初風「…………スタート地点に逆戻りね。で、わかった?」
雪風「そうですね……思い出しました」
初風「そ」
雪風「あの映画は……初風が持ってきて、雪風と二人で見たんです。天津風と時津風は、長距離演習に出ていて、ちょうど私達二人だけだったから」
初風「そうねえ」
雪風「どうして知らないって言ったんですか?」
初風「だって、本当に忘れてたし。……あんたがどっか行って、はじめて思い出したのよ」
初風「ま、興味なかったし。わざわざ思い出すなんて、私にしては珍しいこともあるもんね」
雪風「とかいって、初風って大抵のことに興味ないじゃないですか」
初風「まあ、そうね」
雪風「そこは否定してほしかったです」
初風「実際、多分そうだもの」
初風「興味ないのよ、私。なんとなく遠いのよね」
初風「クリスマスとか、楽しいわねって。態々口に出して確認しないとわからないもの」
初風「あんたは楽しそうだったけど」
雪風「ああいう場は素直に楽しむようにしてるんですよ」
初風「そう。いいことだわ、面の皮が厚くて」
雪風「ありがとうございます」
初風「褒めてないわよ」
雪風「……知ってますよ」
初風「はあ…………」
初風「あの映画。……提督に借りたのよね」
雪風「しれぇ、ですか」
初風「そ……何考えて私にあんなの貸したんだか知らないけどさ……」
初風「………………………」
雪風「…………?」
初風「あんた、似てるわよね。提督と」
雪風「はぁ? どこが、ですか?」
初風「意地っぱりで悲観主義。天邪鬼で人間不信。呪われている。それを全部含めてヘラヘラ道化を気取ってる。それに……」
初風「あんたは……それに提督も、基本的に他人が好きだからね」
その言葉はまるで。
初風「私は――他人が嫌いだから」
初風「だから……あの映画の台詞も光景も、きっとたどり着けないのよ」
雪風「初風」
初風「……なによ、その顔」
初風「だって、私なんてなにもしてないし」
初風「口も悪いし、懐かないし。話せば棘ばかりだし。そのくせ、大した戦果も上げられない」
初風「笑っちゃうでしょ。私も自分を笑うわ。その内、後ろに自分が見えるのよ」
初風「嫌な私を笑う私。そんな私を眺めながら、馬鹿みたいって呆れる私。自分の背中に私が増えていく」
初風「こんなことを考える、私は何人目の私かしら」
初風「私って、なんなのかしら」
初風「……ひねくれてるのよ、私」
初風「いいけどね。なにしろ殆ど他人に顔を合わせない、ツチノコさんだし」
初風「こんな私だもの……海を見たって何の話も出来ないわ」
雪風「初風」