浜風「……いえ、知らない……と、思うけれど」
雪風「ですかぁ……じゃ、しかたありませんね。夜更けにすいませんでした」
浜風「本当に。明日は早くから遠征任務でしょう。寝ぼけた顔じゃ……」
雪風「ん。あ、そうですねえ。まあ、なんとかなりますよ」
浜風「なんとかって……」
雪風「あはは。雪風、寝つきは良い方ですからねえ。布団に入ればばったんです」
浜風「それでも、睡眠時間が……行動に支障を……」
雪風「あんまり肩肘張ると大変ですよ? ま、なんとかなります。なるようにしか、なりませんよ」
雪風「あ、今のは軍属としてあまりよろしくない台詞ですね。……ここは規律、緩いですけど、他の人には内緒にしてくださいね?」
浜風「…………」
雪風「どうしました?」
浜風「……雪風は、強いね」
雪風「へ?」
浜風「いつも、笑っている。大変な任務に向かう前でも、強力な敵に立ち向かう前でも。どんな時でも笑っている」
雪風「それは暗に楽天家といわれているのでは……まあ間違いではないですが……」
浜風「間違い、でしょう」
浜風「雪風が笑っているのは、何も考えてないからじゃない」
浜風「貴方が何も考えてないはずがない」
浜風「あれだけ悲劇を見届けて……それでも笑える貴女には、意思がある」
雪風「……それは」
浜風「私は笑えない。今度もまた。皆を守れないかもしれないと思うと。
誰も守れず。私の前で沈んで……それを、見届けることしか出来ないかも」
浜風「そのくらいなら、私は……」
雪風「だめですよ。浜風」
雪風「そうゆうのは、だめです」
雪風「幸福の押し付けです。自分の幸運を、自分の不幸を、他の誰かに被せているだけです」
雪風「それじゃなにも変わらないですよ。ただ、想う人と沈む人が入れ替わるだけです」
雪風「……そうゆうのは雪風、よくないと思います」
浜風「……………なら、私はどうすればいい?」
浜風「ねえ、雪風。貴女はどうして笑えるの? 明日隣人が、親友が、家族が沈んでいなくなってしまうかもしれない状況で、どうして……」
雪風「だって、最後に思い浮かべる顔が、悲痛な顔なんていやでしょう?」
雪風「艦娘と言いますけれど。私達は、少女じゃなくて艦なんですよ」
雪風「船は、沈むものです。不沈艦なんてこの世にないんですから」
雪風「私達の最後は決まっていて。最後にはきっと海を見ながら、私達は消えていくものだから」
雪風「その時、隣人が。親友が、家族が――思い浮かべる雪風の顔が、悲痛な悲しい顔だったら、きっと沈んでも沈み切れません」
雪風「だから雪風は笑うんです。ヘラヘラ笑ってやるんです」
雪風「天国の誰かさんに、どうだって見せつけてやるために。雪風は最後まで笑うんですよ」
浜風「…………」
雪風「いや……えっと。うん。……じゃなくてっ!」
雪風「とにかくっ! ……その、夜遅くに失礼しました! 浜風もちゃんと寝ないとだめですよ!?」
浜風「……雪風にそう言われても。でも……うん、おやすみなさい」
浜風「明日も……笑顔を見せてくださいね」