転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第20話、『転生したらラプラス・ダークネスだった件』第一章最終話です。
すみません、我慢できずに結局この呪われたタイトルを使ってしまいました。後悔はしていません、最終回補正でたくさん読まれてくれるはず。
それと、本編の最後に"あとがき"載せておきました。興味があれば(必ず)読んで頂けると嬉しいです。

【追記】
さて、今回は一部の皆さんが気になっているであろうholoXの戦闘力についての簡単な指標を述べておきます。これらを知っておけば、今後出てくるであろうホロメンの強さもわかりやすくなると思います。(冷静に考えるとアイドルに強さ求めるなんておかしいか)

holoXの軍事力の半分以上が博衣こより氏による『兵器』や『武器』によって賄われています。それらを持った構成員一人分の強さはかなりのものですが、素の状態ではさほど脅威ではないことがほとんどです。そんな中でも、holoXに志願する者達はその能力や種族等を考慮して部門に配属されます。頭が良ければ科学関係の部門、力が強ければ前線関係の部門、それ以外の特殊能力を持っているものはそれが最大限発揮できる場所と言った具合です。更には特に長所のない者でも清掃部門や雑務部門など必ずどこかしらで役割を与えてくれます。その辺りの適材適所はルイ姉大幹部の腕の見せ所ですね。
つまりは、holoXの戦闘力のもう半分はその"前線関係の部門"という事です。主に風真いろは率いる『戦闘斥候部門』や沙花叉クロヱ率いる『暗殺部門』です。特に前者はholoX内でも推し名問わず一番人口の多い部門であり、その規模はちょっとした軍隊のようです。よって部門内でもさらに序列があり、一番統率と規律を大事にしています。その将校的立場が風真いろは殿であり、王であるラプ様の命令一つで自らの命を厭わず喜んで戦地へと赴く者達ばかりです。またラプちゃんの胃に穴が開きそうですね。


最後に、holoX初期メンバーの個人の強さランキングを乗せておきます。


ラプラス(通常時)<<博衣こより<<<<<鷹嶺ルイ<沙花叉クロヱ<<<ラプラス(覚醒)=風真いろは


普段のラプ様は文句なしの最弱です。頑丈さ以外の強みが無く、死なないだけの少女と変わりません。続いてこよりさんですが、彼女も肉体的強さは一般の獣人以下となっております。しかしラプちゃんを組み伏せるくらいなら訳ないですし、何よりその頭脳があるので実際には一番厄介かもしれませんね。

そこからしばらく空いて次はルイ姉です。ルイ姉レベルになれば黒様一人程度なら問題なく対処できるくらいです。ただし、そこには彼女の権能である『ホークアイ』がかなり強く影響しています。仮にこれが無ければ、もう少し評価は下の方になるでしょう。 また、クロヱさんはholoXを支える前衛職の一人です。掃除屋としての持ち前の身体能力を有していますが、それらはあくまで『暗殺』に適したものなので上位陣とは若干の差があります。

最後にほぼ同列一位のお二人です。覚醒ラプ様は言わずもがな、拘束具をたった一つ外しただけの元最強の悪魔となっています。本編でもあった通りあやめちゃんすら全く太刀打ちできない強さです。しかし、本当に恐れるべきはそんな化け物と素の状態で渡り合えるポテンシャルを持った風真殿です。刀一本で敵を薙ぎ払い、物理的強さだけで言えば覚醒ラプ様でも敵いません。流石ですね。


第20話 回想記『白上フブキ』

 

彼女を初めて見た時、まるで私の中に足りなかったピースを一つ見つけられたような気分になった。

 

 

「ねぇねぇ黒ちゃん!黒ちゃんはどーして、黒ちゃんっていうの?」

 

 

彼女の名前は【黒】、本名は知らない。

黒ちゃんとは一年ほど前に、神社の近くの森の中で出会った。その時は冬の季節だったこともあり、酷く凍えていた様子の彼女を私が強引に家まで運んで来たのだ。そこには当時、私と私を拾って育ててくれた祖母の二人だけで暮らしていた。山奥にあった木造の一軒家だったが、おばあちゃんも「こんな子供が一人でいるなんてよくない」と言って黒ちゃんを受け入れてくれた。

 

 

それから私達は、まるで初めから一緒だった家族のように仲良く暮らせていた……と思う。というのも、白上的にはもっともっと黒ちゃんと仲良くたいのに、肝心の黒ちゃんが後ろめたさからなのかあまり仲良くしてくれないのだ。そりゃあ実際に血は繋がっていないけど、見た目や種族的にも近しいものは感じていたし、何より私には彼女が必要だと本能が言っていた。

 

だから、少しずつでもいいから白上に心を開いて欲しい。この時の私は、そればかり考えていた。

 

 

「わたしの名前は黒じゃない。お前がかってにそう呼んでるだけだろ」

 

 

そんなことを言われたって、私が初め黒ちゃんに名前を聞いた時本人がそう名乗ったのだ。白上が名前を聞いて、黒ちゃんは確かに「くろ」と答えた。それ以来、私は彼女のことをずっとそう呼んでいた。

 

 

「だってー、黒ちゃんがそういってたんじゃん!ちがうっていうなら、黒ちゃんの本当のなまえおしえてよ!」

 

 

「…………ぜったい、教えない」

 

 

その時の私は知らなかった。彼女が頑なに本名を語らなかった理由を。

初めて会ったときにも疑問に思ったのだが、黒ちゃんは例の『種族間戦争』の被害者だったのだ。元々住んでいた村は戦火に焼かれ、その時に両親を亡くしていた。だからあの日、彼女は一人戦地から逃れるために森を彷徨っていたらしい。

 

しかも、どうやらその両親は戦争に賛成している中の過激派だったのだとか。これはもっと後の話だが、黒ちゃん本人から「自分たちで望んで、戦って死んだ人たち」と称されていた。そんな両親たちのことをあまりよく思っていなかったのか、黒ちゃんは本名を語りたがらなかった。

 

 

 

それから数年後、私の祖母が亡くなった。

こんな戦乱の世の中でも、おばあちゃんはちゃんと寿命を全うする事ができた。本人も最後に、「フブキちゃんと出会えて幸せだった」と言ってくれていた。勿論、その時の私は耐えられないほどの悲しみに包まれていたけど……それでも、黒ちゃんが傍に居てくれたお陰で私は何とか自分を保つことができたのだった。

 

 

「……黒ちゃん、白上ね……やりたいことがあるの」

 

 

二人だけになってしまったもの寂しい部屋の中で、私は正面に座る黒ちゃんにそう声をかける。

今私達は、居間の中央にある火のついた囲炉裏を二人で囲んで夕飯を食べているところだった。そんな中で、私から唐突にそんなことを告げられ黒ちゃんは首を傾げる。

 

 

「なんだよいきなり。やりたいこと?」

 

 

「白上ね、ずっと考えてたの……今のこの世界は、間違ってるんじゃないかって」

 

 

「間違ってる?」

 

 

それはつまり、今尚この大陸で行われている”戦争”のことを指していた。

同じ星に生まれた私たちが、いつまでも自分たちの誇りと保身のためだけに血を流し続けるなんて……そんなこと、絶対間違ってる。こんなことがいつまでも続けば、黒ちゃんのような被害者が出る一方だ。

 

 

「そう、間違ってる。だってそうでしょ?どうして同じ場所に住む私たちが協力もせずに、いつまでも無駄な争いを続けてるの?」

 

 

「いや、まあそうかもしれないけどよ……そう言ったところで、私たちには何も出来ないじゃんか」

 

 

黒ちゃんのいう事はもっともだ。こんな大した力のない少女一人が、長年続いた戦いにどう抗えと言うのだ。

……それでも、その時の私はもう心に決めていた。例え自分の命を対価に支払おうとも、この世界に平和を作りたいと。みんなが、手と手を取って笑いあえるような『国』を作りたいと。

 

 

「……それでも、私はやるよ。もう決めてるの、私は……これから生まれてくる子供たちが、たっくさん笑えるような国を作りたいっ!」

 

 

子供は希望だ。これからの世界を作り、より良い未来を創るために無くてはならない存在だ。そんな彼ら彼女たちが、もう悲しまなくてもいいように。お腹一杯ご飯が食べれて、毎日ふかふかのベッドで眠れるように。私のすべてを支払ってでも、この夢をやり遂げてみせる。

 

 

「……お前、そんなこと言って……本当は、子供とイチャつきたいだけなんじゃないのか?」

 

 

「えっ!?ち、違うよっ!白上はただ、本気でこれからのことを考えて!!」

 

 

突然そんなことを言い出す黒ちゃんに対し、私は慌てた様子でそれを否定する。まあ勿論、それもあるにはあるけれど……。

しかし、そんな白上を他所に黒ちゃんは笑いながら口を開いた。

 

 

「たっははは、冗談だって。……まあでも、いいんじゃないか?理由も含め、お前らしい」

 

 

「ほ、本当にそう思ってるぅ~?」

 

 

そう言った白上に対し、黒ちゃんは未だに笑いながら「思ってる思ってる」と答えた。

酷いよ全く。私はちゃんと考えて、真剣に相談したのにさぁ。なのに、好き勝手言いながら笑ってくれちゃってさっ!

 

でもその時の黒ちゃんは、なんだかんだ言いながらもたったの一言すら私を否定するようなことは言わなかった。むしろ、一通り笑い終えた後に私を見つめながらこう言った。

 

 

 

「……なら、私もそのお前の夢に付き合ってやる。元々はお前の拾ってくれた命なんだ、好きに使ってくれよ”フブキ”」

 

 

 

そう言った彼女の眼には、もうおふざけの色は残っていなかった。

まさか『拾ってもらった』なんて考えているとは思わなかったし、戦争の被害者である黒ちゃんが私の提案に賛同してくれるとも思わなかった。それでも、そう言った黒ちゃんの表情はもはや真剣そのものだった。

 

……だからこそ、その時の私は彼女の想いを無駄にしないように頑張ろうと誓えたのだった。

 

 

「わかった……一緒に頑張ろうね、黒ちゃんっ!」

 

 

 

 

ーーーーーその頃からだっただろうか。黒ちゃんが自分のことを、【黒上フブキ】と名乗るようになったのは。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ミオとあやめに監禁されてしまってから二日後の夜、私とおかゆの居る離れの玄関扉をノックする音がした。

こんな時間に、一体誰が訪ねてきたのだろうか。

 

 

「あれ~?ころさんかな?フブキちゃんちょっと待っててね、見てくるから」

 

 

そう言ったおかゆが、訪問者の確認のために下の階へと向かった。

それから数秒後、下からおかゆの驚いたような声が聞こえてきた。白上が誰だったのだろうかと思ったのもつかの間、ドタドタと足音を鳴らしながら階段を上ってくる人影があった。

 

そして、その人物を見て私もおかゆ同様驚嘆の声を上げる。

 

 

「フブキっ!!居るのかっ!?」

 

 

「えっ?!く、黒ちゃん!?」

 

 

息を切らしながら階段を上り切った彼女は、先日まで行方不明となっていた私の親友……いや、家族の一人であった。確かに先日送られてきた手紙にもその安否が記されていたが、まさか本当にまたこうして会えるとは思っていなかった。それでも確かに、正真正銘私の大好きなあの【黒上フブキ】だ。

 

 

「黒ちゃん……どうしてここに……」

 

 

「フブキ……」

 

 

未だに驚いている私をよそに、その姿を視界に捉えた黒ちゃんがすかさず私に近寄ってくる。

その行動を少し不思議に思っていると、珍しく彼女がそのまま私のことを強く抱きしめてくれた。

 

 

「フブキ、フブキ…………無事で……本当に、良かった……」

 

 

その様子に、私は三度驚く。

あのプライドが高くて、滅多にデレない黒ちゃんがまさかそんなことを言ってくれるなんて思わなかったから。しかもその声音には湿り気があり、私という存在をその体で噛みしめているみたいだった。

 

その光景を見て、私も黒ちゃんとの再会をより強く認識する。

そして、抱きしめてくれる黒ちゃんに応えるように私もその両腕を彼女の後ろに回した。

 

 

「黒ちゃんも、無事で良かったよ……私も、黒ちゃんに会いたかった」

 

 

そう言葉にしてしまうと、私ももう我慢できなかった。

思わず、ずっと溜め続けてしまった気持ちを涙とともに吐露してしまう。

 

 

「黒ちゃん……白上、すっごく頑張ったの。でも、もう限界で……ミオやあやめちゃんにも、私のこと見限られちゃって……」

 

 

一度溢れてしまったら、もう止まらない。

全てが終わるまでは泣かないと決めていたのに、その誓いは彼女の存在によっていとも容易く破られてしまった。

 

 

「白上、いっぱいいっぱい頑張ったの……でも、まだ足りなくって……」

 

 

ここまで誰にも漏らさなかった弱音が、次々に口をつく。

それを、黒ちゃんはただそのまま黙って聞いてくれていた。密着しているからこそ感じる人のぬくもりが、温かくて心地いい。

 

 

「白上、もう疲れちゃった。…………ねぇ黒ちゃん、私……これからどうすればいいかな……」

 

 

その時の私は、もう自分の道を見失ってしまっていた。全ての苦労が無駄に終わり、信頼していた部下や友達にも裏切られてしまったから。そんな中で、私に残されていたのは彼女だけだった。

 

……しかし、それもまた私の勘違いであった。彼女はまだ、何も諦めていなかったから。

 

 

 

「……何言ってんだよ、お前らしくない。私たちが揃えば、もう怖いもん何て無いだろ?……だから、今は好きなだけ泣いていい。弱音も吐いていい。それで、それが全部済んだら…………これからのことを一緒に話し合おうぜ?また、私を上手く使って何とかしてくれ……あの時みたいに」

 

 

そう言って黒ちゃんが、さっきよりも強い力で私を抱きしめてくれた。

 

 

 

そこからしばらくして、ようやく気分の落ち着いた私は黒ちゃんから事の成り行きを詳しく聞いた。

そして案の定、その中には黒ちゃんの口下手さによって生まれてしまった誤解が事態をややこしくしてしまったことを知った。

 

 

「黒ちゃん……だからあれだけ、子供の頃にお勉強しようって言ったのに」

 

 

「う、うるせえな。仕方ないだろ、私も一生懸命書いたつもりだったんだよ!」

 

 

そう言った黒ちゃんは、珍しく顔を赤くして恥ずかしそうにしていた。まあこれを機に、彼女には今後国語の勉強をしてもらうことにしよう。

それよりも気になったのが、ラプラス・ダークネスという人物についてだ。それに加え、今日holoXから送られてきた果たし状。それらが、今私達が解決しなければいけない問題であった。

 

 

「それにしても黒ちゃん、良くここが分かったねぇ。さっき、ミオちゃんたちからフブキちゃんの居場所までは聞いてなかったって言ってたよね?」

 

 

「ああ、まあな。見つけるのに苦労したぞ。ころねのやつが味方かどうかもわからなかったんで、自力でしらみつぶしに探してたんだ」

 

 

黒ちゃん曰く、お城に帰ってきた日にミオちゃんたちから粗方の状況は説明されたらしい。しかし、それに対し黒ちゃんは解答を黙秘したのだとか。その理由は、肝心の私の考えがわからなかったから。その為、今は解答保留中という事で部屋に引き籠っていることになっている。そんな中で、見張りの目を盗みながら少しずつ私たちを捜索していた。

結果、私たちの発見に二日もかかってしまい尚且つその途中でholoXからの手紙の件を聞いたのそうだ。

 

 

「一応holoXからの手紙をころねに見せてもらったんだが、その時には横に見張りが居たんであいつも詳しいことを言い出せなかったんだろうな。なんとか私にフブキの居場所を教えてくれようとしてたみたいだが、誤魔化そうとしすぎてよくわからん事になってた」

 

 

「え~、そのころさんはちょっと見たかったかもぉ」

 

 

いや、多分黒ちゃんも同じ立場だったら似たような事になってたでしょ。現に黒ちゃんの書いた手紙で誤解を生んでるんだから。

 

まあともかく、これでずっと気になっていた外の状況についてはわかった。ミオたちは思惑通りholoXの総帥を人質に取ることが出来たみたいだけど、代わりにholoXの人達からの怒りも買ってしまったらしい。このままにしておけば、きっとこのフレンズ王国は戦場になってしまう。どうにか、その事態だけは避けなければ。

 

 

「……それでフブキ、どうする?」

 

 

「勿論、私たちのやるべきことは決まってる。holoXとの衝突は、何としても阻止しないとっ!」

 

 

「んなことは言われなくてもわかってる、それをどうやってやるかって話だ」

 

 

そう言った黒ちゃんの目には、迷いの色が一切なかった。まるで、私の言わんとしていることが最初から分かっているみたいだった。流石は、小さな頃から一緒に居るだけのことはあるね。

 

 

 

 

そこから私は、黒ちゃんとおかゆところねの三人の協力でholoXの総帥【ラプラス・ダークネス】との会談の場を設けてもらったのだった。しかし、そこで出会った彼女は私の想像していた人物とはあまりにもかけ離れていた。

 

 

********************

 

 

 

『……皆を傷つけて……苦しい思いを、悲しい思いをさせて…………ごめんなさい。』

 

 

そう言ってあやめに頭を下げるラプちゃんに、私は不思議な既視感を覚えた。

それはまるで、思わぬ立場に立たされてしまった少女が誰にも悟られないようにその使命を全うする……私の実体験したそれに見えたから。holoXという私たちとは比べ物にならない力を持つ組織の総帥でも、私と似たような境遇にあるというのか。

 

 

城内の離れで初めてラプちゃんと出会ったとき、私は変な違和感と謎の懐かしさを感じていた。その違和感の正体は恐らく、その時の彼女の表情によるものだろう。まるで本物の少女のような見た目をした彼女は、何故か私に対しとても懐かしいものを見たかのような反応をしていたのだ。それは一瞬のことだったが、確かにこの総帥は私のことを知っていると確信した。

 

もう一つの懐かしさに関しては、私にもその正体がわからなかった。それでも、まるでラプちゃんのことをもっと昔から知っていたような……そんな気がしてならないのだ。勿論実際に会った記憶などないし、仮に会っていたとしても子供の頃から一緒にいたはずの黒ちゃんがそれを知らないはずがない。結局、全てが終わった今になってもその正体はわからなかった。

 

 

 

『この星に住む皆様に、今回の件で被害を受けた全ての方々に…………心より、謝罪します。本当にごめんなさい』

 

 

その言葉を聞いた時、私もあやめと同じように『何故彼女たちは、私たちを襲ったのだろう』と疑問に思った。しかしそれは、あやめのような責める気持ちとは違った純粋な疑問であった。

そもそもの話、holoXが私たちを攻撃した理由は当初他の国が戦争を仕掛ける場合のそれと変わらないと思っていた。自分たちのプライドや利益の為に、無惨な争いをし続けるという私の大っ嫌いなそれだ。そして、それは実際のところholoXも変わらないのだろう。しかし、それらと比べ彼女たちには明確に違うところがあった。

 

 

『吾輩とお前……フブキさんとで、取引をしないか?内容は……対等な立場での同盟だ』

 

 

ラプちゃんに初めてそう言われた時、私はその真意を理解する為に本当に悩まされた。

何故なら、彼女たちが前述の通り本当に自分たちの為だけにこの戦争をしていたとしたら、とてもこんな言葉は出てこないからだ。彼らと彼女たちの明確な違いは、この争いに関して求めるものが全く違うという点だ。

 

ラプちゃんがこれらの侵略行為に対し、対価として何を求めているのかはわからない。しかし、少なくとも彼女の望みは例え私たちと手を取り合うという選択肢を取ったとしても叶えられる”モノ”という事だ。しかもこちらに好都合な条件を並べ、逆に向こうにはこの星の資源と人材を一部提供するだけで叶う望み。そんなものが、果たして本当にあるのだろうか。

 

見たところ、確かにholoXは未知の技術力を持っている。そして、それらには当然資源やそれを使用するための人材が必要なことは理解できる。しかし、そんなものは私たちを支配してから全て奪ってしまえば済む話だ。それにフレンズ王国以外になら、既に降伏した国もあるので人材にも問題がないはず。にも関わらず、黒ちゃんとラプちゃんの会話的には初めから私たちと同盟を組むことを考えていたらしい。それを聞いて、ますます意味が分からなくなった。

 

 

 

『正直、私にもこいつの考えてることがよくわからん。……でもこいつは、ここまでの短い付き合いの中で敵である私との約束を守り続けた。何がしたいのかは知らないが……少なくとも、ラプラスの言葉は信用に値すると私は思う』

 

 

これもまた疑問の一つだった。

あのプライドが高く、身内以外には常に敵対心剥き出しみたいな黒ちゃんが何故あそこまでラプちゃんのことを信用していたのか。黒ちゃんから聞いた話によると、最初に『フブキと話をさせろ』と交渉を持ちかけたのもラプちゃんからだったらしい。その理由を聞くと、やはり私を知っているからだとか。それではまるで、”私たちと関係を持つことが目的だった”みたいではないか。宇宙をまたにかける秘密結社の総帥が、こんな一介の田舎国である私たちと。

 

 

 

『……それでも、今を生きている人に贖うことならできる。犯してしまった罪の分だけ、贖罪を果たすことならできる。だから………………頼むっ!吾輩にもう一度だけ、それを償うチャンスをくれ!!!』

 

 

ラプちゃんといると、本当に私の中の常識感が間違っているのではないかと度々思わされる。

どうして彼女は、そこまでして私たちとの関係を持ちたかったのか。いくら私との約束だったとしても、命を狙われたのなら例えあやめを殺してしまっても仕方が無かった。それはあやめが自ら望んで行ったことだったし、それを実行するだけの力をラプちゃんは持っていた。二人の戦いを見た時は本当に驚いたものだ。私の知る中で、純粋な力や潜在能力の有無で言えばこの星で最も強いのは【百鬼あやめ】という少女だったから。それを、もっと幼そうな少女がいとも容易くねじ伏せていたのだ。

 

それでも、ラプちゃんはそんなことをせずあやめの怒りを宥めることに全力を注いでいた。

そして、それと当時に酷い罪悪感にさいなまれているようにも見えた。戦っている時は様子がおかしかったのでわからなかったが、少なくとも私の話を聞いている時やあやめと言葉を交わしている最中は辛そうな表情を浮かべていた。どうして自分でした行いに対し、そんな顔をしていたのだろう。本人が言っていた通り、今までの侵略行為はラプちゃんが指示したことではなかったのか。

 

 

 

『……一先ず、今後この惑星に住む全ての者達への攻撃行為はこのラプラスの名をもって一切禁止とする。また、折角こいつらが成してくれた結果を無駄にするような行動についても極力避けるように。加えて、この星は吾輩の野望を達成するための重要な活動拠点となる。よって、現地に住む人々ともできるだけ友好関係を築くようにしろ。彼らは有望かつ有能だ。決して、力を誇示しすぎて無礼の無いように心がけろ』

 

 

そのラプちゃんの言葉は、その場にいた部下の人達に伝えると同時に私たちに約束を守っていることを証明をしているものだった。あやめちゃんを含めた全員の前でそう公言することにより、私たちを信用させるとともに今後の私たちとの関係値を固めたのだ。しかも、自分から人質になった件に関して自分を責めていた様子のコヨーテちゃん達を、あたかも”最初からそのつもりであった”かのようにして彼女たちの精神面も補完していた。

 

この時、私は確認していた。

このラプラスという総帥は、少女の皮を被ったとんでもない『策士』であると。

 

 

 

 

 

「ふぅー……」

 

 

そこまでを日記に記し、私はペンを置いた。

先日の騒動が決着してから三日後の朝。無事に事なきを得た私は、もう使い慣れてしまった書斎にて日課の日記を書いていた。そして、ここ数日の自分で書いた記載を見返してため息をつく。

 

 

「はぁ~……結局、ラプちゃんは何者なんだろう……」

 

 

結局のところ、ラプラスという人物については疑問が残るばかりであった。謎の懐かしさから、私たちを襲った本当の理由に至るまで彼女のことは何もわからずじまいだ。私たちと仲良くしたい理由も、あんなに辛そうにしていた表情についても、何もわからない。

 

しかし、それでも一つだけわかったこともある。

 

 

「あの子は……あの人は、本当に『ヤバイ』ってことだ」

 

 

例えどんな理由があったとしても、それだけは確かだった。

この星を本気で望まなくとも、いとも簡単に征服してしまえる軍事力。私たちでは手も足も出ない、あの天からの光の矢を可能とする技術力。そして、それらを命令一つで扱えてしまうラプラスという悪魔の存在。しかも、本人にすらあやめを手籠めに出来る武力と部下たちをあそこまで信頼させる統率力を兼ね備えているときた。そんなの、仮に正体が分かったうえでもう一度戦えと言われたって、一体私たちに何が出来るというのだろうか。

 

それだけ、彼女たちholoXは圧倒的だった。

 

 

「……でも、確かに。黒ちゃんの言ってたことが少しだけわかった気もする」

 

 

それは、黒ちゃんがラプちゃんに対して言っていた「こいつの言うことは信用できる」ということだ。確かにholoXは恐ろしいし、ラプちゃんはそれらを完全に掌握しきっている。しかし、だからこそラプラスという人物の言う言葉は信用に値すると私も思った。

そんな彼女が、私たちと仲良くしたいというなら……それを叶えてあげることこそが、彼女たちと共存するための第一歩なのかもしれない。

 

 

「それに……白上も、ラプちゃんには興味があるしね」

 

 

それもまた、私の本音だった。

holoXの総帥としての一面もある彼女だが、同時に施しに対する謝罪も素直に言える子だったから。それに、何よりおにぎり一つであんなに幸せそうな顔をするなんて想像も出来なかった。結局のところ、ラプちゃんについてはよくわからなかったけど……それでも、きっとこれからは意外と仲良くできるんじゃないかって思えた。

 

 

 

 

そんなことを私が考えていると、丁度誰かが書斎の扉をノックした。それに気が付いた私は先ほどまで開いていた日記帳を閉じ、訪ねてきた者に声をかける。

 

 

「は~い、どうぞー」

 

 

「フブキー、もう準備できてる?もう少しでholoXの人達来ちゃうよー?」

 

 

そう言ったのは、先日より獣人部隊隊長兼holoXとの交渉大使となった大神ミオだった。その言葉を聞いて、私は慌てて服装を整える。実は今日は、私たちフレンズ王国と秘密結社holoXが同盟を組んでから初めての会合を行う日なのだ。今回の件に関する情報の共有と同盟の件に関する詳しい内容のすり合わせ、加えて今後の私達との兼ね合いについての話し合いをするのだ。

 

といっても、そのメインは何故かラプちゃん主催で行われる食事会らしい。本人曰く「仲良くなるには、まず同じ釜の飯を食うところから!」とのことだ。相変わらず、あの総帥は何を考えているのかわからない。

 

 

「はいはーい、今行くよ!」

 

 

そうして私は、今回の件の関係者たちを連れて天空に佇む”友達”の家へと尋ねて行ったのだった。

 




【あとがき】
初めまして、飽和水溶液申します。
この度は『転生したらラプラス・ダークネスだった件』を読んで頂き本当にありがとうございました。これにて、転ラプ第一章を終了となります。楽しんでいただけたでしょうか?



実はこのシリーズは、書き始めた当時はかなり思い付きな部分がありました。「めっちゃくちゃ崇め奉られてオドオドするラプ様が見たいっ!」という思いからこの設定を思いつき、最初はかなりギャグ寄りなほのぼの系を書くつもりでした。今の内容からは想像が出来ませんね、どうしてこんな事になってしまったのか……。
しかし、書いていくにつれてこうしたら面白いああしたらラプ様の良さが際立つと試行錯誤を繰り返すうちに気が付いたらこうなってしまいました。まあ、これはこれで満足しているので結果オーライです。シリアスな場面以外は思う存分ラプ様たちにも羽根を伸ばしてもらいましょう。


次に世界観や細かな設定についてですが、出来るだけホロライブ様の元ネタを意識して構成しています。私自身も調べてみてから初めて知ったものなどもあるので、所々にわかな部分があったと思います。またホロメンに対する理解力が足らず、許容できないキャラ崩壊をしてしまっていたかもしれません。それらについては、読者の皆様に大変読みづらい結果を招いてしまったと本当に申し訳なく思っています。
それでも、少なくともこの作品を面白いと言ってくださる方々もいて本当に励みになりました。今後ももしよろしければ、このシリーズを追って頂けると嬉しいです。


長々と話してしまいましたが、上記の通り今後もこの転ラプシリーズは続けていきたいと思います。完結までどれくらいの長さになるかはわかりませんが、読みたいと言ってくださる方が居る限り書き続けます。今のところ、予定としては次のスポッターは【沙花叉クロヱ】さんにするつもりです。そういえば宇宙海賊や右目の眼帯お姉さんの話が出ていましたが、どうなるのでしょうね。



最後になりますが、第二章に関しましては構想がもう少し固まり次第投稿していこうと思っています。そんなに時間はかからないと思いますが、もしかしたらほんのり投稿が遅れてしまうかもしれません。今までも不定期投稿でしたが、引き続き気長にお待ちいただけると幸いです。


それではまた、次回の『転ラプ』でお会いしましょう!

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