楚が棘に振られて5日後。
「よ、よろしくね」
「そんな緊張しないでよ。前回みたいなことは、起きないと思うからさ」
棘と憂太の任務は、依頼された呪霊以外にも、予想外の準一級の呪霊がでた。2人の協力でなんとか祓えたが、犯人の目的はつかめないままだ。
そして、今回は楚と憂太での任務である。
「起こらないとは限らないから、一応気を付けてね」
「高菜」
「了解です」
五条と棘の注意を受けて、車に乗り込む2人。車に揺られて約1時間。今回の任務場所につく。
「大木田ショッピングモールです。3年前に閉業し、現在老人ホームを建てる計画が立っています。視察中に、6体の準二級の呪霊が確認されました。狗巻呪術師には、それを祓っていただきたいのです」
「狗巻じゃなくて、楚でいいですよ。じゃあ行こうか、憂太」
「あ、うん」
堂々と入っていく楚の後についていく憂太。
「あの、楚くん」
「うん?何かいた?蝿頭レベルはほっといていいよ」
「そうじゃなくて、楚くんは座学の時間、いつもノート開いてないよね。筆記用具も出してないし」
「よく見てるね」
「何か理由とかあるの?」
「う~ん。簡単に言うと、棘と同じかな」
「それって、」
どういう意味?と聞くことはできなかった。
「どうやらお出ましのようだ」
2人の進行先には、呪霊がいた。
「4、5、6。うん。全員いるね」
数え終わると、腰のポケットからスプレー缶のようなものを取り出した楚。キャップを外し、何かを書き始める。書き終えたと同時に、爆発する呪霊。
「全員祓えたみたいだね」
「今のって・・・」
その祓い方は、棘の呪言に似ていた。
「棘は話したことが本当になる。僕は書いたことが本当になる。例えば」
そこらへんの黒い壁に、白と書く楚。すると、その壁は白色に変わった。
「まあ、棘がおにぎり語で話しても呪われないように、指で空中に書くのは大丈夫だけど」
「だから板書してないんだ・・・」
「そういうこと。じゃあ帰ろうか。帳もあがったし」
「嫌じゃないの?」
「嫌?何が?」
「何がって・・・」
「文字を書けなくて?他人と同じじゃなくて?」
いつも通りの笑顔だが、その目の奥は笑っていない。
「そんなことだけで絶望するわけないでしょ。僕が僕を嫌ったら、僕を大切にしてくれる棘を否定することになる。それは駄目だ。いい機会だから忠告しておくよ」
真顔で憂太に向き直る楚。真剣な雰囲気につばを飲み込む憂太。
「君はもう棘の友達だ。棘は君のことを、大切な仲間だと思っている。君が傷ついたら、棘は悲しむし、怒る。だから、君は傷つけてはいけない。棘やパンダ、真希だけじゃなく、自分自身も。それができないなら、」
《僕は容赦しないよ?》
楚の目に光はない。憂太が守らなければ、本当に容赦しないだろう。
「分かってくれた?」
楚の言葉に、何度も首を縦に振る憂太。
「よかった~。改めてよろしくね、憂太!」
浮かべる笑みに、先程の冷たさはない。その変わりように戸惑う憂太。彼らの頭上では、太陽が輝いていた。