転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第19話です、いよいよここまで来ましたね。
転ラプシリーズ第一章は次話にて終了となります、是非最後までお楽しみください。

【追記】
さて、今回は何を深堀していきましょうか。
うーん、どうしよう……あ、そうだ!今回は設定じゃなくて物語を深堀していこう!実は前回の18話にて、結構解釈大事にしている部分があったのでそれについて語らせてください。興味が無い方はスキップで!(ここまでが台本)

前回のあやめちゃんの心情描写は、皆から認められたいがために自分を偽っていたというお話でした。フブキ王たちには最後までholoXと戦ったと説明していましたが、実はそれは嘘で本当はただ怯えていただけでした。結果風真殿にも強者認定されず、そのためルイ姉の言っていた報告書にもあやめの名前の記載が無かったんですね。
そして、それを普段からあやめちゃんのことをよく見ていたミオちゃんはなんとなく察していたみたいです。あそこは現実世界でもほぼ親子なので、きっと実際に同じような場面になっても気が付いてくれると思います。

また、その心の内に秘めていた弱音を少しだけ吐露してしまうシーンもありましたね。それはラプちゃんに対してあやめちゃんが言った「お母さん」という言葉です。このシリーズはあくまでラプちゃんが主人公なので詳しいことまではわかりませんが、恐らくお嬢が幼かったころは母親のことをそう呼んでいたのでしょう。
色々なことがありましたが、お嬢にはそれらを乗り越えてこれからはいっぱい笑ってほしいですね。


第19話 最後の幕引きはやっぱり”アレ”で

 

 

 

(「その体を返せ、愚図な”ラプラス”っ!!」)

 

 

 

「…………黙れよッ……」

 

 

あやめ先輩との話し合いもひと段落し、さっきまで空から降り注いでいた攻撃も止まった後の城内の中庭。そこで、ラプラスは自ら解き放ってしまった悪魔と体の内側で戦っていた。

 

(マズい……ちょっとでも気を抜けば、一瞬で意識を持ってかれそうだ……)

 

ラプラスが思っていたよりも、契約の代償はとても重いものだった。元々の力を考えれば当然なことなのかもしれないが、その重みが吾輩の体を徐々に蝕んでいく。まるで、今も尚体中を這いずり回っている菫色をした何かが自分自身の体を内側から喰らっているようだった。

 

(早く……また、あの拘束具を……)

 

恐らく、またあの枷を嵌めればこの疼きは収まることだろう。取り急ぎ、さっきそこらに放ったそれを探さなくては。

そう思ったラプラスが、さっきまで自分が立っていた本殿近くの方を振り返った。すると、吾輩とあやめによる戦いが終わったと判断したらしいフブキ先輩が、例の右手の拘束具を持ってきてくれていた。

 

 

「お疲れ様ラプちゃん。はいコレ、拾っておいたよ」

 

 

「……ああ、ありがとな……正直、もう我慢の限界だったんだ」

 

 

そう言ったラプラスは、受け取った枷を乱雑に受け取って素早く嵌めなおした。

正直な話、あやめ先輩と話している時からかなりギリギリだったのだ。体への意識が半分混濁して、熱いくせに震えと冷や汗が止まらなかった。それでも、この結果を得る為だったと思えば今回だけは我慢できたということにしよう。もう二度とごめんだけどな。

 

 

「……あ~あ……勿体ねぇな」

 

 

再び拘束具に囚われたラプラスは、ようやく体に入っていた変な力を抜くことができた。力を解放した際に起きた身体の変化も元に戻り、脳内にいたもう一人の自分を封印することにも成功していた。

しかし烏よ、今の発言を忘れないからな。後でじっくり話を聞かせてもらうとしよう。

 

 

「悪かったな、フブキ……迷惑をかけた」

 

 

「ううん、気にしないで。ラプちゃんのおかげで、さっきまでの攻撃も止まったみたいだからさ!」

 

 

そう言ったフブキ先輩が、未だ闇の掛かる空を見上げた。

フブキ先輩の発言通り、先程ラプラスが力を解放したあたりからholoXによる攻撃は止まっていた。恐らくは、上空より吾輩の存在を確認したからだろう。それから地上に降りてくるとなると多少時間がかかるだろうから、もう少しこのまま待ってるか。

 

 

 

 

「あの……フブキちゃん……」

 

 

ラプラスとフブキ先輩がそんなやり取りをしていると、こちらに近寄ってきたらしいあやめ先輩が気まずそうに話しかけてきた。そしてそれに対し、当の本人は静かにあやめ先輩の方を振り向く。

 

 

「……何ですか?あやめ」

 

 

「ッ!……あ、あのね……」

 

 

フブキ先輩の発したその言葉は明らかな他人行儀で、そして少しだけ冷たい口調だった。考えの相違による喧嘩をしてしまっていたので当然と言えば当然なのだが、外野であるラプラスですらその雰囲気には厳しいものを感じた。フブキ王が今回の件であやめ先輩に対しどのような想いがあるのかはわからないが、ここは一先ず大人しく見守ることにしよう。

 

ラプラスがそんなことを思っていると、そんな様子のフブキ王に対しめげずにあやめ先輩が言葉を紡ごうと努めていた。きっと、直接その冷たさを向けられてでも伝えたい言葉があるのだ。

 

 

 

「……余が、間違ってた。……フブキちゃんの言うとおり、最初からholoXには敵わなかった。それは、自分でもちゃんとわかってたはずなのに……変な我儘ばっかり言っちゃって、フブキちゃんを困らせた。…………それにやっぱり、どんなに憎くたって他の皆を巻き込んじゃいけなかった余ね…………それと……」

 

 

 

そこまで言って、あやめ先輩は瞼と拳にキュッと力を入れた。

震える唇を噛みしめ、違えてしまったものを取り戻すために。

 

 

 

「……それと、酷いこと言っちゃって……ごめんなさい……」

 

 

 

そうしてあやめ先輩は、先程の吾輩みたいにペコっと頭を下げて謝罪を述べた。

その姿を見たラプラスは、状況に反して何だかホッコリしてしまった。よかった、やっぱりこの二人はただ意見がすれ違っただけ。本当は、とても仲のいい友達なのだ

 

しかし、そんな様子のあやめ先輩に向けられた言葉は想像以上に厳しいものだった。

 

 

「……あやめの気持ちは、よくわかりました。…………しかし、友達とは言え一国の王を獣人部隊の隊長と結託し監禁した罪は償って貰います。いいですね?」

 

 

「…………はい……ちゃんと、罰は受けます……」

 

 

まあ、当然のことだ。

いくら事情が分かっており、同情する余地がある行動だったとしても……傍から見れば、国の機能を更に麻痺させたという大罪なのだ。それに国を守る役割を持つはずのミオ先輩も、その王を監禁したなど決して許される行為ではない。フブキ王は王様という立場上、彼女たちを罰しなければならないのだ。

 

 

 

「よろしい。……それでは、今回の件の罰として百鬼あやめ及び大神ミオには、今後行われるholoXとの同盟に関する『交渉大使』をやってもらいます。holoXとの抗争に関して多大なる妨害行為を行ったのならば、次はその関係を取り持つ働きをしてください。…………”ミオ”も、いいですか?」

 

 

 

「……はい、フブキ王……仰せのままに」

 

 

そう言ってフブキ王は、中庭への連絡口の方を振り返った。するとそこには、黒様に運ばれてきたらしいミオ先輩たちが立っていた。

その二人の姿を見て、ラプラスはもう一つの心配事が解消されたと安心する。どうやらあやめ先輩が折れてくれたことにより、式神の効果が切れたみたいだ。それに見たところ、黒様とミオ先輩の二人に目立った傷は無かった。そのあたりは、黒様が上手く手加減してくれたのだろう。

 

 

「交渉大使……余が……?」

 

 

「そうです。我々全員を代表して行う仕事ですから、それ相応の責任が伴います。……くれぐれも、holoXの皆さんに無礼の無いようにしてください。できますか?」

 

 

それは、吾輩からしてみればかなり酷なことを言っているように感じた。

そりゃ今後もフブキ先輩たちと友好関係を築いていくなら必要な役回りだが、それを吾輩たちを恨んでいるはずのあやめ先輩にやらせるなんて……。

 

 

「……わかりました、やります。……今度こそ、ちゃんと」

 

 

しかし、そんなラプラスの懸念に反してあやめ先輩はそれを承諾するようだ。いろいろ思うところがあるだろうに、本当に偉い先輩だな。

 

 

「はい、お願いしますね。……それと……」

 

 

そこまで言って、フブキ先輩はあやめ先輩の傍まで近づいて行った。

 

 

 

「…………私も、ごめんね。白上もいっぱいいっぱいで、あやめちゃんの気持ちとか全然考えてあげられてなかったよ……でも、もう私も間違えない。これからはもっと、あやめちゃんの前で胸を張れるような凄い王様になるからさ……だから、ちゃんと仲直りしよ?」

 

 

 

その時のフブキ先輩は、もう王様としての表情はしていなかった。

そこにはただ、喧嘩により仲違いしてしまった二人の女の子が居るだけだ。

 

 

「フブキちゃん……ごめんね……ごめんねぇぇ……っ!!」

 

 

同じように謝罪を述べたフブキ先輩に対し、あやめ先輩が泣きながら抱き着いた。そんな友人を、フブキ先輩もギュッと抱きしめる。

これでようやく、二人はただの友達に戻れたのだった。

 

 

 

「……なんとか一件落着みたいだな、ラプラス」

 

 

そんな微笑ましい光景を一人眺めていると、こちらも一仕事終えた後の黒様が声をかけてきた。

……なんだか焦げ臭い気がするが、大丈夫なのか?

 

 

「ああ、そうだな。……黒も大丈夫か?」

 

 

「あ?大丈夫に決まってるだろ、私を誰だと思ってるんだ。むしろ、ここ数日の鬱憤を晴らせた気分だぜ」

 

 

それは、なんというか……逆に心配になる。

パッと見た感じミオ先輩に問題は無さそうだが、ちゃんと手加減したんだろうな……。

 

 

「おーいラプちゃん、お疲れ様ぁ。遠くから見てたけど、凄かったね~」

 

 

「ラプちゃんラプちゃん!こおねも一緒に見てたけど、ラプちゃんってすっごく強いんだね~。びっぐりしたよ!」

 

 

黒様の発言に対しラプラスが呆れていると、おかころさんの二人もこちらに近寄ってきた。操られていたとはいえミオ先輩からの傷を受けてしまったころねさんのことを少なからず心配していたが、どうやら二人とも無事みたいだな。

 

 

 

 

こうして、対あやめ戦騒動は幕を引いた。

吾輩にはまだ最後の仕事が残っているが、一先ずは腰を落ち着けてもいいだろう。

 

ラプラスはそんなことを思いながら、他の六人が話しているのを遠目で眺めていた。黒様辺りはちょっと意外だったが、先輩たちは元々全員仲がいいんだ。こうして騒動がひと段落した後の、ちょっとした雑談に花を咲かしていても問題はあるまい。

 

 

「……でも、ちょっとだけ羨ましいな」

 

 

その言葉は、吾輩抜きの先輩たちだけで仲良くしていることに対する拗ねた気持ではなかった。確かに会話の外側で一人放っておかれているのは寂しいが、言葉の真意はそこではない。心を許した仲間たちが、再度集結しその再会を喜び合う。その光景に、酷く嫉妬心の様なものを抱いてしまうのだ。今の吾輩には、願っても叶わない望みだというのに。

 

 

しかし、そんな楽しそうなひと時もとある訪問者たちによって中断される。

それは突如として、はるか上空より謎の飛行物体が次々と城内目掛けて降下してきたのだ。その場にいた全員がそれに気付き、空を見上げる。

 

 

「……遅いぞ、まったく」

 

 

ただし、それを見て動揺する者などもはやここにはいない。

当のラプラスも、その飛行物体の側面に描かれた見覚えのあるマークを見てそんな文句がこぼれた。

 

 

下りてきたその機体達は、吾輩がこの惑星に来た時に乗っていた宇宙船の小型機のようだった。

そして、中庭に着陸したものから続々と似たような格好をした集団が降りてくる。確かに、ある日突然こんな奴らが来たら怖いよな。

 

ラプラスがその光景をなんとなく見つめていると、その中に見覚えのある人物を二名程確認した。その姿を見て、傍から見てもわかるほどにホッとしてしまう。

 

 

「ラプちゃんッ!大丈夫!?」

 

 

機内から予め吾輩を発見していたらしい博士が、もの凄いスピードでこちらに駆け寄ってきた。

そんなに叫ばなくても、聞こえてるって。

 

 

「ああ、大丈夫だ。博士も元気そぉっーーー!!??」

 

 

久しぶりに見た博士に、ラプラスも浮かれて声を掛けようとした。

しかし、その走っている速度のままのこよりに思いっきり突っ込まれて叫び声を上げる。

 

 

「ラプちゃん、ラプちゃぁぁぁん!無事でよがっだぁぁぁぁ」

 

 

ちょ、ちょっと博士……う、嬉しいのはわかったから、一旦離れてくれ……苦しい……。

しかし、そんな苦しんでいるラプラスを他所に同じく近寄ってきた幹部が口を開く。

 

 

「ラプ、遅くなってごめんね。思ったよりも元気そうでよかったわ」

 

 

「今絶賛ピンチ中なんだよっ!!見てないで、博士を止めてくれ!!」

 

 

澄ました声で言っているが、幹部が明らかに安心したような顔をしたのが視界の端に見えた。

てか、そんなことはいいから早く助けてくれないっ!?

 

 

「はいはいこより、ラプが困ってるからそれくらいにしなさい」

 

 

そう言って、ようやく幹部がこよりを吾輩から引き剥がそうとしてくれる。しかし、肝心の本人には全く離れる気など無いようだった。その顔は涙や鼻水でズビズビになっており、とても悪の組織のマッドサイエンティストには見えなかった。

 

 

そして、そんなもみくちゃにされている総帥を他所に、船から降りてきた数名の眷属たちがラプラスの前に並んで片膝をついた。恐らく、今回吾輩たちと一緒に城へと赴いた連中だろう。

というか、そんな畏まってる暇があるなら手を貸してくれても良くないか?!

 

 

「ラプラス様、ご無事で何よりでございます。そして、四天王の皆様との再会を喜んでいる中大変恐縮ではございますが…………どうか、我々の話を聞き入れては貰えないでしょうか」

 

 

そう言ったのは、ラプラスの秘書兼世話係の眷属の男だった。

これが、喜んでいるように見えるのか!?……いや、見えるかも。吾輩も博士ほど表には出せないけど、二人に会えて嬉しいし。しかし、それを認めてしまうのは癪なので話題を逸らしてしまおう。ところで、話とはいったい何のことだ。

 

 

「博士、いい加減離れろって…………で、話って?」

 

 

ラプラスは、幹部の協力もありながらようやくこよりから解放される。

そして、目の前で頭を垂れている眷属たちの方に向き直って言った。

 

 

「ありがとうございます。……お話したいこととは、先日の城内で起こった件についてでございます。この場にいるのは、あの時お恥ずかしいながらも主様を敵に差し出すことしかできなかった者達です。いくらラプラス様の命とはいえ、それしか言えない状況にしてしまった我々にも責任がございます。……どうか、我々全員に厳罰をお与えください」

 

 

ああ、なんだそのことか。

それについては吾輩のミスだったわけだし、別に眷属たちを責めるつもりは無いんだけどなぁ……。むしろ吾輩としては、こんな失態を冒して幻滅でもされるかと思っていた。端からもっと慎重になっていれば、こんな事態は避けられたからだ。それに加え、吾輩にはどうしても先輩たちと仲良くしたい理由もあった。しかしそれは博士やこいつらからしてみれば、どうして総帥は攻撃を命令しないのだろうという疑問を持たせたはずだ。その正体はただの吾輩の私情によるものだったのに、皆には随分と苦労をさせてしまった。

 

つまり、吾輩には彼らを罰する権利などない。罰するつもりもない。

しかし、それを説明しても恐らくこいつらは納得してくれないだろう。さて、どうしたものか……。

 

 

ラプラスがそんなことを考えていると、突然大人しくなった様子の博士が再度近くに寄ってきた。

どうしたのだろうとそちらを振り向くと、いきなりその場に片膝をつき眷属たちと同じように頭を深々と下げてきた。フブキ先輩の時もそうだったが、突然知っている人にひれ伏されたらむしろこっちがギョッとしてしまう。

 

 

 

「……敬愛する、ラプラス・ダークネス様。私にも……より一層、重い罰を与えてください。今回の失態は、全て私の責任です。私はラプラス様の描く計略の意図を汲み取れず、勝手な行動をしてしまい……結果、総帥の手までも煩わせてしまいました。…………今後総帥が作り出すであろう理想郷に、私のような無能者では力不足です。どうか……総帥自ら、私に引導を渡してください」

 

 

 

……はぁ~…こより、お前もか……。

だから、吾輩は別にお前たちを叱るつもりは無いんだって。吾輩の計略?作り出す理想郷?悪いが、そんな大そうなものは初めから何処にも無い。吾輩がただ先輩たちと仲直りがしたくて、その為に自分の体を張っただけだ。あの時の行動に何か考えがあったわけじゃないし、こいつらの行動も侵略者としてなら何も間違っていない。

 

だからこより……そんな、自分のことを無能だなんて言うなよ。

 

こよりが無能じゃないことぐらい、吾輩は嫌というほど知っている。博士はholoXには無くてはならない存在だし、それを抜きにしたって吾輩たちは博衣こよりのことが大好きなんだ。彼女のいないholoXなど、もはやholoXとして吾輩は認めない。

……だから、holoXを抜けるなんて絶対に許さないぞ。

 

 

「……全員、顔を上げろ。お前たちがそんなに、今回のことで吾輩から怒られたいって言うなら……望み通り、そうしてやる」

 

 

そう言ったラプラスの言葉に、その場で頭を垂れていた者たちが一様に顔を上げた。

 

 

「そこらに突っ立ってる他の眷属や部下たちも、もうちょっとこっちに寄れ。ついでに幹部、こいつら全員を見渡せるように適当な台も持ってこい」

 

 

そうして、膝をついている者達を中心にフレンズ王国の城内で勝手にholoXの構成員一同を整列させた。

その光景は、空気感を無視して言えば学校で行われる朝礼で校長先生のお話を聞いているようだった。もっとも、その場の雰囲気は軍隊などで行われるそれの方が近かったが。

 

 

ラプラスは幹部の持ってきてくれた台に上り、一緒に用意してもらった拡声器用端末を口元で持つ。今回我々holoXが行ったこととその結果、今後の行動を総帥自らの口で彼らに伝えるのだ。

 

そう思ったラプラスは、その場で大きく息を吸い込む。

そして、目の前に並んでいる愛する部下たちを見渡しながら口を開いた。

 

 

 

 

 

『貴様ら、刮目せよッ!!吾輩の名は、ラプラスダークネスだ!!』

 

 

 

 

 

このセリフを、まさかこんな大勢の前で実際に言う事になるとは思わなかった。

それでも、自分の努力の結果で今この瞬間に立ち会えたことをラプラスは心の底から嬉しいと思えた。

 

 

『今から、今回の騒動による結果と今後の我々holoXの行動を吾輩自ら話そうと思う。全員、心して聞け!』

 

 

ラプラスがそう言うと、その場にいた全員が自分自身へと注目したのが分かった。

勿論その中には今吾輩の隣に立っている幹部や目の前の博士たち、更には部下たちの後ろの方で立っているフブキ先輩たちも含まれていた。

 

 

『まず初めに、結論から話す。……我々は、今この場で”膝をついている奴らの『功績』”によりフレンズ王国初代国王白上フブキと【同盟】を結ぶことに成功した。多少トラブルがあったものの、これは初めから計画されていた”吾輩の作戦”の一部であった。そんな中でこいつらは、久しぶりの現場活動だった吾輩をサポートしつつ見事この結果を招いてくれた。これは大変すばらしい功績であり、かつ褒められるべき行動だった』

 

 

そっちがその気なら、吾輩にだって考えがある。

博士たちがそんなに自分を責めるなら、その分吾輩が褒めちぎってやる。そんなに罪悪感に囚われたいのなら、いくらでも賞賛の声を与えてやろう。これらは全部、ラプラス自身が悪いだけなのだから。

 

 

『よって、今回の行動を賞しこの場にいる研究部門代表【博衣こより】以下眷属数名に【勲章】を与える。……あれ、今までholoXに勲章って文化あったか?まあいいや、無いなら作る』

 

 

思わず本音が漏れてしまったが、ラプラスの言葉を聞いている者達は至極真面目だった。

今のところ、holoX内には特定の働きに対して勲章などの形で褒章を与えるという仕組みはない。しかしこの際だから、幹部に言ってその制度も作ってもらおう。いい働きをしたのなら、それを褒められた方が部下たちもやる気になるってもんだ。

 

 

『続いて、これからの我々の行動についてだ。詳しいことはまた後になるが……一先ず、今後この惑星に住む全ての者達への攻撃行為はこのラプラスの名をもって一切禁止とする。また、折角こいつらが成してくれた結果を無駄にするような行動についても極力避けるように。加えて、この星は吾輩の野望を達成するための重要な活動拠点とする予定だ。よって、現地に住む人々ともできるだけ友好関係を築くようにしろ。彼らは有望かつ有能だ。くれぐれも、力を誇示しすぎて無礼の無いように心がけろ』

 

 

こう言っておけば、部下達や今回伝言を無視した幹部辺りもこれからはそういった行動を控えてくれるだろう。それに、この話はフブキ先輩とも予め約束していたことだ。彼女たちも見ているこの場で、きちんと言葉にすることで先輩たちも安心してくれるだろう。

 

 

『以上が、吾輩からの今回の件に関する結果報告と労いの言葉だ。今後も、貴様らの活動に大いに期待している。……全員、来るときに備えよッ!!』

 

 

 

「「「!!! YES MY DARK !!!」」」

 

 

 

これまた、今までで一番大きなコールが響いた。

この時ラプラスは、再度自分の立場と発言力の強さに圧倒される。

 

 

人の敷地で勝手に行われた演説を終えたラプラスは、手に持っていた端末をオフにしてから幹部に手渡す。そして、未だ目の前で頭を垂れている様子のこよりに向き直った。

 

 

「……まあ、そういうわけだ。だからもう、自分を責める必要はないぞこより」

 

 

そう言ったラプラスに対し、こよりは何も言い返さなかった。

下を向いているせいで彼女がどんな表情をしているのかはわからないが、ラプラスはこよりからの言葉を静かに待つ。

 

すると数秒の後、彼女はそのままゆっくりと口を開いた。

 

 

「……どうして、総帥は……私を、叱ってくれないんですか……?」

 

 

「どうしてって、さっきの話聞いてなかったのか?お前たちは、偉いことをした。偉いことをしたやつらを、何で吾輩が叱らないといけないんだ」

 

 

「…………嘘の、くせに……」

 

 

その言葉を発したこよりの声音は、明らかに震えていた。

賢い彼女にはわかっているのだ。聡いこよりには、吾輩がさっき言った話がその場ででっち上げた嘘だったと理解している。全く、察しのいいことだな。……でも、それなら何で吾輩の気持ちには気づかない。どうして、自分のことになるとこうまで盲目的になってしまうんだ。

 

 

「総帥……ラプちゃん。こよ、わかってるから……ちゃんと、覚悟はできてる。…………だからせめて、あなたの口から……」

 

 

そこまで言ったこよりに、もうその続きは言わせまいとラプラスが正面から抱き着いた。

博士が膝をついていたことで、丁度頭が吾輩の胸のあたりにあってまるで子供を抱いているみたいだった。

 

 

「こより……もうそれ以上、自分を責めないでくれ。吾輩は、本当に気にしてないんだ。むしろ今回のことは、自分のせいだと思ってる。それを、お前たちのお陰って言い訳しちゃっただけなんだ」

 

 

吾輩がもっとしっかりしていれば、こよりにこんな思いをさせることも無かった。

吾輩が本当に天才だったなら、直ぐにこよりを安心させる言葉をかけてあげられたんだろう。

 

……でも、これが今の自分にできる精一杯のことだ。

 

 

 

「こより、よく聞け。……吾輩には、まだお前が必要なんだ。こんな馬鹿な吾輩には、頭のいいお前の力が必要だ。……だから、勝手に抜けるなんて許さない。これからもちゃんと、傍で吾輩を支えてくれ」

 

 

 

それが、ラプラスの持つ博衣こよりに対しての正直な気持ちだった。

 

 

その言葉を聞いて、先程まで必死に我慢していたらしいこよりの涙腺がついに限界を迎えたみたいだった。

さっきの再会を喜んでいた時とは違い、今度は言葉を噛みしめているように涙を流す。

 

 

「ッ……本当に……ラプちゃんには、僕が必要?…………ッこよは……まだ、ラプちゃんの隣にいていいの……?」

 

 

「……吾輩から土下座して頼みたいくらいだ。…………あっじゃなくて、ちゃんとついてこないと置いてっちゃうぞ!」

 

 

思わず漏れてしまった言葉を、ラプラスは慌てて訂正する。

しかし、それを聞いたこよりが安心してくれたのかようやく顔を上げてくれた。

 

 

「……ふふっ……ッ……なに、それ…………なら、わかったよ。これからも……ちゃんと、ラプちゃんについて行くね」

 

 

そう言ったこよりが、泣きながらも微笑んでくれた。

その笑顔は、今まで見たどの博士の表情よりも綺麗に思えた。

 

 

 

ーーーこうして、今回の騒動は本当に幕を閉じたのだった。

 

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