それでは、どうぞ!
「いたた……」
真堂による攻撃で周囲の地面が崩落してA組や他の生徒達も分断されてしまうが、麗日はどうにか怪我をすることなく周囲の状況を確認しようとしていた。
「(なんちう強引な分断、下手したら死人出るよこんなん……。皆を呼ぼうにも声出してたら他校に狙われちゃう……。そんな遠くへは離れていないハズ、多対一を避ける為にまずは皆と合流! こういう時こそ冷静に慎重に……! スニークウラビティや!)」
A組の仲間と合流するため、麗日は隠密行動を開始した。
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Side:Izuku
「こういう乱戦が予想される試験だとまず情報の多いとこを狙うみたいな発想する人もいるらしいの。だから雄英が早めに脱落してしまう可能性を考えて会いに来たの。せっかく強豪校との交流チャンスだし
「よく……喋りますね……」
最初『お姉さんとイイことしない?』って聞かれた時は流石にびっくりしたけど、思ったより話が通じる人……なのかも知れない……。でも、すぐに傑物学園や他校が束になってやってくる……。悠長に話してる場合じゃない……のはわかってるハズだよね……? 仲間のサポートがあるのか、はたまたよっぽどの自信家か……?
ビッ! ビッ!
士傑の人がノーモーションでボールと牽制する為の石を投げつけてくるが、スピードも速くなくさほど脅威にならないそれらを難なく避ける。
しょうがない、やられないようにしなきゃ! 反撃を……!?
「え!?」
彼女のいたところに目を向けるとその姿がなくなっていた。いくら避ける為にボールや石に目を向けてたとはいえ、姿を見失うほどの時間は目を離していなかったはず! そんなに早く動けるのか!?
「こんなんボールで殴ればいいじゃんね」
「な!?」
もうこんなに接近してた!? しかも僕の後ろに!?
彼女がボールを右手に持ったまま僕の左わき腹、ターゲットを狙って殴ってくる。
ダッ!
その攻撃をギリギリで避ける。OFA5%で勢い余って結構な距離を移動するが、一旦この人からは距離を取った方が良い、得体が分からなさすぎる!
でも、やられっぱなしは相手を乗せるだけだから反撃……ができないんだよね! さっきもだったけど、この人ちょっと目ぇ話すと消える! もしかして……消える『個性』なのかな? だとしたら相当脅威に……!
「消える『個性』だと思ってる? 私はただ隠れてただけよ」
「!? しまっ……!?」
背後から声がして咄嗟に振り向こうとするけど、その前に地面にうつ伏せにされてしまう。右手も関節を極められて押さえられてるから拘束が結構強い!
「これは
「士傑ではそんなことも習得出来るんですか!?」
信じられない! 張り込みや潜入捜査では必要な技術なのかもしれないけど、この人のはそれを遥かに上回るレベルな気がする……! もっと……アンダーグラウンド、闇と接するような……。
「コツは訓練を訓練と思わないこと。フフフ、お互い知りたがりだ」
彼女は楽しそうに……本当に楽しそうに話す。今が仮免試験じゃなくて、教室で芦戸さんや葉隠さんがおしゃべりするくらいワクワクしてるのが言葉の端々から伝わる。この人、一体……。
「次は私ね。あなたは何でヒーローを志してる? 名誉? 誇り? 誰の為? あなたのことがもっと知りたいな」
そういう彼女の声はどこまでも楽し気で……怪しい雰囲気を纏っていた……。
「スンスン……良い匂いだね、甘くて落ち着く……私の好きな匂い♪」
「ちょっ!? なんで匂い嗅いでるんですか!? 今試験中ですよ!? いや試験中じゃなくてもダメですけど!」
「目の前にこんなカァイイ子がいたら嗅ぎたくなっちゃうよ、味もみておこうかな?」
「ひゃあ!?」
そういってペロっと僕の首筋を舐めてきた! この人、ヤバい!!?
「思った通り、甘くて……けどちょっとしょっぱさもあって美味しいね♪ 汗でこれだけ美味しいなら他はもっと美味しいかもね……♪」
ヤバいヤバいヤバい!!? これ以上は本当にヤバい! 腕痛めちゃうかもしれないけど、拘束を無理にでも引き剥がさなきゃ!
「ぬんっ!!」
「わっ」
よしっ!! 上手くいった! あとはなんとか距離を置いて……!
ドパッ!
「!!?」
僕と彼女のいた地点にクモの糸みたいな粘液状の塊が放たれていた。向かってきた方を見ると……。
「士傑もいる……。嫌だな……」
「やっばい……!」
最悪だ! だれとも合流出来ず大勢に狙われる、さっき考えてた最悪を実現してしまった! ああ来るぞ、避けろ避けろとにかく避けろ!!
ヒュッ! ビュッ! ブンッ! ガガガガッ!!!
「ッ!!!」
石やら粘液やら水流やら貝状の岩やらでやたらめったに僕を攻撃してくる! 動けなくしてからターゲットを狙う作戦なんだろう! 正直この物量はキツイ! どうにか突破口を……!
「大丈夫!!?」
「!?」
この声は……! 声がした方向を見ると、麗日さん!!
「こっちに! 早く!!」
「(……何だ、何か策が……!?)」
「早くじゃねーよ!!」
麗日さんの声に対抗するようにさらに新手がやって来た! これじゃあ僕だけじゃなくて麗日さんも危ない!
「うわ! もう! 邪魔! ……わ!?」
「……!?」
「落ちる、よっしゃ僕がもらうね!!」
「え!! 待てよ!?」
あの時、僕は戦うことを選択し腕を壊した。壊さなければ……かっちゃんも僕も捕らわれることはなかったかもしれない。捕らわれなければオールマイトはAFOと戦っていなかったかもしれない。……あの時、洸汰君を保護し相澤先生の下へ敵よりも速く駆けられていれば!
OFA5%、フルカウル! 地面を強く蹴って、落ちる麗日さんに手を伸ばす! なんとか地面にぶつかる前に抱き支えることができた!
脚を中心に使って鍛える、もう少し早く辿り着くべきだった! 人を救けるにはまず自分が無事でいなきゃ!
「隙あり!」
他校の生徒が狙ってくるけど、そうはさせない! 左足を軸にして回転しながら右のつまさきを地面に突き立て思いっきり蹴りだす!
ガガガガッ……ドォオオオン!!!
「うおォ!!?」
「足場崩しかちくしょー!?」
「うわあああ!?」
強い衝撃を与えた瞬間つま先がバネでとび出る! 瞬間二撃! あの後、発目さんと一緒に考えて調整してもらった威力と脚の引きを補強してくれるサポートアイテム、アイアンソール!
『いいや! 付け焼刃以上の効果があるよ、こと仮免試験ではね』
オールマイトの言った通りだ! 決めた! 身体が追いつくまでOFA100%は使わない! その代わりにこの脚を強くしてなるんだ、僕の理想としているヒーローに!
「くそ! 逃げ足はえーな雄英!」
「いない、隠れたか!?」
「近くにいるはずだ! ていうかさっき思ったが、効率悪くねえかこれ……」
上の方で他校の生徒が僕らを探してる。どうにか、逃げることができたかな……。
「ありがとう。ごめんね、ヘタこいた」
「……ん。いや、別に問題はないよ……。それより……」
麗日さんが僕にお礼と謝罪をする。僕は周囲を警戒しながらそれに応える。危機は一応去ったけど、まだ別の問題がある。
ス……ビシッ!
振り向きざまに右手を払うと思った通り麗日さん、いや……
「ひょっとして士傑の人ですか?」
「はえ?」
僕に攻撃を防がれるとは思っていなかったらしく、おそらく……士傑の人は間の抜けた声を上げた。
「麗日さんは『個性』の訓練をして、ごく短い時間なら副作用を気にせず自身へ使えるようになってる。危ない目にあっても発動する素振りすらなく、何より無策のまま敵前に姿を現すなんて僕の知ってる麗日さんじゃない」
話しながら視線をそらさず少しずつ距離を取る。一応、周りにも注意を払うが他校の生徒の気配はない。目の前の麗日さん、いや、麗日さんに化けたと士傑生と思われる人は見破られたのが予想外だったのか表情が固まったままだ。
「気付いてたすけたってことは、逆に利用しようとしたの?」
「わ……!」
その途端麗日さんの顔や被っているヘルメットがドロドロの半固形状になる。驚いてさらに距離を取るが、視線を離さずなんとか会話を続ける。
「そこまで頭は回ってません……でも良かった。結果的に……麗日さんじゃないなら……尚更浮かんだり出来ないから……あのまま落っこちてたら確実に背中を痛めていた」
「……! なるほど……それが君の理由なんだね……」
嬉しそうな声音と共に顔の部分のドロドロから彼女の素顔が現れる。
「もっと教えてほしいな、君のこと」
「(試験の後じゃ…………ダメなの!?)」
『けっこう状況動いてます! 現在通過者、52……あ53名! 続々出てます! 2人以上を脱落させた者もいる為脱落は230名! そして今54人目出ました、あと半分切った! 早く! 終われ!』
試験の途中経過を告げる放送が流れているがそちらの内容を気にする余裕はない。目の前の人が虎視眈々と僕を見ているから……!
「君は誰でもたすけるの? 境界は? 何を以て線を引く?」
「いや服は!? なんで裸!! 着て下さい!!」
なんで真っ裸なの!? これは変身する個性の影響なのか? いくら試験中でも男の人に見せられないよ! この人めちゃくちゃナイスバディだったもん! 襲われちゃうよ!
「やることやったらね」
ブンッ!
「くっ!」
ひっかき!? 何なんだよもうこの人!!
「あは! ごめんね、女の子の顔に傷つけちゃった♪ 血が出てるね? ばい菌が入ったら危ないよ、私が舐めてあげようか?」
「遠慮しときます!」
自分でやっておいて何言ってるんだこの人は!? 早く誰か……A組の皆来てーーー!!?
シュルッ!!
「! もぉ」
「テープ!」
これはまさか!
「緑谷、何この羨ましい状況!!」
「瀬呂君!! あらゆる意味でナイス!! 来てくれてありがとう!!」
テープの出所に目を向けるとA組のバランサー、瀬呂君がいた。本当に助かった!
「麗日!!」
瀬呂君の合図で瀬呂君の後ろから麗日さんが飛び出してきた。そのままの勢いで士傑の人に向かっていき、右手を振りかざして個性で浮かせようとする。が、士傑の人はいとも簡単に麗日さんの攻撃を避けた。
「(反応凄!?)」
そのまま、バック転を繰り返して瓦礫の上に座って僕らの方に目を向けてくる。その……いろいろ見られちゃいますよ! 瀬呂君に!
「いいトコだったけど……残念……本当に……! 本当に! もっと話したかった……。でもこれじゃあもう無理ね……残念だ」
こちらを恨めしそうに見ながら心の底から残念そうに彼女はそう呟いた。こっちは大変でしたけどね!
「ウララカオチャコさん、とっても信頼されてるね」
「は!?」
バッ!
なぜか麗日さんを名指しした後、あっという間に逃げて行ってしまった。服着てくれないとなんか心配なんだけど……!
「あ、待て痴女」
「いや、追わなくていい!! 『個性』の関係だろうか、服ごとターゲットを脱いでる。また狙われるリスクはあるけど……時間とか諸々考えてあの人をポイントするのは難しい。痴女っていうのは……まあ、うん……」
あんなに恥ずかしげもなく裸なのは痴女と言えなくもないかもしれない……。うん、まあそれは今は置いといて……!
「それより2人は本物だよね!?」
「? うん」
「何言ってんだ緑谷?」
「よかった! ありがとう!!」
「ええ!?」
「うえ!?」
2人が本物であることに本当に安心して思わず抱き付いてしまった! 怖かったよ~! あの人普通の敵……『普通の敵』ってのもおかしな表現だけどそれより怖かったもん!
「デクちゃんどうしたの!?」
「み、緑谷とりあえず落ち着いて離れて……。緑谷に抱き付かれたのバレたら俺爆豪に殺されちゃうから……」
「う、うん! ごめんね! 実はさっきの人、麗日さんそっくりに変身してて……」
「ええ!?」
「裸だったのか緑谷!?」
「そこぉ!? ちゃ、ちゃんとコスチューム着てたよ!? っていうか瀬呂君何言ってんのさ!?」
「は!? すまん! 取り乱してつい!」
瀬呂君必死過ぎでしょ!? 男の子って皆こうなの!?
「他人に変身……それがあの痴女の個性か……」
「たぶん……」
「やっぱ俺ら、他校に相当チェックされてんだろうな。緑谷と麗日が仲良いことまで調べてんだから」
「体育祭の騎馬戦、一緒のチームだったからかな?」
「ああ、なるほど……」
「それより、瀬呂君と麗日さんはどうしてここに?」
「ドンパチやってんの見えて駆けつけたんだよ! 麗日とはその途中で合流した!」
「間に合ってよかった!」
「うん……よかった! 本当によかった!!」
「み、緑谷。さっきもえらく力こもってたけどあの痴女となんかあったのか?」
「そ、それは……うん、後でね」
「とりあえず3人、だね!」
「これからどうする? 皆待つか? 他所は10人以上で動いてる、数で圧されるぜ」
『また通過者出まして現在58名です。あと42名通過で終わり!』
さっきは余裕なかったけど、もう半数超えてるのか……。そろそろ仕掛けないといけないけど……。
「一気に増えてく……。やべーな、どうする」
「……」
時間はもう残り少ないけど……この2人がいればできるはず……!
「襲われてわかったんだけど……少なくとも今近くにいる団体ならなんとかなるかもしれない」
「は!? すげえな!! どゆこと!?」
「抜けがけしようとする人がいた、きっと焦ったんだと思う。多数で少数を狙うって獲物を取り合うってことだから」
「あぁ……! 抜けがけすると多数が段々減っちゃうから不利になってくんだ……やっちゃいかんやつだ」
「じゃあ緑谷はかたまろうっつってどうする気だったんだ!?」
瀬呂君が当然の質問をしてくる。始まるときはそんな余裕なかった、っていうかかっちゃんがさっさと行っちゃうから話す時間がなくなっちゃったんだけど!
「……そもそも『ボールを的にあてる』ってので的当てみたいに考えちゃうけど、相手の『個性』がどういう性質かもわからず守られてる上に動き回る的を狙うのは容易じゃないし時間もくう……。だから、全員合格できるだけの人数を拘束、身動き取れなくしてからボールを確実に当ててく。A組は範囲制圧に長けた人が多いし出来るんじゃと思ってたんだけど……」
僕の長い説明を2人が頷きながら聞いていた。今ここにいる麗日さん、瀬呂君も動きを制限する個性だし、峰田君や常闇君、障子君も相手を拘束するのに有利な個性だから全員揃っていたらかなり楽だったと思うんだけど……。
「なるへそ……。確かに的当てじゃ的当てうめーかどうかしか見れねーしな……。考えてみれば本来そういう試験なのかもな……」
「シッ! ちょい待って……近づいてきてない……?」
「……!?」
「どうするよ?」
確かに、周囲に人の気配がしてきた。そろそろ終盤、相手も勝負を仕掛けてきたってわけか……。
ここは動くべきだ!
「僕が出る!」
「は!?」
「僕が囮になるから、2人は隙をついてなるべく多くの相手を拘束して! 瀬呂君と麗日さんの『個性』は相手の自由を奪いやすい」
「囮って……こっち3人、数が……無理だぜ」
「……ラジャ」
「やろう、瀬呂君!」
「……わかった!」
「デクちゃん、お願い!」
「うん! 任せて!」
他の皆も心配だけど、今は信じるしかない!
「よし! 行くよ!」
ダンッ!!
出鼻で攻撃されないようにスピードを付けて一気に飛び出ると十数人の人たちが僕達が隠れていた場所に近づいている途中だった。なんとか引きつけて麗日さん達が攻撃準備できる時間を稼がなきゃ!
「!? 出てきたぞ!」
「あの雄英の! 地味系パワーガール!」
「体育祭ベスト8の! 全員で狙い打て! 数打ちゃ当たるはずだ!」
「後でサイン欲しいな! でなければ殴ってほしい!」
なんか変なこと言ってる人がいるけどこのまま縦横無尽に動いて……!
「おい! 今なら隙があるぞ! あいつらを狙え!」
「クソ! 奴ら俺らを攻撃してきたぞ!」
「ふざけやがって! 反撃しろ!」
! 僕を狙う人達をさらに別の人達が狙う形、乱戦になってきてる! やっぱり残りの合格枠が少なくなってきてるから焦ってきてるんだ! これなら麗日さん達の動きを隠せるはず!
「これならどうだ!」
「!?」
他校の人が僕に目掛けて個性由来の攻撃、硬質なおもちゃのはさみみたいなもので攻撃してくる! OFA5%、シュートスタイル!
「はあ!!」
ドガッ!!
「な!?」
「なんてパワーだ!」
「アレで蹴ってほしい!!」
よし! この人達の攻撃なら僕のパワーで対応できる! ……なんか変な人もいるけどそこは無視だ! これだけ攪乱できればそろそろ……!
「デクちゃん! 瀬呂君! 行きます!」
「よっしゃ!」
「わかった!」
「「「!?」」」
麗日さんが合図を出してくれると巻き込まれないように一足飛びでその場を離れる。上空を見ると瀬呂君のテープをいくつも張り巡らせた岩が何個も浮いており、麗日さんが個性を解除すると上空から岩がどんどん落ちてくる。他校の人達は岩を避けようとするけど、それの隙間を埋める形で張られた瀬呂君のテープにほとんどの人達が拘束された。
「テープ!?」
「ガレキにくっつけて投げたのか!?」
「クソ!? ぐあっ!?」
テープに当たらなかった人達も周囲に気がとられている隙に瀬呂君がテープで拘束する。上手くいったみたいだ!
「麗日にテープ渡して仕掛けをつくっといてもらったのさ!」
「なるべく多くとは言ったけど……大胆な……! 一応分散されないようにかく乱してて良かった!」
「私は皆さんがガレキに当たらない配置になるのを身を隠して見計らっていたのでした!」
麗日さん、瀬呂君……! 周囲に他校の人がいる中で綿密な連携が難しいのに……よくこんな作戦を!
『現在76名通過しております。もうじき定員ですよー』
さっきよりもう20名近く通過してる!? 状況が急速に変化してるんだ! やっぱり勝負をかけて正解だった!
「時間もねえし、すぐ他が襲ってくるだろう……。貰うぜ皆さん」
そうだ! こうしてる間に定員が埋まっちゃうかもしれない。急がないと!
「……君ら1年だろぉ? 勘弁してくれよぉ。俺らここで仮免取っておかないといけなーんだよ……」
拘束された1人が僕らにそう懇願する……。最終学年かカリキュラム的に後がないのかもしれない……。でも、だからと言って僕らにもそれを譲れるほどの余裕はない……。
「……僕も同じです」
「ならせめて殴ってくれ! 君雄英の緑谷さんだろ! ファンなんだ! 君に殴られるなら本mガッ!?」
「う、麗日さん……」
「ご、ごめん……あまりの気持ち悪さにちょっと手が出ちゃった……」
「……まあ、緑谷じゃなくても女子に殴られたならこの人も本望だろ……」
トッ……ピッ
『現在79名! ガンガン進んでいい調子ですよー!』
通過直前になんとも言えない微妙な気持ちになったけど、僕と麗日さん、瀬呂君の3人は無事一次試験を通過した。
なんか……疲れた……。
「あら? オイねぇアレ瀬呂達じゃん!? やったあ、スッゲオーイ!」
ターゲットから流れてきた指示に従って控室に移動していると上鳴君の声がしてそっちを見ると上鳴君と切島君、それにかっちゃんが僕達と同じように控室に向かっているところだった。よかった、3人とも一次試験突破できたんだ……。
「上鳴君! やったあ、スッゲオーイ!」
「「「YATTA! YATTA!」」」
上鳴君、麗日さん、瀬呂君が謎の喜びの踊りを踊っているとかっちゃんが僕の方に寄って来た。
「……大丈夫だったかよ……」
「うん! 麗日さんと瀬呂君のおかげで突破できたよ。それよりも、かっちゃんが探していっちゃった真堂さん、結局僕達の方に来てたからかっちゃん達が別行動する意味なかったよ!」
「何!? で、奴はぶっ殺したのか!?」
「そんな物騒なことしないよ! でも、すぐ真堂さんの技で皆分断されちゃったからそれも意味なかったかも」
「ちっ! あの野郎次こそぶっ殺す!」
「だから! それやっちゃダメだよ!」
「ほら、言ったでしょかっちゃん! 素直に緑谷と一緒にいた方がよかったって!」
「こういうのアレだ、『急がば回れ』って奴だ」
「……クソが! ……お前、その顔の傷どうした?」
かっちゃんが僕の顔を見てそう尋ねてきた。そういえば、あの士傑の人にひっかかれたんだった。あの後、それどころじゃなくて気が付かなかった。
「ああ、これは他校の人と遭遇した時にちょっと戦闘になってね」
「もしかして、士傑の女の人?」
「ああ、あの痴女ね」
「士傑の女ぁ!?」
「痴女!?」
「待て待て! ちょっと情報がおかしいぞ!?」
「瀬呂君それ今いらないでしょ!?」
「あ、しまったつい……」
僕の言葉に反応して麗日さんが予想を言ってさらに瀬呂君が被せてきたので一気にその場がざわついてきた!
「え、えっと士傑の女の人なのはそうで……痴女っていうのはその、ってかっちゃんどこいくの!?」
「士傑の女ぶん殴ってくる」
「ちょっと!? 試験中はともかく今はもうダメだよ! それに一次試験突破してるかわからないし!」
すぐ士傑の人を探しに行こうとするかっちゃんを掴まえるが、僕を引きずりながらずんずん進んでいく! かっちゃんこんなに力強かった!? もしかしてOFAの残り火使ってない!?
「麗日さん! 瀬呂君も皆手伝って!? このままじゃかっちゃんが暴れちゃう!?」
「わ、わかった! 爆豪君! 女の子殴っちゃあかんよ!」
「うるせえ、男女平等だろうが!」
「お前が言うとなんでそんな危険思想みたいなんだよ!?」
「爆豪落ち着け! 試験失格になっちまうぞ!」
僕らの後の合格者が怪訝な表情で見るのを感じながら、なんとかかっちゃんを抑えることができた。
……疲れた……。本当に疲れた……。確か、今のが一次試験だったけどあと幾つあるのかな? これ最後まで体力持つのかな? そんな一抹の不安を胸に僕らは控室へと向かった。
というわけで第59話でした! え~、ケミィさん(トガちゃん)の行動がさらにヤバいですねw デクちゃんがドン引きですw 今回ではかっちゃんにはばれてませんが次の話でどうなるんでしょうねw? 試験参加者にもちょいちょいデクちゃんファンいますが、そこにもヤバい人がいますねw 今後もモブはそんな人を入れるつもりです。仮免試験編はあと2話くらいの予定ですので、今後も応援よろしくお願い致します♪