転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
【追記】
今回の追記については、珍しく二つ題材が思いついて悩んでおりました。そして、今回はこれで行きます。ずばり……パラレル世界における沙花叉クロヱが、ラプラスに対して寄せる心象についてです。ちなみに、ルイ姉とこよちゃんに関しては本編の第7話の前置きに記載しております。
この世界のクロヱは、総帥のことを表面上で小馬鹿にしたような態度を取っています。内心では『キッズ』や『チビ総帥』などと呼んでおり、それがたまに態度に出ています。ここに関しては元の世界と変わり無いですね。しかし、それは決してラプラスを軽んじているわけではなくそう言った事を言い合える仲だとも言えます。
実はクロヱは、密かにある悩みを抱いています。それは一言で言えば、他の仲間に対する"劣等感"。詳しいことは今後本編でやりますが、それがある故に彼女は若干斜に構えているところがあります。しかし、それをラプラスは理解せずともそんなことは関係なしにクロヱのことを受け入れてくれます。それが、彼女にとっては居心地がいいらしいですね。
また他のメンバーに関しても、大きな部分は変わりありません。ルイ姉のことは姉のように慕っており、こよりちゃんのことは良き同士であり、いろはのことは背を預けられる仲間であると思っています。
----ただ、この世界のクロヱは一つだけ元の世界と違うところがあります。それは、彼女がラプラスのことを……。
『……ああクロヱ、これから任務かい?精が出るじゃないか』
今まさに、任務に向かおうと廊下を歩いている時だった。そこで、たまたますれ違った大悪党の親玉……〖ラプラス・ダークネス〗が、そう声をかけてくる。
「……」
しかし、その時の私は少々不機嫌だった。
何故なら今回の任務に対してあまり前向きではなかったし、何より潜入に支障をきたすという事で飼育員に”お風呂”に入れられたからだ。また朝早くから起こされたし、昨日はかなり”当たり”が悪かった。あとちょっとで、一発逆転だったのになぁー……。
……まあそんな多々ある理由で、この時の私は総帥の言葉に返事をしなかった。そして、それをマズいと思ったのか隣に立っていた飼育員が代わりに答えてくれる。
「これはラプラス様、おはようございます。仰られるとおり、我々は今から任務に行ってまいります」
『そうか、頑張りたまえよ。……ところで、クロヱは随分と機嫌が悪そうだね。何か、嫌なことでもあったのかい?』
勘のいいキッズだな。まあ、実際そうなのだから否定はできないのだけど。
「……まあね。今回はあんまり乗り気じゃないんだよ……なんか、嫌な予感がするから」
この時の私は、本能的に得体の知れない危機感を感じていた。いや、そんなハッキリしたものでは無く”僅かな違和感”と言った方が正しいのかもしれない。これから何か、大きな変化が訪れるような……そんな気がしていた。それが今回の任務と関係しているかはわからなかったが、どちらにしたって乗り気ではなかったのだ。
『ふむ、なるほど……しかし、ルイからの任務なら重要なことは間違いないだろう?それなら、まじめに取り組んでもらわないと困るな』
そんなこと言われたって、やる気が出ないものは仕方ない。確かにholoXに所属するものとして、上司から下された任務ならやらなきゃいけないことはわかっているが……もういいか、面倒だから適当に済ませてしまおう。
そんなことを、この時の沙花叉は内心思っていた。
しかしそれを見抜かれていたのか、目の前の総帥がニヤッと笑ってから口を開く。
『……じゃあ、こういうのはどうだい?』
そう言った総帥が、沙花叉のことをチョイチョイと手招きしてきた。私はそれにすら乗り気ではなかったが、渋々指示に従う。すると、チビ総帥が私にだけ聞こえる声でこっそりとこう言ったーーー。
『もし、今回の任務を無事成功した暁には…………私から、クロヱに”ご褒美”をあげよう』
囁くように言われたその言葉は、電撃のように私の中を巡った。
総帥からの……私の、『----』からのご褒美って……。
「……はァーい、頑張ってきます♡」
そう答えた私は、さっきまでの気持ちが嘘だったように身体が軽くなった。そして、そのままの足取りで任務に赴いたのだった。
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今後の行動が決定してからの、holoXの仕事は早かった。救出隊の宇宙船の用意と、必要な物資の運び込み。また各署への連絡と、肝心ないろは達への通信も順次行われた。まあ、そのほとんどが幹部の指示によるものであり、吾輩はただ見ていただけだったのだが……。
「ーーーーという訳だから、最低限の人員を残して即帰還してきて。私たちも途中までは迎えに行くから」
holoX総本部の中枢指令室。その前方に設けられた巨大モニターに映る『通話中』の表示と共に、現地の戦闘斥候部門との連絡が行われる。
『なるほど……了解でござるっ!実はこっちも、やる事もだいぶ終わってそろそろ帰るところだったんでござるよ』
そう答えたのは、声のみではあったが間違いなくあの【風真いろは】であった。こちらの世界では初めて聞いた侍の声に、ラプラスは内心懐かしさを感じる。しかし、現在の状況と場所を考え今は余計な口出しはしない。話なら、任務から帰ってきた後でいくらでもできるからな。
幹部が侍たちに必要なことを伝えると、通信は直ぐに切られた。即帰還の指示という事で、余計なことに時間を使っていられないからな。
また吾輩はというと、その間に新人たちの救出のための準備に取り掛かって……いなかった。いや正確には、出来なかったという方が正しい。勿論その気持ちはあったのだが、機体の整備や物資の準備など吾輩にはちんぷんかんな事ばかりで出来ることが無かったのだ。結局、博士やラプツナズのメンバーが色々と話し合いながら作業しているのを、ただ見ているだけであった。
「……なあ眷属。吾輩にも、何かできることは無いか?」
頬杖を突き、宇宙船が格納されている倉庫の端で座りながら現場を眺めていたラプラスがそう呟いた。隣には眷属の男が立ってはいるが、まるで蚊帳の外に追いやられているみたいで凄い疎外感を感じる。
「こより様や彼らは、こういった作業のプロです。ラプラス様は万が一にもお怪我などなされませんよう、ここで見ている方が安全だと思われます」
「いや、そういうんじゃなくってさ……ただ見てるだけなのは、落ち着かないんだよ」
「それが、王の役目というものです。ラプラス様は既に、我々家臣に指示をくださいました。ならば、後は彼らがやるべき仕事です」
そう言った眷属に、ラプラスは遠回しに作業場から遠ざけられていた。まあ確かに、吾輩では技巧のことなどさっぱりわからない。それに、こいつらからしたら吾輩が怪我する事の方が問題なんだろうけど……何もできないというのは、こうも歯痒いものだったのか。
「……こより、船の整備の方はどう?」
格納庫では引き続き、作業が行われていた。
すると、荷物の搬送が終わった頃に資料の束をいくつか持った幹部とその秘書が訪れる。恐らくは、作戦の準備と諸々の手続きを終えてきたのだろう。
「うん、こっちはほとんど終わったよ。後は燃料を入れたら、いつでも大丈夫。そっちは?」
「こっちも大体は終わったわ。後はラプへの確認と、救出作戦の詳細を詰めるだけ……」
そう言った幹部が、外野に座っていたラプラスの方に視線を移す。そして、こちらに歩み寄ってきてから数枚の紙を渡してきた。
「ラプ、向かってる途中にでもこれに目を通しておいて」
ようやく誰かに構って貰えたラプラスは、若干の嬉しさが込み上げる。しかし、それを悟られまいと資料に目を落としながら答えた。
「これは?」
「帰還した隊員の中で、意識のあった人達に聞いた宝鐘海賊団の情報。有益そうなものが幾つかあったから、簡単にだけどまとめておいたの」
なんと、仕事の速いことだな。後でありがたく読ませてもらおう。
「……それと、これからの行動についての作戦会議を簡単にしちゃいたいの。いい?」
「ああいいぞ。お前たちの動きも知っておきたいしな」
今後の細かな動向を決める会議に、ラプラスは同意する。
そして、幹部が持ってきた資料をいくつか簡易卓上に開いてからその周りを関係者達で囲む。具体的に言えば吾輩と眷属、幹部とその秘書、博士と助手くん、そしてラプツナズのリーダーと副リーダーの8名だ。
「それじゃあまずは、宝鐘海賊団の船に向かうラプ達からね。報告書によれば彼女たちは、全部で三つの巨大な宇宙船を持っている。そして、クロヱ達が囚われていると思われるのはそれのどれか」
確か話じゃ、一~三番船は基本的に単独で動いているとのことだった。そして、捕まった仲間は普通に考えれば潜入したらしい二番船に囚われているという事になる。
しかし、考えなければいけないのはクロヱ係の男の日記だ。そこには確か、『二番船及び三番船の船長たちがあれほどの強さだったとは……。』という一文があったはずだ。それに加え、あえて捕虜の半数を逃がすという判断を下したのはマリン先輩だったはず。それらからわかることは、少なくとも新人たちが捕まったその場には複数の船長たちが居たという事だ。
「宝鐘マリンたちは普段、それぞれが単独で動いているらしい。だが、この時ばかりはその場に複数の船長が居たと報告書に書いてあった。だから向かった先の船に船長クラスが複数いる可能性もあるし、そもそも捕虜が移動されていたりバラバラに捕まってる可能性もあるな」
「いえ、少なくとも捕まった人たちは一か所にまとめられてるみたい。クロヱ以外の信号も、同じ場所にあったのを確認してるわ……まあ、それが何処で敵が何人いるかまではわからないけど」
あ、そうか。クロヱ以外の隊員たちも、当然例のドッグタグを持っているはずなのだ。そして新人同様、規則に則って信号で助けを求めている。またその反応から、彼らが同じ船に乗っているという事はわかっているらしい。
「とすれば、吾輩たちは取り敢えずその発信元に向かえばいいんだな。後は敵の戦力についてだが……これは実際に着いてみないとわからない、か」
「そういう事になるわね。……でも、どっちにしたってラプ達の目的が捕虜の救出である事には変わりない。出来るだけ敵との接触を避けて、助け出すことだけに集して」
「そうだな」
……まあ表向きは、だが。
吾輩としては、現地に行った暁には船長の誰かに接触したいと考えている。できれば一番話の早そうなマリン先輩が好ましいが、彼女たちとは何としても友好関係を築かなければならない。
「……それで、救出の具体的方法について何だが…………ってあれ?宇宙船への潜入ってどうやるんだ?」
しまった、肝心なことを忘れていた。地上に存在する基地に潜入するなら何とでもなりそうだが、今回の目的地は宇宙船だ。そんなところに、一体どうやって侵入すればいいんだ……?
「それについては、ちゃんと準備してあるわ。……ね、こより?」
「うん、まっかせて!ルイ姉に言われたもの、ちゃんと用意しておいたよっ!」
そう言った博士が、誇らしげに黒いヘルメットの様なものを取り出した。それは所謂特殊部隊の隊員が着けているようなヘルメットで、前張りとマスクの付いたものだった。
「博士、それは……?」
「これはね、『ヘッドギア式宇宙服』だよ。これを被ってるだけで、宇宙空間でも活動が出来るの!普段から暗殺部門の人とかが使ってるやつなんだけど、それをラプちゃん仕様にちょっぴり改造したんだ」
これまたとんでもないものが出てきたな。まさか、被るだけで効力を発揮する宇宙服とは……。
まあ、博士が有能科学者であることは今に始まったことじゃなし、今更深くは触れないでおこう。
「それで博士、詳しい説明を頼む」
「えーっとね、これの使い方としては被ってから首元に付いてるここのスイッチを操作すればオッケーだよ。ちなみに、ラプちゃんのは特注のやつだから普通に被れるからね」
ラプラスの頭部には、左右に伸びる大きな角が二本生えている。その為、被り物を被る際には多少工夫が必要なのだ。しかし今回は、そんな吾輩に合わせて少し小さめのサイズでサイドに穴の開いた特注品を用意してくれたらしい。これがさっき言ってた、”吾輩仕様”ってことか。
「ほぇー、お前は本当に優秀だな。サイズも吾輩にぴったりだ」
博士から受け取ったそのヘッドギアを、ラプラスは試しにかぶってみる。すると、それは驚くほど吾輩にぴったりとフィットした。変な窮屈さや息苦しさも少ないし、これなら長時間宇宙空間に居ても大丈夫そうだな。
「うん、ありがとう。……でも、注意しないといけないこともあるの。それは”酸素残量”と”ステルス機能の制限時間”」
それは、このヘッドギアに搭載されている基本機能の二つだった。前者はその名の通り、宇宙服としての使い方をする際に注意するべき点。具体的に言えば、これは個人差はあるもののおおよそ30分ほどの活動に耐えられ代物とのことだ。また酸素残量が無くなった際には、マスクのフィルターを交換すればいいらしい。
そしてもう一つが、暗殺部門ご用達の『ステルス機能』。光学技術の極致ともいえるそれは、所謂光学迷彩とも呼ばれる”透明人間になれる装置”だった。いや凄すぎだろ。
「透明人間になれる時間はフルチャージで大体10分くらい。それ以降は光エネルギーを溜めて、充電してからじゃないと使えなくなるからね。……それと、これは思ってるほど優秀なモノじゃないの。本当に居なくなるわけじゃないから外部から触れるし、匂いや気配も残ってる。絶対見つからないってわけじゃないから、過信しすぎないでね」
博士の説明によると、このヘッドギアに内蔵されてるバッテリーは充電式のようだ。そして、それが満タンの状態で透明になれる時間が10分間。それ以降は明るい場所においておけば、自動で充電されるらしい。ただ、これも決して万能なものでは無い。”見えなくなる”だけで、透過するわけではないのだ。この辺の仕様をしっかり頭に入れておかないとな。
「まあ、詳しい使い方や注意事項はこんな感じ。…………実はこのヘッドギア、一つ作るだけでも結構お金がかかっちゃうんだよね。だから、人数分用意できなかったんだけど……ラプちゃん、これ役に立ちそうかな…?」
「勿論だ博士。ありがたく使わせてもらう」
「っ!……うん!」
何故か不安そうに聞いてきた博士に対し、ラプラスは即答でお礼を返す。
こんなすごいものを作れるやつが、世界に果たしてどれだけいることか。人数分は用意できなかったと言っていたが、一つあるだけでも話は全然変わってくる。それに、holoXの財務を担当しているのは幹部と財務部門の連中だ。そこから渡される予算内で、博士たちはholoXの助けになる発明品を開発してくれている。それだけ精一杯やってくれてるこよりに、文句の一つでも言ったらばちが当たるというものだ。
「あ、それとねラプちゃん。今回ラプちゃん達が乗っていく宇宙船にも、同じ光学迷彩の機能が付いてるからね。それも作戦に役立てて!」
今回クロヱ達の救出に向かう為の宇宙船は、ラプラスたちが以前フレンズ王国の惑星に行ったときに乗ったような大きなものでは無い。最低限の物資と、参加者+救出後の仲間がギリギリ乗り込めるサイズの小型船だ。またそれにした理由は、速さに特化した機体であるという事と発見される可能性を出来るだけ少なくした結果である。
そして先程、博士とラプツナズが整備を行っていた時に大型バッテリーの追加とドッグタグの信号を拾える受信機を取り付けてくれたらしい。今回はよりステルス性を持たせるために、機体に施せる透明化の時間を延長してくれた。また、本来ならば本部にある巨大レーダーでないと拾えないタグからの微弱な信号を、この宇宙船内で追えるようになったのだ。これで、目的地を見失うことも無くなるだろう。
「どうやら、こっちは準備万端みたいだな。……幹部、博士、ありがとな」
ただ傍観を決め込んでいたラプラスを他所に、優秀な部下たちはこの短時間でここまでの準備をしていてくれた。そして、その働きに対し総帥は素直にお礼を言う。
「別に、これが私の仕事だから」
「僕もだよ。それに、こよはただルイ姉から指示を貰っただけだからさ」
しかし、どうやら二人にとっては当たり前のこととして処理されてしまったようだ。吾輩としてはありがたいことこの上なかったというのに、二人とも与えられた役目にストイックなんだな……。
「……それじゃあ、とにかくラプ達は現地に着き次第クロヱ達の捕まっている船に侵入して。そして、仲間を回収したら即帰還……それでいいわね?」
「ああ、大丈夫だ。……それで、お前たちは?」
救出隊であるラプラスたちの動きは概ね固まった。そして、次は幹部率いるお留守番組の動きだ。とはいっても、その名の通り待っている以外に決まった動きがあるわけじゃないけどな。
「私達については、取り敢えずいろはの回収を目指すわ。それで合流した後、今度はラプ達の方の迎えに行く」
という事らしい。まあ吾輩自ら助けに向かうと言った時に、いろは達を帰還させるっていうのは幹部から提示された条件の一つだったしな。それに、救出隊の迎えについても許可を出す約束だった。
「わかった、それで頼む。…………あ。それと、念のため”アジト内”の警備を強化しといてくれ」
前回はそこまで頭が回らなかったが、本来総帥が本部を開けるときは毎度そうしたほうがいいのだろう。クロヱの例もあるし、holoXは何も無敵という訳ではない。万が一吾輩の留守中に本部に襲撃を受けたら大変だし、ここは防衛レベルを上げとかなければならない。
ラプラスはそう思い、基地の守りを固めるように指示を出す。
しかし、それを受けた幹部が何故か不思議そうな表情を浮かべて吾輩に聞き返してきた。
「えっ……それは、必要なことなの?」
「ん?そりゃまあ、必要だろ。吾輩が居ないときに、もしものことがあったら大変だからな」
今回の件を踏まえて、吾輩はholoXの脆弱さを実感していた。それは、優秀過ぎる者が居る故に組織内の勢力図に大きな偏りがある事だ。例えば純粋な戦闘能力で言えばいろはの一強だし、こと開発・研究・発明に関してこよりに敵う者はここには居ない。それは一見凄いことのように思えるが、組織規模でみるのならば力関係や負担が偏り過ぎることはいいこととは言えない。何故ならば、仮にその者が倒れてしまったら組織が破綻してしまう可能性があるからだ。現に、holoX二大勢力の内の一人であるクロヱが居なくなっただけで、吾輩たちの行動はこうも制限されてしまっている。この事態を解決することは、今後のholoXの課題だな。
ともかくそういう訳で、今はこれ以上の被害を出すわけにはいかないのだ。速やかに仲間を救出しつつ、全員そろって帰還する。吾輩はそのついでで、船長の誰かに接触できればいいだけなのだ。
「吾輩の留守中は、お前だけが頼りなんだ。頼んだぞ」
「…………まあ、ラプがそう言うなら……」
何故か、未だ不満のありそうな幹部が渋々承諾してくれる。まあ、恐らく何もないとは思うが……取り敢えず、あとのことは幹部たちに任せよう。
あ!そういえば、博士にもお願いしたいことがあったっけ。
「博士、ちょっと頼みたいことがあるんだがいいか?」
「うん!勿論だよラプちゃん。何でも言って!」
今、何でもって言ったか?
……というのは置いといて、博士に頼みたい仕事とはずばり『帰還した宇宙船』の修理だ。これはさっき待っている間に眷属に聞いたことなのだが、今回任務中に破壊されてしまった宇宙船は暗殺部門専用の船らしいのだ。何やら特別な仕様があるようだし、今後も使うだろうから博士には早めに直しておいてもらいたい。
「今回暗殺部門のやつらが帰ってくるときに乗ってた宇宙船、あれを直しておいてくれないか?出来るだけ早めだと助かる」
「ん?……宇宙船の修理ってこと?僕が?」
しかし、またしても博士はラプラスの指示に対し困惑したような顔をしていた。
え、さっきから何だ?幹部もそうだったが、吾輩何か変なこと言ったか?
「え、何か問題あったか?」
「あっ……う、うーうん、大丈夫!ちゃんとやっておくね!」
ラプラスがその反応に疑問を抱きつつも、博士は吾輩のお願いを受け入れてくれた。
まあ、本人が大丈夫って言ってるし大丈夫か……?
少し気になる事もあったが、決めることは決めたので一旦会議を終了する。
そして数十分後、ラプツナズの隊員たちが出発の準備を完了しようとしてくれていた。
「ラプラス様、宇宙船の準備が整いました。いつでも出発できます」
「ああ、わかった」
これでようやく、クロヱ達のところに迎えるな。まあ、吾輩まだ何にもしてないけど。
そう思ったラプラスは、早速宇宙船に乗り込もうと立ち上がる。
……しかし、何故か突然ラプツナズの隊員が吾輩の前で隊列を組んで跪きだした。
(え、いきなり何……あぁ、そっか)
その不可思議な行動は、上官である総帥からの命令を待つ部下たちの姿だったと理解する。そして、ラプラスもまたそれに応えるように口を開いた。
「こほん……刮目せよ!吾輩の名前は、ラプラス・ダークネスだ!!」
総帥のその口上に合わせ、その場にいた全ての部下たちがこちらに視線を向けてくる。
この感じ、ようやく少しだけ慣れてきたな。
「現在、暗殺部門代表の沙花叉クロヱ以下12名が宝鐘海賊団に囚われている。そこでお前たちへの任務は、吾輩を護衛しつつこれらを救出するものとする。現地には手練れの船員も複数いると思われるが、これを必ず成功させてくれっ!」
「「!! YES MY DARK !!」」
ラプラスの発言に対し、隊員は一律に揃った返事をしてくれた。吾輩もそれを受けて、より一層身が引き締まる。
ーーーーこうして、ラプラスたちは仲間たちの救出へと向かうのであった。
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「それじゃあ行ってくる。吾輩の留守を頼んだぞ」
「ええ、わかったわ」
総帥はそう言い残し、宇宙船へと乗り込んだ。この格納庫ではそのまま外部との接続口に繋がっており、そこから宇宙へと飛び立つことが出来るようになっている。つまり、ラプとはここでお別れとなるわけだ。
「ねえルイ姉、ちょっといい?」
「ん?なに?」
ラプ達を乗せた宇宙船が動き出し、格納庫から出ていくのを眺めていた。すると、私と同じように見送りをしていたこよりが突然そんなことを言い出す。
「さっき、ラプちゃんから警備を強化しておいてって言われた時……なんか、変な顔してたよね?気になる事でもあったの?」
変な顔とは失礼な。
しかし、あの時ラプの指示に対して疑問を持ったのは事実だ。何故、あの子は”あんなこと”を……。
「ええ、まあちょっとね。……どうしてラプが、この”母艦”ではなく『アジト内』を警備しろって言ったのかが引っかかったのよ」
それは、元の世界のラプラスとこの世界での鷹嶺ルイとの認識の相違であった。
その言葉のラプラスの真意としては、『自分の留守中は防衛態勢を整えて欲しい』程度のことだった。しかし、この世界のルイからしてみれば”アジト内を警戒しろ”とあえて言っているように聞こえてしまったのだ。
今のラプラスは、この世界で使われている諸々の呼び名に大した違いはないと思い込んでしまっている。しかし、正確に言えばそれは大きな間違いなのだ。例えばラプラスが鷹嶺ルイを呼ぶ時に使う『幹部』という言葉は、本来彼女の呼び方としてはふさわしくない。何故なら今の高嶺ルイは『大幹部』であり、幹部と呼ばれるholoXerたちは別に存在しているからだ。ただ、この『四天王たちの呼び方』という場合でのみ”昔に使っていたもの”として表面上受け入れられている節がある。
そして今回の場合だ。ラプラスは先程、ルイに対して『アジト内』を守るように告げた。それは一見自分たちの本拠地を守るように指示されたものに聞こえるが、正しく内容を読み取るのであれば総本部自体では無く”この建物内を守れ”というように捉えることが出来てしまう。
だからこそ、ルイはわざわざ聞き返してまで総帥の指示の内容を確かめたのだった。
「本来なら、敵からの攻撃を警戒するなら強めるべきは母艦全体の防衛力。……でも、ラプはそうは言わなかった。それが、少し気になったのよ」
「なるほど、確かにちょっと不自然だよね……もしかして、ラプちゃんにはまた何か考えがあるのかな?」
こよりからの言葉を聞いて、私はその不可解な命令をすんなりと受け入れられたような気がした。
ラプが変に駄々をこねたり、不自然な我儘を言うときは……決まって、何か大切なことを考えている証拠なのだ。例え私達には到底理解のできない行動であっても、それがラプにとっての計画の一部だったなんてことはいつもの事。あの子の内側には、常に私達では想像もつかないような膨大な策略が眠っている。そして、ラプはいつもそれを詳しくは語ってくれない。私たちが理解できずに困っていても、最後まで教えてはくれないのだ。
でも、それはきっと”そうする必要がない”と思っているのだろう。教えた方がいいことは共有してくれるし、私たちだけで対処できる事については任せてくれる。だから私は、ただ総帥から頂いた命令をそのまま全うすればいいだけ。それだけで、全てはあの子の手中に収まるのだから。
「きっと、そうね。あの子のことだから……こより、あなたもラプに言われたことをちゃんとやりなさいね」
「うん、わかってるよ……僕も、最初は『なんで修理班じゃなくてこよが直すんだろう?』って思ったけど、多分それにも意味があるんだよね」
ラプが出したもう一つの不可解な命令、それは”研究部門の代表”であるこよりに修理を任せたことだ。
holoXでは各部門ごとに、担当している仕事が分かれている。しかし、こよりのみイレギュラー的に他部門の仕事を行ったりもしているのだ。それは彼女の持つ優れた頭脳の賜物であり、またそれによってこよりの多忙さを助長するものでもあったりする。従って、普段から彼女の負担を減らすために『模造品の制作、及びオリジナルの複製や修繕』については各担当部門内でこよりを介さずに行うことになっているのだ。
つまり、故障した宇宙船の修理もまた本来はこよりの仕事ではない。最近では専ら、彼女は顧問的仕事や新製品の開発等に関わっていることがほとんどなのだ。そして、それはラプにも伝えてあることなので知っているはず……にもかかわらず、総帥はそれを指示した。恐らく、それにも何かしらの理由があったのだろう。
「まあ、私たちが今ここでいくら考えても仕方のないことよね。私たちはただ、あの子の指示通り動きましょ。……ねぇ、手の空いてるぷらすめいととルイ友、あと戦闘斥候部門の人達を集めて」
「かしこまりました」
アジトの警備に着かせるため、秘書に頼んで人員を集めさせる。
取り敢えず私は、いつでも問題に対応できるように司令室で待機でいいわね。
「こよたちも、宇宙船の修理に向かうよ。助手くん、手伝って」
「わかりました、こより様」
そうして私たちは、それぞれのやるべき事を行動に移し始める。私は大幹部としての現場指揮、こよりは備品の修復だ。総帥からこの本部を任された身として、しっかりとすべきことを成そう。
そう思った鷹嶺ルイは、赤いマントを翻して格納庫を後にしたのだった。
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