浦風「……んん? や、知らんような……どっかで聞いたような……」
雪風「おおっ、ついに手がかりが……!」
浦風「……でも、思い出せんなぁ……」
雪風「ですよねぇ」
浦風「それ、大切な話けえ? なら、ウチも、ちぃと真面目に思い出すけん…」
雪風「あ、いや。いいですよ別に。ふっと思い浮かんで、なんだったかなーって」
浦風「ああ、そういうの、気になるけぇねぇ」
雪風「そうなんですよねぇ……。すいません。夜遅くに」
浦風「ええよええよ。……あ、そうじゃ」
浦風「ちぃと待ってくれる? 雪風姉に、聞きたいことがあったんじゃ」
雪風「はい? なんですか?」
浦風「浜風から聞いたんじゃ。雪風姉が、いつも笑っている理由」
雪風「…………なぜ喋っちゃうんですか」
浦風「当人も悪気はないわけじゃけぇ、許したって」
雪風「別に怒りはしませんよ」
浦風「あはっ。やっぱり、優しいなぁ」
雪風「…………ああ、いえ。それで、なんですか?」
浦風「雪風姉は、皆いつかは沈むと思うとるんじゃろ?」
雪風「……まあ、そうなりますね」
浦風「別にせめとるわけじゃないんよ、気持ちは分かるんじゃ。……ウチも、もうどうにもならんこともあると、思うとるし……」
雪風「…………」
浦風「ほんと、どんだけ頑張って、死力尽くしても、だめな時はほんとうに……どうともならんのよなぁ……」
浦風「雪風姉も……というか、雪風姉ですら、そう思うんじゃけぇ、ウチじゃあ、しゃあないねぇ」
雪風「そんなことは……」
浦風「ん。いや、今のは独り言なんじゃ。ウチの無力は、ウチのことじゃけえ。……そこまで悲観しとるわけでもないけぇね」
浦風「……でも。じゃけん不思議じゃ。雪風姉は、何をしてもいつかは皆沈むと思うとる。たぶん、自分も含めて」
浦風「船である限り、海で死ぬもんじゃって。どうしたって抗えない悲劇みたいなもんを、雪風姉は思うとるんじゃろう」
浦風「……なのに雪風姉、いつも真剣じゃろ。捨て鉢にもなってない。仲間の命を、見捨てるわけでもない」
浦風「どうしようもないこともあると知っているはずなのに。いつか沈むと、諦めているはずなのに。雪風姉は、どんな時も、真剣じゃ」
雪風「……いえ、そこまで熱血なつもりもないんですけど」
浦風「いやぁ、熱血なら、恐怖の裏返しってことでわかるんじゃ。……でも雪風姉は、いつもヘラヘラと笑ってるけれど、他の誰かがピンチの時に、全力で、自然体で、真剣に、助けるじゃろ」
浦風「誰かが沈むのを怖がっているわけでもない。それが不思議じゃ。理屈に合わん。雪風姉は、なんでみんな沈むと思うとるのに、誰かを助けるん?」
雪風「…………急に何を聞いてくるかと思えば、なんだ、そんなことですか……」
雪風「だって――皆、いつかは沈むんですよ? なら別に、今沈む必要もないじゃないですか」
浦風「…………ぷっ」
雪風「なんですかぁ……」
浦風「いんやぁ。雪風姉が、姉ちゃんでよかったなぁ、と、思うただけじゃ……」
浦風「ありがとうな、雪風姉。そう言ってくれたおかげで、ウチもちょっと、気が楽になった」
浦風「……ん。やっぱ、どうしようもなかったんじゃなぁ。誰が悪かったわけでもない。ただ、間が悪かったんじゃ」
雪風「浦風?」
浦風「……雪風姉は、気付いてないかもしれないけれど。それを、当然だと思える雪風姉の心は、とっても尊いものなんじゃ」
浦風「……じゃけん。それを忘れないでな」
…………
雪風「……結局、映画のことはわかりませんでしたね」
雪風「……………………」
雪風「夜の海は、綺麗ですね」