EM・アフター   作:遠野静

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日記:×日目、×日目、×日目、1日目

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「舞風。今日は……浦風姉さんと話をしたよ」

 

「いや、話す前に、浜風姉さんに止められたんだっけ?」

 

「何か……言われた気がするけど……あまり、覚えてないな」

 

「そうだ……それより、私もダンスを、練習しはじめたんだ」

 

「貴女が起きた時に……一緒に踊れたら、嬉しいな」

 

 報告終了。

 

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 ×日目

 

 骨格はあらかじめ針金を通して固定したものの、

 やはり眼窩と腹部の陥没が気になる。

 眼球は義眼を用意した。

 内臓を摘出した腹部は、どうしよう。

 

 

 

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「舞風。今日は──」

 

 報告終了。

 

「舞風。今日は──」

 

 報告しゅうりょう。

 

「舞風。今日は──」

 

 ほうこくしゅうりょう。

 

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 ×日目

 

 腹部には人造物を埋める代わりに、貴女の好きだった花を詰めておいた。

 飾り気のないものより、きっと貴女は喜ぶだろう。

 義腕をお腹に添えると、花を携えて眠っているようだ。

 まるで眠り姫のようだった。

 王子様のキスで起きてくれたらいいのに。

 けれど口づけをしたら、貴女の身体は崩れるだろう。

 

 

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「今日は──何があったんだっけ」

 

「ごめん……最近、ちょっと忘れっぽくて」

 

「ええと──今日は……そう、夢を……」

 

「──いやな夢を、見たような」

 

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 1日目

 

「珍しいことだ」と、誰かが言った。

 整備班の人間……だったと思う。

 

「珍しいことだ。■■した艦娘が、海に沈むことなく戻ってくるだなんて」

 

 私には、彼の言葉の意味が分からなかった。

 

「通常、■■した艦娘は、そのまま海に沈むんだ。

 陸で■■する状況も……あるにはあるけれど。

 その場合は肉を保つことはない」

 

 ノイズが奔る。

 単語の意味がところどころ抜け落ちている。

 会話の内容が分からない。

 

「だから、艦娘には慰霊碑はあっても、墓はない。

 失われた彼女達の逝き先は、海の底だから」

 

 彼が何を言っているのか、私にはよく分からない。

 別の言語を聞いているかのようで。

 ただ。

 

「だから、本当に珍しいんだ」

 

 ひどく。

 

「■んだ艦が、肉体を保ったまま、鎮守府に戻ってくるなんて」

 

 耳障りな音だと、思った。

 

「彼女の身体を研究すればきっと──」

 

 煩いから、音源を潰した。

 二度とノイズ混じりの音を聞かないように。

 静まり返った屋内。

 ここに居るのは私と彼女だけ。

 

「舞風」

 

 声をかける。

 彼女は目を覚まさない。

 普段から、寝起きの良い方ではないけれど。

 まったく起こす身にもなってほしい。

 

「舞風。起きて」

 

 彼女の身体には傷一つない。

 ……ああ、そうだ。戦闘後、だったんだ。

 大破した、と聞いていたけれど、彼女の身体は綺麗なまま。

 安らかに眠っている。

 なら、寝かせておいたほうがいいのかもしれない。

 

「でも、こんなところで寝ては風邪を引くから、私が部屋に連れていくよ?」

 

 彼女の身体を抱きかかえる。

 いつか、せがまれたことのあるお姫様抱っこ。

 いつだったか、こうして、無理矢理私にさせようとしてきたんだっけ。

 

「あの時はそう……『私は王子様じゃないし、あなたもお姫様じゃない』って言ったら、拗ねちゃったんだっけ」

 

 そんな……他愛のないことを思い出す。

 

 だらんと、力を抜いた手がだらりとぶら下がった。

 彼女の手を取って、立ち上がる。

 いつも私を引っ張る手。

 髪の色のように、暖かな手。

 けれど、眠る彼女の手のひらは、ひんやりと冷たかった。

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