転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
こちらは不定期更新のため、投稿できるときに投稿していくスタンスで書いていきます。また本編には過度なキャラ崩壊、その他大勢のモブキャラ、そしてラプ様つえぇぇぇな成分が多分に含まれています。苦手な方はご容赦ください。
それでは、大変長作になると思いますが気長にお付き合いくださいませ。
【追記】
5/6に内容更新。
3/4に内容更新。
↓作者:飽和水溶液のXアカウント。主に執筆状況や気に入ったホロ関連のリポストしてます。
飽和水溶液(@Suiyoueki_suba) https://twitter.com/Suiyoueki_suba
第01話 YES MY DARK!
────片膝をつき、彼女はこちらを仰ぎ見る。
崇高なる組織の長を崇め、崇拝と信仰と、尊敬と尊重と、畏怖と畏敬と、そして親愛と信頼とを孕んだその視線を、ただ一人の『悪魔』へと向ける。今や全宇宙を股に掛ける程大きく成長した、【秘密結社holoX】。またそれに属する優秀な構成員や臣下たち。その全ては、貴女の望むがままにあると。
「……我らが総帥、ラプラス・ダークネス様。私を含め、holoXのその全てがあなたについて行きます。どうかあなた様の崇高なる目的のため、今後も我らを存分にお使いくださいませ」
そう言った彼女──【鷹嶺ルイ】は、自分の眼前で跪き頭を垂れていた。
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~秘密結社holoXアジト in こよラボ~
「博士ー!いるかー??…………ん?なんだ、居ないのか?」
博士を求め、地下にある研究室を訪れる。
しかし、どうやら当の本人は不在なようだ。
「なんだよ、折角吾輩自ら足を運んでやったっていうのに……」
いくら文句を垂れたところで居ないものは仕方がない。一先ず時間を改めるとしよう。
……そう思った矢先、部屋の中央に置いてあったひと際大きな装置が目に入った。
「ん?なんだこれ……『時空を超越する装置』??……あ~、年末に使ってたヤツの改良版か」
それは数年前の年末こと。吾輩が突然言い出した、『ホロライブの先輩方を全員事務所に集めて欲しい』という我儘に対しこよりが発明してくれたものだった。しかし今回のはその時のものとは少し様子が違い、どうやらこれは前回の”時空を超越する薬”の『装置型』のようだ。
相変わらず、謎技術でとんでもないものを作るやつだな……。
「まぁ、そんなことより────よし、誰もいないな」
とある”企み”の中、ラプラスは室内を見渡しそこに誰もいないことを確認する。
「くっくっく……あの時、吾輩はお留守番しててこれを使えなかったからなぁ。少しくらい遊んで……実験してもいいよな!」
自分の中に滾る好奇心に身を任せ、試しにその装置にあったボタンの一つに触れてみる。
────すると次の瞬間、突然視界が激しい光に包まれた。
「うおっ!?眩しっ!!」
堪らず、ラプラスは目を瞑る。
だがこの時、すでに悪魔の運命は動き始めていた────。
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「ん……なんだ、何が起きて……」
いつの間にか眠ってしまっていたのか、ラプラスはふとベッドの上で目を覚ます。しかし未だ睡眠による微睡みが視界と思考を覆っており、眠たげに眼を擦った。まだ眠い……。
──だが彼女は、直ぐに事態の違和感に気が付いた。
「……は?えっ……ここどこだ??」
ラプラスが目を覚ましたそこは……見覚えのない、広くて全体的に白い空間だった。
部屋の様式は近未来的なようであり、窓はない。代わりにあちこちの壁にはモニターのようなものが埋め込まれており、そこに向かう為の机やイス等が置かれている。また天井を見上げても照明のようなものは見当たらず、にも関わらず確かな明かりが感じられた。
「なんか、作りがちょっとアジトに似てる気がするな……もしかして、アジトの地下のどっかか?」
現在のholoXのアジトは、元々あったビルの一室を改造し作られたものだ。それを、ウチの頭脳であるこよりが更に好き勝手に改築を繰り返した結果吾輩ですら知らない部屋があったりする。
先程、吾輩はその博士が作ったと思われる『時空を超越する装置』に勝手に触れてしまった。その結果装置の何かが作動してしまい、その影響で気絶でもしてしまったのだろう。そして、倒れていた吾輩を誰かが見つけてこの部屋まで運んでくれたのかもしれない。
「ってことは、別に時空を超えられたわけじゃないってわけか……あの装置、故障してたのか?」
あるいは作り途中であったのか。どちらにせよ、期待していた時空旅行は失敗に終わったようだった。
「まあ、壊れてたもんは仕方ないな。そろそろお夕飯の時間だし、幹部のところに戻るか……」
ラプラスはそう思い、ベッドから降りようと身体を横に傾けた。
──その時、不意に誰かに声を掛けられる。
「おっ、起きたみたいだな”あるじ様”」
あるじ様??
ラプラスはそう呼ばれたことを不思議に思い、サッと部屋の中を見渡す。するとベッドからすぐ横の台の上、そこにいつもは吾輩の頭上で居座っていた【烏(からす)】の姿があった。
もしかして、今話しかけてきたのはこいつか……?
「なあ烏……お前、今喋ったか?」
「は?当ったり前だろ。寝ぼけてんのかあるじ様」
多少小馬鹿にされたことなんて気にならないくらい、ラプラスは驚いていた。
吾輩の記憶が正しければ、長い間ずっと側にいたこいつは今までたったの一度だって喋り出したことは無かった。話しかければ多少頷いたり、指示をすれば従っていたことからコミュニケーションを取れることは知っていたが、まさかこんな流暢に話せたなんて……。
「お前……喋れたんならもっと早く教えろよ。吾輩たち、長い付き合いだろ?」
「あん?何言ってんだあるじ様。昨日だって一昨日だって、散々喋ってたじゃねーか」
「何言ってんだはこっちのセリフだ。吾輩はお前と喋ったことなんて今まで一度もないぞ」
「おいおいあるじ様、そりゃあいくらなんでも傷つくぜ?」
吾輩が真面目な口調で烏に問い詰めると、しかし向こうも至極真面目に答えている様子だった。視線も逸らさず、ソワソワと冗談を楽しんでいる様子も無いのでとても嘘をついているようには見えない。一体どういう事だ??
互いの主張が食い違い、結局吾輩たちはどちらも何も言えない気まずい時間を過ごした。
……するとその時、突然室内にビービーという機会音が鳴り響く。なんだなんだと吾輩が部屋の中を一周すると、恐らく音の出所であろうその場所で視線の動きを止めた。
それは、恐らくこの部屋の出入り口であろう扉?の横。そこに着いたモニターから、頻りに発せられているものだった。
「なんだ、呼び鈴か……?」
そのモニターが設置されている位置、また形状からラプラスはそれをインターホンか何かだと推測する。そして、未だ急かす様な呼び鈴が鳴り続けているところを見るに、この部屋に誰かが訪問してきたことを報せているんだろう。
「……なぁ、あるじ様。出ないのか?」
再び、喋り出した烏に訪問者を招かないのかと問われる。見知らぬ場所で目を覚まし、相棒の開口という信じられない現象を目の当たりにしてからの、誰なのか見当もつかない訪問者。それを受け、自分はどう行動すべきなのかとラプラスは考える。
──だが、一瞬悩んだところで、答えは直ぐに出た。
「とりあえず……今は出る以外に、選択肢ないだろ」
そう心に決めたラプラスは、迷いなくその小さなモニターへの接近を試みる。
……しかし、どういうわけかそのインターホンは少し高い場所に設置されており、その上で自分が乗って丁度背丈がぴったり合うような台が足元に固定されていた。──まるで、初めから”吾輩が使うこと”を想定されていたみたいに。
(博士か、幹部の仕業か……?)
全く知らない場所で、自分が使うことを想定された台の存在。その事実に少しの違和感を覚えつつも、一先ずは来訪者の確認を優先すべきとラプラスは高さの合ったモニターを覗き込む。すると、その画面の先には”紫色のロングコートを身に纏い”、まるで牛のような”大きな二本の角を頭から生やした”男が映っていた。
(え、ちょ、怖っ……誰?)
そして当然の如く、ラプラスは警戒する。なぜなら、その画面に映る奇怪な格好をした男が、今までに見たことも会ったことも無い人物であったから。
このモニターがインターホンのような役割を果たしている以上、つまりこの見知らぬ男は今この部屋の前まで来ているということだ。それは吾輩たちのアジトに無断で侵入していることを意味し、もしかしたら自分やメンバーに危害を加えようとしている不審者かもしれないということ。
(…………でも、本当にそうなら……わざわざインターホンとか普通鳴らすか?)
不法に侵入してきた不審者であれば、わざわざ自身の所在を明かす様な行動をするとは思えない。それにそもそもこのアジトへの潜入なんて、吾輩のところに辿り着く前どころか警備システムに掛かるより先にいろはかクロヱ辺りが気が付くだろう。ということは、少なくともメンバーの関係者として許可をもらってここに居るとか……?
(……まあ、だからって直ぐにコイツを信用するわけにもいかないが……)
頭の中でいろいろな考えが浮かびつつ、結局直ぐには答えが出せなかった。今この瞬間にも呼び出した相手は扉の前で待っており、もし普通にお客さんとかだったら失礼なことこの上ない。
……とりあえずは、相手の出方を伺うしかないか。
そう思ったラプラスは、意を決しその男との会話を試みることにした。インターホンのモニター下にあったボタンを適当に押しつつ、出来るだけ毅然とした態度で声をかける。
「お、お前は誰だっ!」
警戒心を完全に拭えなかったために、語気が強くなってしまうのは致し方なかった。
しかし、何故か向こうはそれを全く気にしたような様子もなく、慣れた口調で返事を返す。
「おや、起きておられましたか。おはようございます、”ラプラス様”。私です、我らが崇高なるラプラス・ダークネス様の一眷属にございます」
男はそう言うと、画面越しに礼儀正しく膝をつき頭を垂れた。
眷属…?吾輩に眷属なんて居た覚えは無いが……。
「お、おい、眷属って何の話だ?」
「我々のようにラプラス様に絶対の忠誠を誓った、【ぷらすめいと】の総称のことでございます」
ぷらすめいとだと?それって……もしかして、吾輩のファンネームのことか?
ははーん、なるほど分かったぞ。つまりこいつは生粋のぷらすめいとで、吾輩のファンってことか!それで本物の吾輩に会うために、わざわざアジトまで会いに来ちゃったってわけだ。いやー、吾輩も有名になっちまったもんだなぁ!!
「うんうん、苦しゅうないぞお前!……だけどな、いくら吾輩のファンだったとしてもこんなところまで来ちゃダメだぞ?」
普通に不法侵入罪だしな。とりあえず、後で大空警察に通報しておこう。
「ハッ、お褒めに預かり光栄にございます」
え、いや別に褒めてないんだけど……。
こいつ、状況がわかってんのか?どうやらこれは、ちゃんと注意したほうがよさそうだな。
ラプラスはそう思い、その男に叱責しようとする。
しかし、そうするよりも先に再びあちらが話を始めてしまった。
「……ところでラプラス様、既にご朝食の準備が完了してございます。ご支度が整い次第食堂の方へお越しください」
「え、朝食???」
「はい、本日もシェフが腕によりをかけた物をご用意しております。……それでは、わたくしは先に向かっておりますので、失礼します」
男はそう言うと、颯爽と画面の前から姿を消してしまった。いきなり現れたわりには、退出もあっという間だな。
それに……今、朝食って言ってたか?もしかして吾輩、一晩中寝てたってことかッ?!確か吾輩は、夕飯前に博士の研究室に行ったはずなんだがな……。
眼前で起こる不可思議な状況に、ラプラスは頭を悩ませる。
博士の作ったと思われる『時空を超越する装置』を触った瞬間、突然それが光りだし気付けば知らない部屋のベッドに寝かされていた。そして、寝起き早々突然喋れないはずのペットの烏が喋りだして……と思ったら、今度は眷属を名乗る男が現れ朝食を用意していると言い出した。
……一体、何がどうなってる?
ラプラスはここまでに起きた不可思議な整理しようと、順を追って事態の把握に努める。だが結局、そうしたところで何一つ問題の解決には至らなかった。
それどころか、そこまで考えたところで自分のお腹がくぅと物寂しそうな声を上げる。
「何がなんだかよくわからないが……とりあえず、お腹が減ったのだけは確かだな」
理解しがたい状況ではあるものの、同時に空腹感を感じているのもまた事実。どうやら昨日は夕食を食べ損ねたらしいからな。取り敢えず、難しい話は保留にして先にご飯にしよう。
そう思ったラプラスは、烏を連れ食堂へと向かうことにしたのだった。
********************
「……迷った」
先程目を覚ました見知らぬ部屋を出て、数分……ラプラスは迷子になっていた。
それもそのはず、何故ならさっき眷属と名乗っていたあの男から食堂の場所を聞いていなかったのである。
「それに、薄々気が付いてたが……やっぱりここ、吾輩の知ってるアジトじゃないな……」
部屋を出てからの廊下の造りや間取りの広さから、流石にここがあのボロビルの地下にある空間という意見は否定される。これはもしかして、こよりの作った『時空を超越する装置』が実はちゃんと機能していたとかなのだろうか。その結果、見覚えのないところに飛ばされてしまったとか?
しかしその意見も、吾輩の頭部で太々しくくつろいでいる烏の存在により不確かなものになる。もし見ず知らずの土地に飛ばされていたのなら、あの場にいなかったはずのコイツが一緒に居るのはおかしい。それに、さっきの男についても説明がつかないだろう。
「おい、烏。ここはどこなんだ」
「ん?なんだあるじ様、迷ったのか?食堂ならさっきのところを右だぞ?」
「いや、そういう意味じゃなくて……この場所が一体どこかって聞いてんだ」
「この場所って………【秘密結社holoXの”総本部”】だろ?本当に大丈夫か?」
「holoXの総本部!?なんだそれっ?!」
烏の放ったその言葉に、ラプラスは驚きの声を上げた。
吾輩の記憶が正しければ、そんなものがこの世界に存在しているはずがない。アジトビルの件はともかく、『本部を作れ!』なんて命令を部下にした覚えはないし、総帥である吾輩に黙ってあいつらがこんな大掛かりなものを用意したとも考えにくい。
……ただ、それでも実際には存在しているわけで、となればウチのメンバー以外に犯人は考えられないだろう。もし、仮にこれが身内の誰かによる仕業なのだとすれば……そんなことが出来るのは組織の財布を握っている幹部か、或いは技術力的な意味で再現性のある博士しかいない。
「それって……建てたのは、もしかして幹部か?」
「あん?そりゃあまあ……計画したり、予算運用したのはあの”鷹の奴”だと思うが……実際に建てたのは、holoXの研究部門か建設部門の連中じゃないのか?」
それは博士のこと……なのか?
確かにあいつは考えるのも、作るのも両方できる気がするが……っていうか、あいつ優秀過ぎない?
「研究部門……博士のことか?」
「多分な。詳しいことは俺も知らねー」
どうにもはっきりしないが、烏の話とさっきの男の話、加えてこの現状を鑑みてラプラスは大まかな事情を理解する。見覚えのない場所、大掛かりな施設、そしてドッキリ要素の高すぎる喋るペット……これらから導き出される答え、それ即ち。
「なるほど、そういうことか。つまりこれは……吾輩への”サプライズ”ってことだろっ!」
絶対そうだ、そうに違いない。
この場所だって、普段配信活動や世界征服を頑張っている吾輩に部下の誰かが用意してくれた『セット』に違いない。なるほどそういう事なら、全ての話に納得がいく。眷属を名乗っていたあの男は恐らくスタッフさんか何かで、今回のサプライズ企画のお手伝いさんだ。この烏が喋るのだって、きっと博士あたりが何かしたんだろ。
そうなれば、もしかしたらあの装置はここへの出入り口だったのかもしれない。
「ふんっ、なんだよ……あいつらも可愛いところあるじゃないかっ」
未だネタ晴らしが無い所を見ると、このサプライズはまだ未完成なのだろう。もしくは現在進行形ってところだろうな。ならば、大人である吾輩は気づかぬふりで動画受けする対応や反応をしなければ!
「部下想いの総帥……やっぱり吾輩最強だなっ!」
「……おいあるじ様、さっきから何一人でぶつぶつ言ってんだ?」
まあ、そういうことなら一旦この不可思議な現状は解決したという事にして……せめてさ、食堂への道はわかりやすくしておいてくれませんかね?道案内もいないし、普通に迷ってるんだがっ!?サプライズのネタ晴らしが仮に食事処で行われるとしたら、所々お粗末な点が目立つだろ。
「詰めが甘いというか何というか……この企画の考案者、誰だよ……」
そんな誰に届けるでもない独り言が、ラプラスの口を付いた。どっちに進めば展開は進展するのかもわからず、辺りをキョロキョロ眺めつつ歩を進める。
……すると、歩いていた廊下の先から丁度誰かが歩いてくるのが見えた。それは先程同様見覚えのない人物であったが、今回はそれが”女性”であるということに多少なりとも安堵を得る。
まあ、その人もあの眷属とかいう男と同じようにえらく悪目立ちする紫色のロングコートに、頭に2本の角を生やしているが。
(あ、もしかして他のスタッフさんかな?なら、道を聞いたら教えてくれるかも……)
ラプラスはそう思い、その人に声をかけようと近づく。
──しかし、こちらに気が付いたらしい彼女は何故か慌てた様子で片膝をつき、いきなり頭を下げてきた。
「こ、これは失礼しましたっ。おはようございます、ラプラス様!!」
まるで、曲がり角でいきなり王様にでも出くわしてしまったかのように。その女の人は礼儀正しく頭を垂れ、こちらに敬いの姿勢を見せてきた。
だが、そんな彼女の焦った態度を見て、ラプラスは大体のことを察してしまう。つまり、今吾輩がここにいることはサプライズをする上での謂わば”イレギュラー”なのだろう。だからこんなに慌ててるんだな。
ラプラスはそんな事実に少しばかり申し訳ない気持ちを抱きつつ、彼女らの企画の軌道修正の為にも道を尋ねることにした。
「あー…はい、おはようございます。……あの、ちょっと申し訳ないんですけど、吾輩を食堂まで案内してくれませんか?」
「えっ、食堂に…………?はっ!い、いえ、かしこまりましたっ!お任せくださいっ!!」
その女の人は一瞬「何故?」みたいな顔をしたが、直ぐに何かに気が付いたようにこちらの要求を承諾してくれた。そしてすぐに立ち上がり、「こちらです」と言って吾輩の案内を始める。
それにしても……ここ、あまりにも広すぎないか?サプライズするにしたって手が込み過ぎだろ。まあ、吾輩は楽しければ何でもいいんだけど……。
ラプラスはそんな事を思いつつ、セットの大掛かりさに圧倒されながら廊下を歩く。そうしてしばらく進んだところで、案内をしてくれていた女の人が突然両開きの大きな扉の前でピタッと足を止めた。
「こちらが食堂です、ラプラス様。もしかしてこれから朝食でございますか?」
朝食、というのは何かの隠語か?そういえばさっきの男性スタッフがお食事を用意してるとか言ってたから、美味しいご飯でお祝いでもするってことなのかな?
「あぁ…はい、そうみたいですね。……そうだ、よかったら一緒に食べます?」
「えっ!?あ、いや……そ、そんなの恐れ多いです!ラプラス様とお食事なんて……」
「あっ、そうですか……」
どうせ祝い事ををするなら人数が多い方がいいと思ったのだが、残念ながらその誘いは断られてしまった。まあ、ネタ晴らしをした後にでも参加してくれるだろう。
ラプラスはそう勝手に解釈し、目の前の扉に近づく。すると自動でドアが左右に動き、室内が露わになった。部屋の中央には大きな長テーブルが縦方向に置かれ、そこに向かい合うように幾つかの椅子が並べられている。また壁や机上は飾りつけをされている……というわけではなかったが、明かりや色味で豪華に見える造り自体は施されているようだった。やっぱり、まだ企画の途中だったのか?
ラプラスは室内を見渡しつつも、そのまま中に足を踏み入れる。すると、入ってすぐのところに先程の眷属を名乗った男が立っていた。
「お待ちしておりました、ラプラス様。本日は”鷹嶺ルイ様”もご一緒されるとのことでしたので間もなくご到着されると思います。どうぞ、お先に座ってお待ちください」
男はそういうと、吾輩を一番奥の上席に案内してきた。一先ずはそれに従い、席に着くことにする。
しかし……今、こいつ幹部も来るって言ったか?もしかして、幹部も”サプライズされる側”の立場なのだろうか。
「おい、さっき鷹嶺ルイって言ったか?幹部もここにいるのか?」
「はい、いらっしゃいますよ。ルイ様は今朝のご予定は特に無いとのことでしたので」
んー?ということは、もしかしてそれ以外のメンバーとスタッフさんによる催しなのか??いや、もしかしたら運営さんからholoX全体へのお祝い事ってことかも……あれ、でもさっきここの用意を計画したのは幹部って烏が言ってたような……?
「……おや、噂をすれば。ルイ様がご到着のようですよ」
男がそう言ったのとほぼ同時、再度食堂の扉が開いた。
それを受け、ラプラスは一度考えていたことを中断しつられてそちらに視線を移す。すると、丁度そこからよく見知ったholoXの女幹部こと【鷹嶺ルイ】が部屋に入ってくるところだった。……なんか、あいつの姿を見るとちょっとだけ安心する。なんたって、ここで目が覚めてから知らないヤツにしか会えてなかったからな。(烏とは喋ったことは無かったし……)
ラプラスは見慣れているが故の安心感を抱きつつ、ルイの方を見ていた。
そして、同じくこちらに気が付いたらしい幹部が口を開く。
「あら、おはようラプ。久しぶりね、こうやって一緒にご飯を食べるのは」
意外過ぎる第一声に、ラプラスは思わずきょとん顔をする。てっきり、最初の吾輩と同じように「何がどうなってるの!?」みたいな感じで来ると思ってたのに……ということは、やっぱりコイツも仕掛け人側ってことか?だってそうだ、久しぶりも何も吾輩の食事は毎日幹部が作ってくれている。そして勿論、その時に皆一緒にご飯を食べているのだ。
……つまり、これは場を繋ぐための雑談的なものだろう。コイツは黒確定ってことだな。
「なにが久しぶりだ。昨日だって一昨日だって一緒にご飯食べてただろ」
そうと決まれば目立つ粗をとことん突っついてやろう。何も知らされずにこんなところまで連れてこられたのだから、これくらいの意地悪は許されるはずだ。
「何言ってるのよラプ、私昨日まで外部任務でアジトに居なかったのよ?ほら、この前言ってた惑星の征服が完了したからその後始末とかにね。今まで通り、星の住人は捕虜でいいのよね?それと、何人かの有用な人材は予め引き抜いておいたから」
……ん?
ちょっと待って……え、何の話?惑星の征服??捕虜???
「お、おい幹部、一体何の話を……」
「あ、そうだラプ。近いうちにholoXの各部門の上層構成員達を全員集めて会議しようと思ってるんだけど……ラプも参加してくれない?今後のholoXの征服活動についてあなたからも指示を出してほしくて」
全く理解のできない内容に対しラプラスは異議を唱えようとするが、それに構わずルイは話を続けてしまう。ていうか、holoXは吾輩を含めても5人しかいないのに上層もへったくれもなくないか?
「上層、構成員?……つったって、うちには吾輩以外4人しかいないだろ」
「あ、いや今回は四天王以外のメンツも呼ぶつもりなの。各部門の代表やその補佐員なんかもね。……でも、そうね。ラプが先に私達だけで話し合った方がいいって言うならそうするわ。そっちの方が組織全体に正確に指示が伝わるだろうし……」
組織全体????
だから、全部で”五人”なのだからそこで話し合えば終わりなんじゃないのか?どうにも、吾輩と幹部の話してる内容には齟齬が生じている気がする
「ちょ、ちょっと待て幹部!四天王って何の話だ!?それに、各部門って……holoXは全部で”5人だけ”だろ!?」
「何の話って……ラプが言い出したんじゃない、私達のことを四天王って呼ぼうって。……それに、holoXが5人だけだったのってすっごく昔の話でしょ?今や秘密結社holoXは総勢”数百万人”を誇る大組織。──総帥であるあなたが、私達を導き続けてくれたおかげでね」
…………は??
それ以外の言葉が出てこなかった。
holoXが……大組織!?あのたった5人しかいなかった、なんちゃって秘密結社が!?!?
あまりの衝撃的事実に、ラプラスは驚愕を隠し切れない。
「どうしたのよ、そんな驚いた顔をして。……まあ確かに、結成当初のあなたと二人だけだった頃に比べれば私もこんなに大事になるなんて思ってもいなかったわ。今までだって色々なことがあったし、一時はどうなることかと思ったけど…………でも、あなたは何も間違っていなかった」
そう言いながら、さっきまで立って話していた幹部がこちらに近づいてきた。そして、そのまま吾輩の前で礼儀正しく片膝をつき自分を仰ぎ見る。その様子に、ラプラスは只々驚愕していた。
「……我らが総帥、ラプラス・ダークネス様。私を含め、holoXのその全てがあなたについて行きます。どうかあなた様の崇高なる目的のため、今後も我らを存分にお使いくださいませ」
「「「 YES MY DARK !!」」」
いつの間に控えていたらしい、数名のスタッフ……いや、”眷属たち”が幹部に合わせて吾輩に頭を垂れる。その光景は、ラプラスがholoXを結成した当初思い描いていた組織の理想像そのものであった。
……なのに、何なのだろう。
この心に残った、気持ち悪いモヤモヤとしたものは。
「……もう……何が、何だか……」
理解のできぬ現象に、彼女は目を回す。
……だがこの日、【ラプラス・ダークネス】はこの宇宙で最も恐れられる最強の組織、秘密結社holoXの総帥へと生まれ変わっていた────。
この作品にモブキャラが登場することに関して、どのように思いますか?(1番近いものに投票してください)
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特に思うことは無い
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物語が面白くなるなら出してもいい
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特定の名前などが無ければ出してもいい
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できるだけ出さないで欲しい
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絶対に出さないで欲しい