転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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※今回は若干のキャラ崩壊要素、及び自虐思考が含まれています。また、予め第07話の前置き部分を読んでおくことをお勧めします。

第14話です。今回は冒頭以降、ずっと博衣こより視点となっております。また上記の通りで、皆さんの知っている博衣こよりさんとは若干異なる部分がございます。可哀想は可愛い的な感じです。更には終始自虐的な思考をしている部分がありますが、あくまでラプちゃんが好きすぎるあまりの言動ですので許してあげてください。今回は好みなどが分かれると思いますが……受け入れていただけると嬉しいです。
最終的にはみんなが幸せになってほしい。

【追記】
さて今回は、本編が思っていたよりも長くなってしまったので設定深堀シリーズはお休みです。
(ちゃんとした追記)また、最近数件のコメントを頂けて本当に嬉しいです。毎日スマホで眺めながらニヤニヤしてます(キモイ)。


第14話 カノジョ達は壊れている

 

 

 

 

 

 

-----ここで一つ、君の間違いを正そう。

 

 

 

 

 

 

君は”カノジョ達”が、まるで自分の良く知る人物らと同じだと思っているようだが…………それは間違いだ。

 

 

 

カノジョ達は、どうしようもなく……壊れているんだよ。

勿論、表立ってわかることではないかもしれないね。何故ならカノジョ達は、とても隠したがり屋だから。誰にだって、知られたくない過去くらいあるだろう?だからね、君自信がカノジョ達の心の拠り所である以上決して本心を見せることはないんだ。

 

 

え?それがどうして壊れていることになるのかって?

当然だよ。なにせ、この世界のカノジョ達には君が居なかったからさ。君ではないキミしか居なかったから。部品の欠けたロボットは、もはや壊れていることと同義だ。君タチにはキミ達が欠けていたから、カノジョ達も……君自身さえも、壊れてしまっているのさ。

 

 

あーでも、今更それを直すなんてことは出来ないよ。

そもそもの話、あくまで君自信にとっての完成品と比べた時カノジョ達は壊れていることと同じだと言っているだけだ。少なくとも、この世界でのカノジョ達はあれで完成されているんだよ。だから、まず”直す”という言葉を使うこと自体間違っている。

 

 

それに、そんな可哀想なこと言わないであげてくれよ。

カノジョ達は紛れもなく、君を慕っているんだ。愛して、尊敬して、崇拝して、望んでいるんだ。そして、その気持ちが強すぎるあまり君からしたら”壊れているように見える”かもしれないね。それでも、君へと募らせるその気持ちは確かに『本物』なんだ。

 

 

…………だから君は、カノジョ達のそれに答える義務がある。君に尽くそうとしてくれる”彼女達”に、君もまた行動で答えるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

-----お互い、死力を尽くして頑張ろうじゃないか。もう一人の……【ラプラス・ダークネス】。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

……僕のせいだ。

 

 

 

僕のせいだ。

ラプちゃんをあの場にさえ連れていかなければ、こんなことにはならなかった。

 

 

僕のせいだ。

あの時もっと強く引き留めていれば、ラプちゃんを前線に駆り出すことも無かった。

 

 

僕のせいだ。

僕がもっとしっかりしていれば、こよの大切な人にあんな思いをさせずに済んだのに。

 

 

僕のせいだ。

あの場にいたのがこよじゃなく他の誰かだったなら、きっともっとうまくやってたはずだ。

 

 

僕のせいだ。

こよがもっと強ければ、ラプちゃんを傷つけることも犠牲にさせることも無かった。

 

 

僕のせいだ。

僕がもっと頭を使っていれば、あの”泥棒キツネ”に好き勝手なんてさせなかった。

 

 

僕のせいだ。

こよがもっと注意していれば、あの”クソ狼”にラプちゃんを奪われることも無かった。

 

 

僕のせいだ。

僕のせいだ。

僕のせいだ、僕のせいだ。

 

 

 

僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせい僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだ僕のせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだぼくのせいだ…………

 

 

 

こよが無能だったせいで、総帥の手を煩わせてしまった。怒らせてしまった。

自分のミスを……この世で最も”尊敬しているあの人”に、その責任を取らせてしまった。

 

 

「…………僕のせいだ……」

 

 

彼女はそう呟きながら、頭を掻きむしった。

 

 

ここは、現在この惑星に設置されている支部拠点に帰還途中の飛空車の機内。総帥の命令により、フレンズ国の城内から出た直ぐ後のことだ。乗ってからしばらく経つので、もう間もなく基地に到着する頃だと思われる。

 

しかし、彼女……【博衣こより】の心中は全くもって穏やかではなかった。その理由は当然、つい先ほど城内で起こった件が関係している。

本来ならば、本日は我々holoXの代表であるラプラス・ダークネスとフレンズ国の王白上フブキの会談を行う予定であった。しかし、何故かこちらが到着したときにフブキ王の姿はなく、代わりに我々を捕らえる為の罠が用意されていたのだ。そして、それに僕たちは気づくことができず結果的に総帥自らが犠牲になる形でその場を収めたのだった。

 

それでも、助けられたはずの本人たちはそのことに全く納得などしていなかった。いくら総帥の命令だったとはいえ、どうして”自分たちの為なんか”に総帥が犠牲にならなければならないのかとその場の全員が思っていた。

特に、この事態を招いたのは自分のせいだと思い込んでいる博衣こよりは、より一層の罪悪感と自責の念を抱いていたのだった。

 

 

「…………薬、切れてきちゃったかな……基地に戻ったら、ルイ姉に連絡する前に飲まないと……」

 

 

こよりの言う薬とは、博衣こよりという人物の為だけに発明された一種の抑制剤のことである。彼女は過去に起こったとある事件をきっかけに、以降精神的に不安定になりやすくなってしまったのだ。またそれに、彼女の体を流れる獣人族の血も作用して、理性をコントロールできなくなってしまう時がある。

総帥にholoXへと拾ってもらった手前、彼女に要らぬ心配を掛けたくはない。そう思ったこよりは、ルイ姉にもきちんと許可を取った上でこの薬を常用しているのだ。自らの野望の為、日々研鑽を重ねているラプちゃんに僕みたいな無能を一々心配させるような手間を取らせてはいけない。

 

もっとも、この薬を飲んでいても実際の効果はかなり薄い。ルイ姉に服用を許可する代わりに、体に一切の害も無いようにしろとキツく言われているからだ。だからこそ、こよりにはラプちゃんたちのような心を許せる仲間が必要なのである。

 

 

「…………それなのに、僕のせいでラプちゃんに辛い思いをさせちゃった……」

 

 

今までにも何度かあったが、今日ほど本気で自分を殺してしまいたいと思った日は無い。

 

自分がみんなと比べても、弱いという自覚はある。ちょっと人より物を作れるというだけの、ただの愚か者だとわかっている。こよ一人では、明日生きていく希望すら抱けないことを知っている。

……にも関わらず、何故かラプちゃんは僕を必要だと言ってくれるのだ。こんなダメダメな僕を、holoXのみんなが……大切だと言ってくれた。それがどうしようもなく嬉しくて、どうにかその気持ちに応えたくて、毎日が必死だった。みんながこよりにくれたいっぱいの優しさに、少しでも報いたいといつも思っていたのだ。

 

 

……なのに、結果はこの様。

あれだけ心に誓っていたのに、みんなの足手纏いだけにはならないようにと気を付けていたのに。たった一度のラプちゃんの護衛すら、僕にはまともにできないというのか。ルイ姉にも大切な総帥を任して貰えて、ラプちゃんにも期待されていたのに……あの場にいた僕は、自ら犠牲になろうとしているラプちゃんを前にただ吠えることしかできなかった。

 

 

「こんなの……みんなに合わせる顔が無いよ……」

 

 

与えられた任務を全うできなかった僕が、一体どんな顔をしてルイ姉にこのことを報告すればいいというのだろうか。

 

……それでも、この任務に参加した責任者としてその結果をしっかりと上に報告しなければならない。そして、総帥の不在などという前代未聞の事態に対し、大幹部であるルイ姉に指示を仰ぐ必要があるのだ。きっと、さっきの僕と同じように『全指揮権の一時的移行』を使って、さっきの僕よりもより最善な行動をとってくれるだろう。

 

無能な僕と違って、ルイ姉は優秀だから。

 

 

「……それに、ラプちゃんからの伝言もあるしね」

 

 

伝言とは、こよりが城から帰還する際にラプちゃんからルイ姉に伝えるようにと言われた言伝のことだ。内容は一言『早まるな』というだけであったが、そこには『このことをルイ姉に伝えて助けを乞え』という意味が含まれていたことを僕は知っている。賢いラプちゃんが、今回のことでこよが今のように酷く取り乱すことを見越して、予めその後の対応を指示してくれていたのだ。こんなどうしようもない僕の為に、自分がこれから捕まることも構わずその先の道を示しておいてくれた。

 

 

「本当に、あの総帥は凄いなぁ……」

 

 

あのラプラスという総帥は、初めて会った時から何も変わらない。

誰からも求められなかった僕に、必要としてくれる居場所をくれた。あの優しく手を差し伸べてくれた時と、全く同じだ……。

 

 

今回の失敗に対し、総帥からどのような罰があるかはわからない。もしかしたら、もう要らないと見捨てられてしまうかもしれない。……それでも、こよがまだholoXであるうちはあの人に全霊を尽くそう。もう一度だけチャンスがもらえるように、最後まで与えられた研究部門代表博衣こよりとしての仕事を全うしよう。

 

 

そのように再度心に誓いを立てたこよりは、まもなく訪れるholoXの支部拠点への到着をただ静かに待つのであった。

 

 

********************

 

 

フレンズ国を出て約一時間後、holoXの支部拠点上空へと到着した。

 

 

「こより様、基地へと到着いたしました。」

 

 

「……わざわざ言われなくても、見ればわかるよ。そんなことよりも、着いたら直ぐに本部に連絡するから準備しておいて」

 

 

「御意」

 

 

そう答えたぷらすめいとが、操縦者と近くに座っていた部下に到着してからの指示を出し始めていた。

 

 

……正直言って、こよりは初期メンバーのみんな以外がこのholoXに居ることについて、あまりよく思っていない。そりゃ眷属や部下の人達は、僕達四天王のことも総帥と同じように扱ってくれていることはわかっている。それに、【助手くん】やこよが任されている他の部門の人達も、僕からの指示に対する聞き分けも良いしよく働いてくれている。最初の頃はともかく、ここまで大きくなったholoXに彼らの力が必要なことくらい馬鹿なこよりにもわかっている。

 

ーーでも、それとこれとは話が別なのだ。こよと、みんなだけの居場所だったのに……その場所に、まるでよそ者が土足で上がり込んだような、そんな気がしてしまうのだ。自分の大切な場所を、したくない他の人達とも共有しなければいけないことに、酷く嫌な気持ちになってしまうのだ。

しかし、恐らくこよ以外のみんなはそんな小さなことは気にしていないのだろう。例えその場所に他の人達がいたって、僕たちは僕たちなんだから。

 

だからこれは、ただの僕の我儘だ。

holoXのみんなを、こよだけが独り占めにしたいなどという最低な欲望だ。僕にはそんなことを望む資格も、言えるような働きもしていないくせに……今まさに、取り返しのつかないような失態を犯しているのにだ。

 

 

「…………ダメだ、早く戻って薬飲まなきゃ」

 

 

考えれば考えるほど、嫌な気持ちや考えが浮かんでしまう。ルイ姉に相談するまで、一旦余計なことを考えるのは辞めよう。今はただ、自分のやるべきことをやろう。

 

 

そう思ったこよりは、飛空車が完全に着陸した後帰還途中に拾ってきた負傷者を医務室に運ぶように部下たちに指示をする。本当は撃墜されてしまった方の機体も回収したかったのだが、一機の飛空車だけで運ぶのは無理だったし、回収船を出すのも独断でやらない方がいいだろう。

 

こよりはそう判断し、基地内へと足を進めた。

そして、そのままどこにも寄らず基地内に用意されている自室へと入る。そこにはこの惑星で採取した水・空気・土などのサンプルが置かれている棚が置かれていたり、それに関連する資料や報告書が床に散らばっていたりする。自室にしてはあまりにも薬品などの匂いが強いこの部屋は、実質こよりの研究室兼寝室となっていた。

その中の、寝床にしていた毛布の横に置いてあった錠剤を二錠取って口に含む。近くに水道水などが無かったため、飲み水を作り出す実験で使った真水の入った試験管をこくっと飲み干す。とりあえずはこれで、少しは気分も良くなるだろう。さて次は、ルイ姉に連絡をしに行かなくては。

 

 

自室を出て、そのままの足で指令室へと向かう。ここにはholoXの本部や、作戦中の現地と連絡を取るための設備が置かれている。この惑星内ならともかく、遠く離れた本部と連絡を取るにはここにある装置を使わなければならない。

指令室に入ると、部下の人達が先程指示したとおりに既に本部との連絡を取る準備を済ませていた。室内の前方には巨大なモニターが設置されており、そこには現在の時刻やこの星の気温・気候、その他作戦に関する資料やデータなどが映し出されている。

こよりはそこらに座っている部下の一人に声をかけて、その前面に本部と連絡をするためのウィンドウを開かせる。

 

 

「はぁ……」

 

 

この事実を伝えなければいけないことが、本当に憂鬱だ。

しかし、一秒でも早くこのことをルイ姉に伝えなければならない。そうしなければ、どんどん総帥を助け出すまでの時間が長引いてしまうからだ。こよりはそう思い、意を決して本部との通話を繋いでもらった。

 

 

『ーーーーはい。こちらholoX総本部内アジト、連絡室です』

 

 

「こちら、作戦地域E-012第一支部拠点指令室です。研究部門代表【博衣こより】様より、大幹部【鷹嶺ルイ】様にお取次ぎ願いたいとのことです」

 

 

『了解しました。直ぐにお繋しますので、しばらくお待ちください』

 

 

holoXの構成員同士がそのようにやり取りをし、モニターに保留中の文字が浮かぶ。

数十秒後、再度画面が映りそこにルイ姉の姿が浮かび上った。

 

 

『はいはい、えーっと……こより?どうしたの、いきなりビデオ通話なんて』

 

 

映し出されたルイ姉の姿を見て、少し息が上がっていることに気が付いた。恐らく、他の仕事にでも追われていたのだろう。そんな忙しそうな様子のルイ姉に、こんなことを言わなければならないなんて……。

 

 

「……突然ごめんね、ルイ姉。この間言ってたラプちゃんと、フブキ王の交渉の件について急ぎで報告しないきゃいけないことができちゃって……」

 

 

『あーうん、そのことね……どう?首尾の方は。ラプが珍しく張り切ってたから、結果がどうなったか私も気になってたのよ』

 

 

そう言ったルイ姉は、ちょっぴり上機嫌みたいだった。普段は本部で指示ばかり出していたラプちゃんが、自ら現場に行きたいと言い出したことがルイ姉的には嬉しいことだったのかもしれない。

 

 

「…………」

 

 

しかし、だからこそ心苦しい。きっと今の僕は、本当に酷い顔をしていたと思う。

 

 

 

『……こより?どうしたの?なんだか顔色が悪いみたいだけど……』

 

 

 

「……え……んね……」

 

 

 

声を出そうにも、口元が震えて上手く話せない。

でも、伝えなければ。どんなに蔑まれようとも、罵倒されようとも……これは、僕のせいなのだから。

 

 

 

『え?なんて?…………あれ、そういえばラプは?そこに居ないの?』

 

 

 

瞳から、止めようのない涙があふれだしてしまう。

泣くな、博衣こより。お前のどこにそんな資格があるというんだ。

 

 

 

 

「……ッ……ごめんッ、ルイねぇ…………ラプちゃんが……ラプちゃんが、攫われちゃったぁ……!!」

 

 

 

 

嗚咽交じりの声で、こよりは言葉を絞り出した。

それを聞いたルイ姉が、一瞬にして顔色が変わったことが分かった。ホークアイが無意識に光りだし、鋭い眼光がこよりに降り注いだ。それはまるで、猛獣に睨まれた小動物の気分だった。

 

 

『こより……今、何て?』

 

 

「ごめんルイ姉、こよのせいなの…………こよがもっとしっかりしてれば、こんなことにはならなかったのに……」

 

 

『……そんなこと今は聞いてない。それよりも何があったのか、詳しく話しなさい』

 

 

謝るこよりを一蹴し、鷹嶺ルイは大幹部としての最適な行動をとるよう努める。

そして、そう言われたこよりは泣きじゃくりながらも今日あった出来事をできるだけ詳しくルイ姉に伝えた。フレンズ国の城内で、ラプラスが大神ミオ及びあやめと呼ばれていた謎の鬼の少女に罠にかけられたこと。またその際に飛空車が四機撃墜され、その最中にラプラスが結界に囚われてしまったこと。その後に総帥を助けるためにこよりの独断で『全指揮権の一時移行』を使って前面攻撃命令を出したが、直ぐに中止するようにラプラスに止められたこと。そしてそのまま、総帥の命令によりその場の全員を逃がす代わりに人質となった事を……。

 

 

「……それでね、最後にラプちゃんから……ルイ姉に伝言を伝えるように言われて……『早まるな』、だって……」

 

 

一通りの事情を説明し終わり、ルイ姉からの返答をこよりは黙って待つ。

次に、彼女に一体どんな言葉を言われてしまうのかと怯えながら。

 

 

……しかし、何故かしばらく経ってもルイ姉は何も言わなかった。

不思議に思ったこよりは、様子を伺うために少しだけ顔を上げる。するとそこには、思いつめたような顔で何やらぶつぶつと喋っているルイ姉の姿があった。

 

 

 

『…………”私の”ラプラスが、攫われた?…………何で……どうしてどうして??…………私が一緒に居なかったから?ほったらかしにしてたから?だから居なくなったの???………………そういえばラプが私に一緒に来ないのかって言ってたけどもしかしてこうなることを予感してたってこと?確かにあの子ならあり得る何たってラプはラプラスの悪魔だからだからきっとこうなることもわかっててあの子なりの助けて欲しいっていう意思表示だったのかもしれないああどうしようどうしよう今頃ラプは一人寂しく牢屋に捕まっているに違いないご飯も与えられずお腹が空いているはずだそれに拷問なんかで痛い思いをさせられているかもしれないきっと怖くて夜も眠れないはずだなんでなんでなんで大体あの子はいっつもそう私は言ってくれれば何だってするし何だってしてあげたいのにラプは私のことを気遣ってくれてるのか大事なことに限って何も言ってくれないんだから私はラプが一言言ってくれれば全てを捧げる覚悟ができてるし何を言い出しても実現させてあげられるようにこのholoXを作ったのにいや総帥を責めるのは間違ってるわ何たってあの子が珍しく私と一緒に居られなくて寂しそうな表情をしてたんだからその時に気づくべきだった普段は不貞腐れたり強がってるあの子が正直な顔をしていた時点でずっと一緒にいたはずの私が察してあげるべきだったでもでもでもでもこんな簡単なことにすら気が付けない私にはあの子の考えている卓越しすぎた思惑に追いつくことなんてできないってだから何だって言うのそれがラプが苦しい思いしなければならない正当な理由にはならない心配心配心配心配心配すぎるわ出来ることなら私が変わってあげたいああ私はなんてことを……』

 

 

 

早口だったうえに、声が小さすぎて何と言っているのかはわからなかったが……恐らく、私の失態に酷く落胆しているのだろう。もしくは、既に次にとるべき行動に思惑を巡らせているのかもしれない。

 

 

「あ、あの……ルイ姉。本当にごめんなさい…………こよたち、これからどうしたらいいかな……」

 

 

未だに独り言を並べているルイ姉に対し、こよりは再度声をかける。

すると、その声を聴いたルイ姉があからさまにハッとしたようだった。

 

 

『……事情は分かったわこより。大変だったのね、お疲れ様。……取り敢えず、私もすぐそっちに行くから。あなた達は私が着くまで、何もせずに待機していて』

 

 

そう言ったルイ姉は、既に大幹部としての表情をしていた。その頼りになる姿を見て、こよりは少しだけ希望を取り戻す。

 

 

「わかった……基地を完全防衛状態にしとくから、ここで待ってる。……そこには、ルイ姉の他に誰かいるの?」

 

 

『いえ、いろはもクロヱも任務に出かけてるわ。だからこの母艦ごと、そっちに向かうつもり。流石に本部を誰もいない状態にはできないからね』

 

 

こよりの作った『惑星型宇宙母艦』は機能性には優れているが、あくまで僕たちのアジトや住処の為に作ったものだ。よって、宇宙空間を高速で長時間移動することに適した形も作りもしていない。恐らく今ルイ姉たちがいるところから向かったとして、全速力でも2日程はかかることだろう。しかし、それでも物資等を準備してから向かってくるよりはずっと早い。

 

 

『このまま移動するなら余計な手間もかからないし、多分2~3日くらいで着けると思う。ある程度そっちに近づいたら連絡するから、こよりや一部の非戦闘員を乗せてこっちと合流してほしいわ。……あ、それと場合によってはその惑星を消滅させるなんてこともあり得るから、支部拠点の放棄準備と戦闘準備もしておいてね』

 

 

この数秒の間に、ルイ姉がそのようにテキパキと指示を出してくれた。きっと、今言ったこと以外にもその後の展開にまで考えを及ばしているんだろう。

やっぱりこよと違って、ルイ姉は凄いなぁ……。

 

僕ではルイ姉にはなれないけど、せめてルイ姉が来るまではその代わりを務めなければ。

 

 

「了解。…………今度こそ、ちゃんとやるね」

 

 

『……こより。確かに私は上司として、あなたを叱らないといけないかもしれない。でもきっと、それらの結果はラプ自身が望んだことだと思うわ……だから、あんまり気負い過ぎないことね。失敗してしまったのなら、それを取り戻すための働きをすればいいだけよ。それに……この程度のことで、あなたを見捨てるほどラプの器は小さくないわ』

 

 

そうして励ましてくれたルイ姉は、最後に『作戦の詳細が決まり次第また連絡する』と言って通話を切った。

こんな事になって、ルイ姉自身もショックと動揺を抱えているはずなのに……にも関わらず、こよの心配までしてくれるなんて本当に優しいと思った。

 

 

 

ラプちゃんが一体、どこまでを想定していたのかなんて鈍感なこよりにはわかるはずもない。でも、もしこれが総帥の望んだ結果だったとしたら……もしかしたら、僕を許してくれたりするのかな。

 

 

「……いや、そんなのは高望みだ。僕はただ、ラプちゃんの言う通りにするだけでいい。……それよりも、早くやるべきことをやらなくちゃ」

 

 

そう思ったこよりは、ルイ姉の指示に従って準備を進めるのであった。

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