転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第13話です。こちらも遅くなってしまい申し訳ありません。
さてさて盛り上がってまいりましたね、フレンズ王国編!(始めて言った)。もう間もなく、第一章もクライマックスとなります。あ、シリーズ自体はまだ続くのでご安心ください。早くござるさんやぽえぽえさんを書きたい……。

【追記】
さて今回の設定深堀シリーズは、フブキ王の終結させた『種族間戦争』についてです。こちらも本編ではこれ以上詳しくやるつもりは無いので、ざっくり概要を説明しておきます。


獣人族の住まう『とある惑星』では、知性無き獣であった時代からナワバリ争いが絶えませんでした。二足歩行となった今でもそれは変わらず、集団・集落・市町村・国と各種族の規模が大きくなるにつれて、その争いも激化していきました。そんな長い闘いの歴史の中で、最も新しい戦争の名が『種族間戦争』と呼ばれるものでした。彼らは基本的に、他種族に対し差別的な意識を生まれつき持っています。自分より劣っている生物を見下し、自分より強い相手には群れて対抗します。
しかし、どんな世にも変わり者というものがいるのです。小さな村の神社で育ったその少女は、生まれつき他の人には無い特別な霊力が宿っていました。そしてその少女は、そんな世界の現状に疑問を持ち革命を起こすことを決意しました。

彼女は同じ意思を持ってくれる同胞を集め、蔑まれ続けた弱い種族を味方につけました。更には圧倒的な力を誇る鬼の王を納得させ、そしてついに数十年に及んだこの戦争を終結させたのです。誰にもできないような、考えもしなかったその結果に彼女は満足し、その土地に新たな国を作ったのです。

……その国の名は【フレンズ王国】。また、その国の初代国王を【白上フブキ】と言いました。
今後何世代にもわたって、彼女のこの功績は受け継がれていくことでしょう……【フブキング】という名とともに。


第13話 『”襲来”』

 

 

「……仲良くなる手始めに、お互い敬称は辞めにしないか?吾輩、あんまり様付で呼ばれるの好きじゃないんだ」

 

 

おかゆ先輩におかわりのお茶を入れてもらっている最中に、ラプラスは唐突にそんなことを言い出した。

フレンズ王国の国王白上フブキと、holoXの総帥ラプラス・ダークネスが同盟を結んだ数分後、引き続き吾輩たちは今後の動きについて話し合っていた。

 

そんな時に唐突に発せられたその言葉に、言われた相手は困惑したような表情を浮かべた。

 

 

「えっ、それは構いませんけど……いいんですか?」

 

 

「もちろんだ。吾輩たちは対等な立場なんだから、敬語も無し!今後は、吾輩もフブキって呼ぶからな」

 

 

そう言って、ラプラスはフブキ先輩にビシッと人差し指を立てた。本音を言うならフブキ先輩と呼びたいところだが、それではどっちにしても対等じゃなくなっちゃうからな。

 

そして、そんな吾輩の提案をフブキ先輩は「はぁ…」と息を吐いてから答えた。

 

 

「わかりまs……わかったよ、ラプちゃん。これでいい?」

 

 

フブキ先輩に”ラプちゃん”と呼ばれ、ラプラスは無性に嬉しくなってしまった。

ここに来てから、ほとんどの知人から恐怖や恨み、怒りといった感情しか向けられていなかったから……表面上だけだったとしても、フブキ先輩との距離が縮んだ気がして心が踊った。

 

 

「ラプちゃんが満足ならいいけど、流石に公の場では敬語を使うからね?……まあ、白上としてもあんまり敬語は好きじゃないから、こっちの方がありがたいけどさ」

 

 

そう言いながら、フブキ先輩は正座も解いて楽な姿勢に座り直した。以前のような先輩後輩の関係にはまだ遠いが、傍から見れば友達同士くらいには見えるだろう。実に対等的だ。

 

ラプラスがそんなことを思っていると、丁度お茶を入れ終わったらしいおかゆ先輩が吾輩たちの態度を見て口を開いた。

 

 

「ここに来た時に比べて、随分と柔らかい雰囲気になったねぇ~。あ、これおかわりのお茶だよ、熱いから気を付けてね」

 

 

そう言いながら手渡してくれたお茶を受け取り、ラプラスはほんのりと香りを吸い込んだ。さっきまでは重い話をしていたのであんまり味わえなかったが、おにぎり屋の孫だからなのかおかゆ先輩のお茶はとてもいい匂いがした。

 

 

「あ、ありがとうございますおかゆさん!おかゆさんの入れてくれるお茶、とっても美味しいです」

 

 

「そう言ってもらえるとうれしいよ~。でも、別に僕のことも呼び捨てでいいんだよ?」

 

 

いや、それはまあ何というか……これはころね先輩にも言えることなのだが、吾輩の立場関係なく施しを受けた先輩にはどうしても敬称を付けたくなってしまう。これは距離をとっているというわけではなく、単純な尊敬や尊重などによるものだ。なのでそれについては、今後もこっそり継続するとしよう。

 

 

「けっ、くだらねぇ……呼び方なんて、何でもいいだろ」

 

 

「なんだ黒、仲間に入れてもらえなくて寂しいのか?まあ、お前は最初っから初対面の吾輩に敬語の一つも使ってなかったけどな」

 

 

まあ、それが救いにもなっていたことは内緒だ。

黒様のいい意味でどんな時も変わらないその態度は、吾輩にとってはこちらの世界の先輩たちも変わりないだろうという希望に繋がる。本人には言えないが、黒様には感謝しているのだ。

 

 

「んなわけないだろっ!!仲を深めるとかは後でもできるんだから、それよりも大事なこれからどうするかについて話し合えって」

 

 

それは遠回しに、吾輩と仲良くしたいという事なのだろうか?実際に口に出したら怒られてしまうので言えないが、もし本当にそう思ってくれているのなら嬉しいことこの上ない。

 

 

「……まあでも、黒の言うとおりだな。もうすぐ日も昇る頃だろうし、ここからの吾輩たちの行動について話しを付けようか」

 

 

そう言いながら、ラプラスは窓から外の方を眺めた。どうやら、随分と長い間話をしていたらしい。東の空から、太陽のような光がうっすらと見え始めていた。

 

 

「とりあえず私達でやらなきゃいけないことは、holoXからの攻撃を阻止することとフブキに付けられている腕輪を解除することだ。腕輪については、恐らくミオに事情を話せば何とかなると思う。あいつも平和的解決方法があるって言うなら、またフブキ側についてくれるはずだからな」

 

 

まあ、恐らくはその通りだ。

ミオ先輩はあくまで吾輩たちと戦いたいわけではなく、自分の大切な人達の安全を願っての行動だったのだ。であるならば、フブキ王からこちらに争うつもりがないと説明してくれれば納得してくれるだろう。

 

 

「holoXに関しても、吾輩自ら言えば攻撃をやめるはずだ。……ただ問題は、吾輩に連絡手段がないことだな。手紙でもいいんだが、ここから基地までだと間に合うかどうか……幹部からの果たし状には、攻めてくる日時とかは書いてなかったのか?」

 

 

「普通、人質を取られている敵にそんなこと書くと思うか?」

 

 

「いや、書かないな」

 

 

まあ、それはそうか。既に人質をとるという卑怯なことをしている相手に、わざわざ親切に情報を与えるような真似はしないだろう。となると、holoXが攻撃を始める日時は憶測になってしまう。

 

 

「こっちの基地には博士がいるが、先日の件があるし一人で先立って行動を起こすとは考えにくい。それに手紙の差出人が幹部なら、少なくとも幹部が到着してから攻撃を始めるだろうな……」

 

 

そうなると、吾輩達の乗ってきた宇宙船でここへ来るまでに約三日かかった。博士があの後基地に戻って、直ぐに本部にいる幹部に連絡したとして……準備や移動を考えても、後一日以上は猶予があるだろう。ただでさえ移動に時間がかかるうえに、半分戦争の準備をするようなものだからもっとかかってもおかしくない。

 

 

「これはあくまで予想だが、後1~2日程は猶予があると思う。ただ……ここからこの星にあるholoXの拠点まではかなりあるし、少なくとも吾輩が一人歩いて行ける距離じゃない」

 

 

加えて、国内の機能がマヒしている今手紙が正しく指定した位置に届くのかもわからない。というか、この国には国外へ手紙を届ける手段とかあるのか?

それに、吾輩は基地までの道のりをおぼろげにしか覚えていない。たったの一度、飛空車の窓からなんとなく外を見ていただけなのだから仕方のないことだが、少なくとも500km以上は離れていたと思う。

 

 

「報告によれば、確かラプちゃんたちは四角い板?みたいなので連絡を取ってるらしいって話だったような……ラプちゃんはそれ持ってないの?」

 

 

「……悪いが持ってないんだ。吾輩は普段、わざわざ前線に立たないからな」

 

 

フブキ先輩の言っているものは、恐らく博士も使っていたスマホのような端末のことだろう。決まった相手としか会話ができない代わりに、かなり離れていても通話ができる優れものだ。しかし、普段は本部からほとんど出ないらしいラプラスはそれを所持していなかった。

 

 

「そっか……それじゃあどうしよう。どうにかして、攻撃が始まる前にholoXの人達にラプちゃんの意思を伝えないと……」

 

 

そこまで言って、フブキ先輩が頭を抱えてしまった。

一応奥の手として拘束具を一部外すという方法もあるにはあるのだが、正直これはあまり使いたくない。リスクが怖いというのもあるが、単純に力を開放することに抵抗があるのだ。今までの記憶にある限り、ずっとこの身に纏わりついていた楔たち。こいつらを手放すことに、ラプラスは名残惜しさを通り越して恐怖すら感じているのだ。

 

どうしたものかとラプラスも考えていると、再び黒様が口を開いた。

 

 

「はぁ、しょうがないな……私がおぶってってやるよ。ラプラスをお前らの基地までな」

 

 

「……は?」

 

 

あまりにも唐突過ぎる黒様の提案に、吾輩は困惑することしかできなかった。

今こいつ、吾輩をおぶるって言ったのか?あの長い道のりを、ずっと???

 

 

「お、おい黒、お前意味わかっていってるのか?お前も飛空車に乗って来たんだから、どれくらいの距離かわかってるだろ?」

 

 

「ああ。意味はわかってるし、基地の場所も大体覚えてる。あれくらいの距離なら休憩を挟んでも、半日もあれば着くだろ」

 

 

お、恐るべし獣人の身体能力……。

黒様が特別なだけかもしれないが、あの道のりをたった半日で踏破してみせると豪語するとは……。

 

 

「わ、吾輩は別にそれでも構わないが……本当にいいのか?」

 

 

「それしか方法がないんだから、仕方ないだろ。……それよりも、問題は他にもある。”あやめをどうするか”って話だ」

 

 

黒様にそう言われ、ラプラスは瞬時に話の要点を理解する。

平和的解決を望んでいるミオ先輩はともかく、吾輩はたちをただ恨んでいるあやめ先輩がこの話に納得するとは限らない。下手をすれば、そんなことはさせまいと吾輩を早急に処分しようと考えてもおかしくはないのだ。

 

 

「ああ見えて、あやめはかなり強い。この星の中じゃ、恐らく最強クラスだ……仮にあいつが本気で私たちの後を追ってきたとして、バレるのが早ければいくら霊力を使ってても追い付かれるぞ。そうなった場合、ラプラスを庇いきる自信が私には無い」

 

 

それについては、確かに同意する。

そもそも、吾輩は今地下牢から脱走している真っ最中なのだ。あの眠っていた見張りの兵士だってそのうち目を覚ますだろうし、いつこの密会がバレてもおかしくはない。

 

 

「ラプちゃん、黒ちゃん……それについては、私に任せて欲しい。王としての威厳にかけて、必ずミオとあやめを説得してみせるから」

 

 

そう言いながら、ラプラスと黒様の懸念点にフブキ先輩が名乗りを上げた。

 

正直なところ、吾輩もフブキ先輩に任せるしかないと思っていたのだ。腕輪のせいで霊力を使えないことは気になるが、おかゆ先輩やころね先輩もいてくれるだろうし、それにミオ先輩たちもフブキ先輩相手なら物騒なまねはしないだろう。そっちについては、どうにかフブキ王に頑張ってもらうしかない。

 

 

「そういうことなら、そっちは任せる。頼んだぞ、フブキ」

 

 

「任せて、ラプちゃん」

 

 

その時の吾輩たちは、さながら長年付き添った戦友同士のようだった。

 

 

これで、当面の吾輩たちの行動方針は固まった。

ラプラス・黒上フブキはholoXの侵略を止めるために、この星に設置されているholoXの支部拠点を目指す。その間追って等を防ぐために、白上フブキ・猫又おかゆ・戌神ころねは大神ミオ、および百鬼あやめの説得兼足止めをお願いする。両軍の代表である吾輩とフブキ王が、万全の状態かつそれぞれの従者たちの前で同盟を結んだことを宣言すれば、今回の騒動も収まることだろう。

 

 

「おかゆさんたちも、手伝ってくれるんだよな?」

 

 

「勿論だよ!三人が仲直りしてくれるなら、僕もなんだって手伝うよ~」

 

 

という事らしい。

おかゆ先輩は非戦闘員という話だったが、それでも頼もしい限りだ。

 

 

お互いに後先が見えなかった現状だったが、ようやく光明が見えたようだ。

 

 

********************

 

 

今後についての話が一段落し、ラプラスたちは早速それらを行動に移し始めた。

お世話をするのに必要だという事で、おかゆ先輩がミオ先輩から預かっていたカギを使って、フブキ先輩の足の拘束を解く。基本的にこの部屋で過ごすように言われていたらしいのだが、用に応じてこの建物内での行動は許されていたらしい。よく考えれば当たり前の話だが、やはりミオ先輩たちもフブキ先輩のことを蔑ろにしたいわけではないみたいだな。

 

 

「よーしっと……うん、これで大丈夫だよフブキちゃん。立てる?」

 

 

「うん平気、ありがとねおかゆ」

 

 

拘束からの開放により、自由を取り戻したフブキ王が徐に立ち上がった。未だに腕輪のせいで本調子ではないものの、ひとまずこれで自分の足を使って城の本殿までは行けるだろう。

 

 

「今、先に黒が外の様子を確認しに行ってる。戻り次第、吾輩たちは直ぐに基地に向かうからな」

 

 

「わかった、こっちも上手くやるね」

 

 

吾輩達はそう言いながら、お互い目配せを交わした。

 

すると数秒後、先に外に出ていたはずの黒様が何故か酷く慌てた様子で階段を駆け上がってきた。息もあがっているみたいだが、何かあったのだろうか?

 

 

 

 

「やばいぞラプラスッ!!間に合わなかったっ!!!!」

 

 

 

 

黒様がラプラスたちにそう叫んだ直後、窓の外で何かが激しく光った。

と思ったのもつかの間、今度はそれに続いて大地を揺るがすほどの轟音が鳴り響いた。まるで、超巨大な雷が近くにでも落ちたような……そんな感覚に陥った。

 

 

 

ラプラスたちは一瞬、何が起きたのか理解ができなかった。しかし、すぐに今起きたであろうことと黒様の発言とを照らし合わせて……ラプラスの脳裏に、嫌な予感がよぎった。ラプラスはいてもたってもいられなくなり、その事実を確かめるべく階段を駆け下りた。そして、恐らく同タイミングで同じ結論に至ったらしいフブキ先輩が吾輩に続く。

 

離れの両開きの玄関扉は既に少しだけ開かれており、ラプラスは構わずそのまま扉を押しきった。その門をくぐった先には、もう間もなく朝を迎えるだろうという真っ赤な朝焼け空が続いていた。

 

……にも関わらず、何故かフレンズ王国の上空のみ謎の暗闇が広がっていたのだ。

 

 

「……なんで……いくらなんでも、早すぎだ……」

 

 

何処までも続く雄大な春空。それらを押し潰すかのように、巨大すぎる球形の”何か”が上空を覆いつくしていた。それはまるで、惑星を崩壊させるほどの隕石が降ってきているかのような光景だった。

それを見て、我々は思い知らされる……自分たちには到底理解の及ばない、敵うはずもない未知の存在がこの星を喰らいに来たのだと。

 

 

「幹部……早まるなって、言っただろ……!!」

 

 

ラプラスが見上げたそれは、今や紛れもなく我々holoXの故郷と呼べる場所。

holoXの頭脳を誇る博衣こより氏によって考案された、『惑星型宇宙母艦』と呼ばれる【秘密結社holoXの総本部】そのものであった。

 

 

「……私たちは…………こんなのを、相手にしてたって言うの………」

 

 

ラプラスに続いて出てきたフブキ王が、空を見上げながらそう呟いた。

その言葉には、ただただ恐怖という感情だけが乗っているだけだった。

 

 

「あっ!見てよみんな……あれっ!」

 

 

黒様と一緒に外に出てきたらしいおかゆ先輩が、今度は城の奥にそびえていた山脈の一角を指差した。

しかし、そこには山としての形は無く……ただ巨大なクレーターが、出来上がっているだけであった。恐らくは、先程の光の犠牲者なのだろう。長い年月をかけて築かれたであろう大自然が、科学の力によって崩壊させられていたのだ。

 

 

「……思ってたより早いじゃねぇか……どうする、フブキ!ラプラス!こうなったらもう、手段を選んでられないぞっ!!」

 

 

黒様に怒鳴られて、ラプラスはようやく正気に戻る。

そうだ、呆気に取られている場合ではない。このままでは、本当にholoXがこの星を滅ぼしてしまう!!

 

ラプラスはそう思い、必死に頭を回した。

すると、まるでそれをかき消すかのようにフレンズ王国一帯にノイズ音が走った。スピーカーを使って放送を流すときに最初になる、あの耳障りな音だ。

その場にいたラプラスたちはそれに気が付き、再度空を見上げる。すると、音の出どころであろう母艦の方から放送の声が聞こえてきた。

 

 

 

 

『ご機嫌麗しゅう、愚かなるフレンズ王国の皆さん。私はholoXの女大幹部、【鷹嶺ルイ】と申します。本日は約束通り、この国を滅ぼしに参りました。……命乞いの準備はできていますか?』

 

 

 

 

”鷹の悪魔”が、そう囀った。

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