EM・アフター   作:遠野静

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日記:2日目

 遠征先で舞風が大破したという話を聞いた。

 私がそれを知ったのは、数日後の話だった。

 

 鎮守府に戻ってきた舞風は、息をしていなかった。

 

――――――――――

 

 舞風が戻ってきてから数日が経過した。

 だが、誰も彼女の事に触れない。

 舞風は除籍扱いになったらしい。

 

 どうしてだろう、彼女はまだ生きているのに。

 でも、おかげさまで無理に戦線復帰させられることはなさそうだ。

 それは、安堵する。今の舞風には、しばらく戦闘行為は無理だろうから。

 なるほどと私は納得し、今日の任務に向かう。

 

 ……帰りに舞風へお土産を買って帰ろう。

 

 部屋の扉を開けるとおかしな匂いがしたので、私は急いで暖房を消した。

 舞風は今日も眠ったまま。

 彼女はお転婆だから、どこかで悪いモノでも食べたのかもしれない。

 

「舞風。お腹を出して寝ていては風邪を引くよ」

 

 頭をなでると、潮風に荒れた髪が指に絡む。

 柔らかな髪質だったはずだけど、今は柔らかいというより、弱い。

 これは、目を覚ましたらまずはお風呂かな──なんて思って。

 

「入渠は、あなたが目を覚ましたらね」

 

 大破した舞風が入渠出来ないなんて、うちのドッグ事情はどうなっているんだと、少しだけ憤慨する。

 

「いずれ提督に進言しよう……っと」

 

「ごめんね、舞風。忘れていたわけじゃないんだ」

 

 眠る舞風に、私は語りかける。

 

「舞風。今日は那珂さんと一緒に演習に出たんだ」

 

 最近の日課だ。

 あなたが目覚めるまでの間、一日にあったことを伝えると決めた。

 

「那珂さんは、舞風のダンスのことを気に入っていたよ。

 もう一度踊りたかったと言ってた。

 ……那珂さん、アイドルになりたいっていうの、本気なのかな」

 

 もちろん、彼女の答えは返ってこないけど。

 寝息も聞こえないけれど。

 

「それなら舞風も、その内アイドルになっちゃうのかな。

 ……だったら、私がファン一号かな。

 もしも目が覚めたら、那珂さんと踊るところを見せてよ」

 

「……私は無理だよ。何度誘われても無理だったでしょう?」

 

 ──今日の話はこれぐらい。

 報告終了。

 

 今が冬で助かった。

 室内温度を低く保つ。

 理由……? 理由は……彼女は暑がりだったから。

 それに、あんまり心地よい温度だと、「あと五分」と眠り続けてしまうかもしれないし。

 

「おやすみ。舞風」

 

 電灯を消す。

 舞風は瞳を閉じて、眠っている。

 宝石のような碧眼を、私はしばらく見ていない。

 

 /

 

 舞風は安定している。

 けれど、このまま安置もできないだろう。

 私は私の出来る方法で、彼女を永遠にする。

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