転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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21話です。投稿が遅くなってしまい、本当に申し訳ございませんでした。
というのも、実は数日前に22話まで書き終わっていたのですが……途中でその内容に満足がいかなくなって、一から書き直していました。その為に投稿が遅れた次第です。なので失踪したわけではありません、ご安心ください。またこれからは通常通り投稿していきますので、第二章もお付き合いください。

【追記】
今回の深堀シリーズはお休みです。理由は上記の通りです。なるべく早く続きを投稿しますので、今日のところはそれで勘弁してください。


第二章
第21話 秘密結社holoXの上層部会議


 

 

【???】

 

とある場所。そこには五人と1人の女達が居た。

 

 

 

「まったくもう……困るんだワ、勝手にこんなことしてもらっちゃ」

 

 

 

その中の一人、恐らくその場で一番偉いであろう女性がそう言った。

そして、その言葉を向けられた者達は次々と反論を口にする。

 

 

「すいちゃん別に悪くないし~。ていうか、先にそっちが手出してたじゃん」

 

 

「ただの正当防衛なのです。るしあはただ、入り込んでいたネズミを捕まえただけ」

 

 

そう言って、叱られているはずの二人がその叱咤に文句を垂れる。

しかし、いくら正当防衛だと言ったってやって良いことと悪いことがあるのだ。

 

 

「今は言い訳を聞いてるわけじゃないんです。2人とも、少しは反省してください!……はぁ、全く…ただでさえ今うちは内部事情で忙しいというのに、更に外部との揉め事を起こすなんて…………まあ、もうやってしまったものは仕方ありませんね」

 

 

そうしてため息をついた彼女は、事の発端である人物の”捕らえられている”牢の前までゆっくりと近づいた。

その檻の中にいた人物は随分と痛ましい姿になっており、辛うじて生きているといったところだ。いくら洗練されたその肉体と技術を持とうとも、流石にうちの二番船及び三番船の船長を二人同時に相手にしたのでは分が悪かったというところだろう。

 

 

「スゥー……あ、あのさ、船長……その子、どうするの……?」

 

 

「そんなの、敵軍に捕まった女スパイがどうなるかなんて決まってるにぇ!」

 

 

確かに、それもかなり魅力的なお話ですが……生憎、そんなことをできるような相手でもないのだ。

そう思った赤いコートを身に纏った彼女が、鉄格子に片手を付きながらその人物に話しかける。

 

 

 

「……まあ、貴方の”使い方”についてはじっくり考えさせて貰います。それまでは、ここで大人しくしていてくださいね……【”沙花叉クロヱ”】さん」

 

 

 

そう声を掛けられた一匹の”掃除屋”は、ただ静かに床に這いつくばっていたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

秘密結社holoXとフレンズ王国による同盟会議の前日。

ラプラスは、大幹部である鷹嶺ルイと研究部門代表の博衣こより二人をアジト内にある第一会議室へと呼び出していた。この場には他の眷属たちはおらず、正真正銘吾輩たち三人だけの上層部会議であった。

 

 

「よく集まってくれたな、二人とも」

 

 

会議室の中央にある円卓の上席に座り、正面二方向にいる部下たちを見ながらそう言った。

この部屋は、外部に情報や会話内容が漏れるのを防ぐために防音加工がなされている。加えて、光源は必要最低限の間接照明のみで床や壁、天井は真っ黒だった。他に明かりと言えば、吾輩の後ろにそびえる巨大なスクリーンに映し出されたholoXのマークくらいなものだ。よって、その部屋はまさしく秘密結社という名に相応しい会議室の様態をしていた。

 

 

「総帥に呼ばれたのなら、直ぐに集まるのが部下の務めじゃない?」

 

 

そう言ったのは、何故か偉そうに手と足をそれぞれ組んで座っている幹部だった。その姿は意外にも様になっており、例えるなら悪の組織の女幹部のようであった。いや、実際そうなんだけど。

 

 

「そうだよねぇ~。ラプちゃんに呼ばれたのなら、例え総帥から無理難題をいきなり押し付けられて連日眠れないほど多忙だったとしても、僕たちは足を運ぶよ!」

 

 

「う˝っ……そ、それについては本当にすまん……」

 

 

博士による若干の皮肉に、ラプラスはバツが悪そうに答えた。

博士の言う無理難題とは、今回この二人を呼んだことにも関係するお話。それはつまり、フレンズ王国との同盟に関する詳細事項のことだ。明日の会議に向けて、予め二人に吾輩の考えを伝えるとともにholoXの総意を固めておきたいと考えている。……まあ、それのせいで博士たちは大忙しなわけだが……。

 

 

「んーん、別に嫌じゃないんだよ?むしろ、こよは嬉しいの。ラプちゃんが頼ってくれるってことは、僕が必要だってことでしょ!」

 

 

そう言った博士は、軽口を叩いていた割には言葉通り嬉しそうだった。

実は幹部によると、吾輩が捕まっていた数日の間博士は本当に元気がなかったらしい。毎日碌に寝もせずに、任務や研究に付きっ切りで泣いていたとか……。それについてルイには、必要以上に心配しない方がいいと言われた。しかし、そんなものは土台無理な話なのだ。今後も博士には、holoXの一員として居続けて欲しい。その為にも、早めに定期的に休息を取ることを義務化してやらないとな。

 

 

「幹部も、忙しいのに吾輩の我儘を聞いてくれてありがとな」

 

 

「いや、私もラプに呼び出されると自体には文句ないわよ。……ただ、そう思ってくれるなら早めに本題に入ってくれると嬉しいわ」

 

 

ルイもこんな感じで落ち着いた様子だったが、その裏では多忙を極めているはずなのだ。幹部の言うとおり、二人の時間を無駄にしないためにもさっさと本題に入ってしまおう。

 

 

「そうだな。じゃあ、早速話を始めるぞ……といっても、今二人をわざわざ呼び出す用事なんて一つしかないけどな」

 

 

「うん、なんとなく察しはついてるよ。”明日の会議”のことだよね?」

 

 

「そういうことだ」

 

 

察しのいい博士が、吾輩の言いたいことを当ててくれた。

ここからは雑談ではなく、至極真面目なholoXの作戦会議のお時間だ。

 

 

「……今日二人に集まってもらったのは、明日の記念すべき第一回目となる我々holoXとフレンズ王国による会談についての話だ。そのメインは、幹部にも言っておいた通り親交を深めるための食事会なわけだが……それを気兼ねなく行うためにも、その前に行われる会議に対して吾輩たちの意見をまとめておきたい」

 

 

仕事モードに入ったラプラスに対し、幹部と博士もどこか真剣な姿勢で話を聞いてくれている。

今回の会談の主要イベントは、後半に行われるholoX主催のお食事会……つまり、パーティーというわけだ。その時にお互いが気兼ねなく親交を深められるようにするためにも、その前に行う予定の会議を失敗するわけにはいかない。特に、二人にはくれぐれも喧嘩腰にならないよう注意喚起を徹底しなければ。

 

 

「意見をまとめるって……ラプ、もしかして何も考えてないの?」

 

 

「ふっふっふ……何言ってるんだ幹部、ちゃんと考えてるに決まってるだろっ!」

 

 

ラプラスはここ数日間、この『ホロフレ同盟』が上手くいくための施策をずっと考えていた。その夜更かししながら必死にまとめた案を、今日は二人に聞いてもらうのだ!

 

 

「考えてるの?……なら、それでholoXの意見がまとまってるじゃない」

 

 

「……へ?」

 

 

ラプラスが張り切ってプレゼンを始めようとしたとき、幹部からそんなことを言われてしまった。

いや、吾輩のこれはただの一案のつもりだったんだけど……。

 

 

「え、いや、そうじゃなくってだな……これは、あくまで吾輩一人の意見だ。だから二人にも、今回の同盟をどうしていきたいと思ってるかとか聞きたくて……」

 

 

「どうしていきたいか?……そんなの、ラプの好きなようにすればいいわよ」

 

 

そう言った幹部の口調は、本気でそう思っているといった様子だった。

好きなようにって……もしかして二人とも、あんまりこの件について乗り気じゃないのか……?

 

幹部の反応を見たラプラスに、一瞬そんな考えが浮かんだ。

しかし、その本質は違うものだったと博士に説明される。

 

 

「ねぇねぇラプちゃん。僕たちは基本的に、ラプちゃんの意見には全部賛成だよ?だから、別にこよたちに意見とか求めなくてもいいのに」

 

 

その言葉を聞いて、ラプラスはようやく理解する。

holoXの意見の総意、それはつまり総帥であるラプラス・ダークネスの意見とイコールであるということだ。この組織の支配者は吾輩であり、部下たちはあくまでそれについてきているだけ。ただ、こいつらはそれを嫌々やっているわけではない。むしろ、吾輩の望みの為に使われたいと思って集ってくれているんだ。だからそもそも、部下の意見をわざわざ聞く必要など無いだろうと二人は思っている。

 

……でも、そんなのつまんないじゃないか。吾輩は、少なくとも幹部や博士の意見は出来るだけ反映してやりたいと考えている。だからこそ、忙しい中集まってもらって吾輩の考えを聞いて欲しいのだから。

 

 

「……いや、それでも吾輩は二人の意見も聞きたいんだ。部下たちの発言が、より良い結果につながるかもしれないだろ?……っていうか、助言くれないと絶対何か失敗する自信がある」

 

 

ラプラス一人で思いつくことなどたかが知れている。それらの考えには、どこか必ず穴があるはずなのだ。それを、二人にも見つけて欲しい。そして願わくば、解決案なんかも聞きたいところだ。

 

しかし、そう思っていたラプラスだったが何故か博士は乗り気ではなさそうだった。

 

 

「えーでも、こよたちが余計なこと言った方が失敗しちゃいそうな……」

 

 

「いやいや、そんなこと無いだろ!博士は頭がいいし、幹部も色々と有能だし……二人が考えてくれた方が、絶対うまくいくって。…………ていうか、何でそんなに信用しきってるんだ。今までだって、吾輩が間違えてきたことなんていくらでもあっただろ?」

 

 

ラプラスという人物は、基本めんどくさがりで適当な人間だ。そりゃあ仕事となれば多少本気で取り組みはするけど、普段の不真面目さが祟ってPONをしでかすことは目に見えている。

そして、それは恐らくこちらの世界のラプラスも同じはずだ。

 

 

「え、例えば?」

 

 

しかし、ラプラスのそんな考えに対し博士はキョトンとした顔で聞き返してきた。そこには一切の迷いはなく、聞かれたこっちが困ってしまう。

例えばって……ラプラスの失敗談など、いくらでもあるだろうに。

 

 

「た、例えばって…………な、なんかあるだろ。ほら、何か一つくらい……」

 

 

「んー?こよの記憶上、ラプちゃんが何かを間違えたことなんてなかったと思うけどなぁ。確かに、小さな失敗ぐらいはあったかもしれないけど……大事なことに関して、ラプちゃんが何か間違ったことなんてあったっけ?」

 

 

「無いわね」

 

 

博士による脳内捜索も虚しく、ラプラスは今まで一度も道を違えたことが無いと言い切られてしまった。しかも、それを聞いていた幹部も即同意する。

……こっちの世界の吾輩、そんなに優秀だったのか?

 

 

「回りくどいと思ったことは、確かに私にもあるわ。……でも、それで何度自分が浅はかだったと思わされたかわからない。今ある『結果』は、それら全ての過程が無ければ実現されるものじゃない。一見無駄なことに思えても、そうした細かなことが繋がって”今”がある。……だから、ラプが総帥として歩んできた軌跡には何一つ間違っていたことなんてない」

 

 

「そうだよね~、こよもそう思うよ。だから、ラプちゃんが僕たちにこうしろって言ってくれたらその通りにするよ?」

 

 

いや、現に部下たちの態度を読み違ってるんですけど……。なんでこいつらは、こんな吾輩なんかにそこまで言い切れるんだよ。言っちゃなんだが、本当の吾輩はたぶんそんな大したものじゃないぞ。その場しのぎで、適当に思うがまま生きているだけだ。それなのに、一体何を勘違いしてこんな事になっているのか……。

 

そんなことを思ったラプラスだったが、しかし二人は心底本気で言っているといった様子だった。

ただ、それでも吾輩は二人の意見を聞きたい。そして、吾輩の考えに本心から協力してほしいのだ。

 

 

「はぁ……ならわかった、これは命令だ。今から吾輩が自分の考えを話すから、二人ともそれぞれの立場上考えられる問題点や懸念点を上げてくれ。それらについて改善点があれば、それも頼む」

 

 

「……まあ、そういうことなら」

 

 

「んー……正直、ラプちゃんのご期待に添えるかわかんないけど……わかった!考えてみるね!」

 

 

未だに不服そうではあったが、二人とも渋々吾輩の願いを聞き入れてくれた。

まあとりあえず、これでようやく話し合いが始められるな。

 

そう思ったラプラスは、その場で立ち上がってから口を開いた。

 

 

「……いいか?まず吾輩は、今回の同盟を通して最終的にはフレンズ王国を【holoXの第二本部】にしたいと考えてる。でもそれは、何もそこに住む人々を隷属させたいという意味じゃない。あくまでフレンズ王国は吾輩たちの友好国として扱って、その上でholoXの第二本部の基盤を固めていきたいんだ」

 

 

それこそが、吾輩がこの数日間で夜更かしをしながら考え出した解決案であった。

別に、ゲームとかしてたわけじゃないぞ。

 

先程言った第二の本部にしたいという考えは半分が建前であり、その真意はフブキ先輩たちの安全と繁栄を願うものとなっている。フブキ先輩と同盟結ぶ際に約束したことは、holoXの侵略行為に対する贖罪は勿論うちの技術力を一部提供するという事も含まれていた。よって、それらを使用するのに必要な施設や拠点を建設してholoXの新しい活動本部としてく……って事にする。そうすれば他のholoXの連中も納得するだろうし、その上でフブキ先輩たちとの約束を違えることも無い。そしてちゃっかり、先輩たちとも仲良くなれるという寸法だ。

 

 

「細かいことは、向こうとも話し合ってから決めることになるが……侵略行為による復興作業が終了次第、こっちは向こうにholoXの技術力を一部提供する事になっている。だが、復興作業に対する援助はともかく新しい技術を扱うには知識や経験が必要だろ?だから、それらをまずフレンズ王国内で試験的に使って実用化していくんだ。その時に、研究や開発に必要だという名目で施設や基地を建てていく。……そうすれば、もうそこはholoXの新しい拠点だろ?」

 

 

まあ、それらはあくまでフブキ先輩たちのために使うつもりだ。それに技術力を提供すると言っても、何も銃の扱いや空を飛ばそうという事ではない。彼女たちの星の文明レベルに合わせて木造建築や農業、簡単な医療や食糧問題について少しずつ改善していければいいなという程度だ。

しかし、それにはどっちにしろholoXの拠点を近くに置く必要がある。そうすれば、必然的に吾輩が赴いた際にはフブキ先輩たちのところに会いに行けるというわけだ。

 

 

「……そして、それらの技術が有用であると証明された暁には他の国々にもそれを宣伝していく。そいつらにしてみればただの侵略者である吾輩たちだが、大勢の避難民を受け入れていた実績と影響力のあるフブキ王が言えば懐柔も簡単になるだろうな。そしたらまた、同盟の約束である資源と人材が手に入るようになる」

 

 

これに関しては、悪の組織としての体裁を保つための売り文句だ。

それでも、もしかしたらこの星には他にもホロメンの先輩たちがいるかもしれない。何たってホロライブには、動物をモチーフにしていた人たちが一定数居たのだから。その人たちを探すにしても、この案は我ながら悪くないと思っている。

 

 

 

 

「……まあ、ざっくり言うとこんな感じなんだが……二人は、どう思う?」

 

 

粗方の考えを話し終え、ラプラスは幹部と博士の反応を伺う。

正直言って、さっき自分で言ったことがどこまで実現可能なのかわからないのだ。この計画に掛かる費用も吾輩には想像できないし、工面も出来ない。それに、獣人たちにも扱えるレベルの技術と言ったって吾輩には何一つ思いつかないのだ。その辺りを、二人には指摘してほしいと考えているんだが……。

 

ラプラスがそう思っていると、慎重な趣きの幹部がゆっくりと口を開いた。

 

 

「……で、ラプはその話のどこに不安要素があるの?」

 

 

「え?」

 

 

思わず、そんな声が漏れてしまった。どこにもなにも、全部不安だが?

ラプラスの予想では、吾輩が気付けていない見落としがあるのではないかと思っていた。だからこそ、それについて意見が欲しかったのに……。

 

 

「だって、そうでしょ?ラプが自分でそこまで考えて、計画を立ててくれた。……なら、後は私たちに『コレを実行しろ』って言うだけじゃない」

 

 

「いや、だからそうじゃなくって……ルイの幹部としての立場から見て、問題とかはないかって聞いてるんだが……」

 

 

さっき命令したのは、そういうことだったはずだ。

吾輩の考えに対して、ちゃんと意見を持ってもらわないと困る。

 

しかし、そう言ったラプラスに続いて投げられた言葉は、更にその予想を上回るものだった。

 

 

「問題?……あーまあ、確かにそれはいくらかあるかもね。例えば大前提に、それらを実行するには膨大な資金がいる。それに、割と今人手不足なholoX内からどうやって現地で働く人材を捻出するのかとか。他にも、ある程度の利益が見込めないと事業は続けられないから、あの惑星でそこまでの元手を取れるのかとか。後は、それらを建設するための場所はどれくらい確保できるのかとか……」

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ幹部…………そんなすぐにいっぱい思いつくのか……?」

 

 

幹部がこの短い時間の中で、既にそれだけの問題があると提示した。そして、それはラプラスが当初想定していたよりも多いものだった。

その原因については、ラプラスがもの知らずだったことが影響している。吾輩は総帥という立場でありながら、holoXが人手不足なんてことすら知らなかった。それに、事業云々なんてことを言われたって吾輩にわかるはずもない。

 

 

「え?そりゃこれくらいは考えられないと、holoXの幹事なんてできないわよ。……それに、こよりにも思うところはあるんじゃない?」

 

 

幹部がそう言うと、向かい側に座っていた博士の方に視線を移した。

すると、しばらく考え込んでいたらしい博士も口を開く。

 

 

「うーん、まあ確かに……あえて懸念事項を上げろって言われたら、いくつか思いつくかなぁ。その中でも特に思うのは、施設や基地の建設にかかる資材・資金とそれによって採取できる資源のつり合い。こよも調査任務で現地に行ったけど、所見とラプちゃんのいう条件を合わせて考えたらこっちの利益はトントンって感じかな。それこそ、環境や外部の影響を考えずに大規模にやれるって言うなら話は別だけど……ラプちゃんの話じゃ、それも難しいよね?更に獣人の労働力とかもそこに使うつもりだろうけど、ぶっちゃけ機械化してるほうが効率がいい。だから、基地の設営以上にこっちには利が無い。……いやむしろ、それに掛かる人員や時間を考えればマイナスかも」

 

 

幹部が幾つかの問題点を洗ったのに対し、博士は一つの重大な懸念点を教えてくれた。

確かに、環境汚染や騒音等を起こさずに採掘や伐採は難しい。それに、それらを稼働させるための施設の建設にも資材が必要になる。しかも、それは手作業よりも機械を使った方が断然早いし正確なのだ。そして極めつけは、例えその全部を実現できたとしても……こちらに、殆ど利益が見込めないことにある。それでは、holoXにとっても”やらない方がいいこと”になってしまうのだ。

 

 

「……そうか」

 

 

ラプラスはここに来て、現実の厳しさというものを痛感させられる。

吾輩が考えていたことは全て、自分に都合のいい結果をもたらすための口実だ。しかしそれは、口にするは易し実現するには難いことであった。勿論、多少の問題は発生すると覚悟していたが……まさか、ここまでだったとは思わなかった。

 

現実を突き付けられたラプラスは、先程までの勢いが嘘のようにシュンとしてしまう。

……しかし、それを見た幹部と博士が吾輩に言い聞かせるようにこう言った。

 

 

「……でもねラプ、これらの問題に対する改善方法はあくまで私たち''下っ端''が考えること。諸問題についても、そこに関係してる部門の人達がそれぞれに解決するべき案件……だから、総帥であるラプが気にすることじゃないのよ」

 

 

「そうだよ!資材や利益に関しても、ラプちゃんがわざわざ考えることじゃない。総帥はただ、『こうしたいから何とかしろ』ってこよたちに言えばいいだけ。それによってどんな不利益が生じようとも、ラプちゃんがそれを望んでいるというだけで私たちにとっては何よりも優先すべき事項になる。……だから、ラプちゃんがそんな不安そうな顔する必要ないんだよ?」

 

 

それは、holoXに根付いていた『ラプラス・ダークネス絶対主義』の考え方であった。

 

ラプラスは、またしても勘違いをしていたのだ。

こちらの世界に来てからの数日間、吾輩はこの世界の幹部と博士と少なからず関わってきた。その中で、吾輩の身勝手な行動を二人は時々注意していた。……しかし、それこそが吾輩の知っているholoXの愛するべき部下たちの姿だと思っていた。吾輩が我儘を言おうとも、めんどくさがったり拒否したりと遠からず総帥の意見を否定しているところがあった。でもそれは、逆に言えば吾輩の間違いを正してくれている効果もあったのだ。

 

しかし、この世界のholoXは文字通り根本から違ってた。確かに心を許せる仲間であり、総帥の自己中心的な行動を御してくれていた。……しかし、それはあくまで『ラプラス・ダークネス自らが危険地帯に足を踏み入れようとしていたから』であったのだ。黒様の説得だって、出来るのなら眷属の誰かに手紙でも持たせればよかった。フブキ先輩との面会だって、和解する気じゃないなら拉致でも何でもしてこちらに無理矢理連れてくればよかったのだ。にもかかわらず、吾輩はそうせず全ての現場に自ら赴いた。それは、二人からしてみれば普段とは違った行動であり、その為に危険であると口を出してくれたのだろう。

 

しかし、今はholoXの今後の作戦方針について話しているだけであってそこに危険は無い。従って、幹部も博士も吾輩の意見を否定する必要が無いのだ。元々二人は、ラプラスに対し全肯定なのである。だからこそ、そんな問題などという事を気にせず命令を下すだけでいいのだと二人は言っているのだ。

 

 

 

……だが、それも考えようによっては悪くないのかもしれない。

何故なら、今回のような吾輩の無茶なお願いも命令として通すことができるということだからだ。それに、もし今後他の先輩方を見つけたとしても、吾輩の一言でholoXの意向を左右することが出来るようになる。確かに、今のこの関係では部下たちと距離を感じてしまうかもしれないが……これからも、holoXを吾輩の自由に使うためというなら多少は我慢するべきだな。

 

 

「なるほど、二人の考えはわかった……じゃあ、これも命令だ。明日行われる会議にて、必ずフレンズ王国と親交を深めろ。そして、その上でさっき言ってたことをできるだけ実現してくれ」

 

 

いくら問題があろうとも、依然ラプラスが考えた同盟案は両陣営の発展を目指したものだ。それは例え、我々holoXにとっては利の少ないことだったとしても、フブキ先輩たちにとっては大きな進歩となるはずだ。それなら、やはり吾輩はそうなる事を望む。フブキ先輩と約束したように、彼女たちのこれからを償うんだ。

 

そう思ったラプラスは、目の前にいる二人の部下にそう言いつける。

すると、向こうもそれに応えてくれた。

 

 

「了解、総帥」

 

 

「はーい、任せてっ!」

 

 

吾輩たちの関係については、これからゆっくり改善すればいいだけの話だ。元の世界と全く同じには出来なくとも、吾輩の愛したholoXの形にちょっとずつ近づいてくれればそれでいい。

 

 

「あ、それと今まで通り、お前達だけで判断できないと思った事に関しては直ぐに吾輩に教えてくれ。あと、それ以外の諸問題についてもその内容と行った対処について教えてくれると助かる」

 

 

先程幹部が指摘してくれたholoXの人手不足、そのことをラプラスは知らなかった。きっと他にも、吾輩の知らない問題を幹部が改善しようと手を尽くしてくれているはずだ。それらを少しでも軽減させるためにも、吾輩はもっとこの世界のholoXについて知るべきなのである。

 

 

「わかったわ。紙面に残した方がいいと思うものは書類にして、それ以外は口頭で報告するわね」

 

 

「ああ、頼む」

 

 

 

……こうして、ホロフレ同盟会談の前日に行われたholoXの上層部会議は幕を閉じたのだった。

 

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