『ハァイ、ヒーロー。アニエスよ。メダイユ地区のシュテルンタワー南側で、大規模な火事が発生したわ。各ヒーローは現場へ急行。到着後、一部のヒーローは内部で残された人の救出を、二部のヒーローは付近の人とタワーから避難してきた人の避難指示をお願い。又、今回の火事の規模と突発性から、NEXT犯罪者が関連している可能性が高いわ。内部に突入するヒーローは勿論、二部のヒーロー達も注意して頂戴』
「分かりました、現場へ急行します」
「了解、これから現場へ向かう」
ブレスレット形PDA(つうしんき)の通信をきる。
部屋の空気は今までのゆったりしたものから、ピンと張り詰めた空気に変わった。酔いもバッチリ醒めている。目の前の青年も同じだろう事は確認するまでも無い。最高のコンビとしてやってきた経歴が有るのだから。
「いきましょう、すぐに斎藤さんもトランスポーターでここに来るはずです」
「あぁ」
数分後、やってきた大型トラック「トランスポーター」に乗り、さっそくチェンバーでヒーロースーツを装着する。未だに慣れない装着時の衝撃に軽く声が漏れるが、直ぐに頭の中からその意識を追いやった。
「それにしても、こうやって二人で現場へ向かうのは久しぶりじゃないか?」
「そうですね、でもそれは後にしましょう。今は」
「分かってる。現場までしっかり頼むぜ」
バイクに繋がれたサイドカーへ乗り込む自分を見届け、青年がアクセルを回してバイクが走り出す。
「僕は運び屋じゃないですよ」
シュテルンビルドは三層構造になっている変わった街だが、交通に関してはきちんと整備されている。故に夜だから、と言う理由で車の量はあまり減りはしない。
が、バイクを操縦する青年もなかなかのドライビングで前の車達を追い越していく。勿論このバイクも現場に急行出来る様に、それなりの速度を出せる様チューンナップされている物だ。
暫くは早馬を腹を蹴り飛ばす様にバイクを走らせていたが、急にバイクが減速する。青年がアクセルを弱めたのだろう。
「ダメだ、これ以上はバイクでは進めない」
事件のせいか、はたまた別の要因か。この先は渋滞を起こしていた。流石にこれはどうしようもない。
「どうする、現場まで走るか?」
「いえ、それでは時間が掛かり過ぎる」
「じゃあ迂回して別の道から向かうか?」
「それももう難しいでしょう。後ろにも渋滞が出来始めている。どの道バイクは諦めた方がよさそうです」
「じゃあどうすんだよ」
「簡単な事です」
青年はバイクから降りて、此方に向き直り、指を立てた。
「下がダメなら、上から行きましょう」