僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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お待たせ致しました! 久しぶりの幕間です!
主役は飯田君です! それではどうぞ!


幕間5

「フヘエエエ、毎日大変だァ……!」

「圧縮訓練の名は伊達じゃないね」

「あと一週間もないですわ」

 

 寮での生活、そして仮免試験に向けての特訓が始まって数日。少しずつ新しい環境に慣れてきたA組生徒は夕食後のひと時を思い思いに過ごしている。A組女子7名は談話室の一角に固まって今日の特訓の様子を話し合っていた。

 

「ヤオモモは必殺技どう?」

「うーん。やりたいことはあるのですがまだ体が追いつかないので、少しでも個性を伸ばしておく必要がありますわ」

「梅雨ちゃんは?」

「私はよりカエル技が完成しつつあるわ。キット透ちゃんもびっくりよ」

「お茶子ちゃんは?」

「私も八百万さんと同じかな? やりたいことに体がまだ追いついてきてないんよね……」

「麗日の個性は反動あるもんね。って考えると今一番順調なのは緑谷か〜」

「え!? そうかな? 一応イメージしてたものは形になってるけど、まだ練度が足りないし付け焼き刃だし……」

 

 芦戸の言葉に出久は慌てて言葉を返す。出久としては発目の言葉をきっかけにしてシュートスタイルを導き出したことは前向きに捉えているが、いかんせん仮免試験までの時間が足りないので焦る気持ちの方が大きかった。

 

「でも、あの蹴りの威力は凄いよ! 私びっくりしちゃったもん!」

「それにしても、緑谷が脚技使うなんて思わなかったな〜」

「コラボパンツ履くくらいオールマイトリスペクトだったからてっきりパンチスタイルを貫くかと思ってたけど……」

「コラボパンツは関係ないんじゃないかな? でも、今までオールマイトに憧れてパンチに拘ってたけど、そうじゃなくて自分に合ったスタイルを見つけるのが大切だって気付かされたんだよね……」

「そのきっかけが発目さんやもんね、『腕や拳に不安があるなら脚を使えばいいじゃないですか?』なんて」

「そんな安直でいいの!?」

「それ飯田君にも言われたし、僕も最初はそう思ったよ。でも、一般的に腕より足の方が力が強いって言われているからあながち間違いじゃなくて……。いろいろ考えすぎるよりもよりシンプルに考える方がいいこともあるんだって思ったよ」

「それを素直に取り入れることができるのが緑谷さんのいいところだと思いますわ」

「八百万さん……」

「聞いただけでは当たり前過ぎて一笑に付してしまうこともそこにある自身に必要なことを汲み取り活かす……なかなかできることではありませんわ」

 

 当然のこと、自明のことでもそれを突き詰めることで導き出せるものがある。ヒーローだけでなく、物事を習得してく中で必要なことだと言える。 八百万の言葉に皆が心の中で深く頷いた。

 

「でも、発目さんの考えはやっぱりぶっ飛んでるわ。デクちゃんに言った後に飯田君の腕に無理やりブースターを付けちゃうし!」

「あはは……。アレは確かにおかしかったね……」

「発目って体育祭トーナメントで飯田を宣伝に利用したサポート科の子だよね。かなり変わってるよね」

「そうなんよ! 私らが工房に入ろうとドア開けようとしたら中で爆発が起こってさ!」

「ええ!? それ大丈夫だったの!?」

「うん、一応怪我はなかったけど爆発の勢いで発目さんが飯田君n「麗日さんストップ!!? それ以上は!?」

「あ!? そ、そやね……」

 

 開発工房を訪ねた時の様子を話している途中の麗日を出久が遮った。3人、発目含めて4人に怪我はなかったが、その時の様子……発目と飯田の状況を話すのは流石に憚られた。

 

「え? 何々!? 何があったの!?」

「黙っとくなんてズルいよ!」

「ゲロっちまいな? 自白した方が罪軽くなるんだよ」

「な、なんでもないよ! ほんまに!」

「そ、それよりもうそろそろ遅くなるから……」

 

 葉隠、芦戸、耳郎の追求からなんとか逃れようとする麗日と出久だったが……。

 

 

「「「「何〜〜〜!!?」」」」

 

 

 少し離れたところから聞こえた声に皆の意識は向かった。

 

 

「何!? 何なの!?」

「今の、男子達の声?」

「上鳴君と峰田君、瀬呂君、切島君達だよね」

「あのアホ、また何やらかしてんのよ……」

「とりあえず行ってみましょう」

 

 八百万の言葉を合図に出久達は声のした方……男子達が寛いでいる場所へ向かった。

 

 

「ねえ男子~! 何があったの~?」

「面白い話!?」

「ちょっと上鳴! アンタうるさいよ! また何かやったワケ!?」

「おわ!? 何でお前らこっち来てんだよ!」

「アンタ達の声がこっちまで届いたからでしょ! で、何があったワケ?」

「い、いや……これは……」

「なんというか、男同士の話というか……」

 

 女子メンバーの登場に上鳴、瀬呂、切島が焦り言葉を濁らせる。出久達が男子メンバーを見るとそこにいるメンバーは普段と少し異なるものだった。勝己、上鳴、瀬呂、切島とここまではいつも通りのメンバーであり、そこに加わる峰田もまあそこそこいるメンバーだ。問題は轟、飯田である。轟は普段はあまり表情を大きく変えないが今は驚愕の表情を浮かべており、飯田に至っては顔を真っ赤にして苦悶の表情をしている。やってきた出久達は状況が分からず困惑しているとその雰囲気をぶち壊したのは峰田(愛すべきクソ野郎)であった。

 

「緑谷! 麗日! 飯田が女子のおっぱい触ったって本当か!?」

「「ええっ!?」」

「ちょっと!? え!? 待って!?」

「いいい飯田君が!? 女子の胸を!?」

「え!? なんでどういうこと!?」

 

 峰田の言葉に出久、麗日、芦戸、葉隠、耳郎は驚きの声を上げる。声こそを上げなかったが八百万は口元を手で覆い、普段表情が大きく崩れることのない蛙吹も驚いていつもより目を大きく見開いていた。

 

「峰田このバカ!? 今言う奴があるか!?」

「飯田がアレ以上なんにも言わなくて状況がわかんねえから、その場にいた2人に聞くしかねえだろ!」

「だからって聞き方があるだろうが!」

 

 男子の方も驚きと困惑で状況がまだ呑み込めていないらしく、ごたごたしていた。騒動の発端である飯田はその場で口を閉ざしたまま動かなくなっていた。

 

「そ、それh「ちゃうよ! アレは事故やから飯田君は何も悪くないんよ! まさかドアが爆発して発目さんが突っ込んでくるなんて夢にも思わんし!」

「麗日君!?」

「え!? 発目ってあのサポート科の!」

「確か飯田を体育祭で宣伝に利用した奴だよな、あのピンク髪でサポート科の! 俺一昨日依頼しに行ったけど!」

「あいつか!? 結構いい体してブベッ!?」

「麗日さん!? 言っちゃダメだよ!」

「あ、しまった!? つい口が滑っちゃった!」

「口が軽すぎるよ麗日さん……。……そもそも、なんでここでそんな話になってるの?」

「それはだな……」

 

 麗日の失言に頭を抱えていた出久だったが、なんとか気を取り直してなんでこのような話になっているのか尋ねると、瀬呂がゆっくりと答えた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 時は少し遡り出久達が来る少し前……。

 

「ってな感じで! もう俺のイメージ通りでさ! これで俺も周りを気にせず攻撃できるってわけよ!」

「でもそれ頭使うからキツいって自分でも言ってたじゃん」

「う! それはそうだけどさ……」

「クラスの最下位争いしてる上鳴に使いこなすのは難しいんじゃないか〜?」

「ちょ! 峰田酷えよ! だからこうやって頭下げて使い方のアイデア教えてもらおうとしてんじゃん!」

「あはは! でも上鳴や瀬呂はすげえな! 俺なんかやることが限られるしよ」

「切島の硬化もシンプルだからこその強さだろ? 俺の個性もいろいろ頭働かせないといけないしよ」

「峰田の個性もハマれば強いよな。それにしても爆豪、オメーはもっとすげえな! もう技もいろいろできたんだろ?」

「ああ?」

 

 話を振られて勝己が気だるげに返事をする。以前ならばこのような場に勝己がいるのがかなり珍しいことだったが、林間合宿、敵連合の襲撃を経て精神的にも大きく成長しA組のクラスメイトを仲間と認識できるようになっていた。

 

「確かにいろいろできたけど、結局は試験でどれだけ実力出せるかだろ。悩むより死ぬ気でやれや!」

「うう! かっちゃんのスパルタ! 鬼コーチ!」

「でも言えてるよなあ。B組はもちろんだけど、他の学校の連中も本気で試験に挑んでくるわけだし」

「おお! 燃えてきたぜ! 目指せクラス全員合格だな!」

「おい、ちょっといいか?」

「お、轟に飯田じゃねえか、どうした?」

 

 男5人で話が盛り上がっていたところに轟と飯田がやってきた。轟は普段通りだが飯田の表情は固く、どこか思い悩んでいるようだった。

 

「いや、俺じゃなくて飯田が用あるみたいだ、爆豪に」

「は?」

「飯田が爆豪に?」

「……」

 

 勝己以外の面々は疑問の表情を浮かべていた。勝己は何か勘づいていたのか特に驚く様子もなく話を促した。

 

「で、話ってなんだよ」

「……驚かないんだな爆豪君」

「お前ここ数日俺をチラチラ見てただろ、バレバレだったぞ」

「!? そ、そうか……」

「俺も気になってな。なんか飯の時も考え込んでること多かったし、聞いたら爆豪に聞きたいことがあるらしい」

「あ〜、でも確かに飯田なんか調子悪そうだったよな」

「お前バカがつくほど正直で真面目だもんな。悩みがダイレクトに動きに影響してる感じ」

「み、皆も気づいてたのか?」

「何かに悩んでんのかな〜くらいには思ってたけどな」

「そ、そうか……。皆に心配をかけていたみたいだな」

「飯田は委員長なワケだからさ、しっかりして俺らの先頭に立って欲しいわけよ!」

「俺らも相談に乗るぜ!」

「皆……ありがとう」

 

 思わぬ言葉に飯田の胸が熱くなる。入学当初はクセのあるメンバーだったが、入学式、USJ事件、体育祭、職場体験、林間合宿……様々な困難を経験してお互いを気遣いあえるまでに友情を育むことができた。そのようにA組をまとめ上げたのは間違いなく飯田の功績であり、A組全員の功績でもあった。

 

「で、用件は?」

「ちょっとかっちゃん! 感動的なシーンが台無し!」

「黙ってろアホ面」

「え〜っと……その、なんというか……」

「飯田どうした? もしかして緑谷に告白か? だめだぞ横恋慕は」

「なんだとぉ!?」

「爆豪落ち着け!」

「轟! 話の腰を折るな!」

「すまねえ」

「ほら飯田、早く聞けよ。なんなら俺らも力になれるかも知れねえからさ」

「切島君……。わかった、俺も腹を括ろう!」

 

 切島の言葉に背を押されて意を決して飯田は勝己に尋ねた。

 

「じ、女性に謝罪する場合はどのようにすればいいだろうか……?」

「「「「「「は?」」」」」」

 

 勝己を含めた6人は間の抜けた声をあげて呆然とした。真面目な飯田からあろうことか『女性への謝罪』について教えを乞われるとは夢にも思わないことだった。

 

「いい飯田! お前一体何やらかしたんだ!?」

「そ、それは……詳しくは話せないが、その……とある女性に失礼なことをしてしまったので……謝罪しようと思うのだが、そんな経験が今までなかったので……」

「だけど、なんで爆豪に聞くんだよ! それこそ女子に聞く方がいいんじゃないか?」

「それは……爆豪君は緑谷君と交際しているから……女性にどのように謝罪したら良いか、要点を知ってるんじゃないかと思って……」

 

 質問の内容はもちろんだが、飯田の質問が要領を得ない、というより肝心な部分を濁しておりどのような対応をしたら良いかの判断ができなかった。

 

「飯田……」

「なにかな、爆豪君」

「俺と出久は付き合ってまだひと月も経ってねえし、そもそも俺達は人に教えられるほど上等な関係を築けてきたわけじゃねえ」

「……」

「だが……悪いことしたと思ってんなら真摯に頭下げるしか方法はねえ。その後のことは相手次第だ……」

「爆豪君……」

「爆豪がまともなこと言ってる……!」

「爆豪から『真摯』って言葉が出るとは……!」

「変われば変わるもんだな!」

「ヤンキーが何良い子ちゃんぶったこと言ってんだよ! ふざけんじゃねえ!」

「黙れクソブドウ! てめえらも俺を舐めてんのか!!」

 

 勝己の言葉を聞いた各人が様々な反応を示すが、飯田は勝己の言葉を反芻していた。

 

『真摯に頭を下げる』、謝罪の基本であり本質である。相手の特質さと状況の特異さで見失っていたが、勝己に言われたことで飯田の中で覚悟が決まった。

 

「爆豪の言うとおりだ」

「轟君……」

「まずは心込めて謝って、許す許さないはその人次第だ……。何かあれば俺達も一緒に謝ってやるから」

「轟君……ありがとう。それには及ばないよ、俺1人で……謝罪をしてくる。爆豪君、ありがとう。参考にさせてもらうよ」

「けっ! 明日にでも謝ってくるんだな! てめえは委員長だろうが! 『インゲニウム』がフラフラ迷ってんじゃねえよ!」

「ああ! もちろんだ!」

 

 勝己が目に力を取り戻した飯田に檄を飛ばす。彼も飯田がしっかりしていないとA組が揺らぐことを理解しており、ここ数日表情の晴れない彼を気にかけていたのだった。

 

「んじゃ方針が定まったところでよ、一体何したんだよ飯田?」

「上鳴君、それは……」

「教えてもらった方が俺らもより詳細なアドバイスできんじゃん!」

「俺達なら女子に謝り慣れてるから、力になれると思うぜ!」

「それなんか参考になるのか?」

「謝り慣れてるのはむしろ軽くないか?」

「なあなあ、教えてくれよ〜」

「このとおりだからさ〜」

 

 上鳴と峰田が飯田に詰め寄る。彼らももちろん飯田の力になりたいと言う気持ちはあるが、それ以外にも堅物の飯田が女性に対してどのようなことをしたかを知りたがっていた。

 

「むむむ、確かに君達にはアドバイスをしてもらった。詳細を伝えておくのが礼儀だろうな」

「アドバイスしたのは爆豪だけどな」

「まあまあ良いじゃねえか、せっかく話す気になったんだからよ」

「ただ、相手の女性については伏せさせてもらう。流石にそれは彼女に申し訳ない」

「わかったわかった♪ んでどんなことしたんだ?」

「うむ、その時には緑谷君と麗日君も一緒にいたんだが、実は……」

「「実は……」」

 

 相談に乗ってもらったお礼に名前を伏せた上で詳細を説明しようとした飯田だったが、その時の状況を思い出したのか徐々に顔が赤くなっていく。そのことを上鳴と峰田(アホ2人)以外の面々は怪訝に思うが、誰かがそれを口にする前に意を決して飯田が口を開いた。

 

「実は……女性の胸を……触ってしまったんだ……」

「「「「何〜〜〜!?」」」」「はあ!?」「!?」

「き、急に大声を出してどうしたんだ!?」

「飯田、マジかお前……」

「俺パンツ見た程度かと思ったけど、想像を遥かに超えていたわ……」

「何があって堅物のお前が女子の胸を触る状況になってんだ!?」

「てめえこのムッツリメガネ!? 相手誰だよ!? 教えろよ!」

「そ、それは言えないと言ったろう! これ以上は話さない!」

 

 その後、上鳴・峰田vs飯田の言え言わないの押し問答は出久達A組女子が来る短い間に何度も繰り返された。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「っていう状況なんだけど……」

「アンタと峰田本っっ当にアホだね!」

「相談程度で終えてれば男同士の熱い友情だったのにね〜」

「っていうか、さっきお茶子ちゃんと出久ちゃんが慌てて話しそらそうとしたのってこのことだよね」

「う、うん。もう黙っててもしょうがないから言うけど、僕と麗日さんと飯田君でサポート科にある開発工房に行ったときのことなんだけど……」

 

 そして出久はカオスな状況を落ち着かせるべく、3人で開発工房を訪れた時のことを話した。ちなみに当事者である飯田と騒ぎを大きくした上鳴・峰田は正座させられていた。

 

「……って言うわけなんだよね……」

「なるほどね〜。あの飯田が女子の胸触るなんてどう言う状況と思ったけど、相手を聞いたら納得というかなんというか……」

「むしろ飯田君大変だったね、って思っちゃった。発目さんには悪いけど」

「それで、飯田さんどうなさるおつもりですか?」

「八百万君……もちろん、彼女に謝るつもりだ、心を込めて」

 

 飯田は八百万の目を見て力強く答えた。正座したままの体勢での返答は罪人が懺悔するようにも見えたが、飯田は気にせず言葉を続ける。

 

「本来ならその場で謝れば良かったんだが、気が動転していたのと彼女の……自分勝手なペースに巻き込まれてすっかり忘れてしまっていた……。遅くなってしまったが、明日謝りに行くよ」

「そうですか……。であれば、私達も協力致しますわ!」

「え!?」

「飯田さんが真面目で品行方正であることはA組の皆が理解しております! そんな飯田さんの真摯な想いがしっかりと伝わるよう、私達が知恵を出しますわ! 皆様、お詫びの品物はどのようなものがいいと思いますか?」

「ここはヤオモモ御用達のお菓子がいいと思う!」

「あとはハンカチとか小物どうかな?」

「いや、相手は発目さんやからあんまりそういうのは受けないかも」

「そうだった! なら……」

「これだったら始めから女子に相談した方が早かったかな?」

「いや、いきなりはやっぱりハードルが高かったと思うからこれで良かったと思う」

「んじゃ俺等は身だしなみを検討するか!」

「お、いいね〜! 飯田を轟を超えるイケメンに仕立てようぜ!」

「き、君達……あくまで俺は明日謝罪に行くのだから……」

 

 飯田が心を込めた謝罪ができるようにA組全員が一丸となって飯田の謝罪プランについて知恵を出し合った。

 

 

「失礼します! 発目明さんはいらっしゃいますか!?」

 

 翌日の訓練終了後の午後4時、飯田は1人開発工房を訪れていた。出久や麗日、他のクラスメイトも同行を申し出たが、飯田は自分自身でケジメをつけるべく断った。昨日の作戦の会議の結果、奇をてらわず制服でお詫びの品を持っていくことにした。

 

「はーい!! どちら様ですか!? おや、貴方は……すみません! 名前忘れました!」

「君が体育祭で宣伝に利用して、先日もここを訪ねた飯田天哉だ! ほんの数日なのに覚えないのか!?」

「ああ! 思い出しました! この間は第36子のベイビーを試してくれてありがとうございました!」

「何を試したかは覚えているんだな……」

「それで、今日はどんな用事ですか?」

「そ、それは……」

 

 早くも発目のペースに巻き込まれつつある飯田だったが、ここに来た目的を思い出して気を取り直して発目に向き直る。

 

「発目君! 先日は君の胸に顔を埋めてしまいすみませんでした!」

 

 大きな声で謝罪の言葉を述べ、上体を90度まで傾ける最敬礼の姿勢で発目に謝罪の意を示した。目を瞑り最敬礼の体勢を維持したまま発目からの返答を待つ。なかなか返事が返ってこず、飯田には数秒が永遠にも感じられたが、返ってきた言葉は全く予想もしないものだった。

 

「……何の話ですか?」

「なっ!? なんだって!?」

「すみません。飯田君が私に謝るようなことをしたのか覚えていなくて」

「さ、先ほども言ったように先日俺が緑谷君と麗日君がここに来た時に部屋の中で爆破が起こって君がドアから飛び出てきて俺の上に乗っかっただろう! その時に俺の顔が君の胸に埋まる形になったことに対して謝罪にしたんだ!!」

「ああ、あの時の! はい、謝罪をお受けしました!」

「そんな簡単で良いのか!?」

「私自身覚えていませんでしたが、私にしたことを思い悩んで真剣に謝罪してくれたんでしょう? それを無碍にすることはしません。あ、それなんですか?」

「こ、これはお詫びの品で……」

「そうですか! ありがとうございます! なかなかいい物みたいですね! どうですか!? 一緒に頂きませんか?」

「あ、ああ……。君が良ければ……」

「では、どうぞ工房の中へ! 少し散らかってますが!」

 

 飯田の謝罪をあっさり受け入れてどんどんと話を進めていく発目に飯田は唖然としていた。数瞬後、謝罪を受け入れてられたことに気づき安堵したが、あれほど自身が思い悩みクラスメイトも知恵を出してくれた謝罪が肩透かしと言えるほどあっさり受け入れられたことにモヤモヤとした気持ちが湧いてきた。

 

「(謝罪が受け入れられたのは良かったが、何かこう……釈然としないものが……)」

 

 湧いてきた気持ちをどうしようか思案していると謝罪に来る直前に勝己がくれた追加のアドバイスを思い出した。

 

 

『もし……自分でまだ謝罪が足りねえとか納得できねえことがあったら、『なんでも言うこと聞く』って言ってやれ!』

 

 

「発目君!!」

「はい! なんでしょうか!?」

「その……君は、謝罪を受け入れてくれたが……俺自身はまだ足りないと思っている……。だから、君の言うことをなんでも聞k「本当ですか!?」

 

 飯田の追加の申し出に発目は食い気味に問い返した。

 

「あ、ああ。男に二言はない! ただし……1つだけだ!」

「1つだけですね! う〜ん、どうしましょうか! 第85子の実験に付き合ってもらいましょうか? それとも第121子の実験に……いや、それよりもまだ設計段階の第150子のプロトタイプ作成に協力してもらいますか……?」

 

 飯田にとって恐ろしいことを出久ばりのブツブツで繰り返す発目に飯田は挫けそうになるが、それをグッと堪えて発目の答えを待った。

 

「よし! 決めました! 飯田君!」

「な、なんだ発目君!」

「毎週1回、この工房に来てください! そして、私とお話してください!」

「へ!? そんなことで良いのか!?」

「はい! 飯田君はリアクションが大きくて面白いので気分転換にいいと思いまして! それに発明について知識のない人に話すのはプレゼンの練習になるので!」

「なるほど……君がそれで良いなら俺も協力しよう!」

「はい! よろしくお願いします! あ、これも一緒に頂きましょう!」

「ああ。ところで、君お茶入れられるのかい?」

 

 発目の言葉に応じて飯田も開発工房に入っていく。謝罪する前の緊張した雰囲気はなく、今は晴れやかな顔で発目と話を交わしていた。

 

 

 飯田は気づかなかった。発目と開発工房で話すことで結局ベイビーの実験に付き合うことになることを。そして知らなかった。発目に会いにいく姿が見られて付き合っていると誤解されて、『手も足も速いインゲニウム』と非常に不名誉な諢名が付けられることを……。




と言うわけで幕間5でした♪ 飯田君と発目さんの組み合わせは体育祭と第6期アニメのオリジナルエピソード『雄英ヒーローズ・バトル』が結構好きです♪ これから合間にちょくちょく描写を挟んでいく予定なのでお楽しみに! 今年もマイペースで進めていくので応援のほどよろしくお願い致します!
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