少女は人間だった。
山の上にある小さな村に住む少女はある日、夜遅に出歩いていた。
少女が住む村は都会と遠く、大きい街に行くには夜遅くから出かけなければならなかったのだ。
「今日もお使いの帰りにお団子食べよ。」
脳天気な事を考えながら少女は暗い夜道を歩いていた。その時、少女はなにかにつまずいて、転んでしまう。
「痛っ。って、へ?」
少女は足元をに転がってるものを見て驚く。
そこには背中に[滅]と書かれた黒い服を来ている死体があった。
「なに....これ...」
少女が驚いてると、後ろから気配を感じた。少女が振り向くと、そこには目付きの悪い男性がいた。男性は血のついた爪を伸ばし、少女の右腕に突き刺してこの場を去る。
「ぐぁぁぁぁ!!??」
少女はあまりの痛さに叫ぶ。そして何を思ったか、死体の近くに落ちていた刀を拾い、腕を切った。
切られた腕は魚のように跳ね回った後、何処かへ行ってしまった。
少女の腕の血は止まっており、少女はその場から立ち去った。
行く宛もなく...
夜が明け、少女は近くの水溜りを見た。少女は水溜りに反射している自分の姿を見る。
「え..? これが...私?」
少女は変わった自分の姿を見て驚いた。髪色は桃色に変色しており、小さい角も生えていた。
===数十年後===
少女は成長し、大人になっていた。
少女は鬼にはならなかったが、血鬼術が使え、日光に当たっても無事な身体となっており、人間を食べる必要もなかった。右腕があった所にはガスを右腕の形にして、包帯でごまかしている。角は白い布で隠している。
その名も、茨木華扇。本名は覚えていないらしい。
彼女は各地を旅している。自身を鬼に変えようとしたあの男とその配下の鬼を探して。
今日は街の甘味処にいた。そこで買った団子を食べていると、奇妙な噂話をしている2人組の声が聞こえた。
「なあ聞いたか?近くの町で若い女が行方不明になる事件が多発してるってよ。」
「聞いた聞いた。物騒な町だこと。」
華扇はその2人組に近寄る。
「少し話を聞かせてもらえませんか?」
「え?ああ、いいぞ。ここから東南の町の話だ。毎夜毎夜十六歳程の少女が消えてるんだってな。あまりの多さに避難する子もいるそうだ。」
「十六歳...」
「まあ、どうせ人さらいだろう。世も物騒だな。」
「ありがとうございます。」
一通り話を聞いた後、華扇は問題の町に向かって行くのであった。
今は昼間なので、その町に着くのは翌日の夜だろう。
次回から視点が入ります。