休ミマショウ。朝一デ対策会議デスカラ」

「セメントスとエクトプラズムは先に休んでおいて。私は根津校長に報告してくるからマイクはここで待機しておいてね」

「了解」「わかりました」「デハ、先ニ休マセテモライマス」

 

 プレゼント・マイクをその場に残してミッドナイト、セメントス、エクトプラズムはその場を離れた。

 

「まったく、あのバッドボーイ・バッドガールどもは……毎度毎度面倒事に巻き込まれやがる……」

 

 その表情は言葉とは裏腹に敵連合の手に落ちた2人を案じており、またそれとは違う何かに目を向けているようにも見えた。

 

「……死ぬんじゃねえぞ……」

 

 その言葉は誰にも聞かれることなく、部屋の中で霧散した。

 

 

 

「(眠れねえ……)」

 

 布団で横になっても轟はなかなか寝付けずにいた。実家が日本家屋で普段は畳で寝ており、一応あてがわれた部屋も畳が敷かれているので違いはないはずだったが、眠れない原因は当然敵の襲撃であった。

 

「(……届かなかった……)」

 

 そう心の中で呟きながら左手を握りながら見詰める。勝己が閉じ込められた球、あと少しで届くというところで敵に取られてしまった。あの時の嘲笑う顔と声が思い出される。

 

「(あいつ……なんで俺の名前を……?)」

 

 名前自体は雄英体育祭がテレビで放送されている時点で世間にも知れ渡っていることはわかる。だが、あの敵……荼毘が口にした轟はなにか含みがあるように感じられた。まるで……以前から轟を知っているかのような……。

 

「……水でも飲むか……」

 

 そう言って布団から起き上がり雑魚寝している部屋を出ていった。

 

「お……轟」

「轟、お前も眠れなかったのか……」

「……お前らもか」

 

 談話室スペースには常闇、障子、上鳴、峰田、瀬呂、切島がいた。彼らも眠れなかったのか、飲み物を飲みながら少し話をしていたようだった。

 

「……なんだか、身体は疲れてるはずなのに頭が妙に冴えちゃってさ……。ちょっと喉が渇いてたから飲み物買いに来たら常闇と障子がいて、瀬呂や切島も来て……って感じ」

「……常闇と障子は何してたんだ?」

「俺達も眠れなくてな。それならと常闇が敵の個性で囚われていた時の状況を話してたんだ」

「囚われていた時にも意識はあったが、ガラス球の中から外の景色を見ているようでよくわからなくてな……」

「そうだったんだな……」

「……」

「……」

 

 轟の声を最後に会話が途切れた。皆が何を話してよいか分からない状況であった。しばらく沈黙が続いたが、峰田がそれを破った。

 

「あのさ……緑谷も爆豪も大丈夫だよな?」

「あ、ああ! あいつらなら大丈夫だろ! な!?」

 

 

 普段と違って神妙な表情で峰田が言った後、上鳴が無理矢理明るく声を出す。しかし、他の者の表情はすぐれないままだった。

 

「……手」

「手?」

「爆豪が閉じ込められてた球、もう少しで掴めそうだったのに、届かなかった……」

「轟……」

「俺が掴めてたら、爆豪も緑谷も攫われることはなかったのに……!」

 

 左手を握りしめながら轟が悔しげ言葉を吐いた。入学時に比べれば鉄面皮ではなくなったが、それでも普段から表情を表に出すことがあまりなく、そんな轟が感情を露わにするのは周りの者も見たことがなかった。

 

「轟……俺も同じだ……」

「障子……」

「俺も、届かなかった……。お前の悔しさ、俺にもわかる……」

「……」

「こんな時のための、『複製腕(俺の個性)』のはずが……」

「……そう、か……」

 

 障子もまた悔しさを吐露した。障子の複製腕は腕から様々な身体器官を複製でき索敵に適しているが、腕を複製することでリーチを稼ぐことができるため遠距離からの人命救助でも有効である。

 

 そんな障子の個性も、あと少しというところで届かなかった。その場にいなかった者でもその悔しさを推し量ることは出来た。

 

 

「君達!!!」

 

 突然大声が周囲に響いた。全員が声のした方を見ると、飯田が怒りの表情で向かってきていた。

 

「もう遅い時間なのになぜ起きているんだ!? 布団にいなくて心配したんだぞ!?」

「ご、ごめん飯田……。でもよ……」

「眠れなくてよ……。気晴らしに水飲みに来たら皆いた感じで……」

「……皆の気持ち、俺にもわかる! 正直なところ、俺も寝付けずにいた……。だが、この件で俺達に出来ることはもうない! あるとすれば、学生らしく規則正しい生活を送ることだ! そのためにも早く部屋に戻って休むんだ! 目を瞑るだけでも少しはマシになる! さあ、早く!」

 

 上鳴、峰田の言葉に飯田も自分が眠れなかったことを告げる。しかし、元来の生真面目さ・委員長としての責任感から早く休むよういつも以上の声の大きさとテンションで全員に指示した。

 

 皆唖然としていたが、不意に轟がくすっと笑った。その様子に全員の視線が轟に移るが、それを受けて轟が口を開いた。

 

「飯田、お前すげえな……。こんな状況なのに普段通り生活できるように意識が向けられるなんて。しかも俺達を気にかけてちゃんと呼びかけくれてる……。緑谷の判断は正しかったな……」

「轟……」

「お前が委員長でよかった……」

「轟君……」

 

 飯田は驚いていた。入学時からだいぶ険のとれた轟だったが、それでもここまで自分の気持ちを表現することはなかった。ネガティブな気持ちだけでなくポジティブな気持ちも素直に出せる、そのように轟を変えたのはA組生徒との関わりでありその一番の立役者は間違いなく出久であった。

 

「飯田……。耳郎や葉隠、八百万って入院してるじゃん……。お見舞いに行けないかな……?」

「上鳴君……! わかった、朝になったら先生方に入院先を聞いてみる! そうしたら、皆でお見舞いに行こう!」

「委員長ナイス!」

「病院のベッドで横たわる女子……、良いかもしれない……!」

「さすがにダメだぞ峰田……」

「さあ! お見舞いに行く俺達が体調不良じゃ合わせる顔がない! 早く部屋に戻って休むぞ!」

 

 飯田の号令で皆が立ち上がり部屋へと戻る。初めは重苦しい空気だったが、部屋に戻る表情は幾分か明るくなっていた。

 

 

 

「麗日、梅雨ちゃん、起きてる?」

「起きてるよ」

「起きてるわ三奈ちゃん」

 

 芦戸の声に麗日、蛙吹が返事を返した。耳郎、葉隠、八百万は入院、出久は勝己共々敵連合に連れ去られたため、部屋には3人しかいなかった。

 

「耳郎も葉隠もヤオモモも……緑谷も、大丈夫だよね?」

「響香ちゃん達は入院しているから大丈夫だと思うけど、デクちゃんは……」

「大丈夫よ」

 

 出久は攫われた時点で両腕を粉砕骨折しており、さらに麗日達はわからないがワープゲートに飛び込む際にOFAの影響で右足も痛めていた。最悪の状況が頭に浮かび表情を曇らせる芦戸と麗日だったが、蛙吹の言葉を聞いて彼女に顔を向けた。

 

「出久ちゃんは大丈夫よ。爆豪ちゃんがいるもの。2人でなんとか時間を稼いでその間にヒーローや先生達が救い出してくれるわ」

「そ、そうだよね! 大丈夫だよね!」

「そうだよ! なんだったら爆豪君だったら隙見て自分で脱出しちゃうよ!」

 

 もちろん蛙吹の言葉に何の根拠もなく、ただの願望だった。だが、それでも麗日や芦戸が悲観的にならないよう、自分にも言い聞かせるように『願い』を込めて出した言葉だった。芦戸も麗日も蛙吹の意図に気付いて、自らに言い聞かせるように言葉を続けた。

 

「緑谷と爆豪さ、戻って来たら思いっきり喜んでさ、冷やかしたいね……」

「うん……皆で抱き合ってさ、もみくちゃにしてね……」

「後で爆豪ちゃんにめちゃくちゃキレられそうだけどね」

 

 そう言って3人で笑い合った。7人中4人がいない状況で心が沈みかけていたが、少しだけ心が軽くなっていた。

 

 コンコンコン

 

「!? はーい、誰ですか!?」

 不意にドアがノックされた。もう日付が変わって深夜の1時を回ろうとしている。こんな時間に誰が来たのか声を掛けると……。

 

「私、B組の拳藤達だけど……部屋に入って良いかな?」

「拳藤さん!? いいよ、今開けるね!」

 

 来訪者の名前を聞いて麗日がドアに行って鍵を開ける。ドアの外には拳藤の他に小大、小森、戸蔭、角取がいた。

 

「拳藤さん達、どうしたのこんな時間に?」

「その、なんというか、私達眠れなくてさ……。ちょっと話してたらあんたたちは3人だけっていうから、なら皆一緒の方がいいかなと思ってね」

「そうなんだ……ありがとう、拳藤さん。私らも3人で話してて少し楽になったけど、まだ心細いから来てくれて嬉しい」

「一応、ミッドナイト先生には許可取ってるけど、私らもここで寝ていいかな?」

「いいよ~! 思ってたのと違うけど、朝まで語り明かそう~!」

「お、言ったな?」

「朝まで出来るかはわからないけど、少しでも気を紛らわせられたらいいノコね」

「語りまショー!」

「ん……」

 

 拳藤達B組女子が来て部屋の雰囲気がガラッと変わった。5人が座れるスペースを作ると自然と車座になり、拳藤が口火を切って話が始まった。

 

「そっちは緑谷が攫われて、耳郎、葉隠、八百万が入院してるんだっけ?」

「うん、男子は爆豪君が攫われて他は全員大丈夫。障子君や轟君が怪我してたけどそこまで酷くなかったみたい」

「言っちゃあアレだけど、私達補習組が多かったからね〜」

「そっか。ウチは女子は塩崎と柳がガス吸って入院、男子は骨抜、黒色、回原、凡戸、庄田、鎌切達が入院だね」

「結構多いんだね」

「ウチは肝試しで仕掛ける側だったから、森に大勢いたのが原因ノコ。敵と直接会ったのは拳藤と鉄哲でなんとか2人で倒したみたいノコ」

「拳藤さんが!? 怪我はなかったの!?」

「私は大丈夫だよ。鉄哲が庇ってくれたりしたからね」

「鉄哲は怪我してたけど、軽傷だったからさすがにタフだな」

「私達は女の子の敵と会ったよ。たぶん私達と同じか少し上くらいだと思う」

「そんな子まで敵連合に入ってるんだね……」

「緑谷サン、大丈夫なんでしょうカ?」

「私達もさっきその話してたけど、デクちゃんと爆豪君を信じて待つだけだよ」

「それで2人戻ってきたらめちゃくちゃいじってやろーって話になったの!」

「いいねそれ。そん時は私達も参加していい?」

「ケロケロ、大丈夫よ♪ ただ、爆豪ちゃんが怒るだろうからそこは覚悟して」

「そこは鉄哲と物間に頑張ってもらうノコ♪」

「ん」

「そんじゃあ、ウチは切島と上鳴、瀬呂に頑張ってもらおうかな?」

「あ、そうだったそうだった。昨日は上手くはぐらかされちゃったけど芦戸と切島の関係について聞きたいな~♪」

「ええ!? 私と切島って、別になんでもないよ〜! 確かに同じ中学校だったけど……」

「とか言って、2人の距離感かなり近いノコ」

「実際のとこどうなの?」

「え、ええっと〜、麗日、梅雨ちゃん救けて!?」

「三奈ちゃん、観念しちゃった方がいいわ」

「今日はスケープゴートの響香ちゃんと透ちゃんおらんからな〜」

「そんな〜」

「さあさあ、吐け吐け〜♪」

「吐くノコ吐くノコ〜♪」

「あなた達ねえ……」

 

 戸蔭と小森による尋問が始まろうとしたところでミッドナイトが部屋に入ってきた。

 

「一緒の部屋で寝て良いとは言ったけど、夜更かしして良いとは言ってないわよ?」

「ああ〜、これは……」

「その思ったより話が弾んじゃって」

「そう、ならもうだいぶ気も紛れたでしょ? さすがにもう寝なさい。健康にも美容にも悪いわよ?」

「でも、まだ眠れそうになくて……」

「そうだ! ミッドナイト先生の個性で眠らせてくれませんか!?」

「あ、それいいかも。瀬呂が期末テストで眠らされたって聞いてたからちょっと気になってたんだよね〜」

「ミッドナイト先生、お願いします!!」

「え、ええ……。まあいいけど、あなた達も変わってるわねぇ」

 

 個性で眠らせても良いとは考えていたが、まさかお願いされるとは思っていなかったミッドナイトは多少困惑するが、それでも腰に携えていたジュリセンを構えた。

 

「それじゃあ、行くわよ。ゆっくりお休み!」

 

 ブァッ!!

 

 ミッドナイトが個性を発動させながらジュリセンを振るうと部屋の中にミッドナイトの匂いが充満し、それを嗅いだ女子生徒は皆眠りについた。全員が眠ったことを確認して、ミッドナイトは部屋を後にした。

 

「敵の襲撃を受けて恐怖で心も身体も疲れているはずなのに……強くなるわね、この子達は」

 

 教え子の成長に目を細めながらミッドナイトは宿直室へと向かった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

Side:Katsuki

 

「……どこだ? ここは?」

 

 気がついたら妙な場所に立っていた。自分の周囲5mくらいまではスポットライトが照らされているみたいに明るいが、それ以上先はどこまで続くかわからない闇。俺は敵連合に攫われてバーみたいな場所で監禁・監視されてたはずだ。また、あの仮面野郎かそいつに似た個性にかけられたか! ……いや、あの敵連合のリーダー、死柄木は一応俺を勧誘しているんだ。俺への印象が悪くなるようなことはしねえはずだ。まあ、奴は気まぐれそうだから確実とは言えねえが……。ただ、いずれにしろこれは何らかの個性と考えて間違い無いだろう。

 

 いや、そんなことよりデクだ! あんな怪我の状態のあいつをそのままにしたら下手したら死ぬ! それだけは……!

 

「かっちゃん?」

 

 不意に後ろからあいつ、ガキの頃から聞き慣れたデクの声が聞こえた。振り向くと普段通りのあいつの姿があった。だが、何かがおかしい。攫われた時は確か上着は着てなくて裸だった。それに……バキバキに折れていた両腕も何事もなかったように元通りだ……! これは……罠か!?

 

「よかったかっちゃん、ぶj「近づくな!」

 

 近寄ろうとするデクを制止する。こいつが本物かどうか確かめねえと!

 

「ど、どうしたのかっちゃん?」

「デク、俺の名前と家族の名前言ってみろ」

「え? え〜っと、爆豪勝己に爆豪勝さんに爆豪光己さんでしょ?」

「俺達が通っていた中学校は?」

「折寺中学校」

「……ガキの頃集めてたヒーローカードで俺の1番のお気に入りはなんだ?」

「1番の!? オールマイトなのは当然として1番レア度の高いURのゴールデンオールマイトカードかな? いや、レア度は下がるけどポーズのカッコいい恒常SRかな? あ、でも期間限定で出ていたシークレットレアのSRカードか? いや、かっちゃんは意外と思い出を大切にするから1番最初に引き当てたノーマルのオールマイトカードの可能性も捨てきれない……。は!? もしかして海外限定で発売されてたデビュー時のヤングエイジオールマイトかもs「うるせえ黙れ」

 

 この気色悪いナードトーク、間違いなくこいつは本物のデクだ! こんなのがそっくりそのままコピーされてたまるかってんだ!

 

「ええ!? そんな!? かっちゃんのお気に入りカードが何か当てたいじゃないか!?」

「趣旨勘違いしてんじゃねえわ! テメエが偽物じゃねえか確かめてたんだよ」

「え? そうだったの?」

「っていうかテメエは俺を疑ってなかったんか!?」

「え? だってかっちゃんはかっちゃんでしょ?」

「……」

 

 こいつは何ふざけたこと言ってんだ……!? 普通こんな非日常な光景は何がしかの個性を疑うだろうが!?

 

「でも、よかったよ。()()()()()()()()()()

「予想通り?」

 

 どういうことだ? こいつはここが何か知ってるのか?

 

「あ、ごめん。自分で勝手に進めちゃって。ええっとね、これは()()()()の影響、だと思う……」

「……なんだって!?」

 

 デクの……個性? どういうことだ!? 自分の身体能力を向上させる増強型の個性じゃ無いのか!? 

 

「どういうことだ!? お前の個性は身体能力強化じゃ無いのか!? いや、そもそもお前は無個性だったんじゃなかったのか!? 俺を騙していたのか!?」

「か、かっちゃん落ち着いて……。痛……今から説明する、から……」

 

 興奮して気づかないうちにデクの肩を強く掴んでいたようだ。肩から手を離してデクの顔を真っ直ぐに見つめる。デクも緊張しているのか、目を閉じて深呼吸を数回し、意を決して目を開いて口を開いた。

 

「僕の個性の名前はOFA(ワン・フォー・オール)、オールマイトから受け継いだんだ」

 

 OFA(ワン・フォー・オール)……1人はみんなのために……か。だが、今重要なのはそこじゃねえ! 

 

「オールマイトから受け継いだ……? どういう意味だ!?」

「う〜んと、説明は長くなるんだけど……」

 

 

 デクの話は俄かには信じられないものだった。超常黎明期の混乱、暗黒時代、悪の帝王、それを食い止めようとする弟、OFAの初代、その意思を受け継いできた歴代の継承者達……。小説や漫画、映画にでもありそうな話だったがそれを笑い飛ばすことができなかった。何故ならその継承者の1人がオールマイト、俺の憧れるヒーローだったからだ。

 

 あの出鱈目さを目の当たりにすればデクから聞いた荒唐無稽な話も途端に現実味を帯びてくる。そして……。

 

「……僕がオールマイトからOFAを受け継いだんだ。そして……」

「今は俺がOFAを受け継いでいる……?」

「たぶん、今はその途中だと思う……。僕も初めてだからあんまりわからなくて……」

 

 そりゃそうだろう。こんな大層な個性(ちから)が頻繁に継承される状況ってのは避けるべきだ。だが……なんでこの個性を……?

 

「……オールマイトはなんでお前にこの個性を渡したんだ?」

「…………」

 

 デクが黙り込んだ。さっきの話の中でOFAは『()()()()()()()()()()()()()()()()』って言っていた。つまり、持ち主がOFAの持ち主となり得る相手にしか渡さないというわけだ。オールマイトにあった時のこいつは……俺が知っている通りの無個性だった。

 

 何がオールマイトにOFAの譲渡を決断させたんだ?

 

「答えろデク。オールマイトはなんでお前を後継者に選んだんだ?」

「…………」

 

 口を開いて言いあぐねては閉じてをくり返し、何度目かでようやく声に出した。

 

「僕に……ヒーローとしての素質を見出したからって……言ってた」

 

 デクがそう言った途端、周囲の様子が変わった。デクも驚いたように周りを見渡している。真っ暗な闇からビルなどが立ち並ぶ光景、いや映像が見えた。全方位型のスクリーンみたいな感じか! そう思って見ていると見覚えのある場面に気づいた。

 

 ……これは……あの時の!

 

「これは……始業式の日だね……」

 

 デクが独り言のように呟いた。そう、あの日……俺がヘドロヴィランに襲われた日。そして……デクのノートを爆破した日だ……。

 

「あの日、かっちゃんにノートを爆破されてすぐ家に帰ったんだけど、やっぱりノートを回収しなきゃって思って途中のガード下のところで引き返そうとしたら……僕もあのヘドロヴィランに襲われたんだ……」

 

 その時のことを思い出したのかデクが自分の両肩を抱いた。やっぱり……あの時ヘドロヴィラン(あの野郎)が『また』っつってたのはこのことだったんだな……。

 

「呼吸ができなくて意識が薄れてきて、そこをオールマイトが救けてくれたんだ。すぐ意識が戻ったけど、襲われた恐怖で身体が震えて移動のために飛ぶ直前のオールマイトに抱きついちゃったんだ。オールマイトは僕の安全のためにすぐビルの上に着地してくれたんだけど……そこで僕はオールマイトの秘密を知っちゃたんだ……」

 

 映像を見るとビルの上に着地してデクを抱きしめていたオールマイトが突然苦しみ出した。身体から煙が出てきて、現れたのは……。

 

「!? こいつは……体育祭の時にリカバリーガール(ババア)と医務室にいた……!?」

「これがオールマイトの本当の姿……トゥルーフォームだよ。この時点では今までの姿……マッスルフォームは一日3時間くらいしか維持できなくなってたらしくて。こうなった原因は……AFOとの戦いなんだ……」

 

 こんな……俺の憧れたNO.1ヒーローが……こんなヒョロガリの姿になっちまってたなんて……!

 

「そこでオールマイトの秘密を言わないことを約束して……ビルから降りる時に爆発音が聞こえて……降りて音のする方にいくとかっちゃんがヘドロヴィランに襲われてて……あとはかっちゃんも知っている通りだよ……」

 

 ここから先は俺も知っている。必死で抵抗して、そしたらデクが突っ込んできて……。だが、デクの視点で見るとまた違った印象を受ける。

 

「オールマイトは……この時点で活動限界だったみたいで。他のヒーローも対応できないところを見ていて、そんな時のかっちゃんの顔が見えたから……咄嗟に飛び出しちゃったんだよね、無個性のくせにさ……」

 

 デクが自嘲気味に笑いながらそう語る。確かにこの時は俺とヘドロ野郎は体の主導権争いをしていて個性を発動させまくっていたから、爆発が連続で起こっていたはずだ。そんな中に飛び込むなんてヒーローでも迂闊にできねえ。そんな中をこいつは無謀にも向かってきやがった。

 

 だが、そんなところが……!

 

「無個性でひ弱だったけど……無意識に身体が動いた。そんなところにオールマイトは僕にヒーローとしての素質を見出したみたい……」

 

 そう言ってデクが俺を見つめる。その顔は僅かに微笑んでいるが、何を考えているかは全くわからなかった。

 

「……なんで、OFAを俺に渡したんだ……?」

 

 これが最大の疑問だ。OFAはこいつがオールマイトから貰った、いわば宝物みたいなものだ! OFAがなけりゃこいつはヒーロー科に受かることはなかったはずだ……! そんな大事なもんを……なんで俺に!?

 

「いくつか理由はあるんだけど……まず僕はここに攫われた時点で両腕骨折、右足負傷と満身創痍でろくに動ける状態じゃなくて……。逃げるためにはかっちゃんに頼るしかなくて……でも、かっちゃんもあの人数を相手にするのは難しすぎる」

 

 それは否定しねえ。1人2人ならともかくあんなにいたんじゃ流石の俺も無理だ。しかも全員の個性も把握できてない状況じゃ無理に行動は起こせない。

 

「次は……死柄木は僕を殺そうとしている。こんな状態の僕が目の前にいたら……現にそうしようとしていた」

「……アレはテメエが無駄にあいつを煽ったからだ! もっと言葉に気をつけるべきだった!」

「……うん、そうだね……。そしたらあんな痛い思いはしなかったと思う」

「……」

「かろうじて免れたけど、明日になったらまた僕を殺そうとするかもしれない。僕が死んだらOFAも消えて無くなって……そうなったらAFOに対抗する手段が無くなっちゃう」

「それを回避するために俺に渡したのか……?」

「それも……ある」

 

 ()()()? 他にも理由があるのか?

 

「でも、1番の理由は……かっちゃんだからなんだ……」

「なんだと……?」

 

「……渡すならかっちゃんがいいと思ったから……」

「……え?」

 

 渡すなら……俺? なんで……?

 

「なんで……俺なんだ……?」

「……あいつは……死柄木は気紛れで癇癪持ちで……人を殺すことを躊躇しない奴だと思う。かっちゃんが敵連合に入るのを拒んだら、おそらく殺すと思う。そんなのは嫌だ……! それに僕と同じで……オールマイトに憧れているから……。渡すなら同じ人に憧れてる……身近な凄い人で……好きな人がいいと思ったから……」

「……」

 

 好きな……人……? 誰が……?

 

「……僕はかっちゃんが好きだ……。口が悪くて態度も悪くてすぐに手を出すけど……誰よりもストイックで夢に対してひたむきで……オールマイトに憧れてる……。そんなかっちゃんが好きだ……」

「……デ……ク……」

「そんなかっちゃんを守りたいから……OFAを渡したんだ……。オールマイトから……憧れのヒーローから預かった、大切なものを……」

 

 こいつは……! いつも自分は後回しで……! 他人を第一に考えやがる!

 

 人の気も知らねえで!!!

 

「……てめえはマジで自分勝手な奴だな!」

「かっちゃん?」

「てめえはそれで満足だろうが! ……守られる俺の気持ちを考えたことがあんのかよ!? 俺が守ってやりてえのに! お前がボロボロになる姿を見せつけられる気持ちを!!?」

「……………………え!? ええっ!? ちょっ、え!? 待って!? 嘘でしょ!?」

「…………」

 

 こいつ、キョドり方が昔と変わらずキメぇ……。俺がそんな風に想ってたなんて微塵も思いついてねえ……。

 

「いいいいいいいい、いつからなの!?」

「そんなの覚えてねえわ。っていうかキョドりすぎだろ、相変わらずクソナードだな」

「だだだだって!? そんな素振りほとんどなかったし!? っていうか、それなのにあんな風に僕に接してきたの!?」

 

 

 デクに言われて身体が強張る。

 

 そうだ。俺はこいつにひでえこと……到底許されねえことをしてきた。自分の弱さを……未熟さを認めたくないがために……。

 

 でも、誤魔化しきれねえ。誤魔化したくない!

 

 

「……覚えてるか? 4歳ぐらいの頃、森の中に探検に行ったこと……」

「4歳……森の中……」

「俺とお前、あと何人かのモブと森歩いてたら小せえ川があって丸太の橋がかけられてた。最初に俺が渡ろうとした時に足滑らせて下に落っこちた」

「…………」

 

 

『かっちゃん落ちた!』

『おーい、大丈夫かー!?』

『大丈夫だろ、かっちゃん強えもん』

『おー、ヘーキヘーキ!』

 

 

「他の連中は俺が運動神経が良くて、個性も強えから何の心配もしてなかった。実際、俺はなんともなかったし早えとこ上に上がって『あんな高さから落ちても平気だ!』って感じで自慢してやろうとすら思っていたんだ……。だけど、お前だけは違った……」

「……」

 

 

『大丈夫? 立てる? 頭打ってたら大変だよ?』

 

 

「俺を本気で心配して、滑ったら自分も危ねえのに下に降りてきて俺に手を差し伸べた。俺を救けようとした。お前の判断は間違っちゃいねえ、高いところから落ちて怪我してねえか確認すんのは普通だし心配するのが当たり前だ。だが、あの時の俺はそんなこと考えられなかった。無個性のお前が、俺より弱えお前が俺を救ける、それが俺にとっては屈辱的なことに感じられたんだ。お前に……負けたような気がしてな……。……それに……」

「それに?」

「…………す、好きな奴にカッコ悪りぃとこ見られて恥ずかしいって気持ちもあったんだ……! ……その屈辱感と情けなさがぐちゃぐちゃになって……お前に強く当たってきた……。10年以上も……自分のちっぽけなプライドを守るために……」

「……」

 

 今ならわかる。あん時の俺は橋から滑り落ちた情けない、カッコ悪い姿を見られたのが恥ずかしくて……それに弱いこいつに救けられようとされたのが悔しくて……こいつを、イジメてきたんだ……。

 

 俯き気味だった顔を上げてデクの顔を見る。あいつの顔に浮かぶ表情がどんなものなのか……。

 

 最初は呆けた表情だったが……? 笑った?

 

「なんか……かっちゃんかわいい♪」

「…………はあ!?」

 

 こいつ何言ってんだ!? 骨折の痛みで脳みそもおかしくなったのか!?

 

「だって……傍若無人で天上天下唯我独尊のかっちゃんにも人を好きになるっていう感情があったり、すすすす好きな子に意地悪しちゃう小学生みたいなメンタリティーなんだなって思うと……」

「……俺が言うのもなんだがてめえ相当イカれてやがるな……。お前を、いじめてたんだぞ?」

「うん、自分でも変だと思う。あんなことされても、かっちゃんを好きだなんて……。あ、でも……流石にノートを爆破された時は悲しくて辛かったな……」

「ああ……」

 

 あれは自分でもクソだったと思う。いくらこいつが雄英に進むのを……ヒーロー目指すのを諦めさせる為だったとはいえ、最悪な行動だった。いや、違うな……。

 

 

 『来世は『個性』が宿ると信じて……屋上からのワンチャンダイブ……!!』

 

 

 デクが俺を殴って言い切ることはなかったが、こんな……自殺教唆な言葉を思いついた時点で最悪だ。

 

 ……こいつが殴ってくれて救かった。取り返しがつかないことにならなくて済んだ。

 

 ノート爆破した時の間違いを……いやこれも違うな……。4歳のあの時から間違い続けてきたんだ……。

 

 

 もう……二度と間違わねえ……!!!

 

 

 

「デ……出久……」

「へ? え!? かっちゃんが僕の名前を……!?」

「黙って聞けや!」

「ひゃ、ひゃい!?」

「……4歳のころ、川に落っこちたときに救けに来てくれてありがとう」

「……」

「今までいじめて……ごめん。すまなかった……」

「かっちゃん……」

「そして……好きだ」

「へあ!!?」

 

 俺の告白に出久が顔を真っ赤にして慌てるが、追い打ちをかけるように正面から抱きしめた。それにさらに慌ててジタバタするが、さっき俺をかわいいとか言った仕返しだバーカ……!

 

「ちょっ!? 待っ!? 話が急すぎて!? かっちゃんが僕にありがとうって言って!? ごめんって謝って!? 好きって!? 情報量が多すぎる!? ちょっ!? なんでキスしようとしてるの!?」

「うるせー黙ってろ! 今まで散々酷いことしてきちまったんだ。埋め合わせくらいさせろ」

「いろいろおかしいよね!? それ僕のセリフだよね!? ちょっ!? 待ってかっちゃん!!」

「……なんだよ」

 

 抱きしめてキスしようと顔を背けたら本気で顔を背けられた。こいつ、いい度胸してんじゃねえかよ……!

 

「その……キスするなら、現実の世界がいいな、なんて……」

「…………」

「かっちゃん?」

「てめえその言葉覚えとけよ……」

「……うん……」

 

 そう言って、出久をもう一度抱きしめて身体を離す。攫われちまってこんなことになるとは思わなかったが……こうでもしないと俺は変われなかったかもしれねえ……。そのきっかけを活かせたことに今は感謝だ。

 

 後は脱出するだけだ。絶対、出久は死なせねえ!!!

 

 

「デ……出久。OFAの譲渡はどんくらいで終わるんだ?」

「……デクでいいよ。もう慣れちゃってるし、それに……麗日さんにいい意味にしてもらえたから」

「……わかった」

 

 そこはあの丸顔に感謝しねえとな……。戻ったら……なんか礼におごってやるか……。

 

「確か、オールマイトがDNAを取り込むためには2~3時間かk「ちょっと待て。今なんつった?」

「え~っと?」

「DNAを取り込むつったよな? てめえ、オールマイトからどうやって受け継いだんだ!? まさか、てめえが俺にしたみたいにキスじゃねえだろうな!?」

「ききききキスだなんて!? オールマイトとは恐れ多くてキスできないよ!?」

「論点はそこじゃねえわ!? じゃあ、どうやったんだよ!?」

「でぃ、DNAを取り込めるならなんでもいいらしいから、オールマイトの髪の毛を……その食べ、ました……」

「……」

「そんな顔しないでよ!? 僕だって髪の毛食べるの嫌だったよ! でも、テスト当日だったから時間なくて!」

「……それはわかった。じゃあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「へ? それは、その……」

「デェク?」

「その、かっちゃんに髪の毛食べてって言っても絶対やらないだろうし、汗や血舐めてっていうのも変だし、その、キスなら……自然にできるかなと思って、それに、もしかしたら殺されるかもしれないと思って、キスにしました……」

「……この痴女ナードが」

「ちょ!? 痴女って!? あの状況でこんな事細かに説明できないでしょ!?」

「自分から思いっきり舌入れてきたくせによぉ……」

「それはその、その方が効率的に唾液交換できるかなと……」

「唾液交換とか言うなや変態が」

「かっちゃんが言わせてるんでしょ!? もう!」

「ああ、悪かったな。後で()()ときは俺からしてやるから楽しみにしてな!」

「……え?」

 

 そう言ってキョトンとした目で俺を見る。こいつ、助かった後の事かんがえてなかったのか? いや、おそらく自分が助からなかった時のことを想定して、俺に託したんだろう……。だから、OFAが戻ってくると思ってなかったんだ。

 

「お前がオールマイトから託されたものだろ? ならてめえでその使命を果たしやがれ!」

「かっちゃん……」

「借りたもんは必ず返す、俺のプライドが許さねえ!」

「……うん、わかったよ。それじゃあ、OFAの使い方を……!?」

「!? デク!?」

 

 話してる途中でデクの身体が徐々に薄くなっていく。いや、デクだけじゃなくて俺の身体も薄くなってる。これは一体!?

 

「たぶん、現実世界の身体が目覚めるんだと思う」

「な!? それじゃあもう時間ねえじゃねえか!?」

「大丈夫だよ」

「は?」

「かっちゃんなら大丈夫! だって『才能マン』だもん!」

 

 こいつは……どこまで俺を信頼してやがる……。ここまで言われて、できませんでしたってなるわけにはいかねえ……!

 

 

 出久は俺が救ける!

 

 

「あ、コツはオールマイトが言ってたけど、『ケツの穴グッと引き締めて心の中でこう叫べ!!! 『スマッシュ!!!』って」

「ケツの穴!? 女になんてこと言いやがる!?」

「一応言葉の綾で個性を鍛えてるかっちゃんなら問題ないと思うよ」

「お前の俺への無条件の信頼はなんなんだ!?」

「そりゃあ幼馴染だもん。あ、あと注意事項だけど100%のスマッシュ撃ったら骨折れちゃうからね?」

「何回もお前を見てるからわかるわ!」

「出力のパーセンテージでいうと大体5%くらいまでかな? それ以上出すと筋とか痛めちゃうから」

「そういうことはもっと早く言え!」

 

 言ってる間にお互いどんどん身体が薄くなっていて、意識も薄れてきた。ここで意識を失うと現実(あっち)で意識が覚醒するのか。

 

「かっちゃん」

「ああ!?」

 

 薄れゆく意識の中で出久が俺に呼びかける。

 

「かっちゃんなら大丈夫。救けてね、僕のヒーロー」

「……わぁってるわ!」

 

 

 

「……ちっ。どこもかしこもおんなじニュースしかしてねえな」

「そりゃそうだろ、俺達の華々しいデビュー戦だからな! 他に面白いのねえのか!」

 

 敵連合の連中の声が聞こえて急速に意識が覚醒してきた。薄目を空けると、ツギハギ野郎とタイツ野郎がテレビを見ながらあーだこーだ話してやがる。頭は動かさずに視線だけで周囲を見るが、他に敵はいねえ。テレビの時計表示は8時10分。こっちに連れて来られたのが昨日の夜8時は確実に過ぎてたはずだから、12時間も経ってるのか! 心身の疲労があったとはいえさすがに寝過ぎだ!

 

 だが、一番厄介なワープ野郎がいない今がチャンスだ!

 

「(……デク……起きろ)」

「んん……」

 

 小声で呼びかけると身じろぎしながらデクが声を上げる。さっきまでいた個性の中とは違って当然両腕は折れたままだ。こんなにボロボロになってまで、俺を追ってきたんだな……。

 

 絶対に守る!

 

「(……逃げるぞ……いいな?)」

「う、うん。任せるよ、かっちゃん……」

 

 とは言ったものの、こいつを抱えちゃ両手が塞がれちまう。なんかいい方法はねえか! そう考えているとデクに被せたシーツが目に入った。これを使えば、いけるか!

 

「デク少し痛むかもしれねえが、我慢しろよ……」

「……うん……」

 

 敵2人のばれない様に音を立てずに横抱きにしていたデクの身体を一旦地面に降ろす。被っていたシーツを手に取ると……デクの胸が目に入る。こいつ、結構デカいよな……。Cは確実、いやDからEより……って今はそんなこと考えてる場合じゃねえ! 頭を振ってシーツの形を整えてデクの身体の下、肩の上から股下を通るようにして……よし。シーツを使って簡易的な介助ベルトにできた。これでデクを背負ってなんとか人、警察やヒーローのいるところに行ければ……!

 

「じゃんけん……ぽん! クソ、負けちまった!」

「これの何が面白えんだ?」

「さあな! ゲン担ぎみてえなもんだろ! それより、そろそろお寝坊さん達を起こすとするか!」

「それもそうだな……。飯も食いてえし、あのガキどもにも……!」

 

 

 なんとかデクを背負い終えたところでツギハギ野郎がこっちを見やがった。クソッ! もう少しで隙を付けたのに!

 

「トゥワイス、全員起こして来い」

「合点承知! すぐ呼んでくるぜ!」

 

 タイツ野郎がいなくなるならツギハギ野郎1人! それならなんとかなる!

 

「爆豪君、どこかにおでかけかな? そろそろ朝飯なんだが、一緒に食べないかな?」

「あいにく帰らないといけなくてな、門限に親も教師もうるせえんだよ!」

「そっか。あんまり手荒なことはしたくないんだが……度合Ⅱ度のやけどは覚悟してくれよ?」

 

 そう言ってあいつが構えると両腕から蒼色の炎が揺らめいた。

 

 

 こいつは! デクは絶対に守ってみせる!




 というわけで第43話でした! 今回もボリュームたっぷりでお届け致しました♪ 襲撃後の生徒達の様子を描写してみましたが、予想の倍ぐらいの文章量になっちゃいましたw なかなか書くと止まらないですねwしかも今回はデクちゃんとかっちゃんのところは特にニヤニヤ気持ち悪い表情で書いてましたw 2人の微笑ましい漫才を楽しんでいただけたなら幸いです♪
 さて、次回で2人は脱出できるのでしょうか!? お楽しみに!

7/3 文章最後半のトゥワイスが自分を複製する描写に関して、原作のこの時点でトゥワイスは過去のトラウマで自分を複製することができませんでした。原作との齟齬、矛盾が出るのでその部分を削りました。ご了承ください。
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