「こうして二人だけで合うのは久しぶりですね」
「あぁ、そうだな」
窓の外を眺めながら返事を返す。
大きなビルが立ち並ぶこの町の夜は比較的明るい。しかしこの場所から眺める夜景は只明るいだけじゃなく、ちゃんと夜の静けさも内包している。いつ見ても飽きない目の前の風景に、傾けていたウィスキーの味が、ほんの少し深い物となった。
「最近の調子はどうですか?」
「ぼちぼちだな。今でも鍛えてるから健康ではあるンだが、アッチの方は、まぁ相変わらずだ」
「もう、元には戻らないんですか?」
「自分じゃ言いたくないが、やっぱり俺も年だからなァ。難しいだろ」
「そうですか……」
自分の返事に意気消沈した目の前の青年がテーブルに視線を落とす。
自分の事を思って消沈したその姿に相変わらずの好感感じるが、同時にその真面目さも相変わらずだなと感想も沸いた。彼の真面目さはいいところでもあるのだが、こうして酒を交わしている間は楽しく語り合いたい。「まぁ今のこの状態も悪くは無いさ。昔と違って、今は楓も応援してくれてるからな」と、おどけた口調に酒臭い微笑を添えた。
「そうですか」
「あぁ。そっちはどうだ? ソロでも上手くやってるか?」
「言わなくても分かるでしょう、あなたなら。色々聞いたりしてるんじゃないんですか?」
「たはは、バレてたか」
「パートナーでしたから。それも最高のね」
「おーおーうれしい事いってくれるねェ」
窓の外を見る。変わらず綺麗な夜景があった。変わったのは、このガラス窓に写る自身の顔だ。頬の緩んだだらしない顔が朱いのは、きっと酒のせいだ。グラスの中を飲み干した。
「僕の方も聞いてますよ。随分と二部の方達に懐かれている様ですね、『タイガー先生』」
透き通った茶色の水飛沫が口から吹き出る。
「あ、アレはアイツ等が勝手にそう呼んでるだけでッ!」
「でも、一部に来た新人は尊敬してましたよ。『ヒーローインタビュー』で先生の教えを皆に伝えたいって、僕等への挨拶の時に話してました」
「アチャー、あの馬鹿。ちゃんとした挨拶をしろってあれ程言ったのに……」
額に手を当てて呆れながら、脳裏に件の人物を思い出す。
彼は最初から自分の事を「先生」と呼んで、ライバル同士の筈なのに色々くっついてきた後輩だ。事ある毎にその若さ溢れるエネルギーを空回りさせているその後輩の事を放っておけず、自分が世話を焼いていた。しかし彼のヒーローへの熱意は本物で、成果が認められて一部へ昇格を果たし、それを我が事の様に喜んだのは記憶に新しい。
と、そんな時
PiPiPiPiPi!
青年のブレスレットからけたたましい音が部屋に鳴り響いた。