転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
実は下書き自体は終わっていたのですが、見返したら珍しく一発目で満足のいく出来になっていました。よって、これ本日投げときます。今回はな、なななんと!あの人もちょろっとだけ出演してます!ただ、めっちゃ嫌な立ち回りしてます。ごめんね……。
あと、自分の文章力に限界を感じてきました。戦闘シーン頑張りたいのに、ヌメヌメっとした文章しか書けません。完全な勉強不足ですね……。
【追記】
今回は更新頑張ったので深堀シリーズ無しです。
というより、本編がシリアス過ぎでおふざけ書けないです。どうぞ、本編をお楽しみください。
その日、余は初めて自分の父親の土下座を見た。
父は、普段から無口でとても厳格な人だった。鬼の国の王族として生まれ、小さな頃から次期国王としての教育をされてきたらしい。それでも、政略結婚として連れてこられた母上のことを本気で愛していたのを知っていた。
鬼の国は元々、規模自体は小さく各村々の内輪の繋がりが強い種族だった。そんな中でも、頭一つ抜けていた父のところにと繋がりを持つために嫁がされたのが母上だった。にも関わらず、母上は普段から弱さを周囲に見せなかった。それは、例え最初は本心じゃなかったとしても、父のことを愛していたからだったと思う。そんな傍から見れば寡黙な父と”使われた”母上だったが、娘である余から見ればお互いを思いやる円満な夫婦だった。
その上で、余にとって父は王であると同時に尊敬している人物でもあった。
鬼族としての力や威厳は勿論、厳しいながらも少しわかりづらい優しさを持っている父のことが……余も大好きだった。
-----それが、どうしてこんなことになったのだろう。
「…………我々は……お前達holoXに、完全降伏する……」
燃える城の中、先程利き腕を失ったばかりの男が残った片手と頭を地につけてそう言った。
昨日、ここから東側に”あった”国が一瞬にして滅ぼされるという事件が起こった。そして、その事態をいち早く察知した父がその犯人であるholoXとやらに戦いを仕掛けたのだった。その時の余は、馬鹿らしくも「行動力のある偉大な父はカッコいい」なんてことを思っていたっけ……。
「……最初から素直にそうしていれば、無駄な犠牲も出さずに済んだでござるのに……無能な王を持つと、下の者は大変でござるな」
そう言った侍の少女は、刀身に着いた血を払ってから鞘に納めた。
どうしてこんな事になったのか、詳しいことは覚えていない。それでも、そのたった一人の敵にペコペコと頭を下げる父と母上の姿だけがあやめの脳裏にこびりついていた。
「さーて、これで任務完了……あ!まだ大事なことが残ってたでござるな」
その光景を見て、その姿を見て……余は、本当に許せなかった。
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「たぁッ!これならどうだ余!!」
「あ?今何かしたのか?弱すぎて気が付かなかった」
霊力を刀身に纏わせた渾身の一振りを、またしてもこの悪魔に片手間で防がれる。
数分ほど前から余は、ずっと全力の攻撃を続けているのに……目の前のこいつは、全くもって効いている様子がなかった。
「くそっ、なんで……結界も発動してるはずなのに……」
思わず、この理不尽すぎる敵を前に不満がこぼれてしまった。
今この中庭全体には、鬼族の身体能力を極限まで高めてくれる禁忌とまでされた秘術を張り巡らしている。それに加え、城中の兵士等を避難させたときに使った式神『不知火』を肉体に宿し直してまで戦っているのに……。
「化け物……」
「化け物?それは誉め言葉か?確かにお前ら獣基準から見れば、私は化け物かもしれないな。……あ゛?鬼って獣か?まあ、あんま変わらんしいっか」
明らかに、馬鹿にされている……。
しかし、それでもあやめは一矢報いることすら全力必死だった。
「凄い……あのあやめが、全く歯がたたない」
本殿の近くで戦いの様子を見ていたフブキちゃんが、そう呟いたのが聞こえた。
うるさい……黙って見てて余。今に、フブキちゃんもびっくりするくらい凄いところを余が見せるんだから。
再度太刀を握る拳に力を入れ、目の前の悪魔へと切りかかった。
父百鬼にも褒められたあやめ自慢の二刀流の剣技が、容赦なくラプラスを襲う。
「……で、あんだけ意気込んでおいてその程度か?折角の名刀が台無しだな」
「うるさいッ!!」
百鬼あやめが使用している二本の太刀は、過去に鬼族最強と謳われた二刀流使いが愛用していたものだ。
人の血肉を貪ったとされる鬼の名のつく『大太刀 妖刀羅刹』と、その昔正義を司る神であった鬼の名のつく『太刀 鬼神刀阿修羅』。これらは、鬼の国どころかこの大陸にすら伝わる名刀である。
余が成人を迎えた際に、父と母上からこれを授かって……その時、自分は二人に恥じぬ生き方をしようと誓ったのだった。
(……母上……見てて、くれてるかな……)
今の自分が、もはや正しいことをしているのかなんてわからなかった。それでも、後悔だけはしないように生きているつもりだ。
父に見せつけてやる。余が父百鬼よりも勇敢で、強いということを。
母上に届けてみせる。その無念を、その想いを。
「……だから……余の、邪魔をするなッ!!」
そう叫んだあやめは、ラプラスからの攻撃をその左半身を犠牲にしてやり過ごす。咄嗟の自傷行為ともとれるその行動に、一瞬悪魔の手が止まった。
(チャンスっ!……)
そう判断したあやめは、先程まで全身に張り巡らせていた霊力を片方の刀身にのみ集中させる。そして、十分に接近したうえでありったけの力を込めた太刀を相手の首元目掛けて振り下ろした。
その威力は絶大であり、その背後にあった城の本殿にまで切り込みを入れるほどだった。
(これなら……)
確かな手ごたえを感じたあやめは、巻き上がった砂塵が収まるのをそのまま待つ。
そして、徐々にその姿が露わになって……
「……なんだよ、痛いだろーが。人にそんな尖ったものを向けるなよ」
しかし、確かに着弾していたその首には一切の傷跡が残っていなかった。
先程感じた手ごたえは、ただその場にいた最強の生物に”当たっただけ”だったのである。
「嘘……何で……」
渾身だったんだぞ……どうして、こいつは何ともないみたいな顔してるんだ余……。
「嘘もなにも事実だろ。見ての通り、お前じゃ私には勝てない」
その時、あやめは初めてラプラスという人物に対し恐怖を抱いた。
初めてラプラスを見た時、あやめは最初「ただの子供ではないか」と思っていた。周りの人間の反応的に、それが嘘ではないことはわかっていたけど……本当に余たちは、こんな子共に恐れていたのかと疑問に思ったぐらいだ。
……しかし、それがとんだ勘違いだったと今わかった。本当の悪魔は、『こいつ』だ。
奴らの本当に恐ろしいところは、holoXの勢力でもその技術力でもない。侍の強さや、規模や手段でもない。……たった一人の、この【ラプラス・ダークネス】という悪魔だ。ラプラスの強さが、考えが、その影響力が何よりも恐ろしかったのだ。
あやめの心の中で、本能がそう理解してしまった。
少しだけ、父の気持ちが分かった気がする。人は本当の恐怖の前では……何も出来ず、ただ許しを請うことしかできなかったんだ。フブキちゃんはこうなることがわかっていたから、こうなる前に止めようとしていたのか。
完全に戦意を失ってしまったあやめは、その場で脱力していた。
その様子を見て、ラプラスは疑問に思う。
「あ?どうしたんだ、もう終わりか?……なんだよ、つまんないな」
さっきまでの気持ちが嘘みたいだ。
余は、一体誰を相手にしていたんだ。こんな化け物に、勝てるはずがないのに……。
「気が済んだなら、もういいか。…………じゃあ、ここまでの無礼の代償としてお前には死んでもらうぞ」
最後にそう言った悪魔が、魔力を帯びた左腕を空に掲げた。
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その光景を見て、その姿を見て……余は、本当に許せなかった。
「ちょっとそこの王様、顔を上げて聞いて欲しいでござるよ。風真は、”総帥より”『最初に攻め落とした国の王様の一番大切な人を見せしめに殺せ』って言われてるんです。見たところ、ここには奥方とご息女がいるみたいですが……”どっちの方が”大切でござるか?」
最初、何を聞かれているのかわからなかった。
そんなことを聞かれても、誰だって答えられるはずがない。そして案の定、父百鬼も答えられずにいたようだ。
そのまま暫くの静寂が流れ、答えを待てなくなったらしいその侍が口を開いた。
「んー、答えてもらえないでござるか……まあそれなら、さっきからそこで呆けてるご息女にするでござる!自分の娘が大事じゃない人なんていないはず!」
標的を決めたらしい彼女が、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
勿論、余は鬼族らしく最後まで戦って抵抗した。
「ごめんね、出来るだけ痛くないようにするでござるから……」
そう言った彼女が、先程収めた刀を抜き構える。
当然、余は強いからそれをサッと避けて反撃をした。
ーーーーーザシュッ……どばぁ。
ほら、余にはそんな攻撃じゃ当たらない余。
「あっ!!ちょっと、何で邪魔するでござるか奥方殿…………うーん、まあでもこれでもいっか。今度こそ任務完了でござるっ!」
手が真っ赤だった。
父が泣いているところを、生まれて始めてみた。
どうして父百鬼は泣いてるの?余はこんなに強くなって、こんな勇敢に戦ったのに。母上も、余にもたれ掛って寝てないで褒めて欲しい余!余、すっごく頑張ったんだから!……だから、そんな血なんか流してないで起きてよ……。
………そこから先は、ほとんど覚えていない。
ただ一つ覚えていたことは、耐えきれないほどの悲しみと恨みだけだった。
嘘だった。
フブキちゃんたちに言った、余も最後まで戦ったなんてのは全部嘘だったのだ。本当は、ずっと怯えてた。怖くて、恐ろしくて、部屋の隅で震えていることしかできなかった。母上が自分を庇ってくれた時にも、最後の感謝の言葉すら伝えられなかったのだ。
その癖に、どうして余に父百鬼を情けないなんて言う資格があるんだ。一体どこに、ずっと戦い続けているフブキちゃんに臆病だなんて言う権利があるというのだ。何が取り返しがつかないだ、何が考えが甘いだ。…………情けないのも、臆病なのも、取り返しをつかなくしたのも考えが甘かったのも、全部自分自身のことじゃないか。今更だれにも頼らないなんて、どの口が言っているんだ。
……ずっと、皆に助けられ続けたくせに。それにありがとうすら言ってないくせに。
だから、今からでも頑張っているふりをしたかった。自分も頑張ってるんだって、戦っていたんだって思われたかったから。
ーーーーこれこそが、あやめが戦う本当に幼稚な理由だった。
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思ったより退屈だったな。
もう少し、楽しめると思ったんだが……。
まあでも、それも仕方のない話か。私は全宇宙最強の存在で、相手はただの小娘だ。というか、こいつ弱すぎるし子供すぎるだろ。見た目が幼いというのもあるが、何より考え方や動機が幼稚過ぎる。さっきの狐の王との言い合いも、正直子供の癇癪みたいで聞くに堪えなかった。全部が全部、自分一人で回ってると思ってる。自分だけのおかげで今ここにいて、自分だけの力で全てを解決出来ると思っている。こういう馬鹿は、本当に救えない。私以外の他の誰かに、そんなことが出来るわけないだろ。
まあ、もう関係ないか。どうせ殺すんだし。
そう思った私は、振り上げた左腕をに自分で噛みついた。……は?
「もう、いいッ!…………後は、吾輩の出番だから……お前は引っ込んでろ!!」
自分の左手を噛みながら、吾輩はもう一人の自分にそう言った。
危く意識を持っていかれそうだったが、何とか帰ってこれたようだ。
「あやめ……」
体の主導権を取り戻したラプラスが、目の前で何もせずに立ち竦んでいるあやめ先輩の方を見た。
【私】に体を預けていた時、まるで深い海の底に潜っているかのようだった。それでも、外の様子は水面越しにちゃんと見ていた。あちこち擦りむいたりしているようだったが、左手以外に大きな怪我は無いようだな。
そんなことを思いながらあやめを見つめていると、向こうも何故か途中で攻撃をやめてしまったラプラスの方を見た。
「……何で、とどめを刺さないんだ余」
そう言ったあやめ先輩が、先程無茶な突っ込み方をして傷ついてしまった左腕から力を抜いた。その結果、その手に持っていた太刀も地に落としてしまう。
「そんな必要がないからだ。最初から言っているが、吾輩はただ仲間を呼びたかっただけ。そっちにその気がないなら、もう吾輩たちが争うこともない」
「そんなの、理由になってない余。……余たちは敵同士。どっちかが死ぬまで終わらない」
しかし、そう言ったあやめ先輩の眼にはもう光が無かった。あれは、本当にすべてを諦めてしまっている人の眼だ。吾輩も良く知っている。
「そうは言っても、吾輩はあやめを殺すつもりもないし自分が死ぬつもりもない。加えて、お前じゃ吾輩を殺せない。そんな状況でどうするつもりなんだ?」
「……なら、余が自害するよ。負けて生き残るなんて、戦士の恥だから」
そう言ったあやめが、自分の首元にもう一方の太刀を添えた。カチャカチャと、刀から音が鳴るほど震えながら。
その姿を見て、ラプラスは目を細めた。
怖いくせに、悔しいくせに。本当は、ただみんなと笑っていたかっただけなのに。それなのに……この目の前の悪魔を討てないからって、生を諦めるというのか。そんな馬鹿馬鹿しい話があってたまるか。
……思い出せラプラス。
どうして、部下の静止を押し切ってまでこんなところまで来たんだ。何のために、あれだけ準備をしてフブキ王と同盟を結んだんだ。さっき、先輩たちの前で密かに誓ったことは何だったのだ。……思い出せ。
-----すべての非は、【ラプラス・ダークネス】にある。
だから、他の誰かがもう悲しむ必要はない。苦しむ必要はない。傷つくのはもう、吾輩一人でいいから。
「そうか。まあ、自害することは勝手だが…………じゃあ最後に、一言だけ吾輩の言葉を聞いてくれないか?」
「…………なんだ余」
全ての非はラプラスにある。
これはラプラス同士の戦いなのだから、その尻拭いは吾輩がやる。その罪を全部背負って、吾輩自身がその贖罪を果たしていくのだ。
ーーーだから、まずはこれを言わなければ始まらない。
「……皆を傷つけて……苦しい思いを、悲しい思いをさせて…………”ごめんなさい”。」
そう言ってラプラスは、深々と頭を下げた。
恥も外聞もなく、ただ誠心誠意謝罪を述べた。言ってどうにかなるものでもないが、それでもラプラスにはそれをするべき義務がある。
「何を……」
「この星に住む皆様に、今回の件で被害を受けた全ての方々に…………心より、謝罪します。本当にごめんなさい」
言葉にはしつくせない。許してほしいなんて、口が裂けても言えない。
そこにあるのは、ただの後付けされた侵略者の真意だ。
「……ラプちゃん…………」
正確に言えば、それを言うべき相手は微妙にズレている。本来なら、もっと公の場で全世界に向けて言うべきなのだ。
……それでも、吾輩はあやめ先輩だけには言わずにいられなかった。もう失われてしまったモノは戻らなくても、今を生きているあやめ先輩だけには伝わってほしいから。
「何を……何を、言ってるんだ余。そんな、今更謝られたって……母上は………………お母さんは、帰ってこないのに……」
死んでしまった人は戻らない。
失われた時間は巻き戻らない。
……だからこそ、今を生きる人だけでも前を向いて行けるように。
「そうだ。吾輩が死なせてしまった人は、もう還らない。許すとか許さないとか、もはやそういう次元じゃないってことはわかってる。…………それでも……」
頭は上げない。吾輩の本気を本気で伝える。
この世界の先輩たちが、また笑ってくれるように。もうこれ以上、吾輩のholoXが人々を傷つけなくてもいいように。
「……それでも、今を生きている人に贖うことならできる。犯してしまった罪の分だけ、贖罪を果たすことならできる。だから………………頼むっ!吾輩にもう一度だけ、それを償うチャンスをくれ!!!」
こんなことをしても、ただの自己満足だとわかっている。何の罪滅ぼしにもならない……独りよがりな願いだ。
それでも、何とか聞き入れて欲しい。吾輩にはもう、これくらいしかできないから。
「……」
ラプラスの言葉に対し、あやめは何も言わない。
今の姿を、holoXの部下たちやフブキ先輩が見ているかもしれないがそんなことは関係ない。例え拒まれたとしても、最後まで顔は上げない。
「……………どうしてラプラス達は、余たちを襲ったんだ」
「……吾輩が命令したからだ。吾輩の目的のために、あいつらにそうするように指示をした」
嘘ではない。
吾輩ではないラプラスが、自らの欲望の為にそうしたのだ。
「違う、そうじゃない。…………何で、こんなことをしたんだ余」
「……言えない。」
正確には知らない。
吾輩ではないラプラスが、一体何を考えていたかなんてこっちが知りたいくらいだ。
「言えないって……じゃあ、どうして今更謝ったんだ余。そんなことしたって、許されないってわかってるくせに……どうして?」
「……フブキと、約束したから。これまでの贖罪をしていくって」
「……………………そっか……」
その声音からでは、あやめ先輩が何を考えているかはわからない。だからラプラスは、ただ静かにその続きの言葉を待っていた。
暫くの静寂が流れ、ようやく百鬼あやめが大きく息を吸って吐き出した。
「はぁーー………………。わかった……取り敢えずは、保留ってことにしといてあげる余。その後どうするかは、ラプラスの行動次第ってことにしてあげる」
その言葉を聞いて、ラプラスは心底ホッとした。
勿論許されたわけではないが、それでもあやめ先輩がこちらの言葉に耳を傾けてくれるようになっただけで大きな進歩だ。
「……恩にきる。必ず、後悔させないと約束する」
そこまで言ったラプラスは、ようやく顔を上げてあやめ先輩の顔を見れたのだった。
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