それでは第56話、どうぞ!
Side:Izuku
「おはよ~かっちゃん」
「おう、準備出来てんならさっさと行くぞ」
「ちょっと待って。麗日さんももうすぐ来るから」
「デクちゃ~ん! 爆豪く~ん! おはよ~!」
「おはよう麗日さん」
「遅え」
「そんなに遅れてないやん!」
「ふ、2人とも……。まだ寝てる人もいるから……」
入寮翌日の朝6時。僕とかっちゃん、麗日さんは早朝のトレーニングに行くため寮の談話室で待ち合わせていた。家庭訪問の後から入寮の前までほぼ毎日のようにトレーニングをしていて、寮生活を始めてもそれを続けていこうと思ってたんだけど2人も継続していくって聞いたときは嬉しかった。
外に出るとエアコンの効いた室内とは違う夏の暑さがじんわりと肌に感じられる。8月中旬の早朝だけど、それでもこの暑さだから日中はもっと暑くなるんだろうなあ。きついけど頑張ろう!
「おら、動く前に水分補給しとけ」
「うん、ありがとうかっちゃん」
「爆豪君ありがとう。昨日教えてもらったのにまた準備してもらってなんか悪いなあ」
「別に気にしてねえよ。……お前にしてもらった恩はまだこんなもんじゃ足りねえからな……」
「え? 私なんか爆豪君に恩返ししてもらうようなことしたっけ? デクちゃんわかる?」
「それがかっちゃん、僕にも教えてくれないんだよね」
「水分補給したか? 体ほぐしながら行くぞ」
「ちょっと!? もうせっかちなんやから」
「あはは……それじゃあ麗日さん、行こうか!」
「うん! 行こデクちゃん!」
先に歩き出したかっちゃんを追って僕と麗日さんも歩き始めた。
身体をほぐしながら歩き始めて、少しずつペースを上げて3人でランニングをしていく。一昨日までは海浜公園を走ってたけど、雄英の敷地は海浜公園以上に広く感じられた。細かいランニングコースはまだわからないから今日はそれを確認する意味でペースを抑えて走った。
40分程度、距離にしたらたぶん6kmか7kmぐらい走って寮の前に戻ってきた。完全に動きを止めずゆっくり歩きつつ水分補給をしながら軽く休憩を取る。
「いや~! 広いってのは知ってたけどこんなに広いとは思わなかったね!」
「しかもこれでもまだ全体回り切れてないからね」
「もはや森だよね! 今度皆で探検とかしてみたいね!」
「そうだね。前の林間合宿みたいに肝試しとかできるかもしれないね」
「それええな! 結局途中で敵連合の邪魔入ったからまともに出来なかったし、今度B組の人達にも相談してみよ!」
「下らねえこと言ってんじゃねえよ。おら、休憩終わりだ、組手すっぞ」
「もう爆豪君! 水差すようなこと言わないでよ~!」
「下らねえもんは下らねえだろうが」
「むむむ……! ……爆豪君」
「あ!? なんだ丸顔」
「肝試しすることになったら……デクちゃんと一緒に回れるかもよ?」
「!?」
「麗日さん!?」
何言ってんの麗日さん! そんなんでかっちゃんが釣られるわけ……。
「……しっかりとB組の奴らに企画プレゼンしてこいや……!」
「了解!! 私らに任せといて!!」
「あ、あれ?」
かっちゃんってこんなにチョロかったっけ? なんかこの間からどんどんおかしくなっているような……。
「そんじゃ、今度こそ始めるぞ。デク、俺とお前からだ」
「うん! いつもと同じで寸止めで?」
「いや、ここは雄英敷地内だ。まずは個性無しでやって、後で個性ありでもやるぞ」
「ちょっと爆豪君! それじゃあデクちゃんがまた怪我しちゃうでしょ!」
「本気では使わねえよ。それじゃあ組手になんねえだろ。だが、多少でも緊張感ねえと組手の意味がねえんだよ」
「それはそうだけど……」
「てめえも対人戦するなら個性ありでやる方が実戦的でわかりやすいだろうが」
「大丈夫だよ麗日さん。かっちゃんも体育祭の時みたいにはしないと思うから」
「う~ん、わかった。でも、一応手加減はしてよね!」
「当たり前だ! っつーかデク、お前も体育祭のことを当て擦ってんじゃねえよ!」
「い、いや別にそんなつもりは……」
「おしゃべりはここまでだ。始めるぞ……!」
「うん! 麗日さん、合図よろしく」
「わかった! それじゃあ……始め!」
「は~! 疲れた~!」
「お疲れ麗日さん。かっちゃんもお疲れ様」
「は! 情けねえな!」
「ちょっと言い方! 私達一応女の子だよ!」
「ヒーローになったらそんなん言い訳にできねえだろうが……!」
「それは……そうだけど……」
「あとデク」
「なにかっちゃん」
「お前、まだ腕痛むのか?」
「……痛みはそんなにないけど、やっぱり全力はまだ怖いからすこし庇っちゃう、かな……」
「無理してほしくはないけど、やっぱりデクちゃんパンチャーだからどうにかせんとね」
「……」
「かっちゃん? どうしたの?」
「なんでもねえよ」
「あ!? もうこんな時間! 一旦シャワー浴びて朝ご飯食べないとHRに遅れちゃう!」
「それじゃあ戻ろっか」
時計の針は7時半を過ぎており、ランニングと組手を終えた僕らは登校前の諸々の準備をすべく寮へと戻った。
シャワーに入って朝ご飯を食べ終えてから皆で校舎へ登校した。寮から教室まで本当に徒歩5分、これは楽でいいや! 遅くまで勉強やトレーニングできるからOFAの練度を高めるのに最適だよ。でも、時間ギリギリまで粘れるとか思っちゃうのはまずいかも。今日も葉隠さんとか芦戸さん、上鳴君ギリギリまで寝てて危なかったらしいし……。
9時になると予鈴が鳴って相澤先生が教室に入ってくる。夏休みで普段と鳴る時間が違うけど、それでも予鈴が鳴ったら身が引き締まる気がするよね。
「おはよう諸君。さて、早速だが今日から行なっていくことを説明する」
相澤先生の言葉に皆の表情も引き締まる。これからどんなスケジュールでトレーニングを行っていくのか、仮免取得にどんな計画を立てるのか……。相澤の言葉一つ一つを聞き漏らさないようにしないと……。
「昨日話した通り、まずは『仮免』取得が当面の目標だ」
「はい!」
「ヒーロー免許ってのは人命に直接係わる責任重大な資格だ。当然、取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその合格率は例年5割を切る」
「仮免でそんなキツいのかよ」
峰田君が驚愕の顔でそう呟く。僕も事前に調べたけど、内容にもよるけど3割に満たない年もあったみたい。それぐらい難しい試験内容なんだろう……。
「そこで今日から君らには1人最低でも2つ……必殺技を作ってもらう!!」
相澤先生の合図で教室のドアが開き、エクトプラズム先生、ミッドナイト先生、セメントス先生が入ってくる。
「「「必殺技!? 学校っぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァア!!!」」」
必殺技! ヒーローらしい胸熱ワードだよ!
「必殺! コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」
「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押しつけるか!」
「技は己を象徴する! 今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」
3人の先生が必殺技について力強く説明してくれる。この3人も強力な拘束技や無力化する技があるから説得力があるよ!
「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館
早速実戦か! 仮免試験まで時間がないから当然だけど、OFAの練度を高めたい僕にとってこれはチャンスだ! 相澤先生の合図で僕らはコスチュームに着替えるため更衣室へ向かった。
着替え終えて体育館γに到着した。体育館αの方は体育祭前にミリオさん達と一緒にトレーニングしたからわかるけど、こっちは初めてなんだよね。
「
「「「(TDLはマズそうだ!!)」」」
なんで雄英のネーミングってこう……際どいラインを攻めてくんだろう!? いろいろ危ないよね!
「ここは俺考案の施設。生徒1人1人に合わせた地形や物を用意できる、台所ってのはそういう意味だよ」
「なーる」
なるほど、セメントス先生の個性なら地形を色々変えられるし、攻撃用の的なんかも用意できるからこういったトレーニングにはうってつけだね!
「質問をお許し下さい!」
おわ!? 飯田君相変わらずフルスロットル! でも、こういう時に率先して質問してくれるのってありがたいよね。
「何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!」
「順を追って話すよ、落ち着け。ヒーローとは事件・事故・天災・人災……あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験では当然その適正が見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力……他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など多くの適性を毎年違う試験内容で試される」
雄英の入試でも
「その中でも戦闘力はこれからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし! 技の有無は合否に大きく影響する」
「状況に左右されることなく安定行動を取れればそれは高い戦闘力を有している事になるんだよ」
「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ……飯田君ノ『レシプロバースト』。一時的ナ超速移動ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル」
「アレ必殺技で良いのか……!!」
「なる程……自分の中で『これさえやれば有利・勝てる』って型をつくろうって話か」
「そ! 先日大活躍したシンリンカムイの『ウルシ鎖牢』なんか模範的な必殺技よ、相手が何かする間に縛っちゃう」
先生や飯田君達の会話で意図が理解できた。事件・事故などで様々な状況が起こる中で自分の得意パターンや得意技を持っておけば有利に状況を展開できる……それをここで編み出していくってわけか!
「中断されてしまった合宿での『”個性”伸ばし』は……この必殺技を作り上げる為のプロセスだった。つまりこれから後期始業まで……残り十日余りの夏休みは『個性』を伸ばしつつ必殺技を編み出す、圧縮訓練となる!」
! そうか! 林間合宿で僕らの個性……
「尚、『個性』の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ、準備はいいか?」
「「「はい!!!」」」
「ワクワクしてきたぁ!!」
必殺技か……どうしよう……。
「みんな進んでるな……」
特訓が始まってまだ30分も経ってないけど、皆必殺技の開発は順調みたい。考えてみれば、数か月前にOFAを継承した僕と違って皆は個性が発現してから今まで自分の個性と向き合ってきてるからできる技のイメージがある程度できてるんだ。一応、僕も小さい頃からオールマイトを見続けてきたからオールマイトの技はわかるけど、
「何ヌボーットシテイル?」
「ひゃあ!? あ、エクトプラズム先生。あっと……」
「随分ト悩ンデイルヨウダガ」
「その、必殺技なんですけど……僕腕に爆弾が出来てしまってあまり無理できなくて……。正直必殺技のビジョンが見えないんです……」
「……フム、確カニ君ノ『個性』ハアル意味安定行動トハ最モ遠イ。スタイルガマダ定マランノデアレバ今日ハ『個性』伸バシニ専念シヨウ」
エクトプラズム先生が僕の現状を把握して個性伸ばしの優先を提案してくれる。必殺技のイメージができなくてあれこれ悩むより個性伸ばしをしてる方が時間の無駄にならなくていいかも! それにその間に何かアイデアがポコって出てくるかもしれないし……。
BOOOM!!!
爆破音がした方を見るとかっちゃんの攻撃でエクトプラズム先生の分身が一体消滅していた。
「エクトプラズム!! 死んだ!! もう一体頼む!!」
かっちゃん気合入ってるな……。入学前から色々考えてたみたいでそれに身体と個性の成長が追いついてきたから技開発が捗ってるんだろうね……。僕も頑張らなきゃ! とりあえず、個性伸ばしをしながら腕の負担を抑えつつ攻撃できる方法を考えないと……。
「へい!」
「!? あっ、オールマイト!」
トゥルーフォーム姿のオールマイトが手を振りながら僕の方に歩いてきた。もうNO.1ヒーローとしては第一線を退いて雄英教師に専念するみたいだから普段からトゥルーフォーム状態だけど、他の皆はまだ慣れないみたい。
「アドバイス」
「え? アドバイス?」
「君はまだ私に倣おうとしてるぞ」
「へ……?」
『オールマイトに倣おうとしている』? つまり、オールマイトの真似をしようとしているってことだよね? でも、OFAを使いこなすならオールマイトを参考にしないといけないんだけど……。
「あの、それはどういう……」
「やァ切島少年! 私がアドバイスしてまわるぞ!」
あれ!? 僕へのアドバイスってあれだけ!? どういうことだろ?
結局、あの後オールマイトは全員を回って僕のとこには回ってこなかった……。う~ん、自分で考えろってことなんだろうけど……どうしたらいいのかな?
「ここが開発工房か……」
時刻は午後4時。昼食を挟んで続いた特訓も先ほど終了した。クラスの皆は少しづつ必殺技のイメージが出来てたみたいで何人かはもう形になっていた。僕はと言えば個性伸ばしを優先して基礎的なトレーニングを行っていたけど、少しでも腕への負担を軽減できることがないか相澤先生に相談したら……。
『コスチュームの改良について、専門外の事は考えてもわからん。もし何かいじりたくなったら、校舎1階にある開発工房へ行き専門の方に聞くように』
というありがたいアドバイスをもらったので早速相談しにやってきた。
『君はまだ私に倣おうとしてるぞ』
オールマイトの言葉の意図は『自分で考えろ』ってことだろうけど、とりあえず腕が動かなくなっちゃったらマズイもんね。何かこう……! 腕の動きを補助するサポーターみたいなものがあれば……! OFAの許容上限を上げる為の身体作り、必殺技の考案から完成。皆にふり離されないように……じゃない! トップに行かなきゃ!!
「まずは中の……先生に挨拶してから……」
「あ、デクちゃ~ん!」
「麗日君! 廊下を走ってはいけない!」
「あ、麗日さん! それに飯田君も! 2人も工房に?」
「うん! コスチュームにちょっと酔い止めの機能とか付けられないかなと思って」
「酔い止め? ああ、個性の副作用の……でもなんで?」
「必殺技のスタイルだけど、自分を浮かす方向に強化したくて。機動力つければ職場体験で習った格闘術ももっと活きるし!」
「そうなんだね! 飯田君は?」
「ああ、俺はやはりレシプロのデメリットを軽減したい。開発工房でラジエーターの改良をお願いするつもりだったんだ」
「ああ、確かに飯田君のレシプロの継続時間が長くなったら長距離を短時間で移動できるからすごい武器になるよ!」
「それで、そんなデクちゃんはなんでここに?」
「ええっと、腕の動きを補助してくれる機能とか知りたくて」
「ああ、朝も話したしさっきもエクトプラズム先生と話してたもんね」
「俺も職場体験で腕を負傷したが、俺の武器は脚だからそこまで悪影響はなかった。しかし、緑谷君はそれよりはるかに大きいダメージを受けているし攻防の要だからな。あまり無茶をしてはいけないぞ!」
「うん……。でも、皆に置いてかれないように頑張らなきゃいけないからね!」
「うん! デクちゃん頑張ろー!!」
「っと、いつまでもドアの前でおしゃべりしてちゃあいけないな。すみまs」
BOOMB!!!
「「きゃあ!?」」
「うわあ!?」
飯田君がドアに手を掛けたところで衝撃で3人とも吹き飛ばされてしまった。部屋の中で爆発が起こったっぽいけどなんで!?
「痛たた……」
「一体なんなん……? デクちゃん大丈夫?」
「うん、大丈夫。麗日さんは?」
「私も大丈夫。飯田君は?」
「飯田君、飯田君!? 大丈夫!?」
まだ爆発による煙が晴れない中で声で麗日さんの無事を確認するが、飯田君の声がしない。あの爆発で何か大怪我でも!? 少しずつ煙が晴れてきてようやく人の姿が見えてきた。良かった、大丈夫そうだけど……なんかもう1人いるような?
「飯田君、だいじょ……う、ぶ? ……え!? え!?」
「いいい飯田君!? お、おお……!?」
「むぐむが!?」
「いや~、やっちゃいましたね……。ん、なにか胸の下にあるような……」
煙が完全に晴れてそこにいたのは……。
「おや、貴方方はいつぞやの!」
「「おっぱい!?」」
「もがもが!?」
ピンクの髪にゴーグルを頭にかけてノースリーブに作業用のつなぎを来たサポート科の女子生徒・発目明さんとその発目さんにのしかかられて胸を顔に押し付けられてる飯田君の姿だった……。
「ぷは!? き、君!? 早くそこからどきたまえ!? こんな体勢は破廉恥だ!」
「ああ、すみません。え~っと……名前全員忘れました!」
「みみみ緑谷出久です!」
「う、麗日お茶子です……」
「飯田天哉だ! 君が体育祭トーナメントで散々利用してくれた男だ!!」
「んっ♡ あっ♡」
「何故そこで喘ぐ!?」
「んう……♡ 貴方の息が、胸に、当たるからです、ん♡」
「なっ!!? な、ならさっさとどきたまえ!!」
飯田君の顔が真っ赤になってる! アレは怒りもあるけどこの状況への恥ずかしさもあるよね! これ誰かに見られたらマズいのでは……!
「ああ、君達大丈夫かな?」
「「「!!?」」」
「あ、パワーローダー先生! 私は大丈夫です! この程度の失敗で諦めたりは……!」
「発目には聞いてないよ」
よかった、この先生……パワーローダー先生は普通だった。
「ご迷惑お掛けしてすみませんでした! それじゃあ、私はベイビー開発で忙しいので!」
「「「え、ええ……」」」
「なんというか、すまないね……。発目は病的に自分本位なんだ」
「はい」
「よく存じております」
「うん」
それはもう……体育祭で嫌というほど実感しました……。そのおかげで助かった部分もありますが……。
「ただまァ、君らもヒーロー志望なら彼女との縁を大切にしておくべきだよ……。きっとプロになってから世話になる」
「プロになってから? それってどういう……」
「まあ、中にはいればわかるよ。それよりイレイザーヘッドから聞いてる。必殺技に伴うコス変の件だろ、入りな」
意味深な言葉の後に中に入るよう促されて、僕らは開発工房に足を踏み入れた。何か工房って聞くとワクワクするよね!
「うわぁ……秘密基地みたいだ!」
「すご~い! いろんな機械やアイテムがいっぱい!」
「こんなにも多くの設備があるのですね、用途が分からないものも多いですが」
「ここも一部だからね。もっと大きなものを試作する際は別の研究棟で作業をするよ。じゃあ。コスチュームの説明書見せて。ケースに同封されてたのがあるでしょ。俺、
パワーローダー先生、さらっと言ってるけどサポートアイテムの開発許可証持ってるってかなり凄いことだよ! この許可証の取得もヒーロー仮免試験に負けず劣らずの難関試験って聞いたことある!
「あの……僕は腕の靱帯への負担を軽減出来ないかと思って、そういうのって可能ですか?」
「ああ、緑谷君は拳や指で戦うスタイルだったね。そういう事ならちょっといじれば……すぐにでも可能だよ」
「やったねデクちゃん!」
「うん」
これで腕のサポートについては目途が立ったかな。後は必殺技についてだけど、どうしようかなあ……。
……ん!?
ひたひた……むぎゅっ
「はいはい、なる程」
「あ、あの発目さん何を?」
「フフフ、身体に触れているんですよ」
それはわかるけど! なんで本人に断りなく触って来るかな!?
「はいはい……見た目よりがっしりしてますね。それでいて女性らしいしなやかさもあります。そんなあなたには……こちら! 私のとっておきのベイビー! パワードスーツ!」
「あの……「筋肉の収縮を感知して動きを補助するハイテクっ子です! 第49子です! フフフフフ!!」
「僕、腕のサポートだけでいいんだけど……」
有無を言わせずに着せられちゃったよ! コスチュームをひん剝かれなくてよかったけど……。
「あ、凄い……勝手に動く。……あれ? 待って止まんない! 待っ……いだっ!! いだだだ腰がいだだだだ!!!」
「どうやら可動域のプログラミングをミスったようです! ごめんなさい!」
「腕のサポート頼んだのに、胴をねじ切られそうになるとは……」
「デクちゃん大丈夫!?」
「これはこれで捕獲アイテムとして使えそうですね」
「まさかこんな目に遭うなんて……。全員フルサポートだから防御力は上がるかもしれないけど、これじゃあ素早い動きが難しくなっちゃうよ……」
「しかし、腕や拳に不安があるなら脚を使えばいいじゃないですか?」
「「へ?」」
「脚は腕の2倍から4倍の筋力を持ってるといわれてますからその方が攻撃力も増すのでは!」
「いや、そんな腕がダメだから脚だなんてそんな安直な……」
「実際に脚メインで活躍しているヒーローがいるじゃないですか! 何て名前でしたっけ? 白髪褐色で兎耳でヒーローするにはかなり際どいハイレグ着てて昔に活躍した格闘家と同じ名前の女性ヒーローで……」
「……ミルコかな?」
「そうそうミルコですよ! あの人サポートアイテム全然必要としてないから私あんまり好きじゃないんですよね!」
「どういう観点なの……? 発目さんあんなこと言ってるけど、デクちゃん的にはどうかな? ……デクちゃん?」
「そうだよ……参考にうってつけのヒーローがいたじゃないか……。なんで今まで思いつかなかったんだ……」
『ラビットヒーロー』ミルコ……個性『兎』で兎並みの身体能力を使える女性ヒーロー。彼女の得意技はその個性の通り兎を彷彿とさせる脚力を活かした蹴り技だ。本当になんで思いつかなかったんだろう……。いや、それは僕がOFAに……オールマイトに囚われていたからだ。オールマイトの必殺技は基本的に拳、OFAを授かった僕もそうあるべきだと無意識に決めつけてた! とてもシンプル! 単純すぎて気付きすらしなかった!!
腕が不安なら脚をメインに……!!!
「発目さんありがとう! いいアイデアが浮かんできたよ!」
「おお! 何かはわかりませんがどういたしまして! それよりこっちのベイビーはどうですか!? この子は……」
「そ、それはまた後で……。飯田君!」
「……はい! 脚部の冷却機を……緑谷君? 何か決まったのかい?」
「うん! 飯田君は脚技メインだよね!? 今度身体の使い方を教えてくれないかな!?」
「脚技? 確かに俺はこの個性のおかげで脚技が得意だが、なんでまた脚技なんだ?」
「発目さんの言葉がきっかけなんだけど、腕が不安なら脚を使えばいいんじゃないかって!」
「そんな安直でいいのか!?」
「いいんじゃないか、腕から脚へのコンバート」
「パワーローダー先生……」
「確かに安直に聞こえるかもしれないが、理には適ってると思うよ。脚は日常的に立ったり歩いたりで身体を支えているからね。やってみる価値はあると思うよ」
パワーローダー先生も好意的に評価してくれている。後は細かな調整が必要だけどなんとなくイメージは出来つつある! イケるぞ!
「はい! 発目さんいろいろ相談していいかな! 脚はもちろんだけど腕のサポートも必要だし!」
「おお! いいですよ! クライアントの無知・無茶・無謀に応えるのがデキるデザイナーです! 先生!! 私の案良ければ採用して貰えますね!?」
「良ければね……あんまり詰め込み過ぎるなよ」
「いいのデクちゃん……。あんまり発目さんを信用しすぎるのは……」
「大丈夫だよ! 発目さんはこちらが明確にイメージを伝えればそれを的確に反映させてくれるしパワーローダー先生も付いてるし!」
「アレは的確なのか……?」
「それより麗日さんは大丈夫なの、要望伝えなくて」
「あ、そやった。私は個性の副作用の酔いをもっと抑えたくて……」
「それならこれなんていかがでしょう!?」
発目さんが麗日さんによくわからないアイテムを紹介してるけど、僕の意識は脚技を使うコンセプトをどうするかに向いていた。よ~っし! やってやるぞ~!
「ようやく気付いたか?」
「へ?」
翌朝、日課の組手を一巡終えて休んでるとかっちゃんがそう聞いてきた。気付いたってなんだろう?
「今日、脚技多めにやってきただろ。攻撃時の腕の負担減らすなら脚技にするのが手っ取り早え」
「かっちゃんわかってたの!?」
「あ? んなもんすぐわかるだろ」
「だったら爆豪君、教えてあげてもよかったやん」
「そんじゃあデクの力になんねえだろうが! 自分で考えて答え出さなきゃ身に付かねえんだよ!」
「それはそうだけど……」
「……かっちゃんの言う通りだよ」
「デクちゃん?」
ワークアウトドリンクを一口飲んで麗日さんの疑問に答える。
「自分で導き出した答えと誰かに教えてもらった答えじゃ身に付き方に違いが出てくると思う。気付いてたけど黙っててくれてありがとう、かっちゃん……」
「……どうも。で、どうなんだ? コスチューム変更は上手くいきそうなのか?」
「うん! サポート科の発目さんにおn「スト~ップ!! これ以上は内緒や!!」
「麗日さん!?」
「てめえ丸顔! 何企んでやがる!」
「せっかくなんだから出来上がってからの方がいいやろ?」
「……まあ、楽しみにしといてやるぜ」
「かっちゃん……」
「よし、再開するぞ。オラ、丸顔来いや! 今日もボコボコにしてやるぜ!」
「言うやん爆豪君! そっちこそ、今日こそ浮かせて泣いて謝るまで降ろしてあげないからね!」
「ふ、2人とも……もっと仲良く……」
2人共、組手そのものは真剣なのにいつも喧嘩腰なのはハラハラするからいい加減何とかしてほしいなあ……。そんなこんなで日課の早朝トレーニング、朝食を終えて今日も個性伸ばし訓練、必殺技開発に取り込んでいった。
さらに3日後。発目さんに依頼していたコスチュームの変更が完了して戻って来た。今までのベースは変えずに腕と脚の部分に変更を加えた。後は僕のイメージが上手く合わされば……。
「緑谷! コスチューム変えたのか!」
「うん! 腕の負担を減らしてくれるサポーターだよ」
「どうせなら全とっかえでイメチェンすりゃいいのに! 地味目だしよ。あ、なんならミルコみたいにハイレグなんていいんじゃないか!? 目立つこと間違いなしだぜ!!」
「あ~、ハイレグはする気はないかな……。でも、ミルコを参考にってのは取り入れてるよ」
「へ? どこにミルコ要素があんだよ? 胸か? 腹筋か?」
「それ以上言うと殴る、じゃなくて蹴るよ? 実はね……」
「あ、オイ! 上!!」
峰田君に説明しようとしたら突然かっちゃんの声が聞こえた。そこへ目を向けるとかっちゃんが攻撃して壊れたコンクリート片がしたいにいるオールマイトに向かって落ちていく。
「
相澤先生が慌てて捕縛布でオールマイトを引き寄せようとするが、それじゃあ間に合わない。
距離を測って……イケる! OFA5%!! フルカウル!! シュートスタイル!!
ダンッ!!
「SMASH!!」
ドガァアアン!!!
「よし、上手くいった! 大丈夫でしたか!? オールマイト!」
「ああ! 大丈夫だよ。……正解だ、緑谷少女」
コンクリート片を破壊して着地すると、オールマイトが満足げに笑みを浮かべていた。オールマイトもわかっていたんだ。でも、僕自身に気付かせようと考えさせようとしてくれた。それより、そのせいで危険な目に遭わせちゃった……。
「何緑谷! サラッとすげえ破壊力出したな!」
「おめーパンチャーだと思ってたぜ」
「上鳴君、切島君。破壊力は発目さん考案の
グラントリノ・かっちゃんから着想を得たフルカウル! その真髄は細かく素早い機動、小回りにある。そこを殺さず活かす為、最小限で効果の大きい装備! 腕の保護サポーターにスパイク兼アーマーのアイアンソール! これぞコスチュームγ! たぶん!
「いいや! 付け焼刃以上の効果があるよ、こと仮免試験ではね」
「へ?」
仮免試験では? どういうことだろ?
「オールマイト。危ないんであまり近寄らないように」
「いや失敬! 爆豪少年! すまなかった!」
「気ィ付けろやオールマイトォ!!」
かっちゃんがオールマイトに怒声を浴びせる。確かにオールマイトも不用意だったかも……。
「デク〜!!」
「へ!? 何かっちゃん!」
「やるじゃねえか!」
「え、え!?」
「ボヤボヤしてっと置いていっちまうからな!」
「う、うん! 僕も置いてかれないよう頑張るよ!!」
かっちゃんが珍しく笑ってる! 僕が成長してるのがわかって嬉しいのかな? でも、これで満足しちゃダメだ! もっと練度を高めなきゃ!
「おいコラ! ここでもイチャついてんじゃねえ!」
「皆真剣に訓練してんだよ! ふざけんじゃねえ!!」
「黙れアホ面クソブドウ!! なんなら相手してやろうか!?」
あわわわ!? 上鳴君と峰田君がかっちゃんに噛みついてエラいことに!? 他の皆も呆れ顔や苦笑い浮かべちゃってるよ!
「お前らいい加減に……」
「そこまでだA組!!!」
相澤先生が注意しようしたところで入口からブラドキング先生の声が聞こえた。目を向けるとブラドキング先生を先頭にB組生徒全員が集まっていた。
「今日は午後から我々が
「B組……」
「タイミング!」
いや、タイミング的には完璧だったと思うよ……。だって、来なかったら上鳴君と峰田君かっちゃんにボコボコにされてたと思う……。
「イレイザー、さっさとどくが良い」
「まだ10分弱ある。時間の使い方がなってないな」
確かに……『たかが10分、されど10分』だよね。時間がまだあるなら使う権利は僕達にあるもんね。
「ねえ知ってる!? 仮免試験って半数が落ちるんだって!
なんてストレートに感情をぶつけてくるんだ物間君……!! 話がさらにややこしくなっちゃうよ……。
「つか物間のコスチュームあれなの?」
「『“コピー“だから気をてらう必要はないのさ』って言ってた」
「てらってねえつもりか」
物間君、かっこいいとは思うけど……ヒーロースーツかと言われると、センスのない僕でもどうかと思うよ……。
「しかし……彼の意見はもっともだ。同じ試験である以上俺達は蠱毒……潰し合う運命にある」
「だからA組とB組は別会場で申し込みしてあるぞ」
「ヒーロー資格試験は毎年6月‘・9月に全国三ヶ所で一律に行われる。同校生徒での潰し合いを避ける為、
そりゃそうだよね。同じ学校同士で潰し合っちゃったら、単純に仲悪くなっちゃうだろうし学校の実績としても半減しちゃうから避けるべき事態だよね。
「(ホッ)直接手を下せないのが残念だ!!」
「ホッ、つったな」
「病名のある精神状態なんじゃないか」
物間君、いろいろ大丈夫かな? 情緒に問題があるんじゃないかな?
「『どの学校も』……そうだよな。フツーにスルーしてたけど、他校と合格を奪い合うんだ」
「しかも僕らは通常の修得過程を前倒ししてる……」
「1年の時点で仮免取るのは全国でも少数派だ。つまり……君達より訓練期間の長い者、未知の『個性』を持ち洗練してきた者が集うワケだ。試験内容は不明だが、明確な逆境であることは間違いない。意識しすぎるのも良くないが、忘れないようにな」
そうだ。僕達より1年以上訓練を重ねてきた人達と合格を争うんだ! 簡単なはずがない! 残りの期間、全力で頑張らなくちゃ!!
というわけで第56話でした! ついにデクちゃんがOFAフルカウルシュートスタイルを身に付けましたね♪ 蹴り技主体ならミルコがいるのですぐ思いつきそうなもんですが、この世界線でもオールマイトへの憧れは強いのでなかなか固定観念かr抜け出せなかったでしょうね。ただし、才能マンのかっちゃんは気付いてました。けど、デクちゃんに自分で気付いて欲しくてあえて口出ししませんでした、デキる彼氏ですねw そんなわけで次回には仮免試験に突入します! ここも少し長くなるかも知れませんが、お付き合いしていただければと思います。前書きで書いた通り、2024年の投稿はこれで最後となります! 今年も読んでいただきありがとうございました! 来年もマイペースで続けられるよう頑張りますので、応援よろしくお願い致します!