転生したらラプラス・ダークネスだった件   作:飽和水溶液_pixiv

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第30話です。記念すべき転ラプシリーズ30話目です、かなり長くなってきましたね。未だにholoXのメンバーがそろっていませんが、構想的にはまだまだ続きそうです。100話目とか行くのかな?

さて、前回は久しぶりにるしあちゃんやあくたんが登場しセリフも多かったですね。ようやく新しいホロメンを書けて、嬉しい限りです。今後は沙花叉もたくさん活躍させる予定ですし、これからの展開に期待です!

【追記】
今回の深堀シリーズはお休みです。
ただ個人的な話なのですが、最近またこのシリーズを多く読んで頂けていることを実感しています。今後も出来るだけ面白くしていきますので、末永くお付き合いして頂けると嬉しいです。


第30話 宝鐘海賊艦隊三番船の双璧

 

 

ー宝鐘海賊団 航宙日誌ー

〇〇〇〇/△△/▢▢。私たちは現在、目的地を目指して順調に航行中。経過は至って順調であり、システム・物資等特に問題は無い。強いて言うなら食糧が若干心もとないが、この後寄る予定の惑星で調達できるだろう。”一味”たちは血気盛んで、本当によく飲み食いをしてくれる。それだけ力が有り余っているなら頼りになる事間違いなしだが、自分たちが置かれている状況が本当にわかっているんだろうか……?

またこの一番船には現在、この日誌を書いている私【宝鐘マリン】と三番船の船長達がーー

 

 

 

「おめぇぇぇえ!それみこのご飯だろぉが!!」

 

 

 

私はそこまで書いて、突然聞こえてきた叫び声にサッと顔を上げる。すると、声を荒げた張本人とその原因である人物が言い争っている姿が視界に入ってきた。

 

 

「そんなんしらねーよ、早い者勝ちだろーが!……あ、これもすいちゃん貰うね♪」

 

 

「おめぇふざけんなよバカ街!!」

 

 

そう叫び合っているのは、我らが宝鐘海賊団に所属する三番船の双璧【星街すいせい】と【さくらみこ】だ。私の船長室でご飯を食べることは別にかまわないが、仕事中なのだから少しくらいは静かにして欲しい。ていうか、それぞれ同じものがよそられてるんだから喧嘩に発展することなんてないだろうに。

 

 

「二人とも、少しは静かにしてください。ここ私の部屋ですよ?」

 

 

「いやマリリン、今のはどぅー考えてもこいつが悪いだろぉ!みこのお肉だったのに!」

 

 

舌っ足らずの口調で、みこちが必死にそう訴えかけてくる。どうやらすいちゃんが、彼女のお皿に乗っていたメインディッシュを半分ほど奪ってしまったらしい。しかも、デザートも同時にかっさらわれている。確かにそれは怒る程のことかもしれないけど、この2人そんなことで言い合ってんの?

 

 

「だってすいちゃん、食べられるもの少ないんだもーん。ほら、代わりにお野菜あげるからさ」

 

 

「みこも野菜好きじゃないからっ!!」

 

 

自分勝手すぎる言い分に、みこちは再度叫ぶ。流石に、肉と野菜では釣り合いが取れなかったようだ。

しかし、彼女たちのいがみ合いは今に始まった事じゃない。この二人はいっつもそうだ。どうでもいいことで、ずっと言い合いをしている。と思ったら、悪だくみをする時に限ってまるで悪友とでもいうように仲良くなる。きっと、根っこの部分ではお互いを信用しているのだろう。本当に仲が悪いのではなく、本当の意味で『自分』を晒せる相手として互いを認めているのだ。だから、いくら本音を吐いたって仲を違えたりしない。そんな二人を、私は心底羨ましいなと思う。

 

 

「はぁ……わかりました。じゃあみこち、マリンの分も食べていいですから。それなら納得してくれますか?」

 

 

「えっ!いいのぉ!!ありがとマリン!」

 

 

私からの提案に、みこちが嬉しそうに乗ってきた。そして、二人の分とは別に盛られていた私の食事に手を付け始める。今はそんなにお腹は空いていないし、仕事が捗るならばこれくらいのことは許容しよう。

 

私はそう思い、再び手元の日誌に目を落とした。羽ペンを利き手に持ち、続きをどう書きだそうかと思惑を広げる。すると、その姿を見たすいちゃんがご飯を頬張りながら声をかけてきた。

 

 

「マリン、何書いてるの?また日誌?」

 

 

「はい、そうですよ。ここ数日書けてなかったので、覚えてるうちに書き留めておこうと思いまして」

 

 

この数日間、私たちの間ではいくつかの事件が起こっていた。同属組織からの攻撃、他船長や部下たちの暴走、船内への侵入者などetc……そして、その中でも最も大事となってしまったのが『holoX所属の諜報員の存在』である。

 

 

 

 

悪の組織、【秘密結社holoX】。

それは、たった一人の総帥の元に集った『巨悪』を体現したような集団である。

 

私たちが宇宙への旅を始めて早数年、彼女たちの噂も少なからず耳に入ってきていた。この銀河にも、確かな勢力図というものが存在する。舞台が宇宙である以上参戦難易度が高いわけだが、そんな条件をものともしない組織が存在するのだ。それが、【ラプラス・ダークネス】という総帥率いる秘密結社holoX。彼女たちは卓越した科学力と技術力を有しており、また世界を相手に戦えるほどの軍事力も持っていた。そして、それらを統括するように四人の最高幹部が居るという話だ。詳しいことはわからないが、中には『未来視が出来る』とか『大陸を一人で割れる』とか言われている者達が居るらしい。

また、このラプラス・ダークネスという人物についても凄い噂が絶えない。一説によると彼女は、『かつて全宇宙を支配した大悪魔の生まれ変わりであり、不可能を可能とする謀略家』であるとされている。この話が事実なのかは定かではないが、現状いくつもの星々を侵略し征服を果たしている以上それが真実かどうかはさほど大きな問題ではない。

重要なことはただ一つ、『彼女たちには手を出してはいけない』という事だけだ。

 

holoXに喧嘩を売り、生存できた組織がいるという話は今のところ聞いたことが無い。それほど圧倒的で、あの組織にだけは関わってはいけないというのがこの宇宙での数少ない常識であった。

 

 

 

しかし、先日困った事件が発生してしまったのである。それは、我らが宝鐘海賊団の二番船船内でholoX所属の諜報員と思わしき者達を数名発見したことだ。しかも、彼らを救出するため四天王の一人とされる【沙花叉クロヱ】までが出張ってくる事態に発展してしまった。結果的に見ればうちの二番船及び三番船船長の手柄で彼女を拘束できたものの、これは図らずしてholoXに喧嘩を売ってしまったことと同義である。

 

ちなみに彼女たちの潜入の目的については、ある程度の予測が立っている。恐らくは、私たちが今まで略奪行為を働いた惑星やそこに建設されている施設の中にholoX管轄のものがあったのだろう。それがきっかけとなり、私たちは彼女たちに目を付けられてしまったのだ。

私は普段から出来るだけ、略奪を行う相手を見極めている。その方が、後々無駄な争いが減り結果的に楽になるからだ。しかし、他の船長たちに関しては目についた場所を適当に襲ってしまう仕事ぶり。特に、すいちゃん担当の三番船の行動は本当に目に余る。この間だって、予定にない組織に喧嘩を吹っ掛けた上でたった一人で壊滅させてしまった。その強さには敬意を賞するが、少しは私の指示に従ってほしい。

 

 

しかしまあ、もうやってしまったことは仕方がない。とにかくそういう訳で、私たちはholoXという巨大な組織への身の振り方を考えなければいけなくなってしまったのだ。現在私たちは”自分たちの星の問題”で手一杯であり、他のところで争いを起こしているような余裕はない。加えて、真っ正面から戦いを挑んだところで彼女たちに滅ぼされるだろうことは目に見えている。今は少しでも多くの人手や物資を必要としており、それらを無駄に浪費するわけにはいかないのだ。

 

そこで、本部と話し合った結果holoXには示談を申し込もうという結論に至ったのである。最初に手を出してしまったのはこちらだが、向こうもまた私たちの船に侵入し被害を出した。よって、捕虜を全員生きて返す代わりに今回の件を無かったことにするのだ。向こうの出方次第でもあるが、これが一番穏便に済ませる方法だと私は思っている。ラプラス・ダークネスが”残虐的である”というのは有名な話だが、同時に仲間を何よりも大切にしているという事も囁かれている。万が一の事態に対してはこちらにも策があるし、何とか交渉の場には付けるだろうと踏んでいる。

 

 

 

 

そして現在、私たちはそのholoXの本部と思わしき場所を目指していた。実は、先日”敢えて逃がした”諜報員たちの乗っていた宇宙船にちょっとした『細工』を施していたのである。それにより、本拠地に帰還したと思われる彼らの動向を私たちは追えていた。るしあからの提案だったのだが、案外うまくいったようだ。

 

 

「マリリン、それいっつも書いてるよね。なんか意味あるの?」

 

 

マリンがここまでの状況を脳内で整理していると、続けてみこちがそんなことを訪ねてきた。そんなもの、勿論意味があるに決まっている。これらの記録を付けることによって、今後この先で誰かの役に立つかもしれないのだ。

 

 

「ありますよ!いざという時、この日誌は私達が取った行動を示す証拠になります。それに……なんかこういうのって、カッコイイじゃないですか。全てが終わったら、これを懐かしみながらお酒を飲むのが船長の夢なんです」

 

 

マリンはそう言いながら、既に書き埋めた前のページをパラパラとめくる。我々宝鐘海賊団が歩んできた軌跡、宝鐘マリンという者が体験してきた冒険譚。小さな頃から『本物の海賊』になりたかった私からすれば、目的がどうあれこうして仲間たちと宇宙という海原を巡ることは夢の一部を体現することでもあった。……もっとも、私が描いていた『世界を冒険をする凄い海賊』とは随分とかけ離れてしまっていることは否めないわけだが……今の私たちは、ただ他者から奪う”普通の海賊”に過ぎないのだから。

 

 

「ふーん……じゃあ、みこも日記書くっ!」

 

 

「どうせ三日坊主でしょ、紙の無駄じゃん」

 

 

私の考えに感化されたらしいみこちを、すいちゃんが一蹴した。まあ、マリンもみこちが日記を続けられないだろうという事には同意見だ。だたでさえ飽きっぽそうな彼女が、面倒な日記を毎日つけるなんていう行為を続けられるわけがない。

 

 

「でゃまれ!!みこにもできるもん!」

 

 

「アーハイハイ、ソウデスネー。……ところでマリン、さっきるしあと連絡とってたんだよね?あっちはどんな感じだった?」

 

 

小馬鹿にされたことに対する抗議も虚しく、すいちゃんが新たな話題を振ってきた。

確かに彼女の言うとおり、私は二人が来る少し前に”別行動をしている”二番船のるしあと連絡を取っていた。その理由は任務の確認の為だったのだが、恐らくすいちゃんはその時の彼女たちの様子を気にしているのだろう。

 

 

「特に変わり無かったですよ。いつも通り、可愛いるしあたんでした。……あーただ、少しだけボーっとしてたみたいですけどね」

 

 

私が任務の内容を確認していた時、るしあの意識はどうにも上の空な様子だった。何か考え事をしていたらしいが、果たして彼女は何にうつつを抜かしていたのやら……。

 

 

「ふぅーん、そうなんだ……あ!もしかして、この間の件でどっか怪我したとか?ほら、るしあって弱いじゃんw」

 

 

そう言ったすいちゃんは、明らかにるしあのことを小馬鹿にしているようだった。彼女の様子を気にしていたところをみると、珍しく仲間のことが心配にでもなったのかと思ったが……どうやら、私の勘違いだったようだ。

すいちゃんはいい意味でも、悪い意味でも淡白に物事を考える人だ。必要以上に親しい人と仲を深めようとはしないし、逆に例え相手が天下の嫌われ者だったとしても恐らく自分の態度を一ミリも曲げないのだろう。きっと、すいちゃんは私達の仲間の誰か一人が死んでしまったところで悲しみつつも涙すら流さないんだろうなぁ…………ただ一人、”さくらみこ”という女の子の場合を除いて。

 

ちなみに、すいちゃんはるしあのことを『弱い』と表現したが、その実は全くもってそんなことは無い。いやむしろ、個人で出来ることの幅で考えれば私達の中ではぶっちぎりの実力を持っていると言える。それには、彼女の持つ”特別な力”が関係している。確かに肉体的強さはそこらの少女と変わり無いだろうけど、るしあに宿る権能によって宝鐘海賊団の主戦力に数えられているのだ。まあ、それこそが肉弾戦を得意とするすいちゃんから若干疎ましく思われている原因かもしれないけれど……。

 

 

そう思ったマリンは、二人の船長たちの関係性を心配しすいちゃんの方を眺めていた。しかし、当の彼女は既にこの話に興味がないとでもいうように強奪したデザートの一つを楽しんでいる。すると、先程のすいちゃんの発言を咎めるようにみこちが口を開いた。

 

 

「いや、ケガしてたのはおめぇだろ。あの後すぐにみこのところに来て、『擦りむいたから手当てしてー』って言ってただろぉが」

 

 

彼女のその発言を受け、それを向けられたすいちゃんが噴き出しそうになっていた。まるで、痛いところをピンポイントに突かれたという反応だ。

 

 

「は、はぁ!?言ってねーよ、バカみこちッ!!」

 

 

ほほーん……なるほど、可愛いところあるじゃないですか。

私が見た限り、沙花叉クロヱと交戦していたすいちゃんには目立った外傷は無かったように思える。それに多少擦りむいたところで、自分で消毒でもすればいいだけの話だ。それを、わざわざみこちに言って看病してもらうとは……やっぱり、この二人を見ていると微笑ましい気持ちになるな。

 

 

「はぁぁあ?!事実だろぉがょ!!それで何で、みこがバカ扱いされんだお!」

 

 

「うるさいバカッ!もうこのデザート返してあげないっ!!」

 

 

彼女なりの照れ隠しなのか、本当は返そうとしていたらしいもう一つのデザートを一気に口の中に押し込んでしまう。そして、そのまま食べ終わった食器も放置して部屋を出ていってしまった。すると、それに驚いた様子でみこちも残っていた食事に急いで手を付ける。

 

 

「あッ!おめぇ、ちょっと待てぇ!!あむっ、あむ、あむッ…………ご馳走様っ!マリリン、片付けお願いにぇ!」

 

 

まるでリスのように口一杯に頬張ったかと思うと、一気に呑み込んで自分の分を完食してしまうみこち。そして、彼女もまたすいちゃんと同じように自分の食器を置いて船長室を出ていってしまった。

 

 

「あっ、ちょっと!せめて今後の行動について打ち合わせを……って、行っちゃいましたか。はぁ~……これ、もしかしてマリンが片付けるんですか?」

 

 

騒がしい二人が居なくなった室内で、マリンは一人散らかったテーブルの上を虚しく眺める。確かにうるさくて仕事は捗らなかったものの、いきなりこうも静まり返るとかえって気が散ってしまうものだな……。

 

そう思ったマリンは席を立ちあがり、部屋に備え付けられている窓から船の外を眺める。今乗っているこの船が宇宙船である以上、そこから見える景色には美しい星々の海が広がっていた。マリンはその光景を眺めながら、先程彼女が言っていたある言葉について静かに省みる。

 

 

 

「……”弱い”、ですか…………確かに、そうかもしれませんね。誰でもあなたのように、たった一人の為に命を張って戦えるわけじゃないんですよ……星街すいせいさん」

 

 

 

私達は、自分自身の夢と仲間たちの幸せの為に戦っている。だから、安易に”命を賭して戦う”なんて言葉を決して口にしてはいけない。なぜなら、彼女たちの望む未来には私達が誰一人欠けてはいけないからだ。私の、私達の目指す目的地には、仲間全員が揃っていることが絶対条件だから。

だからそういう意味では、背負うものが多いほど私たちは弱いのかもしれない。私は怖いのだ。私には端から、誰かを失う覚悟なんて持ち合わせてはいない。しかし、宝鐘海賊団の提督という立場上いつか必ず選択の時が訪れる。その時が来るのが、私は本当に恐ろしいのだ。

 

そして、それは恐らくるしあも同じ気持ちなのだろう。私と近しい立場の彼女も、きっと似たような危機感を覚えていると思う。やっぱり、私にとってあの子と”二番船の元副船長”の二人は他の者たちと比べても特別な存在なのだ。私は何としても、彼女たちを連れてまたあの日常に戻らなければいけない。

 

 

ーーーー例え、どんな非道な手を使ってでも。

 

 

そう再度心に決意を固めた海賊船の船長は、もうすっかり冷め切ってしまった食事の残りにようやく手を付ける気になったのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

悠久の時を生きてきた悪魔にですら、耐えられないほど長く感じられる時間がある。それは、何の刺激も無く何の娯楽も無い退屈な空間に長時間拘束されること。いくら最強な存在だとしても、孤独感と退屈感だけは堪えられなかった。

しかし、遂にそんな悠久を超えた無限とも思えるような瞬間にようやく終止符を打つ時が来たのだ。

 

 

「ラプラス様!間も無く、目標と思われる宝鐘海賊団艦隊に到着いたします!」

 

 

「やっとか……!!」

 

 

ああ本当に、本当に来たって感じだ。いやていうか、長すぎだろホント。

余りにも長すぎた旅路に、ラプラスは内心本気の文句を垂れていた。

 

というのも、実は目的地に到着するまでに当初の予定よりも大幅に時間がかかってしまっていたのだ。その理由は単純明快、沙花叉クロヱ他12名を乗せていると思われる宇宙船が突如として加速を始めたのである。それがどうしてなのかは宝鐘海賊団の目的を知らない吾輩たちではわかるはずも無いが、少なくとも彼女たちには急ぎ目指さなければならない場所があることだけが明白だった。

そして吾輩たちは、それが判明した段階で徐々に進行速度を速めていったのである。ただ先も言った通り、有事の際に備えて出来るだけ燃料は温存したい。その結果、時間はかかるもののギリギリ標的より速い速度を保った為にそれだけ長い時を有したのだ。その実、何と驚異の三十時間。流石の吾輩も、一日を過ぎた頃から気が狂うかと思った。

 

まあそんな個人的には苦痛を伴う移動ではあったものの、何とか吾輩たちは宝鐘海賊団のものと思われる船に辿り着いていた。しかも、その周辺に他の艦隊は見当たらず僅か一隻で移動しているようだった。これなら、思っていたよりも船内への侵入も容易かもしれない。ちなみに、既に宇宙船に搭載されたステルス機能を使用しており恐らくあちらには気が付かれていないとのことだ。

 

 

「ラプラス様。まもなく、宝鐘海賊団の船を船体へ取り付ける管の射程範囲内に捉えます。船内へ潜入する選抜メンバーは如何なさいますか?」

 

 

ラプツナズの隊長からの報告を聞き、ラプラスは頭を捻る。彼の言う”船体に取り付ける管”とは、航行中の宇宙船に潜入する為の通路のことらしい。人が一人通れるほどの大きさで、それを目標に取り付けることで船内への侵入を可能にするそうだ。便利すぎるこれも、勿論のこと博衣こより氏の発明品である。

 

 

「取り敢えず吾輩は確定として、捕虜の救出やその他のことを手伝えるやつが数人欲しい。そいつらには捕虜の居場所の特定・牢の鍵の入手・この船の船長の居場所の特定、また可能なら宝鐘海賊団の活動目的についての情報収集を行ってほしい。それらに適したやつはいるか?」

 

 

宝鐘海賊団の船に潜入してから、吾輩たちが行わなければいけないことは主にその四つであった。実際の救出行為は捕虜の状態を見てみないと行えないのだが、まずは彼女たちの無事を確認することが何より先決だ。そしてその上で、皆が囚われている牢を開ける手段とそもそもこの船が何番船なのかを確かめなければならない。その為には、この船に乗っているであろう船長の特定とついでにその者の私室でも調べれば宝鐘海賊団全体の目的の一部が判明するだろうと踏んでいる。ちなみに吾輩自身は、沙花叉クロヱの救出とこの船の船長の特定辺りに尽力したいと持っている。この世界の新人にも会ってみたいし、何よりマリン先輩たちとも直接会って話を聞きたい。

 

ラプラスはそう思い、メンバーを問いてきた隊長にそう指示を出す。すると、彼は少し考えるような仕草をしてから答えた。

 

 

「ふむ……それでしたら情報収集に長けた者と潜入に長けた者、後はラプラス様の身をお守りするために腕に自信のある者たちの計四名を選出いたしましょう」

 

 

「ああ、その辺の詳しいことはお前に任せるぞ」

 

 

「御意」

 

 

再三述べるが、ラプツナズの隊員は全部で七名が在籍している。つまり吾輩についてくるものが四人、残りの三人が宇宙船内にて待機という流れになった。また吾輩を含めた全員に無線機が支給され、ある程度距離が離れていても連絡が取れることになっている。これで宝鐘海賊団の船内では情報共有、宇宙船で待機している者達とは帰還等の通信が取れるという訳だ。

 

 

「よし、準備万端みたいだな」

 

 

ラプラスはそう思い、司令官席から立ち上る。すると、それに気が付いたらしい隊員たちが吾輩の言葉に注目し始めた。

 

 

「それじゃあお前ら、長旅で疲れてるかもしれないが吾輩のサポートをしっかり頼んだぞ。必ず、犠牲者ゼロで仲間を救出するんだ!」

 

 

「「「!YES MY DARK!」」」

 

 

総帥からの号令に、その場にいた者達全員が声を上げる。

そして、引き締まった空気感のままラプラスたちを乗せた宇宙船は敵陣へと足を踏み入れていくのであった。

 

 

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