それではどうぞ!
Side:Izuku
「神野区……」
「確か、緑谷さんと爆豪君が保護されたところよね?」
「そう、です……」
医務室で装備を外した13号先生とテレビの速報を見ていた。かっちゃんと脱出したのが昨日の朝で、それから今までリカバリガールの治療を受けてたから世の中がどんなことになってるかリカバリーガールとの会話でしかわからない。さっきも目が覚めて記者会見があったことを初めて知ったから、ここ数日でずいぶん世の中の情報に疎くなっている。……けど、このニュースはそれ以上のインパクトだ。
「……もしかしたら、
「敵連合絡み?」
「君達が攫われた場所と同じだから、警察やヒーローが確保に動いてるんじゃないかな?」
「でも、さっき会見の映像見ましたけどまだ調査中って言ってて……」
「たぶん、嘘の情報だったんじゃないかな、敵連合を欺くための。その証拠に今日の会見ではオールマイトいなかったし」
「確かにいなかったですね……」
「まだ1年目の新人教師に記者会見を任せるのは荷が重いから、って理由もなくはないと思うけどね」
13号先生はそう言ったが、場所もタイミングも完璧だからたぶん確実にオールマイト達の作戦だと思う。おそらく、僕とかっちゃんが脱出したことで状況が大きく変わったんだ。
「とにかく、作戦が本当だったとしたらもう大丈夫だろうね。オールマイトや他のヒーロー達も参加しているしUSJの時と違ってこちらが先手を取っているはずだから」
「そう……ですね……」
13号先生の言ってることはおおむね正しい。ヒーローや警察が準備を整えて敵連合の虚をつけたのなら作戦はほとんど成功したようなものだろう。
……普通であれば。
オールマイトが参加している……本来ならこれ以上安心できることはないはずなのに、胸騒ぎが止まらない……。
オールマイト……!! かっちゃん……!!
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Sir Nighteye
『……現場は逃げる人々で騒然としていて現地のヒーローや警察が避難誘導に当たっております。神野区では昨日も敵連合に拉致された雄英高校生徒2人が保護されたということがあり、敵連合の拠点があるのではないかと疑われていますが、現時点では関連は不明です』
「……始まったか……」
「私達が行ってももう出来ることはなさそうですね」
「確かに戦闘への参加は難しいが、後詰めや後方支援は必要だ」
昼頃に起こった大規模事故及びそれに付随する事件・事故の処理に大幅に時間がかかってしまった。オールマイトとその友人の刑事に依頼された敵連合掃討作戦。すべての作業が終わってバブルガールの運転で現場へ急がせているが、結局作戦の開始には間に合わなかった。だが、相手は世間を騒がせている敵連合、警戒しすぎるということはないだろう。
「それにしても、ミリオ君……ルミリオンは連れて来なくてよかったんですか? かなりの戦力になったと思いますけど」
「確かに……ルミリオンはもうプロヒーローと同等……トップと比較しても遜色のないレベルだ。だが、一応インターンで働いているとはいえまだ学生、しかも雄英への世間の目が集中している中で今回の作戦に連れて行くのはいささかタイミングが悪い」
「だからセンチピーダーと事務所へ戻るように指示したんですか?」
「報告書の作成も必要だからな。……バブルガール、急いでくれ」
「わっかりました!」
私の指示にバブルガールが明るく答え、乗る車のスピードが上がる。あと、数十分で現場に到着するだろう。
……今日ずっと感じている胸騒ぎが止まらない。……オールマイト、無事でいてくれ!
―――――――――――――――――――――――――――――――――
ゴッ!!!
「ずいぶん遅かったじゃないか?」
パンッ!!!
「うおお!!!」
オールマイトとAFOがぶつかり、さらに互いを弾き飛ばした衝撃で周囲に衝撃波が広がる。そばにいた敵連合のメンバーはそれに吹き飛ばされまいと必死にこらえている。
「バーからここまで5km余り……僕が脳無を
「貴様こそ、何だその工業地帯のようなマスクは!? だいぶ無理してるんじゃあないか!?」
10数m弾き飛ばされたオールマイトとAFOは睨み合う。互いにダメージはなく、オールマイトはすぐさま体勢を整えてAFOに向き直る。
「5年前と同じ過ちは犯さん、オール・フォー・ワン。……貴様は今度こそ刑務所にブチ込む! 貴様の操る連合もろとも!!」
「それは……やることが多くて大変だな、お互いに」
「!?」
ブワッ!! ズッ!! ドォオオオオン!!!
直前の一撃をはるかに上回る威力の攻撃がオールマイトに当たり、後方の建物をいくつも壊しながら吹き飛んでいった。
「『空気を押し出す』+『筋骨
「先生……」
「黒霧、皆を逃がすんだ」
ペキペキッ……ドドド!
AFOが右手をかざすと5本の指が黒く鋭く変化し、鞭のように伸びて未だに意識の戻らない黒霧に次々と突き刺さる。
「ちょ! あなた! 彼やられて気絶してんのよ!? よくわかんないけどワープを使えるならあなたが逃がしてちょうだいよ」
「僕のはまだ出来立てでねマグネ。転送距離はひどく短い上……彼の
黒霧に突き刺した指を介してAFOが黒霧のワープを強制的に発動させ、霧状のワープゲートが展開される。
「さあ、行け」
「先生は……!」
ズドォオオン!!
弾き飛ばされたオールマイトがそれ以上のスピードで戻ってきて再びAFOに向き合う。
「逃がさん!!」
「常に考えろ弔。君はまだまだ成長出来るんだ」
タン……ドッ!!!
向かってくるオールマイトをAFOも迎え撃つ。AFOは死柄木に衝撃がいかないようオールマイトを正面で受け止めるがそれでも衝撃が周囲に広がっていく。
「先生……」
「行こう死柄木! あのパイプ仮面がオールマイトをくい止めてくれてる間に!」
スッ……パッ
Mr.コンプレスが気絶している荼毘を個性でボール状にしながら死柄木に呼びかける。この場においてオールマイトに対抗できるのはAFOしかいないため、その判断は正しいものだった。
…だが。
ブンッ! ガガガ……!!
「ぐっ!?」
「ぎゃッ!?」
「ぐぁ!?」
闇夜を切り裂いて、グラントリノが猛スピードで敵連合のスピナー、トゥワイス、マグネを攻撃・昏倒させる。
「グラントリノ! 少し遅いですよ!」
「お前が速すぎるんだ! だが、間に合ったようだな」
「私もAFOを相手にしながら敵連合全員を拘束するのは厳しいですからね。……ゴホッ、そちらはお願いします……!」
「(こいつもそろそろ活動限界が近いか……!)ああ、ここで終わらせるぞ!」
グラントリノの到着で形勢はオールマイト達に有利となったように見えたが、オールマイトの活動限界が近いため状況としてはそれほど猶予のあるものではなかった。
「(志村の友人か……)やれやれ、この状況は少し厳しいね……」
「おいおい、親玉のアンタがそんな弱気じゃ困るぜ!?」
「弔君の先生……でもなんでもいいけどなんとかしてください~!?」
弱音を吐くAFOにMr.コンプレスとトガヒミコが悲鳴を上げる。オールマイトの活動限界について2人は知らないため、彼らにとってはAFOが頼みの綱であった。
「お前らはここで終わりだ! 大人しくしてな!」
「こんなとこで終わってたまるか! トガちゃん下がってろ!」
「Mr.!? ちょっとカッコいいかも……!」
「喧嘩はからっきしだけど、俺だってやるときゃあ……!」
ブンッ! スカッ! ボゴッ!
Mr.コンプレスは向かってくるグラントリノに右手を振るう。彼の個性は人や物をボール状に閉じ込める個性であるため、触れられればどんなに強い者でも脱出できない対人戦でも脅威となるものである。
「ぐあっ!?」
「やっぱりカッコ悪いです……」
「だから、言ったろ。大人しくしてろって」
だが、そもそも肉弾戦が得意でないMr.コンプレスがグラントリノに敵うはずもなく、一撃で昏倒させられてしまった。
「
「弔君、終わりたくないです!」
「……!」
敵連合を拘束すべく一気に攻勢をかけるグラントリノに対して死柄木がトガヒミコの前に立つ。死柄木自身も直接戦闘が得意ではないが、彼の個性『崩壊』は彼の五指が触れたものを崩壊させるものなので相対する者には警戒すべき脅威であった。
「やられたな、一手でキレイに形勢逆転だ」
「!?」
さして焦りを感じさせない言葉と共にAFOが指を鋭く変化させてオールマイトに向けて伸ばす。それほど威力があるようなものではなくオールマイトは違和感を感じつつも難なく避けるが、伸ばした指の真の狙いはオールマイトではなく気絶しているマグネであった。伸ばした指がマグネに突き刺さり、さきほど黒霧に行ったように個性を強制発動させる。
個性強制発動『磁力』。自身から半径4.5m以内の人物に磁力を付加。全身・一部など力の調整可。男がS極、女がN極となる。自身には付加できない。
現状での付加の目的は……。
「塵になれ」
「はっ!」
ブゥウウン……! スカッ!
「「!?」」
死柄木がグラントリノを崩壊させようと右手を振るうが、スピードに勝るグラントリノはそれをあっさり避け死柄木を気絶させるために顎目掛けて蹴りを放つ。が、当たる瞬間に死柄木が
「え? ちょっと!? やー! 急に来られてもぉー!」
AFOが強制発動させたマグネの個性『磁力』によってトガヒミコがN極、他の敵連合のメンバーがS極となりその結果として死柄木がグラントリノの攻撃を回避したのであった。付加された磁力でトガヒミコに敵連合マンバーが次々と引き寄せられぶつかりながらワープゲートの中に入っていく。
「待て……ダメだ!、先生!」
「ぐっ」
敵連合を追いかけようとグラントリノが接近するが、個性の持ち主であるマグネをワープゲートに投げ捨てたAFOの指がグラントリノにワープゲートを超えさせまいと攻撃した。死柄木は個性の効果でワープゲートの向こう側のトガヒミコに引き寄せられているが、1人残るAFOに必死で呼びかける。
「
「弔、君は戦いを続けろ」
死柄木が続きの言葉を発する前にワープゲートが閉じ、後にはAFO、オールマイト、グラントリノが残された。
ゴォッ!
一瞬の隙と判断してオールマイトがAFOへと接近し攻撃を仕掛ける、が。
「僕は弔を助けに来ただけだが、戦うというなら受けて立つよ」
ゴボゴボッ……バシャ! バチン!
オールマイトの左拳がAFOを捉える前に黒い液体でグラントリノが転送されオールマイトの攻撃が当たる。その瞬間、転送と同時に発動していた衝撃反転でオールマイトにも自分が込めたものと同等の衝撃が跳ね返ってくる。
「すみません!!」
殴ってしまったグラントリノにオールマイトが謝るが、その隙にAFOがオールマイトに攻撃を仕掛ける。
「何せ、僕はおまえが憎い。かつて、その拳で僕の仲間を次々と潰し回り、おまえは平和の象徴と謳われた。僕らの犠牲の上に立つその景色、さぞや良い眺めだろう?」
ブワッ!
「DETROIT SMASH!!!」
ドォオオン!!!
撃ち込まれる直前に右拳でなんとか合わせて攻撃を打ち消す。その衝撃は凄まじく、周囲に衝撃波と風を巻き起こした。
「(強引に打ち消したな……)心置きなく戦わせないよ。ヒーローは
「黙れ」
「!」
ゴキキッ!
ぶつけ合った拳を掴まれ、AFOが一瞬驚く。受けた衝撃・ダメージを感じさせない強い力でAFOの腕を握りつぶしていく。
「貴様そうやって人を弄ぶ! 壊し! 奪い! つけ入り支配する!」
「(マズい……転送を……)」
握られて動きが制限されたこと焦りを見せるAFOだったが、左腕を掴むオールマイトの力が強く振りほどくことができない。
「日々暮らす方々を! 理不尽が嘲り嗤う!」
この機を逃さずオールマイトは残り少ない力を振り絞り渾身の一撃をAFOにぶつける。
「私はそれが! 許せない!!」
ドゴッ!!!
オールマイトの左拳がAFOの被るマスクを突き破り、勝負は決したかのように見えた。同時にオールマイトは活動限界を迎えギリギリでマッスルフォームを維持している状況だった。
「俊典……!」
「(活動限界が……!!)」
「いやに感情的じゃないか、オールマイト」
「!?」
左拳をぶつけたはずのAFOが下から挑発してくる。マスクでダメージが軽減されたらしいが、それでも相応にダメージを与えており、もう少しで倒せるはずだが肝心のオールマイト自身に限界が来ていた。
「同じような台詞を前にも聞いたな。……ワン・フォー・オール先代継承者、志村菜奈から……」
「貴様の穢れた口で……お師匠の名を出すな……!!」
「理想ばかりが先行しまるで実力が伴わない女だった……! ワン・フォー・オールの生みの親として恥ずかしくなったよ、実にみっともない死に様だった。……どこから話そうか……」
「Enough!!」
圧倒的に追い詰められてるようにそれを感じさせずなおも挑発するAFOにオールマイトが怒りに任せてとどめの一撃を加えようとする、が……。
ドゥッ!!!
怒りで視界が狭まっていたオールマイトをAFOが複数個性を掛け合わせた衝撃波で吹き飛ばす。吹き飛ばされた先には報道用ヘリが飛行しており、純粋な飛行手段を持たないオールマイトでは空中で方向転換をできないため、ぶつかれば大惨事となってしまう。
「俊典!」
「!」
ギリギリのところでグラントリノが追いつき、ヘリと衝突・墜落する事態は免れた。
「6年前と同じだ! 俊典落ち着け! そうやって挑発に乗って! 奴を捕り損ねた!! 腹に穴を開けられた!」
ガシャ!
グラントリノがオールマイトを抱えて地面に着地する。衝撃波のダメージと相まって活動限界を迎えているオールマイトがこれ以上戦闘を続けるのは困難であるが、グラントリノはオールマイトに強く声を掛けて発破をかける。
「おまえのダメなトコだ! 奴と言葉を交わすな!」
「……はい……」
「前とは戦法も使う『個性』もまるで違うぞ。正面からはまず有効打にならん! 虚をつくしかねえ! まだ動けるな!? 限界超えろ! 正念場だぞ!!」
「……はい!」
グラントリノの叱咤を受け、オールマイトはAFOへと目を向ける。立ち上がるAFOだがダメージは蓄積しているようでフラフラとしている。2人がかりで押せば必ず倒せる、オールマイトもグラントリノもそう考えていた。
2人は失念していた。報道ヘリがまだ空中を飛行していることを、そして……戦いの映像が日本中へ流れていることを。
『悪夢のような光景! 突如として神野区が半壊滅状態となってしまいました! 現在オールマイト氏が元凶と思われる敵と交戦中です! 信じられません! 敵はたった1人! 街を壊し! 平和の象徴と互角以上に渡り合って……!』
雄英高校の一室。会見を終えた根津、相澤、ブラドキングがテレビに映る神野区の映像を見ていた。計画は根津のみが知ってたが、プロヒーローである相澤とブラドキングも敵連合を騙す作戦の一環だったことは即座に理解した。だが、テレビに映る神野区の惨状は予想をはるかに超えていた。
「(潰された……! 塚内君……! オールマイト!)」
バンッ!
「相澤君いる!?」
「香山せ……ミッドナイトさん、どうしたんですか!?」
ドアを開けてミッドナイトが入って来て少し焦った様子で相澤に声を掛ける。相澤は理由が分からずミッドナイトに問いかけると。
「あなたのクラスの、A組の爆豪君が来てるわよ!」
「何!? あいつ帰ったんじゃないのか!?」
「事情は分からないけど、今はセキュリティが入ってるから解除して入れるわ、いいわね?」
「はい、お願いします……」
そう言って、ミッドナイトは部屋を出て行った。相澤だけでなく根津とブラドキングも疑問の表情を浮かべていた。
「爆豪君、何かあったのかな?」
「わかりません。会見後に記者達とかち合わない様に時間をずらして返したはずなんですが?」
「ここに来るだろうから理由を聞いてみたらどうだ?」
そう言ってしばらく待っていたが、勝己の来る様子はなかった。不思議に思っているとドアを開けて再びミッドナイトが顔を見せた。
「相澤君! 爆豪君、緑谷さんの部屋に行っちゃったわよ! 青春ね!」
「何ですって!? 何で緑谷の部屋に……」
「いいのか! 女子の部屋に男子が特攻って……」
「今13号……黒瀬ちゃんがいるから大丈夫よ。それにしても何があったのかしらね! 青春には違いないけど!」
「理由は後で聞くとして……今はこちらが問題だね……」
4人がモニターに目を移すと弛緩した空気が一気に張り詰める。TVモニターには神野区の惨状を示す映像がまだ映っていた。
「こんな……こんなことが……」
「緑谷さん、大丈夫?」
出久はテレビを見て唖然としていた。大部分で気を失っていたとはいえ自分がいた……監禁されていた場所がめちゃくちゃに破壊されている惨状に驚愕と恐怖を感じた。
ダンッ!!!
「デク!?」
「!? かっちゃん!? なんで!?」
「爆豪君!? どうしてここに!?」
「駅で俺達が保護された神野区で何か事件があったって聞いたから急いで戻って来た!!!」
「う、うん……。僕も今テレビ見て知ったから……」
「あ!? あんた誰だ!?」
「誰って……そっか僕の素顔知ってる生徒は少ないもんね。僕は13号だよ。あの宇宙服っぽいヒーロースーツの下がこんなキュートで高身長な美人とは誰も……」
「何か知ってねえか!?」
「……ううん、僕は何も……。根津校長や相澤先輩なら何か知ってるかも……」
「ちっ!」
「かっちゃん……オールマイトに……何かあったの?」
「……わからねえ。ただ、さっきから胸騒ぎが止まらねえ……!」
「ふ、2人とも!?」
13号が出久と勝己に声をかけモニターを指さす。そこには……トゥルーフォームに戻ってしまったオールマイトの姿が映っていた。
「弔がせっせと崩してきたヒーローのへ信頼。決定打を僕が打ってしまってよいものか……」
AFOは相変わらずオールマイトとグラントリノを挑発する。それは自身の回復のためか、オールマイト達を怒らせて冷静さを奪うためか、あるいはその両方か……。グラントリノは耳を傾けないようオールマイトを注意したが自身もAFOの言葉から意識を逸らすことができなかった。
「でもねオールマイト。君が僕を憎むように……僕も君が憎いんだぜ?」
普通、敵がヒーローに復讐する場合は憎しみを込めて恨み言を言うが、AFOはいっそ楽しげに……嬉々としてオールマイトに恨みを語った。
「僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきたモノを奪っただろう? だから君には可能な限り醜く酷たらしい死を迎えてほしいんだ!」
ブクッ!
突如AFOの左腕が膨張する。個性による攻撃だろうがこれまでのものより膨張具合が大きく、大規模な攻撃であることがオールマイトにもグラントリノにも予想できた。
「でけえの来るぞ! 避けて反撃を……」
「避けて良いのか?」
グラントリノは上空に移動し、オールマイトもAFOの攻撃を避けようとするがAFOの揶揄とも挑発とも取れる言葉に気になり、一瞬後ろを横目で見ると……崩壊したビルに挟まれ動けなくなった女性の姿があった。
「おい!!」
「君が守ってきたものを奪う」
ドォオオオオン!!!
膨張した左腕から凄まじい衝撃波が放たれ、その余波でグラントリノも吹き飛ばされてしまう。
「まずは怪我をおして通し続けたその矜持、惨めな姿を世間に晒せ……平和の象徴」
左拳を突き出して衝撃をかろうじて相殺したオールマイトだったが、活動時間をとうに超えており……その姿はトゥルーフォームに戻っていた。
『えっと……何が、え……? 皆さん見えますでしょうか? オールマイトが……しぼんでしまっています……」
報道ヘリが映す映像が街中のモニターや住宅のテレビに映されると見ている者は言葉を失った。
状況としてはその人物がオールマイトであることは間違いない、しかし……人々は俄には信じられなかった。皆の知っている、筋骨隆々のオールマイトではなく……痩せ細って今にも倒れそうな金髪の男性がオールマイトであることに……。
「そんな……」
出久、勝己、13号のいる部屋のテレビにもトゥルーフォーム姿のオールマイトが映っていた。出久はOFA継承者以前にヘドロ事件でオールマイトの秘密を知っているが、その際に世間には知られてはならないものと言われていた。
『これは世間には公表されていない。公表しないでくれと私が頼んだ』
『人々を笑顔で救い出す『平和の象徴』は決して悪に屈してはならないんだ』
「ひみつ……」
それが全く予想できない、望まない形で知られてしまった。出久は悲しみと怒りで両目から涙が流れるのを止められなかった。
「これが……本当にオールマイトだなんて……」
勝己もテレビの映像を見て困惑していた。OFAを出久から受け継ぐ際に過去の映像をOFA内で見ていたが、実際に見るとやはり信じられないと気持ちが湧き出てきた。
13号含む3人はテレビの映像に釘付けになったまま時間がどんどん過ぎていった。
「頬はこけ、目は窪み!! 貧相なヒーローだ。恥じるなよ、それが
ギンッ!
尚も挑発するAFOだが、こちらを見据えるオールマイトの目を見て彼の心がいまだに折れていないことを悟る。
「……そっか」
「身体が朽ち衰えようとも……その姿を晒されようとも……私の心依然平和の象徴!! 一欠片とて奪えるものじゃあない!!」
「素晴らしい!」
ボロボロになっても戦意を喪失しないオールマイトにAFOが賞賛の声をあげる。もちろん、そこに賞賛の意はなくここからさらにオールマイトを追い詰めるための布石だった。
「まいった、君が強情で聞かん坊なことを忘れてた。……じゃあ
オールマイトの心を抉る言葉の……。
「死柄木弔は志村菜奈の孫だよ」
「……!?」
「君が嫌がることをずぅっと考えてた。君と弔が会う機会を作った。君は弔を下したね。何も知らず、勝ち誇った笑顔で」
「ウソを……」
「事実さ、わかってるだろ? 僕のやりそうな事だ」
今まで仕込んでいたイタズラが成功したようにAFOが嬉々として語る。オールマイトはいまだに信じられない表情を浮かべて縋るような声をあげるが、それを否定することはできなかった。
「あれ……おかしいなオールマイト。笑顔はどうした?」
笑顔のジェスチャーをしながら、AFOはさらにオールマイトを煽る。煽られたオールマイトは言い返すこともできずただ押し黙ることしかできなかった。
『人を助けるって、つまりその人は恐い思いをしたってことだ。命だけじゃなく、心も助けてこそ真のヒーローだと……私は思う』
『どんだけ怖くても『自分は大丈夫だ』っつって笑うんだ。世の中、笑ってる奴が一番強いからな』
「き……さ……ま……!」
オールマイトの胸中に彼を指導していた志村の表情が呼び起こされる。自身を厳しくも暖かく導いた師。その人の孫が敵となり社会を混乱に陥れ、自分とも敵対することとなっている。その衝撃は到底測れるものではなかった。
「やはり……楽しいな! 一欠片でも奪えただろうか」
「〜〜〜おおおおお……!!」
喜色満面のAFOの言葉にオールマイトの心も揺らぎ……今まさに折れそうになっていた。
……その時。
「負けないで」
オールマイトの後ろにいる女性から言葉が届く。
「オールマイト。お願い……救けて」
彼を何度も奮い立たせてきた魔法の言葉が……!
「オールマイト……やばくない……!?」
「そんな……嫌だ……オールマイト……!」
「あんたが勝てなきゃあんなの誰が勝てんだよ……」
「姿は変わってもオールマイトはオールマイトでしょ!?」
「いつだって何とかしてきてくれたじゃんか!」
「オールマイト! 頑張れ!」
「まっ負けるなァオールマイト!!」
「頑張れえええ!!」
違う場所で立場も性別も異なる人々がオールマイトに励ましの声を送る。物理的に届くわけがないのに……『平和の象徴』を鼓舞せんと皆が声を張り上げる。オールマイトに『想い』を届けようと!
「オールマイト……」
「……何呆けてやがる……!」
「……かっちゃん……」
「クソナードの……オールマイトオタクのお前が! 泣いてんじゃねえ! 声出せや!!」
「……!? うん!!」
映像を呆然と見ていた出久に勝己が厳しく発破をかける。現時点ではOFAは勝己が保有しているが、オールマイトが継承者として見出したのは出久なのだ。その出久が声を上げずにいるのは勝己には我慢ならなかったのだ。
「勝って! オールマイトォ!!」
「勝てや! オールマイトォ!!」
「勝ってください! オールマイト!!」
2人に触発された13号を含めた3人のオールマイトを鼓舞する声が部屋に響き渡る。声は届かずとも……『頑張れ! 負けるな!』との『想い』を届けるために……!
バリッ!!
「!?」
「お嬢さん、もちろんさ」
届くはずのない声に呼応するかのようにオールマイトの右腕がマッスルフォームに変化する。一度は折れかかった心に人々の想いによって火が灯り、目には力強い光が宿る。
「ああ……多いよ……! ヒーローは……守るものが多いんだよオール・フォー・ワン!!」
多くの人の想いを受けて、『平和の象徴』が再び立ち上がる。
「だから負けないんだよ」
というわけで第50話でした。原作のようなかっちゃん救出はないですが、代わりにかっちゃんに出久の部屋に特攻してもらいましたw 13号がいたので何事もないでしょうがw 次かその次で神野事件編は終わると思います(前回も行った気がしますがw)。もうだいぶ変わってますが、ここからさらに変化していくと思うのでそちらも楽しみにしていただければと思います♪ 今後も応援よろしくお願い致します!