僕のヒーローアカデミア~諦めから始まる物語~   作:キョンP

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お待たせしました、第62話です!ちょっと仮免試験編ラストです!
それでは、どうぞ!


第62話 二次試験、クライマックス!!

Side:Izuku

 

『敵が姿を現し追撃を開始! 現場のヒーロー候補生は敵を制圧しつつ救助を続行してください』

 

 目良さんのアナウンスを合図にするかのように敵役を担うギャングオルカの何十人もの部下(サイドキック)達が救護所へと向かってくる。

 

「(この状況、要救助者を保護・避難させつつ敵を迎撃しなきゃいけないけど……敵の数が多すぎる! 誰か、広範囲に攻撃できる人がいれば……!)」

「皆を避難させろ!」

「真堂さん!?」

「奥へ! 敵からできるだけ距離をおけ!」

「は、はい……!」

 

 僕が思考を巡らせてる内に同じく救護所に来ていた真堂さんがいち早く飛び出し救護所と敵の間に立ちはだかった。僕は判断に迷っていたのに……真堂さんは要救助者の避難を優先させた。この部分の経験がまだまだ足りてないんだ……! もっと思考を働かせないと! 広範囲への攻撃が可能な真堂さんにその場を一旦任せて僕も要救助者の避難を急がせる。

 

「インターバル1秒程の震度でたたみかける!」

 

 BBBB……! バゴォ……!!!

 

 真堂さんが個性を使用した技で前方の地面を割ると、敵役がそれに巻き込まれて一時的に侵攻速度が遅くなる。よし! これなら要救助者の避難も完了できる……!

 

 

 ……そう思ってた矢先……。

 

 

「温い」

「!?」

 

 キィイイイン! キンッ!!

 

「ガッ……!?」

「この実力差で殿1人? なめられたものだ……!」

 

 

 応戦していた真堂さんにギャングオルカが一瞬で接近し、個性『シャチ』の応用技『超音波アタック』で真堂さんを麻痺させた。

 

「(マズい!? 範囲攻撃が可能な真堂さんがやられちゃったから敵に追いつかれちゃう!)」

 

 

 ガガガガッ!!!

 

「「!」」

 

 

 これは……氷!? もしかして、轟君!?

 

 大量の氷の発生源を見ると予想通り轟君がいた。さらには……。

 

「緑谷さん!」

「赤嶺さん!? なんで轟君と一緒なの!?」

「同じ場所で救助に当たっていたからだ。それより、ここは一旦俺に任せて救護所の人達を避難させろ」

「わ、わかった!」

「緑谷! 避難か!? 手伝う!」

 

 声の方向を向くと尾白君や常闇君、芦戸さんが息を弾ませながらこちらに走って来た。別の場所で救助をしていたのか!?

 

「皆! どこにいたの!?」

「向こうの水辺付近さ! 皆街の方に向かったから手薄なとこにいたんだが、敵が大挙するのを見て応援に来た! 蛙吹らはまだ救助続行してる」

「っていうか、緑谷の同級生の子すごいね! 空飛んでるよ!」

「翼も何も持たず飛べるとは……一体どんな個性なんだ?」

「それは後で! 範囲攻撃が強い轟君が来てくれたから今の内に要救助者の避難を……」

 

 応援に来てくれた皆と避難を進めようと思っていると……。

 

 

「ふぅきィイイイイ飛べえええっっ!!!」

 

 

 強い風で敵集団に攻撃しながら士傑の夜嵐君が文字通り飛んできた。彼も風を使って広範囲に攻撃できるからこれで敵への対応もかなり楽になるよ!

 

 

「敵乱入とか!!! なかなか熱い展開にしてくれるんじゃないっスか!!」

「風で飛行……私のとは違ってかなり強力ね……」

「お! あんたも空飛べるんっすね! 空飛べるって最高っスよね!!!」

「え、ええ……(個性と違ってだいぶ暑苦しいわね……)」

 

 あ、赤嶺さんも夜嵐君のテンションに困惑してる。でも、一次試験や雄英の推薦を合格しているから戦闘面では優秀なはずだから多分大丈夫なはず……。

 

 

「……あんたと同着とは……!」

「……おまえは……救護所の避難を手伝ったらどうだ、『個性』的にも適任だろ。こっちは俺がやる」

「轟君、彼も範囲攻撃ができるから一緒に対応した方が強力だわ。あなたも……」

「ムムム……」

 

 ブワッ!!! ゴオオ!!!

 

 

 赤嶺さんが呼びかけてる途中で轟君が炎熱で、夜嵐君が風で敵の集団に攻撃を仕掛けるけど大きく外れてしまった。これは……炎の熱と風が干渉し合っちゃったんだ! でも、なんで……轟君は氷結を使うことが多いのに……。

 

「何で炎だ!! 熱で風が浮くんだよ!!」

「さっき氷結を防がれたからだ。お前が合わせてきたんじゃねえのか? 俺の炎だって風で飛ばされた」

「あんたが手柄を渡さないように合わせたんだ!」

「は? 誰がそんな事するかよ」

「ちょっと!? あなた達何言い争ってるのよ!? 今戦闘中よ!」

 

 言い争う2人を赤嶺さんが諫める。轟君が炎熱を使った理由、氷結を物理的に防がれたから炎熱を利用したってのはたぶんその通りだと思うけど、夜嵐君がそれに食って掛かる理由が分からない。二次試験前の時から妙だと思ったけど……夜嵐君が轟君を敵視してる?

 

「するね! だってあんたはあの……エンデヴァーの息子だ!」

「……さっきから、何なんだよおまえ……」

 

 夜嵐君がエンデヴァーの名を口にすると轟君の表情が怒気を孕んだものに変わる。職場体験を経たとはいえ、轟君がエンデヴァーに対して抱いている想いはそう簡単に変わるものではない。でも、なんで夜嵐君はエンデヴァーを……そして轟君を嫌っているんだ? エンデヴァーは高圧的な見た目や言動から確かに否定的な人もいるけど、それを理由に轟君を嫌うことにはならないはずだ。どうして……。

 

「親父は関係ね……!?」

「馬鹿! そんなよそ見してるから……キャッ!?」

「セメントガン! すぐ固まって動き辛くなるぜ」

「論外だな……! ケンカを始めるとは」

 

 セメントガン! アレを一発でも喰らったら身動きが取れなくなっちゃう! 赤嶺さんはなんとか避けたけど、轟君は一発喰らってる! 救護所は尾白君達に任せてここをサポートした方が……。

 

「関係あるんだなこれが!」

 

 セメントガンを空中で避けながら夜嵐君が轟君に対して言葉を続ける。

 

「ヒーローってのは俺にとって熱さだ! 熱い心が人に希望とか感動を与える!! 伝える!! だからショックだった! そして入試の時あんたを見て、あんたが誰かすぐわかった。なにせ……あんたは全く同じ目をしてた」

「同じだと……ふざけんなよ。俺は……あいつじゃねえ」

「俺はあんたら親子のヒーローだけはどうにも認められないんスよォー! 以上!!

 

 夜嵐君の話してることの細かい部分はわからないけど、たぶんエンデヴァーと会って何かショックなことがあったんだ……。その後に轟君と会って……エンデヴァーと似た何かを感じた。

 

 ……夜嵐君の言うことは少しわかる。体育祭までの轟君はいつもどこか張り詰めてる雰囲気でクラスの皆ともあまり積極的に関わる感じじゃなかったから……。でも、今は違う! 皆と笑って話し合えるように変わったんだ!

 

 うわっ! 敵役が僕にも撃ってきた! ボヤボヤしてる場合じゃない! 試験に集中を!

 

 

 ブワッ! ゴオオオッ!!

 

「また!! やっぱりあんた……!」

「!(風で……! 炎が……!)」

 

 再び轟君と夜嵐君が攻撃を放つが最初と同様に攻撃が干渉しあって狙いが大きく外れる。炎の行く先には……真堂さん!? 間に合え!!!

 

 

 ダン!!!

 

 

「何をしてんだよ!!!」

「!?」

 

 良かった、何とか間に合った……! ……少し聞いただけだけど、夜嵐君がエンデヴァーや轟君に対して何らかの嫌悪感を抱いているのもわかったし、轟君がエンデヴァーと同じように見られるのを否定したくなるのもわかるけど、今はそんなことをしてる時じゃない!

 

 

「とりあえず……邪魔な風だ」

 

 キィイイン!!!

 

「避けッ……!? ガァ!?」

 

 

 ずっと様子を見ていたギャングオルカがついに動き出した。空中の夜嵐君に向かって超音波アタックを放ち夜嵐君が避けようとすると敵役の相棒(サイドキック)がセメントガンで妨害されて被弾、そのまま地面に落下していく。

 

 

「おい……」

「自業自得だ……」

「っ……!?」

 

 続けて轟君がギャングオルカに攻撃を受けてしまう。マズい! 範囲攻撃に優れた2人がやられちゃった! 赤嶺さんは……! 赤嶺さんに目を向けると空中でセメントガンを避けるのに精一杯の様子だ。水を操る『操水』の個性の赤嶺さんは空気中の水分も集めて操れるけど、この状況じゃそんな時間がない! そうこうしている間に敵役が救護所に目掛けて押し寄せてくる! 僕がアイアンソールで地面を抉って……!

 

「どいてろ!」

 

 

 バッ! バゴッ!!!

 

 

 抱えていた真堂さんがいきなり動き、地面に向かって衝撃波を放って迫ってきていた敵役の行動を遅らせた。

 

「真堂さん! オルカの超音波で動けないんじゃ!?」

「まァちょっと。だいぶ末端しびれてるよね。音波も振動ってなわけで……『個性』柄、揺れには多少耐性があんだよ。そんな感じで騙し撃ちねらってたんだよね! それをあの1年2人がよォー!」

「きゃ……キャラが……」

 

 真堂さん、すっかり余裕がなくなって本性が出ちゃってる.……。でも、今はそれだけ状況がひっ迫しているんだ……!

 

 

「てんめぇ~~~!!! 真堂~~~!!!」

「へ!? この声は……かっちゃん!!?」

 

 声に反応して上を見ると……鬼の形相をしたかっちゃんがこちらへと文字通り飛んできていた! 怖いよかっちゃん!

 

 

「てめえ! 人の彼女に勝手に触ってんじゃねえよ!」

「かっちゃん! これは僕が真堂さんを助けたからなの! それに今はそれどころじゃないでしょ!?」

「爆豪君、緑谷さんの言う通り今は試験中だ! 後で説明するから今は目の前のことに対処してくれ!」

「……チッ! オラ、行くぞデク!」

「う、うん!」

「戦闘可能なものは彼女達と共に奴らを行動不能にしろ! 残りは手分けして傷病者を避難させるんだ!」

 

 さすがのかっちゃんも反論せずに真堂さんの指示に従い、僕と一緒に敵役の足止めに向かう。イケるぞ、かっちゃんと一緒なら!

 

 

 ゴオオオオオ!!

 

 

 アレは火柱!? しかも螺旋状に渦巻いてる! 轟君の炎と夜嵐君の風か! ここに来て協力できるなんて! 2人ともギャングオルカの攻撃を喰らって動けないはずだから援護に行かないと!

 

「ありゃあ轟と士傑の坊主頭か!」

「うん! 2人ともギャングオルカにやられたけど、まだ意識はあるみたい!」

「チッ! 面倒かけんじゃねえよクソが!」

 

 

 かっちゃんが2人に悪態をつきながらも敵役の制圧に向かっていく。かっちゃんも大概だと思うけど……口には出さずに突出してきていた敵役をすれ違いざまに倒すとかっちゃんが上空に目を向けていて、そこには赤嶺さんの姿があった。いまだにセメントガンに狙い撃たれていて近づくのが難しそうだ。

 

 

「赤嶺ー!」

「爆豪君!?」

「てめえも攻撃手段ねえなら降りて避難の手伝いしやがれー!」

 

 かっちゃんが赤嶺さんに降りてくるよう指示を出す。確かに水を利用した攻撃手段は思い浮かばないけど、空中で敵役の注意を引き付けてるからそれはそれで役に立ってる思うけど……。

 

「……攻撃手段ないわけじゃないわよ!」

「だったらとっととやりやがれ!」

「……まったく、少しは丸くなったと思ったら全然変わらないわね!」

 

 悪態をつきながら赤嶺さんがさらに上昇する。あの位置ならセメントガンも届かないだろうけど、何をするんだろう?

 

「デク! 赤嶺のことはあいつに任せて俺達は目の前の(モブ)()るぞ!」

「う、うん! でも、本当にあんまり強くしすぎちゃダメだよ!」

「こいつらも一応プロだからその辺は容赦しねえ!」

 

 た、確かにプロだけど殺しちゃダメだよかっちゃん……。言葉を交わしながらも向かってくる敵役の攻撃を躱して次々と倒していく。セメントガンは脅威だけど銃口の向きに気を付ければ問題はない。

 

「緑谷さん! 爆豪君! 離れて!」

 

 上空から赤嶺さんの声がして上を見ると……なんだあれ!? 赤嶺さんの上に何かゆらゆら波打つ球状の……もしかして、アレ水!? あんな大量な水を落とすの!?

 

「面白れえこと考えるじゃねえか……! デク、一旦引け!」

「わ、わかった! かっちゃん、笑顔だけど怖いよ……」

 

 敵顔負けのかっちゃんの言うとおりにその場から離れると、赤嶺さんが両手を振り下ろす。すると、上空から大量の滝のごとく落ちてくる……。

 

「うおおお!?」

「マジかアイツ!?」

「うわああああああ!?」

 

 赤嶺さんの合図で僕ら以外の受験生も離れて、残された敵役目掛けて大量の水が降りかかってくる。その威力は凄まじく巻き込まれた敵役の人達はほとんどが倒れていた。やっぱりあれだけの水がぶつけられると凄いな……。それにあの量の水を短時間で集められるなんて……!

 

「よし! だいぶ片付けられたぞ!」

「残りも抑えるぞ!」

「こいつら一気に調子に乗りやがって!」

 

 

 他校の人達も赤嶺さんが大勢を倒したのを見て士気が上がったみたいだ。これで救護所の避難が完了するまで戦況を優位に進められる。

 

「緑谷!」

「尾白君!」

「怪我人の避難は済んだって! すぐ何人か加勢に来るぞ!」

「尾白! 緑谷! 加勢する!」

「よっと!」

 

 尾白君、常闇君、芦戸さん……救護所の避難に当たっていた皆も続々と来ている。これならここは大丈夫だ!

 

 後は……轟君達への援護だ!

 

 見るとまだ火柱が上がってる。なんとかギャングオルカを抑えているんだろうけど、いつまで続けられるかはわからない! 急がないと!

 

 

「皆! ここはお願い! 僕達は轟君達の援護に行ってくる! かっちゃん! 轟君達がまだあそこにいる! 援護に行こう!」

「おう! ギャングオルカ! 挑戦させてもらうぜ!」

 

 さらに1人倒したかっちゃんに声を掛けて火柱の場所、轟君達がいる場所まで走っていく。

 

 

「シャチョーの邪魔はさせん!」

「うぜえ!」

「グハッ!?」

「クソこいつら……!」

「はっ!」

「ぐわあっ!」

 

 途中で何人かをやっつけながら走っていくと……。

 

 

 キィイイイイン!!

 

 これは……ギャングオルカの超音波攻撃! マズい! 火柱が消された! 間に合え!

 

 

 ダンッ! ダンッ!

 

 僕とかっちゃんは地面を蹴ってギャングオルカ目掛けて跳躍した。今にもギャングオルカが2人に攻撃しようとした時、僕達の攻撃が届いた!

 

 

「2人から離れて下さい!!!」

「オラァ!!!」

 

 SMASH!!! BOOMB!!!

 

 僕が蹴り、かっちゃんが爆破でギャングオルカを攻撃するが、ギャングオルカは蹴りを右腕、爆破を左腕で難なく受けとめた。

 

「(僕の蹴りがあっさり……これがチャートNO.10!)」

「チッ! さすがに喰らわねえか! それでこそトップ10だぜ!」

「(緑谷、爆豪……! 敵連合に攫われ自力で脱出した2人……なるほど、面白い……!」

 

 ヒーロービルボードチャートJPのトップ10に位置するギャングオルカ……。正直、僕とかっちゃんの2人がかりでも敵うかどうかわからないけど……やるしかない!

 

 

 BEEP!!!

 

 

「!!」

 

 突然、けたたましい音が試験会場に鳴り響いた。これは……!

 

 

『えー、只今をもちまして配置された全てのHUCが危険区域より救助されました。まことに勝手ではございますが、これにて仮免試験全工程終了となります!!! 集計の後、この場で合否の発表を行います。怪我をされた方は医務室へ……他の方々は着替えて、しばし待機でお願いします』

 

 

「終わった!?」

 

 終わるまでそんなに時間ないと思ってたけど、こんなにあっさり終わっちゃうんだ! なんか……ギャングオルカと戦う気十分だったからなんか不完全燃焼かも……。

 

「ここで終わらすんか!? 最後まで戦わせろや!!!」

「か、かっちゃん! これ試験だから! 僕もちょっとは思ったけど!」

「クソが~!!!」

「そ、それより轟君も夜嵐君も大丈夫!? 怪我はない!?」

 

 まだうつ伏せで倒れたままの2人に声を掛ける。見たところ大きな怪我はしていないみたいだけど大丈夫かな?

 

「……いや、大丈夫だ。ただ、痺れて動けねえだけだ」

「俺も怪我はないっス」

「そっか、良かった……」

「おいデク! 彼氏がいるのに他の男に声かけるとはどういうことだ!?」

「試験中激しく戦闘したから怪我してるかもしれないから聞いただけでしょ!?」

「チッ! おらお前らとっとと立て! 人の彼女に色目使ってんじゃねえよ!」

「色目なんて誰も使ってないよかっちゃん……」

「お、おう。心配かけてすまねえな爆豪」

「なんかすんませんツンツン頭の人、見た目に寄らず優しいんすね!」

「お前ら耳付いてんのか!? 俺のどこが心配してんだゴラァ!」

 

 かっちゃんのツンデレかツンギレかよくわからないツッコミを聞きながら僕らは一旦着替える為にそれぞれ更衣室に向かった。

 

 

 

「どうかなァ……」

「やれることはやったけど……どう見てたのかわかんないし……」

「こういう時間いっちばんヤダ」

「わかる」

「わかりますわ。けど、人事を尽くしたのなら大丈夫ですわ」

 

 皆、試験後の独特な空気感にどきどきしているみたいだ。僕自身も精一杯やったけど合格しているか正直不安だ。でも、もう終わったことだし後は結果を受け入れるだけだよね……。

 

 

『皆さん、長いことお疲れ様でした。これより発表を行いますが……その前に一言』

 

 目良さんが合否発表を行う前に伝えたいことがあるらしい。一体なんだろう?

 

 

『採点方式についてです。我々ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる二重の採点方式であなた方を見させてもらいました。つまり……危機的状況でどれだけ間違いのない行動をとれたかを審査してます。とりあえず、合格点の方は五十音順で名前が載っています。今の言葉を踏まえた上でご確認下さい……』

 

 

 目良さんが言葉を切るとモニターに合格者一覧が表示される。皆が自分の名前の一文字目を口にしながら目を皿のようにしてモニターを凝視している。

 

「けっこう受かってるな!!!」

「あ! 私あったァ、やったァ!!」

 

 他校の生徒の人達が合否の結果で悲喜こもごもの反応を見せる中、僕も『緑谷出久』の『み』の字を必死で探す。

 

「「みみみみみ……」」

 

 同じ『み』行の峰田君とともに唱えながら名前を追っていくと……。

 

 

 『緑谷出久』

 

 

 何度も見て……そして確信する、仮免試験に合格したことを!!

 

「あった……あった! 僕の名前あった!」

 

 

 やった! ついに……ここまで来た! オールマイトからOFAを授かって約半年、まだ仮免だけどヒーローの免許取得出来たんだ! まだこれからやることは多いけど……喜んでいいよね……!

 

 

 僕が喜んでいるとクラスの皆も合格してて皆喜んだりホッと胸を撫で下ろしている。よかった、皆合格している……ん……だよ……ね? あれ? なんか、反応がない人が……。

 

 

「ねえ!!」

「……」

 

 嘘!? かっちゃんと轟君が不合格!? クラスでも実力、成績ともにトップ5に入る2人が!?

 

 かっちゃんは衝撃と怒りで信じられないような顔をしているけど、轟君は静かだ……。まるで『落ちて納得』とでも言うような表情で……。

 

「轟!!」

「!」

 

 士傑の夜嵐君が轟君を呼びながらこちらへやってきた。彼の表情から彼も不合格だったことが察せられる。

 

「ごめん!!」

 

 そう、大声で謝りながら初めて会った時と同様に地面にぶつけるほど頭を下げる。一体何が……?

 

「あんたが合格逃したのは俺のせいだ!! 俺の心の狭さの!! ごめん!!」

「……」

 

 轟君は静かに夜嵐君を見ていた、まるで何かを思い出すかのように……。

 

「元々俺がまいた種だし……よせよ。お前が直球でぶつけてきて……気付けたこともあるから」

 

 轟君と夜嵐君、2人の間に何があったかは詳しくは僕もわからないけど、2人の中で折り合いがついたのならよかったのかな……。

 

 

「轟……落ちたの?」

「ウチのツートップが両方落ちてんのかよ!」

「言動改めよ? 言葉って大事よ、お肉先パイも言ってたしさ」

「黙ってろ、殺すぞ」

「両者ともトップクラスであるが故に、自分本位な部分が仇となったわけだ。ヒエラルキー崩れたり!」

 

 ああ、上鳴君……。不合格でショック受けてるかっちゃんにそんなこと言ったら後で爆破されちゃうよ……。帰り大丈夫かな……? あと峰田君も笑顔でそんなこと言っちゃダメだよ……。

 

「デクちゃん!」

「麗日さん。麗日さんも合格だった?」

「うん! 大丈夫だったよ! でも、爆豪君……」

「うん、細かい成績まだ見てないからわからないけど、たぶ上鳴君が言ってる部分が大きいかなぁと……」

「帰りのバス大丈夫かな?」

「うん、僕もそれ思った……」

 

 麗日さんにも心配されちゃってるどうしようかな……?

 

「ねえねえ出久ちゃん!」「ねえねえ緑谷!」

 

 麗日と話していると葉隠さんと芦戸さんが心配そうな顔でやって来た。でも声と表情が一致しない……なんでだろ?

 

「爆豪君、落ちちゃったみたいじゃん」

「う、うん……そうだね……」

「あのままだとさ、帰りのバス大変じゃん」

「う、うん……そうだね……」

 

 あれ、何かこの感じ前にもあったような……?

 

「「帰りは爆豪君/爆豪と隣の席、よろしくね♪」」

「ええ!?」

「いやさ、爆豪と轟の2人だけ落ちたって、クラスの空気よくないじゃん? 轟はまだともかく爆豪めっちゃ機嫌悪いじゃん?」

「そんな傷心の爆豪君を癒してあげられるのは彼女の出久ちゃんの務めだと思うんだよね!」

「そそそそそそりゃそうだけど!?」

「お、彼女である部分を否定しなくなってきたな」

「茶化さないでよ芦戸さん……」

 

 確かにかっちゃん今は怒ってるけど、その後落ち込んじゃうだろうからなぁ……。……いつもより優しくしてあげても、いいよね……。

 

 

『えー全員ご確認いただけたでしょうか?』

 

 

 再び、目良さんが呼びかける。何か補足することがあるのかな?

 

『続きましてプリントをお配りします。採点内容が詳しく記載されておりますのでしっかり目を通しておいて下さい。ボーダーラインは50点、減点方式で採点しております。どの行動が何点引かれたか等、下記にズラーっと並んでます』

 

 

 そういって公安委員会の人達が受験生1人1人にプリントが配られていく。自分の点数を確認すると……71点。減点内容も……行動自体より行動する前に挙動とか足が止まったりするところで減点されてる。

 

 でも、妙だな。減点方式で加点はないわけで……50点未満不合格。挽回の望めないシステムなのに……何故50点を切った時点で退場なりさせず最後まで続行させたんだろ……?

 

 

『今回合格した皆さんはこれから緊急時に限りヒーローと同等の権利を行使できる立場になります。すなわち敵との戦闘、事件・事故からの救助など……ヒーローの指示がなくとも君達の判断で動けるようになりました』

 

 目良さんの言葉に手に力がこもる。確かにこれで緊急時だけだけどヒーローとほぼ同様の立場になった。でも、それは同時にその責任も負うことになる。目良さんもその注意点と心構えを丁寧に説明してくれている。

 

 

『……今回はあくまでも()()ヒーロー活動認可資格免許、半人前程度に考え各々の学舎で更なる精進に励んでいただきたい!!』

 

 そう、まだまだ半人前……相澤先生の言葉で言えばまだ『ヒヨッ子』だ。ここからさらに成長できるよう頑張らなくちゃ!

 

 

『そして……えー不合格となってしまった方々。点数が満たなかったからとしょげてる暇はありません。君達にもまだチャンスは残っています。三か月の特別講習の受講の後、個別テストで結果を出せば君達にも仮免許を発行するつもりです』

 

 目良さんの言葉にかっちゃん、轟君、夜嵐君の表情が変わる。やっぱり、すでに合格点に満たない人を残していたのにも理由があったんだ……!

 

『……学業との並行でかなり忙しくなると思います。次回4月の試験で再挑戦しても構いませんが……』

 

「当然!」

「……!」

「お願いします!!」

 

 3人の目に力がこもってる。この3人の実力なら個別テストで必ず合格できるよ! そうすればクラス全員合格……頑張れかっちゃん、轟君!!!

 

 

「やったねかっちゃん、轟君!!」

「ああ……デク」

「何、かっちゃん……」

「ダセぇとこ見せちまったな……待ってろよ、ぜってぇ合格してやるからな!」

「うん、かっちゃんならできるよ! 頑張ってね!」

「……おう!」

「おうおう、何2人きりの世界作ってんだよ! この不合格者が!」

「言葉使い直さねえ限りまた落ちるぞ!」

「うっせえぞアホ面、クソブドウ!! その仮免許燃やしてやる!」

「「ギャーやめろーーー!!?」」

 

 あはは……。でも、かっちゃん元気出たみたいでよかった……。

 

「緑谷」

「あ、轟君」

「すぐ……お前らに追いつく」

「うん、頑張って!」

「てめえ轟、デクに近づくんじゃねえ!!!」

「緑谷このジェラシーモンスターなんとかして!?」

「あ、あははは……」

「緑谷さん」

 

 すっかりいつもの空気に戻った皆を見てたら赤嶺さんに声を掛けられた。

 

「赤嶺さん……合格おめでとう」

「ええ、緑谷さんもおめでとう。爆豪君は……たぶん補習後に受かるから大丈夫でしょ」

「う、うん多分大丈夫だと思う」

「赤嶺、今回は先越されちまったがすぐに追いつくからな!」

「ええ、私もこれに満足しないで頑張るわ! 本当ならもっと話したいけどね、もう行かなくちゃ」

「そうだね……でもまたチャットで話s「あ、そのチャットに私達も参加させてよ!」

「芦戸さん!?」

「あ、いいアイデアかも! 何なら今ならビデオチャットできるからそこで女子会しちゃお!」

「ええなそれ! 赤嶺さんどうかな!?」

「面白そうね……七海と萌、他に2人いるんだけどその子達も誘っていいかしら?」

「いいよー! 他の学校の人とお話しするなんてなかなかできないからね!」

「赤嶺さん!? いいの!?」

「ええ、私は大丈夫、というかむしろ参加したいわ。緑谷さんが雄英でどう過ごしてたかとか爆豪君とどう愛を育んだのかとか♪」

「あ~でも、ビデオチャットはその~、防犯上大丈夫なのかな~? 相澤先生に許可取らないといけないんじゃないかな~?」

「ご安心を! すでに許可を取っておりますわ!」

「八百万さん!?」

 

 いつの間に!? っていうかなんでそんなに皆ノリノリなの!? 相澤先生もいいの!?

 

「まあ、2人以外合格できたし……その2人も補習後に受かるだろうからいいだろう。まあ、仮免取得のご褒美みたいに思っとけ」

「え、ええ~?」

 

 相澤先生こんなに軽い人だったっけ? なんか、面倒くさいと思ってない?

 

「ち、ちなみにいつ……?」

「「今日に決まってんじゃん!!」」

「やっぱり〜!?」

 

 

 こうして、長かった仮免試験が終わった。仮免取得できたことにホッとしつつ、帰った後の女子会を不安に思いながらも楽しみにしつつ、隣のかっちゃんをなだめつつバスの中で満足感をA組の皆と感じながら家路についた。




というわけで第62話でした! 若干つめつめでしたけど、無事終えられました♪ 赤嶺さんの戦闘描写は投稿者の技量が足りなくて上手くできませんでしたが、結構お気に入りキャラで今後も出していきたいと思うのでこうご期待です♪ それから次の話は幕間で女子会&男子会を書きたいと思うので楽しみしていただければと思います♪ 今後も頑張りますので応援よろしくお願い致します♪
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