転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
【追記】
さて今回は、今後たくさんの出番を"用意していない"おかころについて深堀していきます。個人的におかころ大好きなんですが、世界観的にあんまりイチャイチャさせてあげられなそう……。
【猫又おかゆ】はフレンズ王国の城下町にておにぎり屋を営んでいる祖母と一緒に暮らしています。子供のころから家の手伝いとして、おにぎりを握ったりしていました。今は半分独立してフブキ王の下で給仕兼お世話係として働いています。ころさんのことはとても仲のいい、友達以上の相手であると思ってるみたいです。
また猫又の祖先には霊力を使いこなした達人がいるのですが、今のところおかゆんにはその才がありません。ここまでに出てきた名前のある獣人の中では一番弱いです(非戦闘員)。
【戌神ころね】も同じく、城下町にて実家がパン屋を営んでいます。そのパンは特に子供たちに人気があり、またころさんも看板娘として町の男たちに一定の人気があります。しかし、どうやら自らパン屋になりたかったわけでは無いらしく、今は『大好きなおかゆに誘われたから』という理由で同じく世話係兼おかゆの護衛としてお城で働いています。
また、彼女の家系は代々全くもって霊道の才がありません。しかし何故か一般の獣人兵士以上のフィジカルを持っています。鍛えた理由を本人に聞くと「おかゆを暴漢から守るため」なのだそうです。
「……初めまして、holoXの総帥ラプラス・ダークネス様。私はフレンズ王国初代国王【白上フブキ】と申します」
この建物の外装的に、先代国王でも隠居しているのかと思ったが……まさか、初代かつ現役の王様がいるとは思わなかった。
白上フブキ。
ラプラスが元いた世界では、ホロライブの一期生兼ゲーマーズ所属の先輩であった。その頃からフブキングというあだ名が付けられていたのだが、どうやらこっちの世界では本物の王様をしているらしい。そもそもの話、吾輩達はフブキ先輩に会うためにここまで来たのだ。色々あって、結局話せず終いだったのだが……。
「あー……えっと、これってどういう状況なんだ?」
その場の状況を理解できないラプラスがそう口にした。
この国の王様がここに居る理由もわからないし、こんな夜にわざわざ吾輩を呼んだ理由もわからない。それに王であるフブキ先輩が吾輩を呼びつけたのなら、何であんなにコソコソしていたんだ?
「あ、すみません。いきなりこんなところに呼び出したりして、驚かれてますよね。…………実は黒ちゃn……黒から、あなたと過ごした数日間と、先日起きた事件についての話を聞いたのです」
「黒から……?」
吾輩たちと過ごした数日間というのは、要は吾輩の捕虜となり交渉を持ちかけた話だろう。そして先日の事件というのは、吾輩がミオ先輩やあやめ先輩の罠にはまって囚われの身となった話か。こちらの事情を先に黒様がしてくれていたなら、話が早くて助かるな。
しかし、何だかフブキ先輩の言い方に違和感があるように思える。交渉の件はともかく、まるで吾輩たちを捕らえることを想定していなかったかのような感じだ。あの時にもおかしいと思ったが、やはりあのミオ先輩とあやめ先輩の行動はフブキ先輩とは関係なく、彼女たちが独断でやったことだったんじゃないのか?
「なあフブキ王……もしかして、先日の吾輩たちを罠にかけた件について、お前は何も知らなかったんじゃないか?」
「っ!…………はい、実はその通りなのです。私は、あなた方にその様な無礼を働くように指示をしておりません。……信じてもらえるかはわかりませんが」
吾輩の疑問に対し、フブキ先輩は力なく頷いて肯定した。
やはりそうだ。あの時、あの場にフブキ先輩がいなかった時点でおかしいと思っていたのだ。あの温厚で人一倍責任感のあるフブキ先輩が、例え吾輩たちを騙すためとはいえこちらの陣営や町の人に被害を出すような行動を起こすだろうか。飛空車を撃墜すれば乗っている眷属は勿論、墜落した先の人々にも影響が出る。それに吾輩を迎え入れる時だって、フブキ先輩本人が同行したがるはずだ。
しかし、これらの一連の行動がフブキ先輩本人の意向で無いというのならようやく納得がいく。
「別に信じるぞ。……元々、吾輩もおかしいと思っていたんだ。あの正義感が強くて、実際の争いごとが嫌いなフブキ王のする事じゃないってな」
「……そう言っていただけると、ありがたいです。……本当に、私のことを知っているんですね」
あっ……またやってしまった。あんな言い方をしたら、自らフブキ先輩の人柄を知っていると公言しているようなものだ。な、何とかごまかさないとっ!!
「……黒から聞いていました。ラプラス様が私のことを知っていて、会いたがっているという話を。実は、ここにあなた様を呼ぼうと提案したのも黒なんです」
「……えっ?」
ラプラスが自分の失言に対し動揺していると、しかしそのことに対して特に疑問視していないらしいフブキ先輩が続けて言った。しめたっ!このまま話題をそらしてしまおう。
「くっ、黒が吾輩をここに呼んだのかっ?」
「………………そういう、約束だっただろ。お前をフブキに会わせて話を通すって……ちゃんと連れて来てやったんだから、これでもう文句を言われる筋合いはないからな!」
話題転換の為にラプラスがそう言うと、黒様がバツの悪そうにそっぽを向きながら答えた。こいつ……ツンデレか?
しかし、約束かぁ……確かに黒様と吾輩は、そういう約束をしていた。黒様たちの身の安全を保障する代わりに、フブキ先輩に会わせるようにと。でもお互いが把握していなかったアクシデントのせいでそれはなぁなぁになってしまっていた。それなのに、未だにそれを守ろうとしてくれていたとは……。
「……黒って、案外情深いんだな。いや、律儀って言うべきか?」
「は、はぁぁぁあ!?何言ってんだ、そういうんじゃないだろこれはっ!!」
吾輩からすれば、状況が変わりすぎてもはや無意味な約束事だと思っていた。それに、今となっては色々と考えていたフブキ先輩との交渉事も、もうとてもこちらから言いだせる感じではなくなってしまったしな。なんたって、吾輩は今囚われの身なのだから。
「……でも、それならその交渉の話をするために吾輩をわざわざここに呼んだのか?だったらもっとこう……ちゃんとした場でもよかったんじゃないのか?ていうか、そもそもこの状況的にもうこっちから何かを要求する事なんてできないぞ。今の吾輩は、見ての通りなんだからな」
ラプラスはそう言いながら、縛られている両手を前に掲げた。
それにこっちの目的に関して詳しい話を聞いていたのなら、例え想定外だったとしても今の状況はそちらに好都合のはずだ。フブキ先輩も争いごとで解決しようとは思っていなくたって、我々holoXのことを邪魔だと思っているだろうに。ならばこんなところで話なんかしてないで、総帥である吾輩を有効活用できる方法を考える方が堅実的だ。
しかし、そんなラプラスの発言を黒上フブキは首を横に振って否定する。
「いや、さっきのは言葉の綾だ。ラプラスをここに呼んだのには、別の理由があるんだよ」
「別の理由だと?」
「あ、それについては私から説明させていただきますね」
どうやら、フブキ先輩たちが吾輩をここに呼んだのには別の理由があるらしい。でもこんな夜にわざわざ呼び出す用事なんて、一体何なのだろうか。
そのことについてラプラスが疑問に思っていると、フブキ先輩がとても真剣な表情を浮かべて吾輩の方を見つめてきた。
「ラプラス様をここに呼んだ理由なのですが…………単刀直入に言うと、あなた様に私達を”助けて欲しい”からなのです」
助けて欲しいだと???吾輩に?
いまいち話が読めずに、ラプラスは首を傾げる。
「フブキ王、一体どういう事なんだ?」
「言葉の通りです。私達には、どうしてもあなた様の力が必要なんです。……その為に、黒やおかゆに無理を言ってこの場を作ってもらいました」
言葉の通りって言われてもなぁ……。一体何から、どう助けろって言うんだ?
フブキ先輩のざっくりとしすぎた会話内容に、ラプラスは要領を得られないでいた。すると、さっきから姿の見えなかったおかゆ先輩が、下の階からおにぎりとお味噌汁の入ったお盆を持って上がってきた。
「フブキちゃん、ちゃんと1から説明したほうがいいんじゃない?ずっと牢屋に居たラプちゃんは多分何も知らないんじゃないかなぁ……あ、これラプちゃんのご飯ね。今縄ほどいてあげるから」
「おかゆさぁぁん!待ってましたっ!!」
そういえば、黒様とフブキ先輩に出会えた衝撃ですっかり忘れていたが、吾輩お腹ぺこぺこだったんだ。
早く食べたいという気持ちを抑え、おかゆ先輩に手の縄を解いてもらう。そして、久しぶりに両手が自由となったラプラスはそのままおにぎりにかぶりついた。
「あ、そうですね。私としたことが、事を急いてしまいました。ちゃんと初めから話しますね……」
「ムグ、ムグ、ムグ……美味しい、美味しいよぉ……」
フブキ先輩が何か言っているようだが、生憎今の吾輩の意識は目の前の白米にしか向いていない。地味にこっちの世界に来てから初めてお米を食べたし、具も梅干しにおかか、昆布と好物なものばかりだった。それに空腹というスパイスが加わり、余計に手が止まらない。
「おい、ラプラス……腹が空いてたのはわかるけどよ、ちょっとはこっちの話を聞けよ……」
「あははは、ラプちゃん美味しそうに食べてくれるねぇ。僕も作った甲斐があるよ」
「………………ちょっと可愛い……ラプちゃん、てぇてぇ……」
三人が何か言っていたようだが、やはり今のラプラスの耳には届いていなかった。
結局、拳大の大きさのおにぎり三つとお味噌汁を僅か数分ほどで完食してしまった。お腹が膨れ、幸せな満腹感がラプラスを襲う。
「吾輩、こんなに美味しいおにぎり食べたの生まれて初めてだ……」
「お粗末様でした。すっかり食べ切っちゃったねぇ」
「……コイツが、ホントにあのholoXの総帥かよ……」
「幸せそうな笑顔のラプちゃん……たまらんっすわぁ…………」
おかゆ先輩は感心しており、黒様は呆れている様子だった。……なんか、フブキ先輩息荒くしてないか?
まあ、前から言っているが人間空腹を感じている間は思考も心も貧しくなるというものだ。腹が空いては戦はできぬというがあれは本当に的を得ていると思う。
長らく我慢していた飢餓から解放されたラプラスが、ようやくフブキ王の話を聞く態勢になった。
吾輩に助けて欲しいという話だったが、一体どういう事なのだろうか。
「待たせたな、フブキ王。さっき話してたことについて、詳しく聞いてもいいか?」
「えっ?……あ、はい…………こほん。それじゃあ、最初から説明しますね。今我々が置かれている状況について……の前に、まずはコレを見てください」
フブキ先輩はそう言いながら、白い着物で隠れていた足元を晒した。すると何故か、左足首が鎖によってその場に拘束されているようだった。その光景にラプラスが驚いていると、更に先輩が右腕の袖をめくってそこについている銀色の腕輪を見せてきた。
「なっ……お、おい、それどういう事だ?」
「……見ての通りです。私は今、大神ミオと百鬼あやめによってこの場に捕らえられているんです。それとこの腕輪は、特殊な鉱石が使われており我々獣人族の霊力を使えなくする効果があります」
その話を聞いて、ラプラスは再度衝撃を受ける。
何故この国の王である彼女がこんなところで捕まっているのだろうか。それも囚人待遇というわけではない。この場所的に、まるで事態から遠ざけているような……そんな印象を受ける。
「本来、その腕輪は霊力を扱えるような実力者の罪人を捕まえる為のものだ。フブキもこの国の中じゃ5本の指に入るほどの霊道の使い手なんだが……それのせいで、大人しく捕まらざるを得ないってわけだ」
黒様がそう補足説明をしてくれた。ラプラスも霊力について詳しいことは知らないが、ここに来るまでの間に多少は勉強していた。確か精霊を使って魔法みたいなことができる力のことだったはずだ。それを封じられているとは、なるほど逃げらない訳だ。
「状況はわかった。で、どうしてそんなことになってるんだ?」
「それは……私の意見を、二人に聞き入れてもらえなかったからなのです」
フブキ王はそう言いながら、この国に起こったことについて事細かに語り始めた。
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あれは初春のころ、まだ冬の冷気の残っていた真夜中のことだった。
その時私は、王の業務を片付けるべくミオと二人で書斎にて書類作業をしていた。
「はあーー……終わらん……」
「そうだねぇ。でもあと少しだけだし、もうちょっと頑張ろうよ”フブキ”」
「わかってるけどさぁ、多すぎて嫌になっちゃうよ……”ミオ”も、手伝ってくれてありがとうね」
彼女は私の部下であり、親友でもある【大神ミオ】だ。
彼女の役職は『獣人部隊の隊長』であり、本来こういった雑務を担当する者ではない。にも関わらず、こんな時間まで付き合ってくれるなんて本当にありがたいことだ。
「全然気にしなくていいよ~、ウチが好きでやってるだけだからさ」
「ミオぉぉ……やっぱり、持つべきものは友達だよねっ!黒ちゃんなんか、もうとっくに寝ちゃったしさぁ。ホント薄情だよ」
そう言った私に対し、ミオは苦笑いで答えていた。
ここは、この星に住むありとあらゆる種類の獣人たちが暮らす国【フレンズ王国】。私はそこで王様をしている【白上フブキ】だ。
この国……いやこの大陸では、十年ほど前まで『種族間戦争』という戦争が起こっていた。内容は簡単に言えば、習性や文化の違いなどを理由に他種族同士で争っていたというものだ。そういったいざこざ自体はもっと昔から起こっていたのだが、変に技術力や霊道が発展した結果、此度の戦いは歴史上でも最も規模の大きなものであった。
私が生まれた頃には既に戦争は激化しており、物心ついた時から他種族への遺恨を植え付けられていた。
しかし、その時の私はそれを疑問に思っていた。
どうして同じ星に住む我々が、争う必要があるのだろうか。きっと、もっと平和的に解決できる手段があるのではないか。皆が皆、手と手を取り合って暮らせる場所があってもいいのではないかと。
そんな小さな疑問が、当時まだ十数歳ほどであった少女を動かした。
私は生まれながらにして身に宿していた霊力の才と、その人望で同志を集めた。そしてなんと、長年続いた戦争を終結させてしまったのだ。その結果、誕生したのがこの世界で最も自由な国【フレンズ王国】であった。ここでは種族間の差別を法律によって禁止にしており、それぞれの特徴を活かした政策を目指している。
我ながら、本当によくやったものだと思った。
この長かった道のりにはミオや黒ちゃんの協力は勿論、隣国にある【鬼の国】の百鬼王にも助力頂けたのが大きかった。私に力を貸してくれた一人一人に、本当に感謝しなければならないな。
「……まあその結果、こうして夜中まで書類作業に追われているわけなんですけどね」
確かに白上フブキはみんなが平和になることを願った。でも、まさかその後にできる国の王様までやらされるとは想像だにしていなかったのだ。いや、まあ普通に考えたら元々あった体制に対してクーデターをしたようなものなのだから、それに成功した暁にはその後も指導者になるのは当然か。
しかし、勿論そうなった事に対しての後悔はない。なぜなら、最近では城下街を歩いていると子供たちに笑顔を向けられるからだ。それはつまり、この時代が平和であることを意味している。そんな国を作れたのなら、私の生涯の努力も報われたというものだ。
白上フブキはそんなことを思いながら、引き続き必要書類に目を通していくのであった。
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「ねえっ!フブキ!!起きてっ!!!」
「うーん……みおぉ……?」
どうやら、仕事の途中で眠ってしまったらしい。そんな中、酷く慌てた様子のミオに叩き起こされた。
「あ……ごめん、寝ちゃってたみたい……仕事の続きするね……」
「いやいや、それどころじゃないよ!!大変な事になってるんだよっ!!!」
てっきり仕事中に居眠りしてしまったことを怒られると思っていたのだが、どうやらそれどころではないらしい。ようやく覚醒してきた脳みそを使って、ミオに疑問をぶつける。
「もう、そんなに慌ててどうしたの?」
その時、私はおちおちと眠っていた自分を殺してしまいたくなった。
ミオから聞いたその言葉が、私の心に深く突き刺さったから。
「今朝あやめから連絡があって、お母さんが殺されたんだってっ!!!」
それが、これから始まる私の人生の中で最も最悪な数日間の始まりだった。
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