古い洋画と夜の噺。   作:遠野静

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古い洋画と夜の噺。-2-

浜風「……いえ、知らない……と、思うけれど」

 

雪風「ですかぁ……じゃ、しかたありませんね。夜更けにすいませんでした」

 

浜風「本当に。明日は早くから遠征任務でしょう。寝ぼけた顔じゃ……」

 

雪風「ん。あ、そうですねえ。まあ、なんとかなりますよ」

 

浜風「なんとかって……」

 

雪風「あはは。雪風、寝つきは良い方ですからねえ。布団に入ればばったんです」

 

浜風「それでも、睡眠時間が……行動に支障を……」

 

雪風「あんまり肩肘張ると大変ですよ? ま、なんとかなります。なるようにしか、なりませんよ」

 

雪風「あ、今のは軍属としてあまりよろしくない台詞ですね。……ここは規律、緩いですけど、他の人には内緒にしてくださいね?」

 

浜風「…………」

 

雪風「どうしました?」

 

浜風「……雪風は、強いね」

 

雪風「へ?」

 

浜風「いつも、笑っている。大変な任務に向かう前でも、強力な敵に立ち向かう前でも。どんな時でも笑っている」

 

雪風「それは暗に楽天家といわれているのでは……まあ間違いではないですが……」

 

浜風「間違い、でしょう」

 

浜風「雪風が笑っているのは、何も考えてないからじゃない」

 

浜風「貴方が何も考えてないはずがない」

 

浜風「あれだけ悲劇を見届けて……それでも笑える貴女には、意思がある」

 

雪風「……それは」

 

浜風「私は笑えない。今度もまた。皆を守れないかもしれないと思うと。

   誰も守れず。私の前で沈んで……それを、見届けることしか出来ないかも」

 

浜風「そのくらいなら、私は……」

 

雪風「だめですよ。浜風」

 

雪風「そうゆうのは、だめです」

 

雪風「幸福の押し付けです。自分の幸運を、自分の不幸を、他の誰かに被せているだけです」

 

雪風「それじゃなにも変わらないですよ。ただ、想う人と沈む人が入れ替わるだけです」

 

雪風「……そうゆうのは雪風、よくないと思います」

 

浜風「……………なら、私はどうすればいい?」

 

浜風「ねえ、雪風。貴女はどうして笑えるの? 明日隣人が、親友が、家族が沈んでいなくなってしまうかもしれない状況で、どうして……」

 

 

雪風「だって、最後に思い浮かべる顔が、悲痛な顔なんていやでしょう?」

 

雪風「艦娘と言いますけれど。私達は、少女じゃなくて艦なんですよ」

 

 

雪風「船は、沈むものです。不沈艦なんてこの世にないんですから」

 

雪風「私達の最後は決まっていて。最後にはきっと海を見ながら、私達は消えていくものだから」

 

雪風「その時、隣人が。親友が、家族が――思い浮かべる雪風の顔が、悲痛な悲しい顔だったら、きっと沈んでも沈み切れません」

 

 

雪風「だから雪風は笑うんです。ヘラヘラ笑ってやるんです」

 

 

雪風「天国の誰かさんに、どうだって見せつけてやるために。雪風は最後まで笑うんですよ」

 

浜風「…………」

 

雪風「いや……えっと。うん。……じゃなくてっ!」

 

雪風「とにかくっ! ……その、夜遅くに失礼しました! 浜風もちゃんと寝ないとだめですよ!?」

 

浜風「……雪風にそう言われても。でも……うん、おやすみなさい」

 

浜風「明日も……笑顔を見せてくださいね」

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