さて、出久と勝己、他の受験生はどう動くのか。お楽しみください。
Side:Katsuki
ようやくここまで来た。
雄英高校ヒーロー科実技試験。
筆記試験は大丈夫だろう。想定していたより難易度は高くなかったから、ボーダーラインは余裕で超えたはずだ。
今日の実技試験を断トツの成績で突破する。そうすれば、入学時のクラスのランキングでも上位に位置できる。
すでに推薦入試で各クラス2名は決まっているらしいが、そいつらもぶち抜いて、卒業まで圧倒的な成績を残し続ける。そして、俺の力をあいつに見せつけてやる。
見てろよクソデク。
そう目標を再確認して、校門を通って試験説明会場の建物へ向かう。すると、目の前にここにはいないはずの見慣れた姿を目にした。
普通科を受験すると言っていたデクの姿を。
「……デク、なんでてめぇがここにいるんだ……!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Izuku
「間に合った……」
オールマイトとの特訓を終え、急いで家に帰ってシャワーを浴びて荷物をまとめて地下鉄を乗り継いで40分……。
今日僕は雄英高校ヒーロー科一般入試実技試験に挑む。
結局、オールマイトから授かった『力』を試す時間はなかった。ぶっつけ本番でやるしかない!
……それにしても、オールマイトの髪の毛飲んだだけだけど、本当に授かったのかな? なんか酸っぱい味したし……。
「おい、デク!」
聞き慣れた声が後ろからして身体がビクッとする。ゆっくりと振り返ると、そこには目を釣り上げた鬼、もとい幼馴染のかっちゃんがいた。
なんだか、いつにもまして機嫌が悪い、というか怒っているんだけどなんで!?
ぐるぐると考えている内にかっちゃんが近寄って来て左腕を掴まれた。
「てめぇなんでここにいる!? 普通科受けるって言ってたはずだ!」
しまった――――――――――――!? かっちゃんにヒーロー科受けるって言うの忘れてた――――――――――!?
いや、別に言う必要も義務もないけど、言わないとフェアじゃないと思って、前に屋上で雄英受けるって言ったけど、その時は特にヒーロー科って言わなかったかも!? なんとか誤魔化さないと!
「え、ええと、雄英って他の科も併願できるから、ヒーロー科も記念に受けることにしたんだ!」
「……記念に受けるだあ?」
実際に可能な方法だし咄嗟の言い訳としては悪くないはずだけど、それに納得いかないのか掴む右手に力が入る。
い、痛い……。
「てめぇ、ヒーロー科の実技試験で毎年怪我人が出てるの知らねえのか?」
「も、もちろん知ってるよ! でも、雄英の救護班と治療班は優秀だから怪我も治癒してもらえるって……」
「そんなこと言ってんじゃねえ! 無個性で合格する見込みゼロのお前が、なんでわざわざ怪我する危険を冒すのか聞いてんだ!」
言ってることの意味がわからない。なんでかっちゃんがわざわざ僕のことを気にするんだ。他でもない、僕に1番強く当たってきたのはかっちゃんじゃないか!
「そ、そんなの僕の勝手じゃないか!?」
「なんだと!?」
「それに、試験なんてやってみなくちゃわからないじゃないか!?」
「てめぇ……!」
お互いに興奮して言い争いがエスカレートする。掴まれた左腕の痛みに顔を顰めるが、それでもかっちゃんから目を逸らさない。かっちゃんはイライラがピークに達したのか、空いてる左を動かした。今にも個性を発動させるかもしれないと思った、その時!
「あの!」
女の子の声が周囲に響いた。声のした方を見るとボブカットの女の子がこちらを見ていた。
「試験前にイチャイチャするのはアカンと思う!!」
…………………………この子何言ってるの?
これがイチャイチャしているように見えるの?
横を見ると、かっちゃんも同じことを思ったようで呆然としていた。だけど、一瞬で我に返るとその子に向かって言った。
「ああ!? てめぇには関係ねえだろ! すっ込んでろ丸顔!」
「丸顔!?」
言われたことにショックを受けた様子だったが、頭を振って怯まずに言い返した。
「あなた、爆豪君でしょ? 前にテレビで見たことあるよ。」
「だったらなんだよ?」
「そんな有名な人が試験前に騒ぎ起こしたらいろいろマズイんとちゃうの?」
そう言われて周りを見ると、さっきから遠巻きに他校の受験生がこちらをジロジロ見ていた。
ヤバい……、悪目立ちしちゃってる。みんななんかヒソヒソしゃべってる。
「…………チッ!」
「わわ!?」
かっちゃんが舌打ちをして右手で掴んでいた僕の左腕を乱暴に離すと、僕はバランスを崩して転びそうになる。すると、丸顔と言われた女の子が咄嗟に僕を支えてくれた。
「ちょっと! 女の子に何すんの!?」
「うっせぇ、黙ってろ! おい、デク! 試験終わったら待っとけよ!」
そう言って、僕の返事を待たずにかっちゃんは大股で校舎に向かっていった。
「はあ〜〜〜〜〜、なんなんあの人!? 初対面の私に丸顔って!」
そう憤っていた彼女の顔を見るが、……失礼だがかっちゃんが言った『丸顔』という表現はあながち間違っていないと思ってしまった。
かっちゃんって、その人の特徴に合った的確なアダ名をつけるよね、それこそ『デク』とか。
「ごめんね。かっちゃん、誰に対してもあんな感じだから」
「かっちゃん!? あの傍若無人にちゃん付け!? え、もしかして本当に痴話喧嘩でイチャついてたの!?」
「いやいや!? 痴話喧嘩だなんて!? 幼馴染だから、未だに愛称呼びが抜けないだけで」
「幼馴染!? あんな人と幼馴染って凄いね……」
「あはは、最近よく言われるよ……」
見ず知らずの人にも言われてしまった。本当、第一印象が悪すぎるよかっちゃん。
「試験前にゴタゴタがあると集中できないよね。緊張するけど、頑張ろうね」
「う、うん」
そう言って丸顔の彼女は手を振りながら、校舎に向かっていった。
「あ、名前聞くの忘れちゃった……」
聞いておけば良かったと思いながら説明会までの時間があまりないことに気付いて、校舎に足早に向かった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
説明会の会場である大講堂では何百人もの学生が集まっていた。トップヒーローになるべくヒーロー科進学を目指す受験生にとって、雄英高校ヒーロー科が最難関と言われる一端が現れていた。
「今日は俺のライヴにようこそ―――――!!! エビバディセイヘイ!!! (ヨーコソー)」
シー――――――――――――――――ン
サングラスに金髪を逆立てパンクロック風の服を身に纏ったヒーロー、プレゼントマイクの司会で説明会が始まる。緊張のためか、それともプレゼントマイクのテンションについて行けないのか、受験生からの反応はなかった。
「こいつあシヴィー――!!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!? YEAH!!!」
シー――――――――――――――――ン
やはりテンションについて行けないだけだったようだ。普段だったら、ヒーローの登場にテンションの上がるはずな出久も静かにしているが、その理由は別にあった。
「(さっきからかっちゃんが無言で睨みつけてきて怖い……)」
先ほどの出来事のせいか、隣の席に座っても出久を問い詰めることはしなかったがその代わりとばかりに射殺すのではというほどの視線を出久に向けていた。
「(キツいこと言われることが多かったけど、何も言われないのもこれはこれでキツい……)」
説明会はプレゼントマイクのテンションとは裏腹に普通の内容でつつがなく進んでいった。一通り説明が終わったところで眼鏡をかけた男子学生が手を挙げた。
「質問よろしいでしょうか!?」
男子学生は質問を一息でつらつらと挙げていった。口頭による仮想敵が三種類、プリントに記されているのが四種類と数が異なるとのことだ。
「オーケーオーケー。受験番号7111くん、ナイスなお便りサンキューな! 四種目の敵は0P! そいつは言わば
試験会場で受験生を妨害するポイントの付与されない、
「俺からは以上だ!! 最後にリスナーへ我が校『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!」
プレゼントマイクの言葉に受験生全員の気が引き締まる。ついに雄英高校の実技試験が始まるのだと。
「『PLUS ULTRA』!! それでは皆、よい受難を!!」
「広っ!?」
敷地内にある幾つもの試験会場に案内された受験生は皆同じ感想を抱いた。普段は訓練に使われているだろう市街地を模した訓練場も雄英高校ヒーロー科が最難関、最高峰であることを示していた。
受験生達は各自が準備したコスチュームや道具を身に着け、試験開始に備えていた。出久は学校指定のジャージをに着替えて手持ち無沙汰気味に周囲を見渡していたが、勝己に絡まれた際に助けてくれた女子が目に入った。目を瞑り気を落ち着かせているようだった。
「(あの子だ。そういえば、さっきお礼言えてないし名前も聞けてなかったな、よし!)」
お礼と挨拶をしようと近づこうとしたとき、急に声をかけられた。
「その女子は精神統一を図っているんじゃないか?」
強い口調で言われて出久は身をすくめながら振り返る。見ると先ほどプレゼントマイクに質問していた眼鏡の男子学生だった。
「(うわ、おっきい! 180くらいあるんじゃないかな?)」
「君は妨害目的で受験しているのか? そういえば、先ほど校舎に入る前に男子学生とも言い争っていたな? 試験前に痴話喧嘩なんて真面目に試験を受ける気があるのか?」
「ち、痴話喧嘩なんて!? 僕とかっちゃんはそんなんじゃ……」
「ハイスタート!」
「……ん?」「え?」
「どうしたあ!? 実戦じゃカウントなんざねえんだよ!! 走れ走れぇ!! 賽は投げられてんぞ!!」
「ええ!?」
実技試験は唐突に始まった。
――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Izuku
そんな!? 出遅れた!
他の受験生達が一目散に走っていく。すでにあちこちで仮想敵が破壊される音が聞こえてくる。
落ち着け! 大丈夫! 僕ならやれる! 僕はなるんだ!
僕にはオールマイトがついているんだ!!
「よし! 食ったな! 毛!」
……食べました。食べましたけども。
いくら憧れのオールマイトでも、さすがに髪の毛を食べるのは少し、いやかなり抵抗はあった。それでも食べないと話が進まないから仕方なく食べたけど。
「何の変化も感じませんけど……」
「そりゃそうさ!! 君胃腸を何だと思ってる! 消化吸収には時間がかかるもんだよ! まあ2〜3時間もすれば実感湧くさ」
「ああ〜、緊張する〜。早く帰ってシャワー浴びてご飯食べて……」
今が朝6時だから帰るのに30分、シャワーと着替えにに15分、朝ご飯に5分、それからそれから……。
「緑谷少女。」
「は、はい! なんですか!?」
「『器』は成したが……それはあくまで急造品の『器』。慣らし運転も出来なかったからな……。肉体への反動は覚悟しておくように」
「……はい」
「細かな説明をする時間はないからこれだけ……。『
「……わかりましたけど、ケツの穴とか言うの恥ずかしいのでやめてください……」
オールマイトから授かった個性、OFA。あの超パワーなら仮想敵くらいわけないけど、一度も使えてないから上手くパワー調整できるかどうか。とにかく、早く見つけないと。
ドー――――――――――――――――――ン
大きな音を立てて、仮想敵が姿を表した。資料に記載されていた情報からその仮想敵が1Pであることを思い出す。まず手始めにこいつからだ!
「標的補足!! ブッ殺ス!!」
なんて物騒なこと言うんだ!?
落ち着け! 以前ヴィランと対峙した時みたいに相手の視線をよく見て……。
しまった――――――――!
あれは対ヴィラン、生身の人間だったから有効だっただけで機械の仮想敵には通じない! ど、どうしよう!?
「ブッ殺ス!!」
「うわあ!?」
ブン! ドガァァァン!
ヤバい! 機械相手の対策なんてまだナイトアイさんに習ってない! どうしたら……!
「据え膳!!」
ブゥゥ――――――ン!!
「な、レーザー!?」
仮想敵横取りされちゃった!
「メルスぃ! 良いチームプレイが出来たね! 君みたいな可愛らしい
「な、僕のこと可愛らしいってそんなはずかし……じゃなくて二度と会わないって……」
「あと6分2秒〜」
マズい!? まだ1Pも取れてない! このままじゃ何もできずに不合格になっちゃう! 早くなんとかしないと!
そう思って仮想敵を見つけるために動き出そうとした時。
ドォォォォォォォォォン!!!
とんでもない大きさの機械、超大型の仮想敵が全てを破壊しそうとこちらへ向かっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
試験が行われている訓練場から離れた建物の一室では多数のモニターが設置され、受験生1人1人の動きがチェックされていた。
「この入試は
試験の様子を見ながら、審査員が言葉を発する。
「限られた時間と広大な敷地……そこからあぶり出されるのさ。状況をいち早く把握するための『情報力』、遅れて登場じゃ話にならない『機動力』、どんな状況でも冷静でいられるか『判断力』、そして純然たる『戦闘力』……」
「市井の平和を守る為の
「今年はなかなか豊作じゃない?」
「いやー、まだわからんよ。真価が問われるのはこれからさ!!」
審査員の1人、トップであろう人物がおもむろに警告を示す黄色と黒のラベルに囲まれたボタン、『YARUKI SWITCH』を押した。その瞬間、説明会でプレゼントマイクが言及した
「圧倒的脅威、それを目の前にした人間の行動は正直さ……」
先ほどまで仮想敵を倒すべく動き回っていた受験生達は今は我先にと0P敵から逃げ出していた。
そんな中1人の受験生、出久を助けた女子学生が崩れた瓦礫に足を挟まれ動けなくなってしまう。そんな彼女を助けようとする者は誰もいなく、0P敵に踏み潰されるまでもう後わずか。
「メリットは一切ない」
その瞬間。
「だからこそ色濃く浮かび上がる時がある」
1つの影が彼女を救わんと0P敵に猛然と飛びかかっていった。
「ヒーローの大前提!! 自己犠牲の精神ってやつが!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Izuku
「シャレにならない! 逃げなきゃ!! 逃げつつPを……!」
マズいマズいマズい! まだ0Pだ!! このままじゃ無駄になっちゃう!!
オールマイト、ナイトアイさん、皆がくれた
「いったぁ……」
逃げようと超大型仮想敵に背を向けたとき、誰かの声が聞こえた。振り返ると、さっきの丸顔の子が倒れていた!
瓦礫に足を挟まれてる!
後ろには仮想敵が迫っていて、今にもその子を踏み潰そうとしていた。
それを見た瞬間。
身体が勝手に動いた。
『ケツの穴グッと引き締めて心の中でこう叫べ!!!』
足に力を込め、強く蹴り出す。普段とは比較にならないほどの跳躍をしながら、右腕に意識を集中させる。
「
ドガァァァァァァァァァン!!!
「おおおおおお!!?」
右腕を振り抜くと、超大型仮想敵が物凄い勢いで飛んでいった。
……凄い。これがオールマイトの、僕が授かった『
……いた、痛い!!? 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!? なんで!?
痛みのする場所を見ると右腕と両脚が完全に折れてプラプラしてる。
これ粉砕骨折してるかも。痛みが酷いのに何故か頭が冷静になってる。
オールマイトの言ってたとおりだ。『急造品の器』に辛うじて収まっただけだったんだ! 慣らし運転もできずに全力を出せば、こうなるのは当たり前だ!
「う、……うぷ!?」
強烈な痛みから来る吐き気を無理矢理抑える! マズいマズいマズい! 右腕と両脚が折れてるから後は左腕だけ! でも、左腕を潰して着地してももう動けない!
もう……合格は絶望的!!
「うわあああああ!!!」
バチン!!
「!!?」
落下する僕の顔を誰かが叩いた。
さっきの子!? なんで!?
疑問に思った瞬間、浮遊感を感じ落下速度が遅くなった。そのままゆっくりと地面に腹ばいのまま着地した。
彼女も仮想敵の瓦礫に乗ったままなんとか着地し、何らかの限界を迎えたのか嘔吐し始めた。
あの子の個性? 何にせよ無事で良かった! そして、助けてくれてありがとう!
「な、なんとか! せめて1Pだけでも……!」
「終〜〜〜〜〜了〜〜〜〜〜!!!!」
無情にも試験終了のアナウンスが会場中に響き渡り……。
その絶望感からなんとか痛みに耐えていた意識は限界を迎え、胃の内容物を吐きながら僕は気を失った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「あいつ、何だったんだ……?」
試験終了後、右腕と両脚を骨折し気絶した出久を見ながら受験生の1人が呟くと、他の者も出久のことを話していった。
「いきなり『ギミック』に飛び出したりしてさ……」
「増強型の個性だろうけど、……規格外だ」
「けど、あんな個性持っておいて、どういう生き方したらあんなビクビクできるんだ?」
出久の第一印象と個性のギャップについて口々に自身の推測を語っていた。その会話から少し離れた場所で眼鏡の男子学生、飯田天哉は彼らとは異なる視点で分析していた。
「(そこじゃないだろう、見ていなかったのか!? 彼女はあの女子を救わんと飛び出したんだ!!)」
残り時間や取得P、自身の安全を度外視して女子学生を助けた出久の行動に飯田は驚愕していた。
「(試験という場でなかったら当然!! 僕もそのようにしたさ!!! ……おや!? 試験……
飯田が1つの結論に達した時、1人の声が会場に聞こえた。
「はいお疲れ様〜。はいはいハリボーだよ、ハリボーをお食べ」
白衣を身に纏った小柄な女性、老婆が海外のお菓子を受験生に配りながら歩いてきた。
「あのマドモアゼル、雄英の『屋台骨』だ」
「……?」
金髪にフランス被れの気障な男子学生、青山優雅はその老婆を指してそう述べたが、他の受験生は意味がわからない様子だった。老婆、雄英高校の看護教諭『リカバリーガール』は出久に歩み寄り、彼女の様子を見ながら独り言ちた。
「自身の『個性』でこうも傷付くかい……。まるで、身体と『個性』が馴染んでないみたいじゃないか?」
そう言いながら、出久の方へ屈むと周囲が驚く行動を取った。
「チユ〜〜〜〜〜」
リカバリーガールの口元が伸び、出久にキスする形になった。しばらくすると、出久の傷付いた身体、右腕や両脚がみるみる内に治っていった。
「あの人の『個性』は『治癒力の超活性化』。雄英がこんなムチャな入試を敢行できるのも、彼女に依る所が大きいみたいだね」
青山の説明に先ほどは要領を得なかった受験生も納得の表情を浮かべた。この個性があればどれだけ大怪我を負ったものでも治療することができる。もちろん、全くリスクがないわけではない。
「これだけの大怪我じゃしばらく目を覚まさないだろうね。この子を医務室に運んでおやり。さあ、ちゃっちゃといくよ。他に怪我をした子は?」
リカバリーガールの指示でロボットが操作する担架に乗せられた出久は医務室へ運ばれることとなった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
Side:Katsuki
実技試験は問題なく終わった。全員分は確認できてねえし他の会場のことはわからねえが、俺が取得した敵撃破75Pを超える奴はそうそういないはずだ。まず、間違いなく合格だろう。
……あとはクソデクだ。鈍臭くて弱っちい癖に、俺に反論しやがって……! 弱え奴がいきがってんじゃねえよ!
……そういえば、俺達のところでは出なかったが、他の試験会場ではめちゃくちゃデッケぇ仮想敵が出たとか言ってたな。どんなもんか見てみたかったが、出なかったもんはしょうがねえ。まあ、あのバカも流石にそんなもん出たら一目散に逃げただろう。
……それにしても遅え。一体どんだけ待たせやがるんだ、クソデク! ……まさか、俺が待つ前にもう帰ったのか!?
そう思っていると、
「……そういえば、説明会で話のあったステージギミックの仮想敵、あれに向かっていった奴がいたみたいだな。」
「マジで? そんな命知らずの野郎がいるんだな。んで、そいつどうなったんだ?」
「野郎じゃなくて、女子だったらしいけどな。なんでも、めちゃくちゃな大怪我してたみたいだけど、雄英の教師が個性で治療したらしいぜ。」
……命知らず、女子、大怪我。
まさかとは思うが、あいつならやっぱりやりかねねえという考えに至り、俺はそのモブに話しかけた。
「おい」
「あ? なんか用、って確か折寺の爆豪!? なんだよいきなり!?」
「いいから答えろ。さっきの話してた大怪我した奴、今どこにいる?」
「く、詳しくは知らないけど、気を失ってたみたいだから今は救護室にいるんじゃないか?」
「……チッ!」
モブどもから話を聞き終えて、俺は校門から校舎へと引き返した。
校舎に入って救護室を探すが、なかなか見つからねえ。違う階かと思って階段を上がろうとした所で白衣を来た小柄なババアを見かけた。こいつならなんか知ってるかもしれねえ。
「おい、婆さん。ちょっと聞きてえことがあるんだが」
「おや、あんたは?」
「今日入試受けた受験生だ。大怪我した女子生徒がいるって聞いたんだが? ボサボサ髪にそばかすのだっせえ女だ」
「ああ、あの子なら今休んでるよ。あれだけの大怪我を治すにはえらい体力が必要でね。まだしばらくは目を覚まさないと思うよ。あんたはあの子のこれかい?」
そう言ってニヤニヤしながら小指を立てる。
……脳みそ腐ってるのかこのクソババア!
「……同じ中学校の同級生っす……」
「おやそうだったかい。いつ起きるかわからないからあんたは先に帰りなさい。あんた、名前は?」
「……爆豪、勝己っす」
「うんうん、私から伝えておくさね。今日はお疲れ様。まだ結果はわからないけど、運が良かったら4月にまた会おうな」
「……わかりました、それじゃあ俺はこれで」
婆さんにそう言って、俺は雄英高校を後にした。
せっかく個性を思う存分発揮して気分はスッキリしていたはずなのに、クソデクとクソババアのせいで訳の分からないモヤモヤを抱えながら俺は家路についた。
ようやく入試編終わりました。毎度のことながら、予想した文量を超えるのはなんでなんですかね?全く書けないよりはマシなんでしょうが。
もう少しで高校編に入りますね。ここからさらにキャラクターが増えて大変だと思いますが、読者の皆様に楽しんでいただけるよう頑張りますので応援よろしくお願い致します♪