転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第23話です。今回から新しいお話が始まっていきます!まあ今回はずっと深堀り話ですけどね。
ようやくこの辺のことを詳しく書けました。このシリーズに関係のある大事な設定のお話なので、深読みして頂けるとありがたいです。

【追記】
さて今回は久しぶりに深堀シリーズやっていきます。今回はズバリ、『ラプ様の出身について』です。

パラレル世界のラプラス・ダークネスは、正確には何処で生まれたのかははっきりとわかっていません。しかし、この宇宙のどこかにある『ラプラトン星』というところの生まれではないかと言われています。よって、彼女はその星出身の『ラプラトン星人』となります(実はこの設定は現実世界のラプ様とも同じらしいのですが、これってソースは何処なんでしょうね)。
また、彼らラプラトン星人は強大な魔力と強靭な肉体を持っていたと言われます。そして、その中でもずば抜けて優秀だったのがラプラス・ダークネスだったという訳ですね。ただ、彼らも『最強に近い存在』ではあったものの、『無敵では無かった』ようです。その詳しい内容については、今後説明があるかもしれません。


第23話 罪を犯すことの免罪符

 

ホロフレ同盟会議から翌日、久しぶりに気の休まる目覚めをラプラスは体験していた。

 

ベッドの柔らかな感触と、寝起きの程よい微睡み。それに加え、昨日の緊張と最近の寝不足が相まって体が目覚めることを拒否している。折角holoXの総帥になったのだから、たまにはこうしてゆったりと二度寝を決め込んでもバチは当たるまい。まあ、元々総帥ではあったんだけど。

 

 

「う~ん……おふとん、さいこうだぁ……」

 

 

本当は今日も予定があるのだが、別に急ぐようなことでもない。よって、こうして惰眠を貪り続けていても問題はないわけで……

 

 

 

「おう、起きたかあるじ様!昨日は結構盛り上がってたなー」

 

 

 

……と思っていたところに、耳元で騒ぐ烏が一匹おったとさ。

最近思うのだが、この世界のこいつは結構吾輩に遠慮がないよな。何でもかんでもズバッと言うし、辛辣なことも割と平気でしてくる。そのうち焼き鳥にするぞ。

 

 

「……見ての通り、吾輩はまだ寝てるんだ。起こさないでくれ」

 

 

「何言ってるんだ。もういい時間だぞ、とっとと起きろよ。……それに今日は、あのコヨーテの奴に話をしに行くんだろ?」

 

 

そう言った烏が、まだ眠い様子のラプラスなどにはお構いなしに頭を嘴でつついていた。

実は昨日フブキ先輩たちが帰った後に、吾輩は博士にこっそり「明日ちょっと時間を作ってほしい」とお願いしていたのだ。その内容は勿論、吾輩がこの世界でやるべき『本来の目的』についてである。しばらく立て込んでいて若干忘れていたが、吾輩は元々この世界の住人ではない。元いた世界の博士の発明品により、吾輩はこの世界の【ラプラス・ダークネス】に”憑依”してしまっているのだ。この問題を解決しなければ、本当の意味での安寧は吾輩にはやってこない。

 

 

「……そうだったな。博士にアポも取ってるんだし、起きるとするか…………の前に、吾輩はお前にも聞きたいことがあるぞ」

 

 

ようやく体を起こしたラプラスが、まじめな面持ちで烏に向き直る。

ここ数日忙しかったせいでなかなか落ち着いて話が出来なかったが、吾輩は烏にも聞きたいことがたくさんあったのだ。博士との話をする前に、その疑問についても解決をしておかなければならない。

 

 

「ん?どうした、そんな改まって」

 

 

しかし、そんな真剣なラプラスに対し烏は腑抜けた様子で答えた。こいつ、事の重大さがわかってるのか……?

 

 

 

「いいか烏、正直に答えろよ。……吾輩が聞きたいことは、主に”二つ”だ。一つは『契約とその代償』について。そしてもう一つは、『どうして吾輩が侵略を急いていたのか』についてだ」

 

 

 

契約と代償については言わずもがな、この世界のラプラスがどうして侵略行為を行っていたのかについても吾輩は知らなければならない。こっちに来た最初の日に、烏は言った……『あるじ様には、世界征服を急がなければいけない”理由”があった』と。その時は特別優先すべき事項ではないと、詳しい話を後回しにしてしまった。しかしその結果、フブキ先輩との交渉の時やholoXの連中の考えを読み取るのに本当に苦労させられた。どんな訳があったのかは知らないが、ここでこいつには洗いざらい吐いてもらわなければならない。

 

 

「あ~、何だそのことか。いきなりそんな怖い顔しながら言ってくるもんだから、身構えちまったぜ。…………まあ、そら気になるわな」

 

 

「当たり前だ。それを最初に説明してくれなかったおかげで、吾輩がどれだけ苦労したと思ってるんだ」

 

 

「おいおい、そんなに怒るなよ。俺だって悪気は無かったんだぜ?なにせ、あの時はこんなことになるなんて思ってなかったからな」

 

 

それについては、確かにギリギリ納得できる範囲ではある。初日の吾輩だって、まさかこんな事になってるとは知らなかったし、烏からすればすぐに吾輩が元の世界に戻れるならわざわざ言うまでもないことだったのだろう。しかし、それでもざっくりでいいから話してほしかった。それを知っていただけで、色々と吾輩の対応も変わったのかもしれないのだから。

 

 

「……まあ、それは吾輩も同意見だからもういい。それよりも、早く説明してくれ」

 

 

「ああ、わかったよ。…………じゃあ先に、契約と代償の方についてか?って言っても、あるじ様はそれの何を聞きたいんだよ」

 

 

「何をって……全部だ。契約の内容からその代償についてまで、知ってることを全部話せ」

 

 

吾輩が元いた世界と、こっちの世界の我輩が同じ内容の契約をしているとは限らない。それに、向こうの烏はそもそも口を聞けなかった。

だが、こちらの烏は色々と事情を知っているようだ。その辺の話を聞いた時は地下牢にいたので質問なんかが出来なかったし、もう一度詳しく説明を聞きたい。

 

 

「吾輩の知ってる事実と、お前の知るこの世界のラプラス・ダークネスには相違がある気がするんだ。だから、復習の意味も込めてお前の知ってることを教えてくれ」

 

 

「まあ、それは構わないがよ……契約の関係上、話せないこともあることは分かってくれ。これは俺一人だけの問題じゃない、それでも構わないか?」

 

 

ラプラスの持つ『契約』というものの認識は、『個人、またはその集団の代表者同士が結ぶ約束事』というものだ。ただし、それはただの口約束のような軽いものではなく''絶対に守られなければならない誓い''のようなものだと吾輩は思っている。だからこそ、それはそう簡単に破られていいものでは無い。それに、そこには必ず主題の契約とは別にそれを結ぶ上での”条件”や、破った際の”代償”が伴うもの。よって、契約とは安易に結んでいいものでは無いのだ。

 

しかし、吾輩はそれを先日不覚にも破ってしまった。そして、その代償についてもしっかりと請け負っている。ただ、少なくとも吾輩の知る限りそもそもこの腕輪という契約を破れることすら知らなかった。その辺りが、あっちの世界とこっちの世界の違いなんじゃないかと吾輩は思っているのだ。

 

 

「……わかった。それで何とか内容を読み取るから、話してくれ」

 

 

吾輩がそう言うと、烏は承諾として頷く。

そして、ラプラスの正面まで来て烏は口を開いた。

 

 

「……じゃあ、まずはおさらいからだな。この世界における、【ラプラス・ダークネス】の交わした契約とは……『その身に宿る悪魔の力を封印すること』だ。その為に、元あるじ様は体に五つの枷を嵌められていた」

 

 

ラプラスの体には常に、両手両足と首元に枷が嵌められている。それは気が付いた時にはそこにあり、黒色の生地に紫色の模様が写っていた。これに関しては、どちら世界の吾輩も一緒のようだ。

 

 

「その契約を誰と結んだのかは、俺からは言えない。というか、俺もほとんど覚えてないんだ。なにせ、とんでもなく昔の話だったからな……だが、言えることもある。それはあるじ様がそいつと結んだ契約とは別に、”俺とも契約を結んでいる”ってことだ」

 

 

先程も言ったように、契約は二者がいなければ成立しない。

その上で、今の吾輩の持つ契約は二つあるらしい。その一つが、烏も覚えていない”とある人物”との力を封印するための契約。そしてもう一つが、この世界のラプラスとこの烏が結んだ契約だ。

 

 

「その内容については?」

 

 

「それもギリギリ話せる。簡単に言えば、『あるじ様のその枷の行方を見守ること』だ。それは別に、鎖が外れないように見張るって意味じゃない。それを科せられたあるじ様がどう生きて、どう向き合っていくのかを傍で見届けるって意味だ」

 

 

枷とその付き合い方の行く末、それはつまり吾輩の結んだ契約の結末を見届けるという意味か。それについては内容は理解できるんだが、納得はできない。どうして、そんなことをする必要があるんだ。

 

 

「なんでわざわざ、そんな回りくどいことをするんだ?」

 

 

「……おっと、その理由についてまでは言えないみたいだ。ただ俺から言えることは、例えその枷が外れようと外れまいと、どっちに転んでも好都合ってことだけだ」

 

 

どっちに転んでも好都合……はて、本当にそうだろうか?

フレンズ王国の地下牢に幽閉されていた時、烏から枷を外すことが可能だと聞いた。まあそれについては博士も言及していたし、この世界の吾輩には普通のことだったのかもしれない。だが問題なのは、その後の烏の反応だ。力を解放していた吾輩を見て、烏は明らかに喜んでいた。それに、封印を再び身に着けた時にはがっかりした様な反応もしていた。それはどう見たって、”封印が解かれるかどうかはどうでもいい”と思っている奴のそれには見えなかったが。

 

 

「ホントに、そう思ってるのか?……吾輩には、そうは見えなかった」

 

 

「あん?そうだったか?……まあ、多少熱が入ってたのは認める。あの時は、ひっさしぶりに”昔のあるじ様”の気配がしてテンション上がってたからな」

 

 

そういえば、まだ代償の話を聞いていなかったな。

烏の話じゃ、封印を解いた際には『契約違反』ということで代償が科せられるという話だった。その一つにはラプラス自身と、烏の二人の承諾がないと拘束具を外せないというものがあった。まあそれに関しては代償というよりは破るための条件であり、本当の代償は『少しばかりの精神汚染』の方だった。

 

 

「契約についてはなんとなくわかった。で、次はその代償についてだ。お前は確か、この腕輪を外すには条件とリスクがあるって言ってたよな。条件については吾輩たちの承諾が必要って話だったが、リスクについては明らかに説明不足だっただろ」

 

 

事前の烏の話では、少なからず混乱する程度みたいな説明だったはず。しかし、蓋を開けてみればそんな生易しいものでは無かった。ラプラスの中に眠っていた【悪魔】が目を覚まし、吾輩の心を支配したのだ。あの時は本当に辛かったし、もう二度としたくないと思った。

 

 

「お前が少しの精神汚染を受けるだけだって言うから、吾輩は承諾したんだぞ。それについてはどう思ってるんだ」

 

 

烏の不手際に対し、ラプラスは少しばかり語気が強くなってしまう。

しかし、当の烏はそれを否定するかのように首を振った。

 

 

 

「おいおいあるじ様、何か勘違いしてないか?…………俺は一度も、その『昔の私に戻る』ってのが代償だなんて一言も言ってないぞ」

 

 

 

「………………は?」

 

 

え……だって烏が、それが契約のリスクだって……。

いや、待て。もしかして吾輩が、それを勝手に代償だと思い込んでただけってことか……?

 

 

「その現象については代償じゃなく、封印を解いたことによる”当然の結果”ってやつだ。だって元々、それを封印するための『契約』だったんだろ?」

 

 

烏にそう言われ、ラプラスはハッとする。

そりゃそうだ。ラプラスの中に眠る悪魔を封印するという内容の契約を、吾輩は破ったんだ。という事は、その結果は悪魔の解放に繋がる。それは当たり前のことであり、代償なんて呼べる代物ではない。

 

 

「じゃ、じゃあ…………吾輩の、代償って…………」

 

 

ではもし、それが契約の償いではないのだとしたら……吾輩が背負うべき、本当の代償とはなんだ。

 

 

「ああ。ここでようやく、あるじ様の知りたがってた『何故ラプラス・ダークネスが世界征服を急いているのか』って話に繋がるんだが……」

 

 

そこまで言った烏が、ラプラスから少し距離を取った。

そして、その場で両翼を開き吾輩に向かってはっきりとこう言った。

 

 

 

「この世界の、ラプラス・ダークネスが背負うべき業。それは……その身に宿る強大な力に、呑まれることだ」

 

 

 

その言葉を聞いた時、右腕の封印が震えたような気がした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「…………それって、どういう意味だ???」

 

 

意を決して発せられた言葉にしては、その真意を理解するのには苦しむ内容であった。

力に呑まれるとは……はて、先述のリスクとどう違うんだ?

 

 

「まあ、これだけじゃわからんよな。より分かりやすく言うなら、今後あるじ様が向き合うべき代償は『徐々に腕輪の封印が弱くなっていく』ってところだ。抑圧された大きすぎる力は、出口を探して身体の中を蠢いてる。そして一度でもその蛇口を捻ってしまえば、そこから少しずつ魔が漏れ出していくってわけだ」

 

 

ふむ、ようやく要領を得てきた。

つまり、この世界の吾輩が初めて契約を破った日から封印が徐々に解けて来ているって感じか。それこそが、この『契約』による『代償』というわけだ。

 

 

「……待て。ってことは…………もしかして、最終的にはあの”昔の吾輩”が解放されるってことか……?」

 

 

「……ああ、そう言う事になるな」

 

 

その言葉を聞いて、ラプラスはゾッとした。

先日の一件で、ラプラスは自分の中に眠っていた悪魔の存在を再確認していた。吾輩の意思を全部無視して、全てを破壊し尽そうとする【ラプラスの悪魔】という存在を……。

 

 

「……。」

 

 

……嫌だ。

あんな吾輩になるなんて、絶対に嫌だ。あんな……恐ろしい、''悪魔''なんかに……。

 

 

そう思ったラプラスは、自分の顔から一気に血の気が引いていったのがわかった。

 

 

「おいおいあるじ様、なんて顔してんだよ。……やっぱり、今のあるじ様もそういう反応するんだな」

 

 

「……吾輩も……?」

 

 

「このことを知ったとき、前のあるじ様も今のあるじ様と同じ反応してたぜ。自分の知らない自分になる事が、よっぽど恐ろしかったんだろうな」

 

 

どうやら、この世界の吾輩も同じことを思っていたらしい。まあ、無理もないが……。

一度の契約違反により、この世界のラプラスは元々の契約に追加して罪を背負ってしまった。そして、その罰は今の吾輩にも継続して科せられている。

 

……しかし、だからと言って悲観しすぎる必要はないはずだ。何故なら、この世界のラプラスは予めそのことを知っていたはずなのだから。今の吾輩がそうであるように、昔の吾輩にはこの巨大組織【秘密結社holoX】がある。それに、さっき烏が『何故ラプラス・ダークネスが世界征服を急いているのか』という話に繋がると言っていた。つまり、星々を侵略することこそが”現状の打破”に繋がるんじゃないだろうか。

 

 

「おい烏。さっき、その話が世界征服をする理由に繋がるって言ったよな。それはどういう意味だ」

 

 

「お、意外に立ち直りが早いな。それに、しっかり頭も回ってる。……そうだ。どちらかと言えば、そっちが本命だな」

 

 

頭が働いているかは置いておいて、立ち直りが早いのは吾輩が少し楽観的なところも関係している気がする。それに、期待もしてるんだ。ここまでholoXを成長させてきたもう1人の吾輩が、何も手を打っていないはずがないと。

 

 

「実は、あるじ様の契約の代償については既にholoXの上層部の連中……つまり、鷹・コヨーテ・狸・シャチのやつらは全員知ってるんだ。そして、コヨーテの調査と研究のお陰でどうにかする手段にも目星がついてる」

 

 

「えっ……あいつらは、もう知ってるのか?!」

 

 

それは何というか……かなり心強いな。

こんな大事なことを一人で抱え込まなくて済むし、何より既に解決の糸口が見つかっているようだ。

 

 

「……で、その手段って?」

 

 

「ずばり……『ラプラトナイト』だ。知ってるか?」

 

 

「あー……あれか」

 

 

ラプラトナイト。

それは『ラプラトン星』に住むラプラトン星人の弱点と言われている鉱石の名だ。ラプラス・ダークネスもその星の出身であり、例に洩れずその鉱石が弱点のはずだ。

 

 

「コヨーテのやつの話じゃ、ラプラトナイトがあればより強力な拘束具を作れるらしい。だから今のholoXは、それを探すことが第1目標になってるんだよ」

 

 

なるほど、そういうことだったのか。

この代償は、封印の力を強めれば理論上食い止められるという話らしい。だからこの世界の吾輩は、必死になって侵略行為を進めていたのか。ラプラトナイトを手に入れるために、それの埋蔵されている惑星を探していると。

 

 

「なるほどなぁ……だから、この世界の吾輩はあんな必死に世界征服に勤しんでいたのか」

 

 

ラプラスがholoXを作った理由。急速に勢力を拡大し、手当たり次第に星々を征服していた理由。その全てが、自らの行いによる代償を取り払うためだったのだ。一度違えてしまった約束の、その償いをする為に。

 

 

「…………でも、仮にそれで吾輩が救われるとしたって……やって良いことと悪いことがあるだろ」

 

 

実際に代償の影響を受けた身として、この世界のラプラスの気持ちがわからない訳ではない。しかし、だからと言ってそれが皆を傷つけていい理由にはならない。いくら今の生活を守りたいと願っていても、それによって他者に迷惑をかけることなどあってはならないのだ。

 

 

「これは、吾輩個人の問題のはずだ。それを……そのせいで、先輩たちは……」

 

 

吾輩が我慢すれば、それで済む話だったはずだ。そんな完全な自業自得のせいで、どうしてフブキ先輩たちが迷惑をこうむらなければいけないのか……。

 

ラプラスはそんなことを思い、もう一人の自分を責めていた。

しかし、その言葉を聞いた烏がそれを否定する。

 

 

「いや、残念だがこれはあるじ様だけの問題じゃないんだぞ。なにせ、その代償を放っておけば……この世界にまた、最悪の悪魔を解き放つことになるんだからな。何千年も封印され続け、力を蓄えた【ラプラスの悪魔】が……あっという間に、宇宙なんて滅びるぞ」

 

 

「なっ!?」

 

 

そんな……それじゃあ、一刻も早くラプラトナイトを見つけないといけないじゃんか……。

 

 

「……その代償が、手遅れになるまでどれくらい猶予があるんだ」

 

 

「さあな、詳しいことは俺じゃあわからん。その時が近づけば近づくほど、あるじ様自身がわかると思うが……ただ、少なくとも枷を外す回数が増えればそれだけ早まるのは確実だな」

 

 

一度漏れ出してしまったものは、もう止まらない。しかも、その出口をさらに広げてしまえば遡及が加速するのは当然のことだ。

 

 

「はぁ!?おい、それを何で先に言わないんだよっ!!もう一回解放しちゃったじゃんか!!」

 

 

吾輩たちが初めてフレンズ王国に行ったとき、博士が『いざとなったら拘束具を外して』と言っていた。あの時の吾輩にはその言葉の意味も、それを言っている時の博士の辛そうな表情も理解できなかった。しかし、それは事情を知りながらも命の危機に瀕するくらいなら封印を解いて欲しいというこよりからの願いだったのか。

ただ、そのことについては牢に居る時にでも教えて欲しかった。絶対先に言っておくべきことだっただろ!!

 

 

「言ってたらやらなかったのか?どっちにしたって、あの場じゃ枷を外さないと鬼の小娘を止められなかっただろ。それに、コヨーテのやつはそれでもあるじ様が傷つくよりはましだって言ってたじゃないか」

 

 

「そ、それはそうかもしれないが……全世界に関係することなんだろ。ならせめて、事情くらいは知っていたかった……」

 

 

確かに、あの時はああすることが最適だったと吾輩は思ってる。

しかし、それでも知ってるのと知らないのじゃ心の持ちようが全く違った。それに、もしかしたらもっと他の方法だって考えられたかもしれない。

 

だが、そう思っているラプラスを烏は一蹴する。

 

 

「後からとやかく言うのは簡単だろ。けど、今あるのはこの結果だけだ。……とにかく!この世界のあるじ様は封印を完全なモノにするために、ラプラトナイトを探しながら世界征服をしてるんだ。それに不満があるって言うなら、今のあるじ様が好きに止めればいいだけだ」

 

 

烏はそう言いつつも、吾輩がそうできないことをわかっている様子だった。

holoXの侵略行為、これは裏を返せば世界を救うことにも繋がることだ。吾輩という悪魔を封じ込めるために、例え犠牲を払ったとしてもこの進行を止めるわけにはいかない。そうでなければ、この世界を破滅させるか吾輩が居なくなるかの二択になってしまう。……そんなことは、どっちも受け入れられない。吾輩には、帰らなければいけないところがあるんだ。”あいつら”のところに帰るまでは、まだ消えるわけにはいかない。

 

 

「…………きっと、こっちの世界の吾輩も同じ気持ちだったんだろうな……」

 

 

この世界のラプラスも、きっとholoXの部下たちのことが好きだったはずだ。そして、彼女たちとこの先も一緒に居るために……他人から奪い続ける選択をした。それを、吾輩には悪いことだと否定することなどできない。みんなと一緒に居たいという気持ちは、痛いほどわかるから。

 

 

「で……ここまでの話を聞いて、あるじ様はどうするんだ?」

 

 

目の前で座る吾輩の様子を見て、烏がそう言った。恐らく、考えの末答えを決めたというのが表情に出ていたのだろう。

 

 

「……このまま、世界征服を進めるよ。……ただし、これからは吾輩のやり方で」

 

 

出来るだけ、愛する部下たちが傷つかないように。可能な限り、他の星々が不幸な目に合わないように。地球でぬるま湯に浸かっていたラプラス・ダークネスなりの方法で、この代償と向き合っていくしかない。

 

 

「そうか……まあ、俺も出来るだけ手伝ってやるよ。だが、忘れるな……あるじ様には、''あんまり悠長にしている時間は無い''」

 

 

「ああ、わかってる。……ありがとな」

 

 

そう言った烏に対し、ラプラスは頷きながらお礼を言った。

最初に枷を外してしまったのがいつかはわからないが、その時から既にタイムリミットは徐々に縮まっている。あんまり悩んでいる暇はないのだ。

 

それでも、吾輩には協力をしてくれる仲間たちがいる。それに、烏にも期待してるんだ。この世界に来てからずっと傍に居てくれて、色々と助言をくれていた。これからも、大いに頼らせてもらうとしよう。

 

 

 

そう思ったラプラスは、目の前で話し疲れた様子の相棒の頭をそっと撫で下ろすのであった。

 

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