魔法少女育叡計画 scientia est potentia 作:pseudok
第1話 マジカルリボルビング払いショッピング詐欺ロイド44
◇マジカロイド44
心が膿んでいる。機械の体を手に入れて生まれたのはそんな感覚だった。
真琴は枕の柔らかさを頭に感じながらスマートフォンのロックを解除し、暇潰し用の適当なニュースサイトを開いた。無数に並ぶ記事の中でも特に世間の注目度が高いのは、誰だか知らない人が差別的な発言をしただの、季節を売る女が増えているだの、有り体にいえばろくでもない系統のものだ。記事自体もそれを批判する行為にも等しく価値を感じない。
真琴は悪を糺そうなどという正義感を持ち合わせていない。拡声器片手に世界をアップデートするため立ち回るなど、それこそ絶対にやりたくない。自分自身が世のため人のために活動すると噂の魔法少女になってからも、その信念に変わりはなかった。
スマートフォンの時刻表示が一桁減ったのを確認して、真琴は起き上がりベッドに腰掛けた。一呼吸置いてから、未来のロボット風魔法少女──マジカロイド44に変身する。
最近の楽しみといえば専らこれだ。マジカロイド44の魔法は、四億四千四百四十四万四千四百四十四種類の未来の便利な道具の中から、一日につき一つをランダムに入手できるというものである。大半はなんの役にも立たないガラクタだが、道具の作動原理自体は魔法少女の魔法らしく、物理法則を超越したものが多い。必ず一日で壊れるとはいえ金策に使えるようなものが出る可能性もあると考えると、なかなかに射幸心を煽られる。
早速ウェポンラックに手を入れて取り出したのは、数百錠のカプセル薬らしきものが入った瓶だった。同時にマジカロイド44の脳内に道具の説明が浮かぶ。
──「頭が良くなる薬」。一錠飲むごとにIQが一上昇するが、効果があるのは一日一錠まで。
マジカロイド44は気休め程度とは思いつつもカプセルを一錠口に含んで飲み下し、その時点で無用の長物と化した薬瓶の利用方法を求めて他の魔法少女の顔を順々に思い浮かべた。薬の効果が出たのかどうかは定かでないが、ちょうど知能を渇望しそうな魔法少女に思い当たり、更に最大限金を絞り取れそうな方法もすぐさま組み上がった。
奪うのは好きでも嫌いでもない。ただ強ければ奪えるし弱ければ奪われる、シンプルでわかりやすい世界観は好きだ。一見不公平なようで、その実公平だからだ。そしてマジカロイド44は新たに手にした強者としての立場を手放すつもりなど毛頭ない。そうなれば必然奪う側に立つ機会が増える。
マジカロイド44は硬質な金属性の胸を撫で、肥え太った心の膿に鈍痛を与えた。奪うことで膿は膨らみ続けるのか、いつか破裂して汚濁した体液を撒き散らすのか、どちらだとしても結果を不満に思うことはないだろう。やりたくないことを絶対にしない人生とは、きっとそういうものだ。
◇◇◇
マジカロイド44は、犬耳フードの魔法少女──たまを人知れぬ廃ホテルに呼び出していた。
脅して呼びつけたわけでもないのに、たまは体を縮こまらせて妙にびくびくしている。いかに相手の心の障壁を取り除き、隙に付け入れるかが商談の肝だ。緊張をほぐすためにも、可能な限り友好的な態度で接することを心掛けなくてはならない。
部屋はベッド以外のスペースが広めに取られており、ランクはスタンダードより少し上といったところだろうか。壁紙は所々剥がれ、剥き出しのマットレスもボロボロになってはいるが、幸い窓際に放置されたアームチェアと丸テーブルは朽ちていない。マジカロイド44は表面の埃をさっと払い、そこを商談の席として示した。
席についた二人の姿を照らすように、窓からは朝の陽射しが差し込んでいる。
「今日はたまさんにピッタリの商品をお持ちしているのデス」
「え! 本当……?」
「ちゃちゃちゃちゃっちゃちゃーん。『頭が良くなる薬』デス」
「わっ……!」
マジカロイド44がいかにもロボットらしい手つきでラックから取り出した薬瓶をテーブルの上に置くと、たまの視線はそこに釘付けになった。想定通りの反応だ。
「これを飲むと一日一錠につきIQが一上昇するのデス。つまり百日百錠飲めば誰でも、あのアインシュタインを超える大天才になれるのデス」
「あいんしゅたいん……? って誰?」
早くも想定外の反応が現れ、出鼻を挫かれる。だがまだ修正は難しくない。
「アインシュタインは相対性理論を提唱した天才物理学者デス。知らないのデスか?」
「うーん……聞いたことあるかも……?」
「別に誰でもいいデス。ノイマンでもガリレオでもニュートンでも」
「ヴェーゲナーにもなれる……?」
「ヴェーゲナー……?」
「パンゲアの……」
「あー……」
正直こちらの方がよほど「聞いたことあるかも……?」だったが、アインシュタインを知らないやつに対して同じ返しをするのはあまりにも癪なので飲み込んだ。そんなマイナーなやつに憧れるな。
「私が賢い学者さんになったら、みんな尊敬してくれるかな……?」
「それはもう、ジャンジャンバリバリ尊敬されちゃうデス。そんな学者になれるお薬がなんと──」
「なんと……?」
期待感を煽りながらたっぷり間を作る。たまの表情を随時確認しつつ、興味の持続可能範囲とじれったさを感じ始めるラインの限界を見極めるのが肝要だ。
「なんと! 今なら一日一杯のコーヒーを我慢するだけで買えちゃうのデス!」
「コーヒーは苦いから苦手だにゃ……ミルクでもいい……?」
「……もちろん、ミルクでもジュースでも、好きに我慢してくれていいデス」
「あっ……飲めなくなっちゃうのかぁ。それは困るかも……うーん」
こいつ……思ったよりやべぇやつなのでは? そんな疑問が鎌首を擡げ、マジカロイド44の「やりたくないこと」センサーが少しだけ反応した。
しかし、得られるリターンのことを思い出し、ギリギリのところで疑問を押し殺す。相手に合わせて演じるのは得意だ。もう少しチューニングを合わせればなんてことはない。
「我慢なんてしなくていいデス! 飲みまくるといいデス!」
「えっ」
突如として声高に叫び出したマジカロイド44に対し、たまはびくりと体を震わせて口許を大きな犬の手で覆った。だが問題ない。そのまま畳み掛ける。
「百円デス! たったの百円を! マイニチ支払うだけで! たまさんは天才学者となり薔薇色の人生を送れるのデス! 百円デス!」
「百円……ならお得かも」
「はい、お買い上げありがとうございますデス」
「う、うん」
やはりなんの問題もなかった。むしろこれまで駆使した細かいテクニックなど全て必要なかった。たまのような気弱いタイプに対しては渾身のゴリ押しこそが正着になるのだ。
「ではこちらの契約書にサインと、こちらの決済アプリをインストールして口座情報と暗証番号を入力するのデス。ワタシのアプリと通信すれば登録完了デス」
「えっ? 百円玉なら今持ってるけど……?」
たまは懐からマジックテープ付きの財布を取り出してみせた。小銭入れの部分がやたらと膨らんでいる。
「形式上のものデス。マジカロイド44のマジカルショッピングは明朗会計をモットーにしているのデス。たとえ少額でも間違いのなきようという誠実さの表れデス」
「でも、契約とかよくわかんないよ……」
仰々しい書類手続きに対し、たまは怯懦の姿勢を見せている。だがこれも問題ない。一度でも購入の意向を示した時点で決着はついているのだ。相手に対する後ろめたさを超えて自らの決定を覆す勇気など、到底持ち合わせていないだろう。
「大丈夫デス。一応契約書には目を通してもらって、あとはこちらの見本の通りに書くだけデス」
「その……難しい漢字や言葉が苦手で……ごめんなさい……」
「たまさん」
「はい……?」
「『魔法少女育成計画』のアプリを初めてインストールした時、ながーーーーーーーい利用規約が表示されたデスよね?」
「うん」
「全部読んだデス?」
「あれって読む人いるの……?」
「そういうことデス」
「どういうこと?」
「そういうことデス」
「そういうこと……?」
「そういうことデス」
「そっかぁ……」
「あと、一応これも渡しておくデスね。人によっては必要ないのデスが、たまさんの場合はおそらく……」
マジカロイド44は契約書の二ページ目を取り出し、テーブルの上を滑らせた。たまは一ページ目に関しては初めから読むことを諦めていたが、比べて文字数の少なさを見て取ったか、ゆっくりと文章に目を通す。
「えっと、これは、必要……かな」
「確認しておいてよかったデス。それとこれはここだけの話なんデスが……ちょっと耳を貸すデス」
口角に手を翳しながらテーブルへ身を乗り出すと、たまもそれに応えて耳を傾けた。
「ゴニョ……が……ゴニョ……なので……ゴニョ……デス」
「あ! そっか……そうだよね。危ない危ない。魔法少女やめさせられるところだったよ……。ありがとう」
礼をいうたまは屈託のない笑顔を浮かべている。マジカロイド44をなにからなにまでしてくれる「良い人」だと、心底から信じているのだろう。
「いえいえ。それでは、よしなにデス」
マジカロイド44が返した笑顔はきっと屈託している。それでもたまはマジカロイド44のことを微塵も疑っていない。
「うん、百日後が楽しみだにゃ」
薬を百錠飲んだ程度でどうにかなるとも思えない、救いようのない頭の悪さには哀れみすら感じる。しかしマジカロイド44が彼女を救わねばならない義理など一切存在しない。そんなことはやりたくない。
マジカロイド44は金属の胸をそっと擦りながら、たまの後ろ姿を見送った。
◇ルーラ
ルーラ、スイムスイム、たま、ミナエル、ユナエル、都合五人の魔法少女は徒党を組み、王結寺を根城として活動している。チームを結成して間もない頃は、ルーラの放つ威厳に気後れしていたか、メンバー内での会話も少なかった。
しかし、今は違う。その日の魔法少女活動を終え、リーダーであるルーラが解散を宣言した後も、すぐ帰宅せずしばらく駄弁るのがチームの習慣になりつつある。各人の私物の持ち込みが増えたために、居心地の良い空間が形成されているのが原因らしい。この時間がチームの結束を高めるとして放置するか、風紀の乱れとして活動時間外の行為も取り締まるか、リーダーとしての手腕が問われるところだ。現状は直接翌日への悪影響が出ない限りは不問としている。
「ユナミナエルちゃん、この瓶の中の薬知らない……?」
「薬? 十日ぐらい前に見た覚えはあるけど」「一週間ぐらい前にもう空瓶じゃなかった?」
「もしかして飲んじゃった……?」
「飲むわけないよね。『頭が良くなる薬』なんてラベルの怪しい薬」「内蔵とかドロドロに溶けそう」
「おかしいなぁ……まだ一個しか飲んでないのに」
「飲んだんだ。ヤバすぎ」「効果ゼロだったってことじゃん」
「百個ぐらい飲まないといけないんだけど、後回しにしてるうちに忘れちゃってて……」
「馬鹿に付ける薬はないってのはこのことだね」「お姉ちゃんそれマジ言い得て妙」
「うぅ……だってカプセル飲むの苦手なんだもん……」
「底に溶け残りみたいなのあるよ」「保管方法が悪かったんじゃないのー? 温度とか直射日光とか」
「そうなのかなぁ……」
「たま、それどこで手に入れた?」
遠巻きにぼんやり会話を聞いていたルーラは、内容にわずかな引っかかりを覚え、横槍を入れた。
「あっ、マジカロイドさん、が売ってくれて……すっごい安くて百円で……」
ルーラとしては純粋に疑問を呈したつもりだったが、たまは言葉の内に潜む棘に過敏に反応したのか、既に怒られている時のような怯えを見せている。
「へえー良心的価格」「商売人の鑑やね」
あの金にがめついことで知られるマジカロイド44が、そんな商売をするだろうか。
「本当に百円以外なにも渡してないの?」
「うん……。というか……口座振替? で払ったから百円も直接渡してなくて……よくわからないけど……」
ルーラの嫌な予感は加速していく。
「口座振替なら、逆にこちらが受け取ったものがあるでしょう。見せなさい」
「あの紙のこと……?」
たまは近くに置かれた鞄の中から一枚紙を引っ張り出してきた。
「必要だと思ってなくて……失くしてなくてよかったぁ」
受け取ったルーラはしわくちゃになった紙に書かれた文言を熟読した。
あらかたの内容を把握した後、哀れなものを見る目でたまを見、大きく溜息を吐いた。
「十五万円」
「……?」
「その薬の価格」
「えっ? でも百円って……」
「百円は一日当たりの支払額ね。月当たりだと三千円。そこに法定金利ギリギリの年十八パーセント金利がついてるから……初月は三千円払っても元本が八百五十円ぐらいしか減らない。最終的な支払回数は九十四回で合計額は二十七万九千円」
「えっ? えっ……?」
「馬鹿! 要は詐欺られたのよ。あのクソロボットに」
「百円が二十七万円って、マジカロイドパネェッ!」「マジ詐欺カロイドじゃん!」
未だ状況が飲み込めていない様子のたまを差し置いて、ピーキーエンジェルズはたまの周りを煽るように旋回しながら、キャッキャと騒いでいる。
「軽々しく契約書にサインなんてするんじゃないっての。高い勉強代だけど、これに懲りたら二度と変なものに手を出すんじゃ……あっコラ待て!」
たまはルーラの説教を無視して突然外に飛び出したかと思うと、寺の床下でなにかをひっくり返すような大きな音を立て、その後大量のガラクタを抱えて戻ってきた。
「あの……他にもいっぱい買っちゃったんだけど……」
「こンのおおおおおぉぉぉぉぉド阿呆ぉ!」
ルーラはひとしきり怒鳴ってから、床にばら撒かれたガラクタの一つ一つを検めた。ヘッドセット、ゴーグル、ブラシ、枕、ガラスケース、謎の箱、謎の機械の計七つ。
更にたまが鞄から取り出した追加の契約書が九枚。そこに書かれた商品名を一つ一つ読み上げていく。
「『銀河間超光速ロケット』」
「宇宙旅行できたら楽しいかもって思ったけど、間違って乗る前に飛ばしちゃった……」
「『無限ハンバーグ生成ボックス』」
「あのハンバーグおいしかったなぁ……。三回食べたら取り出し口が詰まっちゃったけど……」
「『時間超越通信機』」
「過去や未来のランダムな通信機に繋がるとか……。言葉が通じないことが多いから飽きちゃって……」
「『各種センサー付きゴーグル』」
「いろんなステータスがハートの数で見れて面白かったけど、いつの間にか割れてるから、落としちゃったのかも……」
「『どこでも安眠枕』」
「最初使った時はすぐ眠れて、すごく元気になったけど、次の日からは普通の枕みたいになっちゃって……。慣れちゃったのかな……」
「『動物用全言語翻訳機』」
「動物とお話できたら楽しいかなって思ったけど、人間の言葉にはしてくれなくて……。近所の犬と猫にあげたら仲良くなってたよ」
「『高速量子暗号解読機』」
「なぞなぞの問題を代わりに解いてもらおうかと思ったけど、そういうことじゃないみたい? このパーツは最初からくっついてなかったかな……?」
「『マクスウェルズデーモンマシン』」
「ぬるいお茶を熱いお茶と冷たいお茶に分けられるとか……便利かと思ったけど、時間がかかるし、よく考えたら冷蔵庫とレンジでいいかなって……。あれ……? これもいつの間にかヒビが入ってる」
「『マジカルヘアブラシ』」
「ちょっとおしゃれしてみようかなって……えへへ。すごく髪がツヤツヤになったよ。力入れすぎたみたいですぐに折れちゃったけど……」
「……全部壊れてるか失くすかしてるじゃない」
「そういえばそうだけど……でもこの『時間超越通信機』は動くよ。ほら」
たまはヘッドセットのようなものを頭に装着し、電源を入れた。
「もしもーし、聞こえますか……?」
“なにをしているのかな?”
開放型のスピーカー部分から、低音質かつ小音量ながらもこの世のものとは思えないほど甘く、可愛らしく、愛らしい声が聞こえ、ルーラはその崇高なる存在の前に跪き、崇め奉りたいと心の底から思った。声が止むと同時に自分の思考を客観視し、その狂気に吐き気を催した。
「わっ、日本語……。えっと、こちらはたまです……そちらは西暦何年ですか?」
「いきなりそんなこと聞かれても困るよね」「迷惑すぎんよ」
"レーテ敗北。遺跡前の広場はプク派が制圧"
「えっ、なんか血吐いてない?」「マジ生命の危機じゃん」
"プク・プックが……これより遺跡に入る"
その時、突如としてヘッドセットから出ていた音が狂ったように乱高下したかと思うと、スピーカー部分から白煙が上がった。
「熱っ!」
たまが放り投げたヘッドセットは壁にぶつかるまで転がり、断末魔の超高音を発してから、完全に沈黙した。
しばしの静寂の後、たまとピーキーエンジェルズは「レーテ」「プク・プック」「遺跡」などの単語の意味について、喧々諤々の議論を始める。最初の声については「すごく可愛かった」程度の感想しか出ていない。自我が侵食されるという異常事態に気付いたのは、常日頃から他人を見下し、拒絶しているルーラだけのようだ。ルーラの魔法を考えれば、精神操作系の魔法も当然存在し得る。
だが、有り得ない。声を聞くだけ、しかも通信機越しで……。
ルーラは目を瞑り、頭を大きく振った。
「話を戻す。以後さっきの通信内容に関する話は一切禁止」
「盛り上がってきたところなのに!」「横暴だー!」
床板を破る勢いで王笏を足許に叩きつけた。
「……文句ある?」
「いえ……」「ないです……」
「スイムスイム、今何時何分?」
興味なさげに魔法の端末を眺めていたスイムスイムが、ルーラの声に反応する。
「……〇時五分」
「たま、これ買ったのはいつ?」
「今朝だけど……」
「ぴったり一日で壊れてんじゃない!」
「えっ? でもっでもっ」
「いい加減理解しろクソ馬鹿ド間抜け。騙されたんだって」
「そんなぁ……」
ルーラは頭を抱えながら全ての契約書に目を通し、商品名以外は同じ文面であることを確認した。
「一個十五万の商品が十個で百五十万。それに金利分も合わせて合計支払額は二百七十九万」
「三百万!? そんなの払えないよ!?」
「全額払えなくても口座にお金が入っている限りは自動で月三万引き落とされ続ける」
「そこまでやるかあいつ」「流石にドン引きだわ」
たまはしばし呆然と立ち尽くした後、不意に大粒の涙をポロポロと零し始めた。
「……うっ……ひっく……おばあちゃんからもらったお小遣いとお年玉、将来のために取っておきなさい、っていわれたから大事に貯金してたのに……なくなっちゃうの……?」
先程までたまを煽っていたピーキーエンジェルズも、神妙な面持ちでお互いの顔を見合わせた。
「ちょっと可哀想になってきたかも」「ルーラ、どうするの? 助けてやる?」
「はあ? なんでこんな馬鹿のために私が手を煩わせなきゃいけない? 騙される馬鹿が悪いんだから、自分でなんとかしろ馬鹿」
ルーラが冷たくいい放つと、ピーキーエンジェルズも調子よく迎合する。
「だよねー。かくいう私も関わり合いになるのはごめんだしー」「お姉ちゃんマジクール」
「実は私も前にマジカロイドに怪しい商品売りつけられそうになったことあるんだけどさー、第六感っていうの? 髪の毛のアンテナがビビーンと反応したもんで、全力で拒否ったったわ」「お姉ちゃんマジスピリチュアル」
「うっうう……スイムちゃんは……?」
スイムスイムは気怠げに伏せていた目をたまではなくルーラに向けた。
「……『自分で蒔いた種はすべからく自分で刈り取るべし。個人が問題解決能力を高めれば組織の力も高まる』。ルーラがいったこと。ルーラが手伝わないなら、私も手伝わない」
「ええぇ……」