転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
さて、とりあえず今回でフレンズ王国絡みの話は終わりです。途中で若干方向性を見失っている気もしますが、次回から新しいお話が始まります。果たして、例の掃除屋さんに何があったのでしょうか……。
【追記】
今回も深堀シリーズはお休みです。本編の進行度的に、書けることが無いんですよね。まあ一言いうなら、白上フブキは高いところが苦手!って感じです。
holoXとの騒動から数日後。
私たちフレンズ王国陣営は『使節団』を結成し、holoX主催の会談へと赴こうとしていた。
「はぁ……なんだか、緊張してきた余」
そう言ったあやめちゃんが、ハラハラした様子でため息をついていた。
ここはフレンズ王国のお城の敷地内にある中庭。白上たちはそこで、holoXからの迎えを待っているところだった。ちなみに、今回の使節団のメンバーは王様である私と、交渉大使であるミオとあやめ。他にはフレンズ王国の大臣と宰相に、今日は私の護衛ということになっている黒ちゃんの計六人。後はそれに加えて、向こうで私たちの面倒を見てくれるおかゆやころねを含めた従者たち数名がこの場にはいた。
「大丈夫だよあやめ。ウチたちもついてるんだし、リラックスしていこ?」
「うぅ、ミオちゃん……」
緊張しているあやめに対し、ミオが背中を撫でながらそう言っていた。
先日の一件より、ミオとあやめにはholoXとの『交渉大使』という立場を任せている。それは私たちフレンド王国を代表しているとともに、holoXからの私たちの印象を左右する大切な仕事だ。確かに、普段実家でも王政に関わることの少ないあやめからしてみれば、今回のことはかなりの重責となるだろう。それでも、これは悪いことをした罰なので甘んじて受け入れてもらうしかない。
それに、何も責任があるのは二人だけではない。私もフレンズ王国の代表として、ラプちゃん達と向き合わなければいけないのだ。……まあとは言っても、今回のメインはあくまでラプちゃん希望の会食らしいけどね。昨日送られてきた手紙には、明日はそんなに気負う必要は無いみたいな内容が書かれてたっけ。
「おいおいフブキ。あやめのやつ、あんな調子だが……本当に大丈夫なのか?」
私がそんなことを考えていると、あやめの様子を見て心配になったらしい黒ちゃんが近づいてきた。今日の黒ちゃんもいつもとは違って、外交用の正装を着てもらっている。若干窮屈そうだが、少しくらいは我慢してもらおう。
「……きっと、大丈夫だよ。あやめちゃんは強い子だから」
事態が収束してから、あやめから諸々の真実を聞いた。母親の死因と、その時の自分の行動について。
その話を聞いた時、私は正直言って安心していた。私からしてみれば、あやめは友達でありながらも実の妹のように思っていた節がある。それは彼女の無邪気な幼さと、私を慕ってくれるところからきていたんだと思う。しかし、ラプちゃんと戦っていた時のあやめは、まるで白上の知っている彼女ではなかったから。心優しくて、ちょっぴりいたずらっ子だったあやめが、まさかあんなことを自ら進んでやるとは思っていなかった。
でも、それら全ては自分の不甲斐なさをかき消すための見栄だったと知った。いざという時に何もしなかった、出来なかった自分を隠すためにもがいていたとわかったから。だから私は、その時安心してしまったのだ。
……白上のよく知る百鬼あやめは、ここに居たのだと。
「いや、確かにあやめは強いけどよ……」
「ううん、身体的な強さじゃないよ。……あやめちゃんは今回の件で、一回り大人になったんだから」
確かにあやめは間違いを犯してしまった。
それでも、彼女は今母親の死を乗り越えこうして生きている。しかも、自分の過ちを認め自らそれを償おうともしている。いつまでも子供なんて言ってしまったが、あやめも日々成長していたのだ。
「ふーん……まあ、お前がそう言うならそうなのかもな。てか、もしかしてフブキの方が緊張してたり?」
「え?うーん、否定はしないけど……楽しみって気持ちの方が、今は大きいかな。白上、思ったよりもラプちゃんのことを気に入ってるみたい。だから……彼女のことを、もっと知りたい」
私にとってラプラス・ダークネスとは、必ずしも恨み積もる宿敵というわけではなかった。勿論、彼女たちholoXによってもたらされた被害はとても許容できるものではない。それによって亡くなった方々がいることはとても悲しいし、泣いている子供たちを見て憤りも感じた。……でも、私の本能は何故かラプラスという悪魔を恨む気が無いようだった。それがどうしてかはわからないが、恐らく彼女の持つ独特な雰囲気が影響していると白上は思っている。彼女は歪で異質だ。どうして侵略を命令した本人が、被害者に頭を下げるのか。どうして敗戦国の私たちを、囲うのではなく引き上げるようとしているのか。
白上は、ラプラスという少女への興味が尽きなかった。
「あ、フブキちゃんたち。holoXの人達来たみたいだよぉ~」
私がそんなことを考えていると、空を見上げていたおかゆがそう言った。
「ホントだ!またあの飛んでたやつが落ぢて来てる!」
ころねの言うその”空飛ぶ船の様なモノ”は、数日前にも見たholoXの人達が乗っていた乗り物だった。それがどういう仕組みで動いているのかはわからなかったが、それがラプちゃんたちからの”お迎え”だという事はわかっていた。
「……お待たせしました、フレンズ王国の皆さん。」
空を飛んでいた船が中庭の中央辺りで完全に停止し、その中から見覚えのある白い服を着たコヨーテちゃんが降りてくる。そして、数人のholoXの人達を連れて私たちのところまで近づいてきてくれた。
彼女は確か、ラプちゃんが『博士』と呼んでいた人物だ。
「いえ、お迎えありがとうございます。えっと……」
「……ああ、そう言えば自己紹介してませんでしたね。私はholoXで研究部門の代表をしている、四天王の一人博衣こよりです。今日は総帥からの命令で、あなた方をholoXの本部へ案内します」
そう言った彼女は、思っていたよりもきちんとした対応だった。ミオたちの話によれば、博衣こよりはラプちゃんの件でかなり怒っていたと聞いている。それに、先日の中庭でラプちゃんと再会した時の彼女は、総帥の無事を泣きながら喜んでいた。holoXという未知の技術力を持つ組織の研究機関の代表であり、しかも四天王の一人であるともなれば彼女がどれだけ優秀な人間かがわかる。それに加え、ラプちゃんからもかなり信頼と信用を置かれていた人物だ。今更ではあるかもしれないが、彼女ともまた出来るだけ友好的でありたいと思っている。
「はい、お願いします”こよりさん”。……それと、先日の件はうちの者が本当にすみませんでした」
例えミオとあやめの二人が独断でやったことだったとしても、こちら側がラプちゃんに危害を加えてしまったことは事実だ。今後の遺恨のことなども考え、ここはきちんと言葉にして謝罪しておいた方がいいだろう。
「…………………………いえ、気にしないでください。総帥が貴方達を必要としているなら、私はそれに従うだけなので」
何か、すっごい長い間があった気がする。
その反応から察するに、やはり彼女個人からすれば白上たちのことをよく思っていないのだろう。そして、恐らく同じように思っているholoXの人達も一定数居るはずだ。まあ、それに関してはお互い様な部分もあるけど……。きっと、今回の同盟に心から納得しているのなんて私と黒ちゃんとラプちゃんくらいなんだろうな。
「……それよりも、ここに居る人たちで全員ですか?……でしたら、あちらの乗り物にお乗りください」
そう言われ、私たち使節団は彼女の案内でholoX印の船に乗り込む。そして、みんなが席に着いたことを確認してからその船はゆっくりと上空へ浮かんでいった。人生で初めての空を飛ぶという体験に、黒ちゃん以外の皆が驚いているようだった。
……ちなみに、白上はこの時生まれて初めて”高いところが苦手”という事を知った。
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「ハァ、ハァ、ハァ……!!!!」
「……お、おいフブキ、大丈夫か?」
送迎の船に乗ってから数十分後、白上たちはようやくholoXの本部へと到着していた。
「フブキ、ずっと叫んでたね」
「フブキちゃんにまさか、あんな弱点があったなんて知らなかった余……」
しかし、何故か楽しみにしていたはずの会談などそっちのけで、白上フブキは息を切らしていた。
「そうだねー、フブキちゃんの声にholoXの人達も驚いてたよぉ」
「ぎゃぁぁあとか、うぎゃぁぁぁあって言ってたでな」
皆が何かを言っているが、今の私には届かない。
未だに足元が震え、思い出すだけで恐怖が心を支配した。
「「「……まさか、高所恐怖症だったなんて……」」」
呆れたり、心配した様子の皆が声をそろえて言った。
私たちの国には当然、空を飛ぶ乗り物など存在しない。よって、今回の送迎に使われた乗り物は皆にとって初めて”空を飛ぶ”という体験をさせてくれた。しかも、ラプちゃん辺りが気を利かせてくれたのか、外の景色が良く見える席を私たちに用意してくれたのだ。
……結果、下を見た瞬間に白上の中に眠っていた『高所恐怖症』という意外な弱点が芽を出したのだった。
「おう、よく来たなフブキたち……って、どうしたんだ?そんな息切らして」
空飛ぶ船から降り終えた私たちのことを、ラプちゃん率いる歓迎隊の人達が出迎えてくれた。
しかし、今の白上にはそれに平然と答える余裕がない。なので、代わりに黒ちゃんが返事をしてくれる。
「ようラプラス。いや、フブキはちょっと、今取り込んでて……」
そう言っている黒ちゃんの後ろで、白上はミオとあやめに背中を撫でて貰う。そのおかげもあり、少しづつ気分が落ち着いてきていた。
いやそれにしても、我ながらびっくりした。まさか、地面がこんなに恋しく思う日が来るとは……。船から降りた時は、本当に生きた心地がしなかった。今でもまだ、安心を得るためにこの足元に寝転がりたいぐらいだ。確かにここの地面は私たちの知らない素材で作られたものだが、それでも今私自身を支えてくれている大地にはかわりなかった。
「そ、そうなのか?まあ、体調が悪いとかじゃないならいいが……あ!それよりも、空の旅はどうだった?黒が飛空車に初めて乗ったときに結構新鮮な反応をしてくれてたから、今回は一面ガラス張りの景色が良く見える席を博士に言ってわざわざ作ってもらったんだが!……って、え。何だ皆、そんな顔して」
……本当に、余計なお世話だった。
ラプちゃんは良かれと思ってやってくれたのかもしれないが、白上としては本当に怖い思いをさせられた。
「……こほん。ごめんねラプちゃん、お待たせ。…………改めまして、holoXの皆さん。本日はお招きいただきありがとうございます」
ようやく冷静さを取り戻したフブキが、holoXの面々に向き直って挨拶を述べる。そして、それに応えるようにラプラスも口を開いた。
「ああ、よく来てくれたな。……今日はお互い、有意義な時間にしよう」
そう言ったラプちゃんが、私に手を差し伸べてくれた。持っている地位に見合わぬ、黒い腕輪の様なものを嵌めたその小さな手を白上も握り返す。
両軍の従者たちの前で、こうして白上たちが握手を交わすことには大きな意味がある。それは、下の者達はともかく我々代表は今回のことに肯定的だということを示すことに繋がるのだ。
「じゃあ、先にササっと会議を済ませよう。それが終わったら、お待ちかねのパーティーだ」
そう言ったラプちゃんに、私たちは会議室へと案内された。
こうして、秘密結社holoXとフレンズ王国による第一回目の同盟会議が始まったのだったーーーー。
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「……それじゃあ、我らholoXとフブキ率いるフレンズ王国との同盟を祝して……乾杯ッ!!!」
「「「かんぱ~~~い!!」」」
吾輩の音頭に合わせ、その場に居た皆がグラスを掲げながらそう言った。
フブキ先輩たちが本部についてからは、まず始めに同盟に関する会議を行った。その詳しい内容は長くなるのでここでは省くが、結論から言うと会議は大成功に終わっていた。というのも、吾輩がかねてより考えていた内容がほぼ即決で採用されたのである。それもこれも、全ては吾輩の意見を尊重してくれた部下二人とフブキ先輩のお陰だった。
『ーーーというのが、吾輩たちholoXの意見だ。復興作業の援助についてはさっき説明したとおりだが、それが終わり次第順次新技術を取り入れていける体制を整えていこうと思ってる』
ラプラスが今回、先輩方に提案したことは主に二つ。
一つは復興作業の具体的な内容について。実は今のholoXは、昨日も幹部が言っていた通りどこも人手が足りないらしい。よって、その援助に多くの人員を割くことが出来ない。そこで、吾輩たちは人及び物資の運搬を引き受けると申し出たのだ。それなら操縦者や、整備員等の必要最低限の人員で援助が可能になる。加えて、先輩方の星には無い空路を使っての運搬になるのでかかる時間も大幅に短縮できるのだ。
そして、二つ目はそれらも含めたフレンズ王国内に基地を建設すること。上記の運搬は飛空車(ひくうしゃ)を使って行おうと考えているが、それらを飛ばすのにもそれなりの場所と施設が必要になる。加えて、約束である資源の採掘にも技術力の提供にも使えるものなので一石二鳥というわけだ。
『なるほど……わかりました。ではその線で話を進めましょう』
会議をしていて、ラプラスが最も疑問に思った事はお互いの”同盟に反対派”であろう者たちが意外にも前向きだったことだ。厳密にはそれとは少し違うのかもしれないが、特に心配だったあやめ先輩と博士が吾輩たちの話し合いにほとんど口を挟んでこなかったのである。この二人は先日の件でも争いに発展していたし、何かしらの問題を起こすと思っていたのだが……。
『……それが、ラプラスの言うところの贖罪なんでしょ。なら、もう少し見てることにする余。……それに、フブキちゃんにも仲良くしなさいって言われてるから』
『こよの気持ちなんて関係ないよ。ラプちゃんの望みが僕の望みなんだから、ラプちゃんがそうしたいならそれに従うだけ♪』
とこんな様子で、特にもめることも無くラプラスの意見が採用されたのだった。
また、その他の細かなことは後日にフレンズ王国のフブキ先輩と大臣・宰相の三人と、うちの幹部が話し合って決めるらしい。まあ、それに関しては吾輩ではよくわからないので任せることにした。
という訳で、吾輩たちは今こうして会議後の会食を楽しもうとしていたのである。今回の主催及び準備等はholoXが行い、基本的には立食形式のパーティーとなっている。一応座席も用意してあるのだが、両陣営の交流を深めて欲しいという意味もあって自由に食べ歩けるようにした。
料理内容に関しては、主には吾輩が知る限りの先輩方の好物を用意している。そしてそれに加え、先輩たちの星では食べられない物やデザートなんかも作ってもらった。流石にこのholoXの総本部にも無い物は用意できなかったが、それでも先輩方はかなりいい反応をしてくれているようだった。
「ねぇねぇおがゆ!見てよこれっ!なんか、見たこと無い食べ物あるでな!」
「ホントだねぇ~。でも、どれもおいしそうだよ」
特に、今回の会談では割と自由な立場のおかころさんの二人は楽しんでくれているようだ。そういえばまだおかゆさんにお米の作り方を聞いていなかったし、今後holoXの本部にも導入出来ないか博士に聞いてみるか。
……しかし、逆に言えば気楽そうにしていたのはその2人だけだった。吾輩たちはあくまで、つい最近まで敵同士だったのだ。だからこれは仕方ないことではあるのだが、上手く打ち解けていない者達も数名いるようだった。
「あの……高嶺ルイさん、ですよね……?ちょっと、さっきの会議のことでもう少し詳しく聞きたいことがあって……」
「あなたは確か……獣人部隊隊長の大神ミオさん、でしたっけ?何ですか?」
何だか、傍から見てるとひやひやさせられる会話だな……。
本来であれば先輩のはずのミオ先輩が、後輩のルイに下手に出ている。こちらの世界ではこれが普通かもしれないが、吾輩からすると違和感が半端ない。
「ねぇ、百鬼あやめさん。このケーキ……甘いお菓子なんだけど、ラプちゃんが貴方達に食べさせたいって用意したの……だから、よかったら食べて。」
「甘いお菓子!…ッ…………わかった、貰っとく余……」
そう言ったあやめ先輩が、いくつかの洋菓子の乗せられたお皿をこよりから受け取っていた。あの二人に関しても、本当にハラハラさせられる。吾輩たちの中では一番複雑な関係であり、その会話内容は殺伐としていた。
……ただ、博士のほうから声をかけていたみたいだし、あやめ先輩に関してもお菓子自体には好反応を示してくれていた。直ぐには無理でも、ちょっとずつお互いの関係が改善されることを願うばかりだな。
それに、何も険悪な空気だけだったというわけではない。その中でも代表的だったのが、意外にも黒様とその世話係を任せていた眷属の二人だった。
「黒様!こちらも如何ですか?これ、とっても美味しくて私の大好物なんですよ!」
「いや、確かに美味そうだが……って、おい!ちょっと待てよお前、どんだけ私に食わせる気なんだっ!!」
そう言った黒様の前には、この場の全種類の食べ物を乗せているようなお皿が置かれていた。しかも、山のように料理が盛られている。初日の飛空車の中でも思ったが、何であそこはあんなに仲がいいんだ……?
「……まあでも、思ったよりは楽しんでくれてるみたいだな」
まだまだ心配事は尽きないが、それでもラプラスはこの場を設けて本当に良かったと思った。
吾輩たちはこの世界で、出会い方を間違えてしまった。お互いが敵同士で、主にこちらの悪意により先輩方には多大なる被害を出してしまった。それでも、これからの在り方によっては今後関係が改善されていくかもしれない。吾輩とフブキ先輩の二人が望んでいるということもあるが、博士やあやめたちにも前向きに付き合い方を考えていってほしいものだ。
ラプラスはそんなことを思いながら、眷属によそってもらった料理に手を付ける。
すると、隣に座っていたフブキ先輩が声をかけてきてくれた。
「ラプちゃん……今日は、ありがとね」
そう言ったフブキ先輩も、ラプラスと同じようにみんなの様子を眺めていた。
この会食は基本自由に食べ歩いて構わないという事になっているのだが、吾輩とフブキ先輩に関してだけは広間の一番奥に二人用の豪華な席が用意されている。それは両者の位に違いがないという事を示している意味もあり、傍から見れば結婚式の新郎新婦のようだった。
「別に、例を言われるようなことじゃないぞ。……吾輩も、今日は有意義な日だった」
「そう言ってもらえるとこっちもありがたいよ。……ここに来ると、改めて私たちとの差を再確認させられたからさ……」
この世界のフブキ先輩たちから見れば、ここにあるものは全て新鮮なモノなのだろう。施設も技術も、食事でさえも見たことの無い物ばかり。そんな場では、落ち着けるものも落ち着けないというものだ。
「それは……すまん。出来るだけ、フブキたちが抵抗の無いように用意したつもりだったんだが……」
「あっ、ごめんね。別に悪気があって言ったわけじゃないんだよ。ただ……やっぱり、白上たちじゃラプちゃんたちに不釣り合いだなって思ってね」
そこにあったのは、多くの諦めと少しばかりの憧れだった。
力や価値観の差、これはどうすることも出来ない問題だ。生まれた場所も、育った国も違えばそうなるのは当たり前のこと。しかし、それ自体は元の吾輩の世界にもあったものだ。ホロライブの先輩たちの中には、純粋な人間もいれば天使や悪魔なんかもいた。それらは皆平等ではなかったし、それによる問題も事務所内部では多少なりともあったと思う。それでも、彼女たちは手を取り合いアイドルとして仲良く活動をしてこれた。
……ならば、この世界でも叶うはずなのだ。上の者が下に合わせ、下の者が歩み寄ろうとさえしてくれれば。
「……確かに、holoXは高い技術力と軍事力を持っていると思う。それは、総帥である吾輩ですら怖いと思うほどに」
鷹嶺ルイがフレンズ王国の城の上空に現れた時、ラプラスは人知れず震えていた。それはきっと、長らく忘れていた”本当の恐怖”というものを少なからず思い出していたからだろう。
「だけどな……吾輩は、それをむやみに誰かを傷つける為には使いたくない。今更何を言ってるんだって思うかもしれないが、これだけは今の吾輩の本音だ。だから……フブキたちとも、これからは仲良くしていけたらいいなって思ってる……」
「……そっか」
どんなに強大で恐ろしくても、この世界ではラプラス・ダークネスの持つ力であるという事に変わりはない。だからこそ、吾輩がそれをしっかりと制御しなければならないのだ。手綱を握りしめておかなければ、また同じような間違いを犯してしまう。似たような罪を、もうあいつらに背負わせないように……吾輩が、ちゃんとしなくちゃいけないんだ。
「……じゃあ、これからもよろしくね。ラプちゃん」
「ああ……こっちこそ、よろしく頼む」
そうして言葉を交わした二人は、ただ部下たちがぎこちなく楽しんでいる光景を眺めていたのだった。
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物語が面白くなるなら出してもいい
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特定の名前などが無ければ出してもいい
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