EM・アフター   作:遠野静

2 / 4
日記:1週間・10日・2週間

 

「舞風。今日は、陽炎姉さんと話したよ」

 

「陽炎姉さんは明るい人だよね。……ちょっと、明るすぎて困るくらい」

 

「そういうところは、舞風に似ているかな」

 

「それと、私達のことも心配してくれていたよ?野分、無理してないって?」

 

「……うん、私は大丈夫。私より、舞風の方がしんどいもんね」

 

「本当だよ、へっちゃらだよ。私は、舞風を守らないといけないもの」

 

「ああ…………でも、一つだけ言いたいことがあったんだ」

 

「陽炎姉さん、私のことしか心配してなかったんだ。

 舞風のこと、触れてもくれなかったんだよ? 酷いよね」

 

「……大丈夫だよ。舞風の事は、私が見ているから」

 

 今日も、舞風からの返答はなし。

 心なしか、顔色が悪くなっているように見える。

 私に出来ることはあるだろうか。

 

 /

 

 一週間が経過した。

 舞風の顔に化粧を施す。

 私の覚えている舞風の顔は、たしかこんな明るくて、瑞々しくて、血色の良い肌色をしていた。

 ……よく覚えている。ちょっとだけ羨ましいと思ったから。

 

 問題は山積みだ。

 簡易の処理では、いずれ破綻するだろう。

 深夜、夕張さんから機材を借りた。

 

 

------------

 

 

「舞風。今日は、不知火姉さんと話をしたよ」

 

「相変わらず、何を考えているのかわからない人だったけれど……」

 

「貴女を心配してくれていたよ? ……嬉しいね」

 

「起きたら、お礼を言わないとね」

 

「でも……その前にリハビリかな。眠り続けて、身体も動かないだろうし」

 

「舞風がまた踊れるようになるまで、私が付き合うから」

 

 今日も報告終了。

 舞風に変化なし。

 

 /

 

 10日目

 

 今日施した処理は、防腐と血液の排出。

 それと、腐りやすい臓器の摘出。

 私の処理が遅かったせいか、皮下の腐敗が止まらない。

 末端から腐り始めている。特に両腕は深海棲艦のような色になってしまった。

 さすがに化粧でも誤魔化しきれない。

 舞風も、こんな腕は嫌だろう。

 腐敗が進む前に切断した。

 

 

------------

 

 

「舞風。今日は、時津風姉さんと話をしたよ」

 

「……元気だよね。話していたらちょっとだけ、舞風を思い出した」

 

「舞風の踊りがみたいって言ってたよ。もしも目を覚ましたら、踊ってあげて」

 

「その時は……うん。私も踊っても、良いかな」

 

 報告終了。

 変化無し。

 

 /

 

 二週間

 

 やはり処置が遅かったのだろう。

 両足の腐敗が目立つ。

 足を切断した。

 彼女の踊りはもう見られないのだろうか。

 そう思うと悲しくなった。

 でも、まだ繋ぐ手段もあるかもしれない。

 舞風の足は、保存しておくことにする。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。