転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
ラプラスの連れてる烏って、特に名前とかついてなかったですよね?喋るらしいとかって情報も無かったんので、勝手なキャラ付けしちゃってます。一人称は俺で、話し方ずっと一緒にいたからかラプラスさんと似たような感じみたいです。
追記。
holoXの現在の人数である『420万人』というのは、調べた当時のHolox五人分のチャンネル登録者数です。なので今後も変動していく感じですね。目指せ500万人!!
「一体、何がどうなってるんだ……」
身に覚えのない功績を称えられ、見知らぬ眷属たちに囲まれながらの朝食は、その素材の良さを台無しにするには十分な物だった。結局ほとんど食べきることができず、気分が悪いと言って自室と思われる部屋に戻ってきてしまった。食堂を出る際に、幹部に随分と心配されてしまったが、生憎ちゃんと返事をする余裕もなかった。
「”ラプラス・ダークネス様”、かぁ……」
鷹嶺ルイにそう呼ばれた時、むずがゆくて仕方がなかった。
いざという時はきちんと吾輩を立ててくれていた幹部も、自分のことを様付で呼んだことなど今までで一度たりともなかった。それは総帥としての吾輩を決して軽んじていたわけではなく、むしろ吾輩がそう呼ばれて壁を感じることを避けてくれていたようにも感じていた。
家族や烏の次に長い付き合いの彼女は、吾輩にとってのもう一人の母であり、姉であり、友であった。そんな彼女に対し、今朝は随分と違う印象を抱かされてしまった。
「……そっか、吾輩……そう呼ばれて、ショックだったのか」
今まで、holoXの中で最も親しいと思っていた相手からそう呼ばれた吾輩は、多少なりともショックを受けてしまったらしい。褒められることも、称えられることも嬉しいはずなのに、まるで幹部と吾輩の間に大きな隔たりができてしまったような気がして……それが、たまらなく嫌だったんだと思う。
「……吾輩、これからどうしよう」
どうやらここは、吾輩の知らないもう一つの『現実』というやつなんだろう。パラレルワールドなんて言葉があるが、まさしくここはそれにあたる場所な気がする。
吾輩の知らないもう一人の吾輩が居て、幹部が居て、宇宙が広がっている。その世界で吾輩は、大組織”秘密結社holoX”の総帥として存在している。吾輩ではない吾輩が打ち立てた功績のもと、星々のいくつかを侵略した後の世界……。
「たぶん、アレのせいだよな……。」
吾輩がこの世界に来てしまった理由は明白だ。
博士の研究室に置いてあった『時空を超越する装置』が原因に決まっている。どうやらあれは完成された物だったようだ。そして、それを起動させてしまった吾輩は別の時空……いや、別の世界線の吾輩に憑依してしまったようだ。
「なぁ烏……吾輩、どうしたらいいと思う?」
藁にもすがる思いで、吾輩の隣でくつろいだ様子の烏に問いかける。決して返答を求めているわけではなかったが、一人で抱えるにはあまりにも大きなものだったから。
しかし、当の烏から思いもよらぬ助け舟を出されることになる。
「どうしたらも何も……”ラプラス”の好きなようにしたらいいんじゃないか?」
「吾輩の……好きなように……?」
「そうだろ。……今のお前は、泣く子も黙るあの大悪魔ラプラス・ダークネスなんだから。ラプラスが望めば、どんな不可能なことだって可能になる」
烏にそう言われ、その言い回しに違和感を覚える。
今の吾輩……あ、そうか。呼び方が違うんだ。さっきまでの烏は、吾輩のことを”あるじ様”と呼んでいたのに……今は『ラプラス』と、そう呼んでいる。
「お、おい烏……今、吾輩のことをラプラスって……さっきまで、あるじ様って呼んでたのに……」
「ん?ああ、そうだな…………だって、今のお前は”あるじ様本人じゃない”んだろ?」
そう言われ、ラプラスは目を見開く。
烏は察していたのだ。今目の前にいる人物が、長年付き添ったご主人様本人ではないことを。
「なっ…お前、気づいて……」
「当ったり前だろ、俺とあるじ様がどれだけ長い付き合いだと思ってるんだ。外見が同じでも、中身が違えばすぐ気が付く」
吾輩と烏は長い付き合いだ。
星の寿命のような年月を生きてきた吾輩が、いつの間にか科せられていた楔たち。それらを見守るかのごとく、コイツは現れた。どうして吾輩がこの枷を付けられたのかも、どうしてそれをコイツが見張らなければならないのかも、当の本人たちはもう何も覚えてはいないんだろう。
でも……それはきっと、契約だったんだと思う。その時の吾輩が何を考えていたかはわからないが、それを理由に烏は今までずっと吾輩に付き添ってきた。片時も離れずに。……そんな奴が、偽物のラプラス・ダークネスを見破れない訳がないのだ。
「でも……変なんだよな」
「変って……何が?」
「中身が全くの別人なら、流石の俺でも一目見たら気が付く。でも、別人だと思ったのはほんのついさっきだ。それはつまり……お前も、ラプラス・ダークネス本人なんだろ?」
烏のいう事に、再度驚かされる。
まさかこの短い間にそこまで知られていたとは思わなかった。いくらこちらに隠すつもりがなかったとはいえ、そこまで事情を予測できるものだろうか。
「……よく、わかったな」
「……まあ、ちょっとした予言があったもんでな」
「予言?」
「ああ……いや、こっちの話だ。……それよりも、どうしてそんな事になっちまったのか理由を聞かせてくれよ」
烏の言っていた予言とやらが気になったが、はぐらかされてしまった。
しかし、吾輩がこうなってしまった理由かぁ。なんと説明したもんかな……。
「……言っても信じてもらえるかわからないぞ?」
「そりゃあ言ってみなきゃわからないだろ。案外力になれるかもしれないぜ?」
烏にそう言われ、ラプラスは渋々事情を話し出す。
ラプラスの元いた世界のholoXは、ホロライブという場所でアイドルをしていたこと。こちらと同じく幹部の鷹嶺ルイや頭脳の博衣こより、用心棒の風真いろはに新人の沙花叉クロヱの5人でholoXを結成していたこと。そしてある日、こよりの作った装置により気が付いたらこの世界にいたことを……ホロライブ6期生として生きてきた『ラプラス・ダークネス』の半生を手短に、できる限り話した。
そんな吾輩の話を、烏は最後まで聞いていた。
「……何というか、あれだな……世界線が違うだけで、こうも変わるもんなんだな」
一通りの話を聞いた後の、烏の第一声がそれだった。
まあ、そう言いたくなる気持ちもわかる。こちとら世界征服は二の次で、毎日ゲームやら娯楽やらで遊び続けている日々。今まで一つの惑星すら堕とした事は無い。それに比べ、こちらの吾輩は過激に侵略活動に励んでいるようだ。
「こっちの世界がどうなってるかわからないが……少なくとも、吾輩のいたホロライブ(ところ)はこれ以上無いほど居心地が良かったんだよ。あの星に行った目的を後回しにするくらいにはな……」
吾輩が地球に来た理由。それは、あの星を我が手中に収める為だった。そのためにホロライブに入り、Vtuberとなった。……しかし、最近は久しくそういった行為を行っていなかった。やったことといえば、ちょっとした先輩たちへのイタズラぐらいなものだ。
「まあ、菓子食ったりゲームしたりってのはこっちの”あるじ様”も大して変わらねーよ。やっぱり、どの世界にいてもあるじ様はあるじ様ってことだな」
「……吾輩、こっちの世界でもぐーたらしてるのか?」
「んーまあ、多少はな……でも、こっちの世界のあるじ様は今のラプラスよりも……少しだけ、窮屈な思いをしてたかもな」
窮屈な思いと言われ、事情も分からないのにやけにしっくりと来たものがあった。
その理由は恐らく、さっきまでの幹部や部下たちの態度によるものだろう。この世界の吾輩にはホロライブの優しい先輩も、応援してくれるリスナーたちもいない。世界最悪の大悪党ラプラス・ダークネスとして扱われてきたのだろうから。
「それに……あるじ様には、世界征服を急がなければいけない”理由”があったからな」
「世界征服を、急ぐ理由??……そういえば、何でこっちの吾輩はいくつもの惑星を侵略してるんだ?」
吾輩が地球を征服しようと考えた理由は、ただあの星を気に入ったからに過ぎなかった。
しかし、こちらの世界の吾輩は随分と熱心に侵略行為を行っている。幹部の口調的にも、星の征服は日常茶飯事のことのようだし。
「あー……まあ、理由については後回しでも構わないか。今のラプラスがあるじ様本人じゃないなら、その理由についても今は優先的なことじゃないからな」
「なんだよその言い方、逆に気になるだろーが」
「まぁまぁ……それよりも、これからどうするかって話だろ?お前は……ラプラスは、これからどうしたいんだ?」
またしても話をはぐらかされてしまった。
でも、そうだな。今この場にいないこっちの世界の吾輩の話よりも、今の吾輩のことについて話した方が有益か……。
「吾輩がどうしたい、か……。」
そう聞かれ、ラプラスは考える。
見知らぬ世界に連れてこられて、吾輩はどうしたいのか…………でも、その答えはもう既に決まっている。
「……帰りたい。……吾輩が居た、あの世界に帰りたいっ」
holoXの皆と、ホロライブの皆と、リスナーの皆と……またバカやって、心の底から笑えるあの世界に。
少し泣きそうになりながらも、ラプラスは烏にそう訴える。
そして、烏もそれを察していたように頷いた。
「わかった。…………なら、そのラプラスの望みの為に俺も協力してやるよ。”もう一人の”あるじ様!」
烏がそう言いながら、片方の羽を広げてピンッと立てた。その姿はまるで、古い仲の親友が「任せろ!」と親指を立てているように見えた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「それじゃあ、これからどうしていくかって具体案についてだが……ひとまずラプラスには、引き続きこっちの世界のあるじ様として生活してもらいたい。もし今のあるじ様が偽物だなんてバレたら……四天王の連中ならともかく、他の部下達はどうするかわからないからな」
話がひと段落し、烏がこれからの我々の行動について話し始める。
まあ、そうだよな。組織のトップが実は偽物だったなんて知れたら大事になる。ここに本物が居ないこともそうだが、偽物である吾輩も何をされるかわかったもんじゃない。むやみやたらに真実を話すことは避けた方がいいだろう。
しかし、そうは言っても……吾輩の中身は、あくまで別人だ。どんなに見た目や性格が同じだったとしても、全く違う境遇にいる自分自身を正しく演じることができるだろうか……。
ラプラスはそんなことを考えてしまい、不安になってしまう。
「なーに、安心しろよ。ここの連中はあるじ様を心酔しきってるし、ラプラスのその自由奔放さを理解してる。自分から本人じゃないって言いださない限り、多少のことじゃ疑いもしないだろ」
そんな吾輩を見兼ねて、烏が慰めの言葉をかけてくれる。
烏の話によれば、こっちの吾輩もあっちの吾輩も振る舞い的には大した違いが無いようだ。まあ、烏ですら最初は気が付かなかったのだから何とかなるかもしれない。
「取り敢えず、吾輩自身になりきった方がいいことはわかった。で、その後は?」
「その後は……とにかく、協力者を探した方がいいな。元の世界に戻るための手掛かりを探さなきゃならない。そのためにも……まずは、”コヨーテの奴”を仲間に引き込むんだ」
「コヨーテの奴って……博士のことか?」
「ああ、あるじ様の話じゃアイツの作った装置が原因でこっちに来ちまったんだろ?なら、事情を話せばもしかしたら同じものを作ってくれるかもしれないぜ?」
なるほど名案だ。
この世界の博士も吾輩のところと同じように天才的な科学者なら、同じ装置を作れるかもしれない。
しかし、それは吾輩に関する事実を博士に話すという事だ。さっきの烏の話的に、それはあまりおススメできないという事だったけど……。
「でも……博士に、こっちの事情を話しちゃって大丈夫なのか?」
「……まあ、アイツなら大丈夫だろ。むしろ嬉々としてあるじ様の話を聞いてくれるんじゃないか?パラレルワールドの存在なんて、科学者からすれば興味が尽きない話題だろうからな」
そういわれ、博士のその姿が吾輩にも何となく想像できてしまった。こっちのあいつもあんな感じなのか……。
しかし、そうとなれば善は急げだ。早速博士を探しに行くとしよう。
ラプラスがそう思い立ちあがると、何故か慌てた様子の烏に止められた。
「あー!あー!ちょっと待てっ!アイツのところに行くのはいいが、その前にまだ伝えとかないといけないことが二つある!!」
「伝えとくこと?」
烏にそう言われ、ラプラスは振り返る。
「いいか、まず一つ目に……俺の声は、他の奴には聞こえてないからな?今こうして会話できるのもあるじ様とだけだし、俺が話せるって言うのも他の連中は誰も知らない」
「え、そうなのか?」
「ああ、前のあるじ様もみんなに内緒にしてたんだ。……ただ、それだと話がややこしくなっちまうからな。とりあえずコヨーテの奴には事情を説明するときに俺のコトを話してもいいぞ」
烏からの話を、ひとまずわかったと頷く。
何故こっちの世界の吾輩がそのことを秘密にしていたのかはわからないが、それも何か理由があるのだろう。
「そっちの話はわかった。……で、もう一つは?」
「もう一つなんだが……”シャチの奴には気を付けろ”ってことだ。あいつは勘が鋭い、下手をすると一発で気付かれる可能性がある」
シャチの奴、それは恐らく新人の沙花叉クロヱのことだろう。
確かにあいつは普段へらへらしているが、変なところで勘がいい。吾輩の正体に気が付いてしまうかもしれない。
「アイツも変にあるじ様に酔ってるところがあるからな……一応言っておく。」
「そっちについてもわかった、気を付ける」
ラプラスは返事をし、再度扉の方に振り返った。
これからどうなるかはわからないが、元の世界の”あいつら”にもう一度会うために……ひとまず、こっちの世界のあいつらと仲良くするよう努めよう。
ラプラスはそう思いながら、もう一人の吾輩の部屋を後にしたのだった。
この作品にモブキャラが登場することに関して、どのように思いますか?(1番近いものに投票してください)
-
特に思うことは無い
-
物語が面白くなるなら出してもいい
-
特定の名前などが無ければ出してもいい
-
できるだけ出さないで欲しい
-
絶対に出さないで欲しい