転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
そう言えば先日、ホロSSを呼んでいる方の中から『ラプ様はそんな喋り方しない』と言っている人が居ました。確かに、こうした二次創作には『解釈』というものがありそれが許容量を超えると受け入れられなくなってしまいますよね。私はその辺結構気にはしているのですが、お話の性質上敬語になったりキャラ崩壊したりとどうしても解釈違いが起こってしまいます。しかし私は、それでも読んでくださる方々が楽しんで頂ければそれでいいと思っています。これからも、受け入れる人は是非物語に没入していってください。
【追記】
今回の深堀シリーズは、前回少しだけ登場した『こより印のドッグタグ』についてです。
これはパラレル世界のラプラスが博士に頼んで作らせたものであり、一見するとただドッグタグに見えます。その銀色のプレートには名前と所属、生年月日と血液型などが掘ってあります。しかし、それは見た目だけであり中にはこより氏お手製の特殊なチップが埋め込まれています。そして、そのタグを切手の裏のようにペロッとひと舐めすると、チップが起動し微弱な信号を発信します。こうすることによって、事故や遭難の際に本部に自分の居場所を知らせることが出来るという訳ですね。
ちなみに、これは舐めずとも唾液に含まれている消化酵素によって反応するそうです。めちゃくちゃ高性能ですね。またどうしてこんな作りにしたのかというと、こより氏曰く『ただの水や血だと誤作動の可能性が出てきてしまい、本当に危険な隊員かどうか判断できなくなる。その点唾液なら故意以外では発動しずらく、緊急事態でも条件を満たしやすい』とのこと。なので、決して彼女の"趣味"という訳ではありません。
「……吾輩が行く。総帥自ら、可愛い部下たちを助けに行ってやろうじゃないか」
それこそが、holoXの総帥としての結論だった。
事情を詳しく聞いた後、端からそうするべきだと思っていた。そっちの方が、総合的に考えても吾輩の思い通りに事を運べる。ただ問題は、この文句を言いたげな幹部をどう説得するかだが……。
「ラプ、あなた……自分で、何を言ってるのかわかってるの?この間もそう言って、捕まったばっかりじゃない!」
「ああ、そうだな……でも、そのお陰でフレンズ王国と同盟を結べただろ?過程はどうあれ、吾輩は最初からそうなる事を望んでた」
「それは……結果だけだわ!もし仮に、私のラプがまた…………じゃなくて、クロヱに続いてラプまで捕まったりしたら、私どうしたらいいか……」
そう言った幹部は、珍しく弱気な態度であった。”私のラプ”と言ったのはよくわからないが、確かに幹部の言い分もわかりはする。フレンズ王国との同盟について、仮に吾輩が初めから考えていたことだったとしてもそれは幹部たちから見れば結果論でしかない。そして、今回もまた上手くいくという保証は無いのだ。
だが、だとしても吾輩は譲るわけにはいかない。これは、ホロライブに所属していたラプラスにしか理解できないことだから。
「何言ってるんだ幹部……『今ある”結果”は、それら全ての過程が無ければ実現されるものじゃない』んだろ?なら、吾輩は今そうするべきだと本気で思ってる。例え自分が危険にさらされようとも、どんなに”回りくどい”としてもだ」
その言葉は、先日幹部から直接言われたモノの復唱だった。
どんなを手段を選ぼうとも、必ず今ある結果を生み出すことに繋がる。そして、それを後から『こうすればよかった』と言うのは簡単だ。しかし、その結果を”過程の段階”で導き出すことは非常に難しい。こうなるだろうという予測は立てられても、それを実際に再現できる者が果たしてどれだけいることか。そのことを、幹部は自らの経験から痛いというほどよく知っている。
だからこそ、彼女は敬い慕うのだ……目の前に居る、不可能を可能とするこの御方を。
そのことを、幹部は理性の部分では理解している。しかし、それはあくまで頭の中だけであり心はその限りではない。大切だからこそ、かけがえのない存在だからこそ眼前のこの子を心配してしまうのだ。これを、本当に自分の弱いところだと彼女は理解している。
「でも、万が一ってことも……」
「なんだ幹部、吾輩を信用してないのか?」
しかし、吾輩がそう言って幹部が違うと答えられないことを知っている。我ながらズルいとは思っているが、ここは譲れないのだ。
「別に、そういう訳じゃないけど……」
総帥自らの要望だというのに、珍しく幹部は渋っている様子だった。実は目に見えなかっただけで、幹部も先日の件でかなり不安な思いをさせてしまっていたのだろうか。だから彼女は、今回もまた同じような結果を招かないと心配しているのだろう。
うーん、どうしたものか……。
「……ラプラス様、ルイ様。一つ、進言してもよろしいでしょうか」
心配性の幹部の説得に、ラプラスは苦労していた。すると、さっきから一応近くにはいた眷属が口を挟んでくる。もしかして、幹部を納得させる何かいい案でもあるのか?
「いいぞ、なんだ?」
「ありがとうございます。……ラプラス様。実は私としても、主自ら救出に赴くことは感情論の上では賛成致しかねます……しかし、ラプラス様がそれを望むというのであれば叶えない訳には参りません。そこで、いかかでしょう。今こそ、”例の部隊”をお使いになるというのは」
「っ……なるほど…」
眷属によってもたらされた助言に対し、幹部が僅かに好感触な反応を示した。
……って、え?何、例の部隊って。吾輩にもわかるように説明してほしいんだけど。
「ラプラス様がどうしてもご自分でクロヱ様を救出したいと仰るのであれば、彼らを同行させては如何でしょう。それならば、ルイ様も多少は安心なされるのでは?」
「まあ、確かに……彼らなら、ラプを守れるだろうし……」
いやだから、”彼ら”って誰だよっ!!吾輩、一人で置いてけぼりなんだけど!?
勝手に進んでいく会話に、肝心のラプラスはついて行けないでいた。しかし、そんなことは露知らず眷属が吾輩に同意を求めてくる。
「……如何でしょうか、ラプラス様?」
「えっ?!あ、あー……うん、まあ……吾輩は、それでも構わないっていうか…………か、幹部はどうだっ?」
結局詳しい内容がわからず、ラプラスはその判断を幹部に丸投げする。すると、少し考える素振りを見せてから幹部が口を開いた。
「……はぁ、わかった。総帥がそうしたいって言うなら、私はそれに従います。ただし、いくつか条件があるわ」
そう言った幹部は、ラプラスが自ら現地に赴くにあたっての条件を提示した。
一つ目は吾輩はあくまでクロヱ達の救出に向かうだけで、あり必要以上の危険を冒さないこと。二つ目は救出が完了次第、余計なことはせず迅速に帰還すること。三つ目は、どんな状況であれ極力吾輩が単独行動をしないこと。四つ目は今すぐにいろは達に帰還の連絡を出して、合流でき次第本部で向かいに行く許可を出すこと。
そして最後に、いざとなったら『切り札』を惜しまずに使えとのことだった。
「ーーーこれらの条件を守ってくれるなら、私もラプの意見に従う」
その内容は、もはや囚われているはずの新人たちではなく吾輩自身を守るための約束事だった。しかし、それで幹部が納得してくれるというのなら呑まない理由は無い。
「わかった。必ず守る」
ラプラスの返答に対し、幹部は納得したように頷いた。
正直言って、最後のだけは守れる自信がない。ただ、ここではそのことについて深くは触れないでおこう。どっちにしろ、”いざって時”が来なければ関係の無いことだしな。
それよりも、吾輩が内心気になっているのは眷属の言っていた『例の部隊』の詳細についてだ。結局、彼らに関して吾輩は何もわかっていないんだが……。
「あー……それで眷属、早速なんだが……例の部隊、を、ここに呼んだりって……出来るか?」
詳しいことがわからないゆえに、失言の無いように顔色をうかがいながら眷属に問う。
こういう聞き方なら、取り敢えず大丈夫……だよな?
「はい、勿論ですよ。彼らは、ラプラス様が本部に居る間は常に周囲に潜んでおりますから。お好きなタイミングで、手を二回叩いてみてください」
「えっ……こ、こうか?」
眷属に言われた通りに、ラプラスは胸の前で両手を構える。そして、広い司令室に響くように手を鳴らした。
ーーーーーパン、パン。
すると次の瞬間、突如としてラプラスの前に真っ黒な軍服のような服を着た者達がどこからともなく現れた。その光景に、”彼ら”を呼んだはずの本人が驚愕する。
「ーーー我ら、絶対の主君をお守りする忠実な下僕【ラプツナズ】。お呼びでしょうか、ラプラス様」
そう名乗った隊長らしき男は、その他の者たち同様に片膝をつき頭を垂れていた。よく見るとこの場には全部で五人おり、制帽でよく見えなかったがそれぞれ性別や種族がバラバラなようだった。
えっ、いやホントなにこれ……ていうか、こいつらが着てる服って向こうの世界のいろはが主催してた【ホロドロケイ】の時に吾輩たちが着てたやつじゃん。吾輩、こんな奴らが居たって聞いてないんですけど……。
ラプツナズ。
それはholoX内のどの部門にも属さず、完全に独立した特殊部隊のことである。その存在はあまり公にされていなかったが、当初は武力的な意味で不安要素のある総帥を水面下で護衛するための目的を持って創設されていた。そして今となっては、その役割を保ちつつ『総帥が個人で私用できる部隊』として扱われている。
元々holoXの構成員を部門ごとに分けることは、各署の負担を減らすとともに専門性を持たせ仕事の効率を上げる効果があった。しかし、そこには有事の際に優秀な人材を臨機応変に扱えないという欠点もある。だが彼らなら、総帥の命令とあらば本来の任務に縛られず自由に行動することが出来るのだ。よって、今回の沙花叉クロヱ救出の際にラプラスに同行させる者達としては最適任であった。
しかし、碌な説明も無いままに彼らを呼び出してしまったラプラスは次の言葉に困る。
と、取り敢えず、何か言わないと……。
「あー……こほん、お前達を呼び出したのはちょっとしたお願い……じゃなくて、命令があってだな……」
「はっ。何なりとお申し付けください」
そう言った隊長の姿に、やはりラプラスは動揺する。こっちの世界に来てからもう結構立つ気がするけど、未だにこの崇められる構図に慣れないな。
「……実はだな、吾輩の大切な部下たちが宝鐘海賊団ていう敵組織に捕まったらしい。で、吾輩はその救出任務に自ら赴こうと思ってる。そこでお前達には、吾輩の護衛及び任務の遂行を手伝ってほしい」
「御意。お任せください、ラプラス様」
総帥からの命令を、彼らは二つ返事で承諾する。
まあ何はともあれ、これで幹部も納得してくれるだろう。それに、このラプツナズとやらが居てくれた方が吾輩としても心強い。こいつらが一体何なのかについては、移動中にでもこっそり聞けばいいか。
ーーこうして、ラプラスは幹部の同意の下囚われた仲間たちの救出任務に参加することとなった。
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今後のholoXの動きが定まり、ラプツナズの者たちは早速任務の準備に取り掛かってくれた。
すると、丁度彼らと入れ替わりの形で負傷者の対応に当たっていた博士が助手くんと共に司令室に入ってくる。しかしその白衣には所々血痕が付いており、ケガ人たちの安否が心配させられた。
「博士、ご苦労だったな。それでどうだ?部下たちの様子は」
「うん、取り敢えずの処置は終わったよ。絶対じゃないけど、多分皆助かる」
博士からのその言葉を聞き、ラプラスは心底ほっとしていた。それは彼らの安否自体は勿論のこと、万が一にも死人が出ていないかという事を心配していたからだ。もし仮に、これで誰かが死のうものなら宝鐘海賊団に対し敵対心を抱く者達が出てきてしまうかもしれない。どっちにしても、それは吾輩の本意ではないし最悪の事態は避けられたようでよかったな。
「……それで、一体何が起きてるの?ここに来る途中で、クロたん達が帰ってきてないってことは聞いたんだけど……」
「ああ博士、そのことなんだがーーー」
そこでラプラスは、起こった事件の詳細とたった今決定した事項を博士にすべて説明した。宝鐘海賊団に潜入していた暗殺部門が任務を失敗し、クロヱ達が捕まったこと。そしてクロヱ達の救出任務に、総帥である吾輩が同伴すること。またその際に、幹部から提示された複数の条件を呑んだことを。
博士も最初は黙って聞いていたが、段々とその表情を崩していった。彼女もやはり、吾輩が作戦に参加することに反対のようだ。
「まさか、クロたんが任務に失敗するなんて…………でも、それでなんでラプちゃんが助けに行くっていう話になるのっ」
「さっきも説明したが、本来一番適任のいろはのヤツが帰ってくるまでに時間がかかる。それじゃあ捕まってる連中の安全もより危ぶまれるし、何より事態は急を要すると吾輩は判断した。だから今すぐ動かせる人材の中で、吾輩とラプツナズが行くのが最善って事になったからだ」
ちなみに、ラプツナズの隊員は全部で7人いるらしい。彼らはお互いをコードネームで呼び合い、それぞれに得意分野があるのだとか。そこに吾輩を加えた総勢8名で、部下たちの救出に向かおうと思っている。
「そ、そんなの……納得できないよっ!だってラプちゃん、この間も危ない目に合ったばっかりなんだよ?!」
そう言った博士は、まるで吾輩に縋るような剣幕だった。
先日の一件で、最も不安と焦燥に駆られたのは恐らく彼女だろう。自らの失態で、総帥を犠牲にする結果となってしまったと後悔しているのだ。確かに、今の吾輩は必ずそうはならないと保証することは出来ない。だが、これはもう決定事項でありこよりには悪いが曲げられないことなのだ。
「まあ、そうかもしれないが……吾輩が、自分で決めたことなんだ。わかってくれ」
「な、ならせめて、こよも一緒に連れてってよっ!確かに戦いじゃ役に立たないかもしれないけど、僕だってラプちゃんの盾になるくらいなら……」
「博士」
こよりの言いかけた言葉を、ラプラスは食い気味に遮る。
わざわざ捕まった部下を助けに行こうとしてるのに、そこで博士まで犠牲になってどうするんだよ。
「はぁ……いいかこより、これは少人数でやる事に意味があるんだ。それに、戦えないお前がついてきたら護衛対象が増えるだけだろ」
「それはっ……そうかも、しれないけど……」
博士だって、頭では理解しているのだ。ただ、心まではそれに追いつかない。吾輩にとってはただの先輩たちであっても、博士たちからすれば相手は沙花叉クロヱというholoXの精鋭を打ち負かす実力を持った者達だ。そこに、一介の科学者であるこよりが挑んだところで結果はたかが知れている。だからここは、吾輩に素直に任せるべきなのだ。
「……ルイ姉は、このことに納得してるの?」
「納得は……まあ、表向きはって感じかしら。確かに、私もラプが直接行くことは疑問に思ってる。ただ、どっちにしたってラプがそうしたいって言うならきっとそれが正解なの。……こよりも、そう思ってるんでしょ?」
幹部にそう言われた博士は、渋々静かに頷いていた。
納得は出来ない、でも理解はしている。許容は出来ない、でも妥協はできる。幹部の場合、それがいくつかの条件を吾輩が守る事だった。なら、博士もまたそうすることでここは目を瞑ってもらうしかない。
「博士、お前が吾輩を心配してくれるのは嬉しい。……でも、吾輩がやるべきだと思ってるんだ。そして、それには博士の協力も必要になる。だからここで、ちゃんと約束するぞ……絶対、無事に帰ってくる」
その言葉と同時に、ラプラスは右手の小指を差し出した。
しかし、そんな吾輩の行動に対し博士は不思議そうな顔をする。
「……ラプちゃん、その指何?」
えっ……あ、そうか。指切りって日本の文化なのか。そりゃあ地球に行ったことが無い博士たちが知ってるわけもないか。
「これはな……ある星での、約束をする時のおまじないみたいなもんだ。こうしてお互いの小指を絡ませて、絶対約束を守るっていう誓いを立てるんだ」
ラプラスはそう言いながら、自分の両手の指を絡ませて実演してみせる。日本では昔から、約束を破ったら『万回殴って』『針を千本飲ます』という恐ろしい罰が待っている。実際にそれを実行した奴がどれくらいいるのか知らないが、少なくともそれだけ大事なものってことだ。
そんなことを思いつつ、ラプラスは再度指を差し出す。
そして、博士もはぁとため息をついてから同じようにしてくれた。
「もう……わかったよ、総帥。そこまで言うなら、僕も協力する。……でも、約束は絶対だからね!破ったら、こよの作った『激痛のする薬』を飲ませるんだからっ!」
指切りを知らない割には、意外と的を得ているななんてラプラスは思ってしまった。しかしこれで、ようやく説得の方は完了だな。
「よし。博士も取り敢えずは納得してくれたみたいだし、とっとと新人のヤツを助けに行くか!……の前に、まずは侍に連絡しないとだな。おい眷属、準備をしてくれ!」
「御意」
そう指示を出したラプラスに対し、眷属が速やかにかざま隊との連絡の準備を始めてくれる。吾輩の個人的な意見としては、マリン先輩たちの事情を聞きつつ新人たちを救出し終わる頃に丁度帰ってきてくれるくらいがいいんだが……まあ、その辺は何とかなるだろ。
それよりも考えなければいけないのが、現地に向かった後の話だ。どうやってこっちに対話の意思があることを伝えつつ、船長たちと接触するべきか……。
そう思ったラプラスは、今後の自分の行動について思考を巡らしていくのであった。
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ひんやりとした、硬い地面の感触。
その冷たく無慈悲な一面が、負傷によって生じる体の熱を冷ましてくれていた。
とは言うものの、それは今の身体の持つ問題を根本的に解決することには繋がらない。それはただ、不安を煽る体の痛みを多少緩和してくれているだけだった。
「……しくじっちゃったなぁ……これじゃ、ルイ姉たちに怒られちゃうよ……」
戦闘によって負った傷よりも、その後上司に怒られてしまうだろうという事を彼女は気に病む。この失態は、高くついてしまうだろうと。
「はぁ……こんなことなら、柄にもなく張り切ったりなんてしなきゃよかった……」
その言葉は、らしくない自分の行動に対する不満を表現していた。
そもそも私は、普段から任務に対して真摯に向き合おうという気概があまりない。ただなんとなく、居心地のよかったこの場所に居座っているにすぎないのだ。そして、その席を守るためにあんまり気の進まない仕事を全うしているだけ。叶うことなら、私だってあの”チビ”と同じように本部でぐーたら怠けていたい。でも、私には生憎あの”キッズ”みたいな指導者としての才覚は無かったみたいだ。だからこうして、辛うじて持っていた『掃除屋』としての才覚を使って任務に適当に勤しんでいたわけなのだが……
「……だからって、なーんで”沙花叉”がこんな痛くて辛い思いしなくちゃいけないんだよっ!」
そんなことを牢屋で一人、【沙花叉クロヱ】は吠えていた。
ここは宝鐘海賊団に所属するどこかの船の中。詳しい場所については、気絶している間に運び込まれてしまったので全くわからない。ただ気を失う寸前に、こよちゃんから貰ったドッグタグをペロッと舐めておいたことだけは覚えている。壊れていなければ、確かこれで内蔵されている機器が起動してくれるはずだ。そして、ルイ姉が異変に気が付いてくれればいろはちゃんあたりが助けに来てくれるだろう。つまり私は、もう少しの間ここで待っていればいい。たぶん、きっと……。
そう思ったクロヱは、未だ自由に動かぬ手足を四方に放りだした。そしてそのままに、牢獄の天井を仰ぎ見る。
(はぁ……あのチビ総帥に、”あんなこと”言われなければこんなに頑張ったりしなかったのになぁ……)
クロヱが任務の為に本部を立つ前、総帥から直接言われた言葉があった。普段はそんな素振りは無いくせに、珍しく激励しようとしてくれた彼女の話に私も耳を傾けた。……しかし、結果的に見れば”それ”こそが今回の私の調子を狂わせたとも言える。
彼女はそんなことを考えながら、その時の憎たらしいチビっ子の姿を思い浮かべる。そして、脳裏に焼き付いて離れなくなったあの言葉を復唱し始めた。
『……ああクロヱ、これから任務かい?精が出るじゃないか』
そう声をかけてきた大悪党の親玉は、ニッコリと薄ら笑いを浮かべていた。
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