転生したらラプラス・ダークネスだった件 作:飽和水溶液_pixiv
また、これも前回に引き続き本編とは何ら関係ないのですが、どうしても言いたいことがありますのでこの場で言わせてください……遂に、ホロライブENの新メンバーたぁぁぁぁ!!
しかもビジュアルとかキャラクターがぶっ刺さりな人達ばかりで、興奮と期待が高まっております。特に魔人さんとか双子ちゃんとか、滅茶苦茶可愛くないですか?!この作品では今のところJPメンバー以外登場させるつもりは無いのですが(日本語以外分からないのと、知識がにわかなため)、ENメンバーを出したいが為にストーリー変えようかな……とか考えちゃってます。皆さん、今後のホロENの活動にも期待していきましょう!
それと大変ありがたいことに、この『転ラプ』シリーズのUAが先日20000を突破いたしました。これも日々この作品を読んでくださる皆様のお陰です、本当にありがとうございます!
【追記】
今回は早めの投稿ですので、深堀シリーズはお休みです。本編の方がそこそこ楽しめると思いますので、そちらで手を打ってくださいませ。
「ウ゛、ア゛ア゛ア゛ァ˝ァ˝……ッ!!」
客室の扉を開け放った先には、血だらけな大男が立っていた。その身体の所々は腐っているのか、黒や緑に変色してしまっている。また全身は傷だらけで、その顔には本来あるはずの皮膚や片方の目玉が足りていない。そんな一見”死んでいる”ように見える状態のその者が、両手を前に突き出して五指を垂らしていた。
「ッ!?!?!?」
突如現れた理解不能な存在に、ラプラスは驚きのあまり声にならない悲鳴を上げる。普段驚かされてびっくりすることなんて殆どないけれど、これは流石の吾輩でも心臓が止まるかと思った。
「ア゛…ウ゛ウ゛ッ……」
……もしかして、何か喋ってるのか?
先程も、吾輩にはこいつが何かを話しているように感じていた。しかし、そのほとんどがうめき声のようで聞き取ることが出来ない。ていうか、一体何なんだこいつは。
意味の分からない言葉と、理解不能な存在を前にラプラスは身動きを取ることが出来ないでいた。そんな中で、一早く総帥の危機を感じ取った護衛によってラプラスの体は後方へと引っ張られる。
「ラプラス様ッ!お下がりくださいっ!!」
「うおっ!?」
強引に引っ張られたことで、ラプラスは体勢を崩し転んでしまう。しかしそれを行った彼女は既に抜刀しており、たった今吾輩のいた場所を掠めるように振り下ろされた『動く死体』の腕を受け止めていた。それはラプラスを狙った明らかな攻撃行為であり、彼女の行動が無ければ吾輩はこいつに殴られていたことだろう。
「わ、悪い、助かった……」
「いえ、問題ありませんッ!……それよりも、この者に反撃してもよろしいでしょうか?!」
そう言った彼女は、次の瞬間には眼前に居る”敵”を切り捨ててしまいそうな勢いであった。
この世界の秘密結社holoXは、序列と規律を重んじる組織である。常に指揮系統が順守され、命令には正しく忠実に従うことが絶対であるとされている。よって、現在『ラプラス・ダークネスの身を守る』という任務に就いている彼女には、”総帥に向けられた攻撃を防ぐ”ことは出来てもそれを排除してよいかまでの判断が出来かねるのだ。しかし目の前の敵は明らかに危険であり、防ぐだけでは総帥を完全に守れるとは限らない。よって、この場の指揮権を持つラプラスに指示を仰ぐ。
「くっ、なんて力……ラプラス様、攻撃しますよ!いいですね?!」
「ア゛ア゛ア゛ッッ!!」
動く死体の攻撃を受け止めている彼女は、若干押され気味であった。どうやらこいつは見た目よりも剛腕なようで、holoXの精鋭であるラプツナズの隊員ですら力負けしてしまうようだ。
指示が欲しいと言われ、ラプラスは一瞬考える。本当にこいつを、攻撃してしまっていいのだろうかと。恐らく目の前にいるこの者は、暗殺部門の報告書にあった『動く死体』と言うやつだろう。呼称するならば、その見た目からまさしく【ゾンビ】である。映画や漫画で文字通り死ぬほど見たことのある、全身傷だらけで腐敗の進んだ動き回る屍だ。そして、そういったゾンビが出てくる作品にありがちなのが”感染”と”数の暴力”だ。噛まれればウイルスが体に入り込み、同じくゾンビにされる。そうすることで数が増え、多勢に無勢な状況に陥ってしまう……というのが、お決まりなパターン。
だが、ここはフィクションではなく現実の世界だ。このゾンビがそれと同じであるという確証はないし、何よりこの船に普通に居るという事は宝鐘海賊団の管理下に置かれた存在という事になる。ならば、闇雲に攻撃して殺してしまうのは何かと問題になるかもしれない。いや、もうゾンビだから死んでるわけなんだけど。
そう思ったラプラスは、護衛の女に必要以上に攻撃しないよう指示を出すことにした。万が一このゾンビがこの船の正式な船員だったとしたら、むやみやたらに傷つけることは憚られるからだ。
「おい待て、そいつは殺すな!気絶させるか、動きを封じるまでに留めとけっ」
「ッ!……りょ、了解です!」
総帥からそのように指示を出された護衛は、一瞬困惑したような顔をした。恐らく、あの悪の組織の総帥ならば当然殺すように命じられると思ったからだろう。
しかし、自分の真意はどうあれ彼女は直ぐに吾輩の命令に従ってくれた。両手で握っていた剣の柄に力を入れ、振り下ろされているゾンビの腕を弾き返す。そして、弾かれた両腕に引っ張られ態勢を崩した奴を刀身の棟の部分を使って力任せに吹き飛ばした。
ーーーーガンッッ!!……ゴロゴロゴロ。
「……あ。」
「ッ……力加減が、難しいですね……」
ただし、受け入れてくれたのは気持ちだけでありその結果はラプラスの指示をギリギリ越えてしまうものであった。吹き飛ばされたゾンビは廊下の反対側の壁に激突し、その衝撃で体の一部がその身体からボトッと離れてしまった……主に、右腕と頭部が。
「お、おい……今、殺すなって……」
「も、申し訳ありませんラプラス様っ!指示通り、殺すつもりは無かったのですが……」
総帥から下された命令に反し、敵を殺めてしまった彼女をラプラスは若干咎める。しかし、当の本人は本当にそんなつもりは無かったようで申し訳なさそうに頭を下げてきた。まあ、こいつもまさかちょっと小突いただけで体がバラバラになるなんて思わなかったのだろう。すぐに謝ってきたし、悪気が無かったのはいいけど……これ、やばいかな……?
そう思ったラプラスは、先程部下の不手際で殺してしまった(?)ゾンビにゆっくりと近づく。そして、崩れて転がってしまった頭部へと意識を移した。
(…………ん?この匂いって……)
しかし、そこでふと鼻腔の奥でどこかで嗅いだ覚えのある甘ったるい香りを感じた。べったりと濃く、口の中に味として残りそうな匂い。確かこれは、さっきるしあ先輩の部屋で感じたものと同じやつ……
ーーーーーピクッ。
「ッ!?」
確かに感じた強い匂いに、ラプラスは意識を向けていた。しかしそれも、視界の端の方で跳ねるように動いた”切り取られた腕”によって注意の方向を強制的に変えられる。すると、そこにはもはや”生”を失ったはずの腕とそれを探すように這っているゾンビの姿があった。
ーーーズズ……ズズズッ……。
頭部が繋がっていないからか、呻いたり声を上げることは無かった。だが、だからこそ声もなくただ欠損した四肢を求めて蠢く目の前の肉の塊が酷く恐ろしいものに感じる。ラプラスはこういったホラーやグロいものに耐性はあるものの、目の前で起こっている不気味過ぎる光景には流石に冷や汗とともに恐怖心を抱いていた。
しかし、何はともあれ生きて(?)いたようだ。そうとなれば、今のうちにこの場を離れ目的地を目指した方がいいだろう。
「何だかよくわからんが、まだ動けるなら大丈夫だろ。……それよりも、今のうちにA棟に向かうぞ!」
「は、はい、わかりました。…………不気味で気持ち悪い……」
ラプラスの声掛けに反応した彼女だったが、最後に小さな声でそう言っていたのが聞こえた。どうやらこいつは、この手のものに耐性が無いようだ。まあ、普通の女の子なら悲鳴の一つでもあげているところだろうし当たり前か。
そう結論づけ、ラプラスは被っているヘッドギアのステルス機能をONにする。たとえ見破られるものだとしても、気休め程度には機能してくれると助かるんだけどな。
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宝鐘海賊団の二番船。そこは大きくA棟・B棟に分かれ、それぞれB1F~3Fまで存在している。また、各一階と三階には左右の棟を結ぶ連絡通路が設けられていた。
そして、つい先程までラプラスたちはB棟の三階にある船長室で潤羽るしあ及び湊あくあの会話を盗み聞きした後、一つ下のB-2Fにある客室で息を潜めていた。しかし、事態が急変したために現在は部下との連絡が途絶えたと思われるA棟を目指して、多少の遠回りをしつつ一階の連絡通路を目指しているところであった。
「ア゛ア゛、ウ゛ゥ……」
「エ゛、ウ゛ァ゛」
(ラプラス様、こちらもダメなようです。迂回しましょう)
(くそ、ここもか。まったく多すぎだろ……)
しかし、その進捗はとても順調とは言えないものであった。
客室を離れて十数分、行く先々の廊下でラプラスたちは例の【ゾンビ】達と鉢合わせてしまっていた。勿論ステルス機能をこまめに充電しながら使用しており、その甲斐あってか幸い発見されている様子はない。だが、他の隊員たちの例もあるので念のためゾンビの徘徊している廊下を避けて進んでいた。
(さっきまで誰もいなかったくせに、一体何処から湧いたんだこいつら……)
当初の情報では、この二番船には船員が極端に少ないという話だった。そして、潜入したての頃はその情報通りだったのだが……今となっては、あちこちに死体が跋扈している完全な幽霊船と化していた。また、この船の作りや古めかしさもそれを助長するものとなっている。いやむしろ、そうなる事を想定されたもののようだ。もしかして、これはあのネクロマンサーであるるしあ先輩の趣味とかなのだろうか。
(いい趣味してるぞ、ホント……吾輩たちにとっては、迷惑なことこの上ないな)
いくら見えていないと言っても、障害物があるのと無いのでは進路を進む速度は途端に変わってくる。しかも、相手にそれが見破られている可能性があるうえに、見つかったら追い掛けてくるのがゾンビだと考えるだけで精神力も削られる。だからこそ、迂回してまで目的地を目指しているわけだが……こんなにちんたらしてたら、その内ステルス機能のバッテリーが切れてしまう。
だが、そんな格闘の中でゾンビの生態について少し分かったこともあった。それは、彼らが『視覚』も『聴覚』も優れているという事と、”少しの知能”を有しているという事だ。しかも、どうやらその視覚と聴覚というのが、必ずしも目や耳を通して情報を得ているという訳では無いらしい。完全に顔面の潰れているゾンビでも他のゾンビや壁などをきちんと避けて歩行できていたし、僅かな物音にもしっかり反応していた。それに加え、複数人で隊列を組んでまるで一致団結して侵入者を捜索している様子のゾンビたちも見かけている。それらからわかることは、彼らは見た目や声帯以外が普通の人間と変わらず多少知能レベルが低い程度のものであるという事だ。
そして、それがこの上なく厄介だという事はもはや言うまでもあるまい。少し手を合わせた護衛が言うにも、彼らは腕力が常人より幾分か強いようだ。手足が取れた程度では痛みを感じないようだし、本気で倒そうとしてもかなり苦戦を強いられるだろう。
(これ以上の詳しい生態がわからないから、何とも言えないけど……普通にholoXの一般兵より強くないかこいつら)
彼らがどう生まれ、何を原動力に動いているのかはわからない。もしかしたら弱点の様なものがあるのかもしれないが、生憎現状ではそれを探る余裕も時間も無いのだ。ただ吾輩の推測としては、十中八九るしあ先輩のネクロマンシーの仕業だとは思うんだけどなぁ……。
そんなゾンビたちへの思考を巡らしつつ、ラプラスたちは歩を進める。すると、大変な遠回りをした甲斐があったのかゾンビたちと直接遭遇すること無く何とかA棟へと続く連絡通路に辿り着くことが出来ていた。
(ラプラス様、何とか着いたようです。恐らく、この先がA棟かと)
その道は、作りが不自然に新しい長い廊下であった。しかも、周りがガラス張りで外側の宇宙空間を覗き込むことが出来る水中ならぬ宇宙トンネルである。古めかしいこの海賊船にはあまり似つかわしくない気もするが……まあ、今は気にする必要もないか。
(ああ、そうみたいだな。見える限りこの道にはゾンビは居ないみたいだし、このまま進むぞ)
(了解です)
そう答えた護衛を引き連れ、ラプラスは再度足を踏み出した。確かさっきの通信でラプツナズの隊員がA棟の一階に潜んでるみたいなこと言ってたし、まずはこの辺に何か手掛かりが残ってないか捜索をーーー
「……やっと見つけたのです」
(……ッ!?!?)
突然後ろから声をかけられたことにより、ラプラスと護衛の女の動きが同時に止まる。そして、直ぐに息を潜めるように呼吸を浅くした。
大丈夫、ちゃんとステルス機能はつけてる。見つかるはずが……
「居ないふりしても、無駄なのです。るしあには”見えてる”から」
再度声をかけられて、ラプラスはようやく理解する。
あぁ……部下の皆も、”こうして発見されたのだな”と。
「さぁ、観念して出てきたら?……”ラプラス・ダークネス”」
久しぶりに、その声で自分の名前を呼ばれた気がする。懐かしいその声音の響きと、それにより蘇る楽しかった記憶や思い出。緊迫した状況下とは裏腹に、その人に話しかけて貰えたという歓喜の気持ちがラプラスを支配していた。
「……やっぱり、見破られてるんだな」
しかし、今は残念ながらその再会を喜んでいる場合ではない。むしろ、これは最悪な状況と言って差し支えなかった。
ラプラスは被っていたヘッドギアを脱ぎ、その姿を光の下に晒す。そして、後ろを振り返ってから我々の存在を見破った彼女の姿を見据えた。
「ありきたりなんだが……”何でわかった?”って聞いてもいいか?……宝鐘海賊団二番船船長、”潤羽るしあ”」
後ろを向いてラプラスの視界に入ってきたのは、あちらの世界と見た目が何も変わらないるしあ先輩の姿であった。しかも、その服装すら蝶の刺繍の入った碧いレースに漆黒のマントを羽織っているというラプラスのよく知る先輩のスタイルと似通ったものである。
……しかし、今自分達に向けられているその『”怒り”と”殺意”』に満ちた瞳が、ラプラスの想う彼女とは別人であるということを物語っていた。
「……簡単なことなのです。るしはには、その人の『魂』が肉体を透けて常に見えるのです。だから、例え姿を消そうとも不自然な魂が浮遊してれば直ぐに気が付くってわけ。……これで満足?ラプラス・ダークネス」
冷たく、完全に吾輩たちを『敵』と認識した上での声色でそう言った。
なるほど。やはりラプツナズの隊員や潜伏してたはずの暗殺部門を発見したのはるしあ先輩のようだ。しかも、『魂が見える』とくればこの世界の先輩もあちらと同じく降霊術が使えると考えて良さそうだな。
……にしても、完璧なカモフラージュだと思ったのに。まさか、魂の有無で発見されるとは……流石のクロヱ達も、こればかりは想像だにしてなかっただろうな。
「ああ、満足だ。……ついでに、もう一つ質問に答えてくれると嬉しい。吾輩たちの他にも連絡の取れなくなった仲間が居るんだが……お前、何か知らないか?」
「さぁ?知らないのです。……あ、もしかしたら牢屋に居るかも。良かったら案内しようか?」
つまり、”皆捕まえた”と。
まあ、そうだろうな。他に部下達と連絡が取れない理由がない。しかも”牢屋に案内する”とは、『吾輩たちを捕まえる』と言っているのと同意義だ。それに先輩との遭遇に気を取られて気付かなかったが、彼女の後ろには数体のゾンビたちを引き連れている。ゾンビたちを操ってるのがるしあ先輩だという予想も、どうやら正しそうだ。だが、残念ながら吾輩たちは今ここで捕まるわけにはいかない。
「いや、大丈夫だ。自分たちで探すからな。……それじゃあ、吾輩たちは先を急ぐんで」
「……逃がすと思ってるの?」
そう言って踵を返そうとしたラプラスに対し、るしあ先輩が鋭い眼光を向けながら静止を促してきた。
あ、やっぱりそうですよね。
(さて、どうしたものかな……)
再会を願いつつも、今は敵同士となってしまった先輩を見据えてラプラスは考える。吾輩の本来の目的を考えるならば、ここでるしあ先輩に和解を持ち掛けられるのが本当は一番望ましい。そうすればこれ以上話をややこしくすることも無く、傷つく者も出さなくて済む。それに先程船長室で盗み聞きをした感じ、向こうもそれを願ってるはずなのだ。
……ただ、ここでそれをやるには一つ大きな問題があるように感じられた。それは、何故か今のるしあ先輩からは”全くその気が感じられない”からだ。先程のあくあ先輩との会話の時には感じなかったholoXへの……というか吾輩への怒りを凄く感じるし、とても穏便に済ませられる様子ではない。あの時はるしあ先輩も吾輩たちとの交渉に前向きみたいだったのに、一体どんな心境の変化があったんだ?
数時間前と、現在とのるしあの様子の違いにラプラスは内心戸惑いを隠せない。そんな中で、彼女は重苦しい口をゆっくりと開いた。
「ねぇ、ラプラス・ダークネス……貴方の質問に答えたんだから、そっちもるしあの質問に答えて欲しいのです。…………この船に、一体何をしに来たの?」
「愚問だな。お前らに捕まった仲間を取り返しに来たんだよ」
るしあの静かに責め立てるようなその問いかけに対し、ラプラスは素直にそう答えた。嘘は言っていないし、表向きな理由は十割がそれだ。任務に失敗し、宝鐘マリンの指示で捕らえられてしまった仲間を救出する目的で吾輩たちはここに居る。
「そう……それじゃあ、もう一つ教えて」
「……なんだ?」
間をおいて、一呼吸。
るしあ先輩がこちらの真意を探るように、ラプラスの挙動一つ一つに警戒しながらこう聞いてきた。
「どうして……どうしてあなた達holoXは、るしあ達の星を襲ったのです?」
「…………へ?」
しかし、予想だにしていなかった質問にラプラスは思わず気の抜けた声を上げてしまった。
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『絶対に……絶対に、許さない……!』
親友であるるしあちゃんが、”我輩”から告げられた真実を聞いた時の反応を思い出す。その憤怒に満ちた表情は、サキュバスである我輩ですらゾッとするもので……とても”好ましく”感じた。
『絶対に、後悔させてやる。……るしあの大切な場所を、大切な人達を、奪ったアイツ等に……!!』
そう言ったるしあちゃんからは、殺気すら感じられた。狙い通りとは言え、トモダチにこんな顔をさせる我輩は本当に……”良くできる子”だと思う。
『おいおい、るしあちゃん。怒るのは自由だけどさ……そんな、勝手なことしていいのか?あのセンチョウ?とかいう人に怒られちゃうぞ』
『……知った事じゃないのです。勝手に侵入してきたのは向こうでしょ?大丈夫、るしあはつよつよのネクロマンサーだから上手くやれるのです』
自分で強いと言ってしまうあたり、るしあちゃんのその自信たっぷりな姿勢には感服してしまう。しかも”つよつよ”て、妙に子供らしい言い回しをするところも彼女の魅力だ。
……本当に、”憎たらしい”。
そんなやり取りがあったことを、銀河の果てで一人魔乃アロエは思い返していた。
計画通りるしあちゃんの殺意はしっかり”煽って”おいたし、後はそのままholoXとぶつかるのを待つだけだ。
「上手くいきすぎて、びっくりするくらい……流石は”魔王様”だな」
彼女は、とある者の指示で動いていた。
あの船内で、潤羽るしあと【ラプラス・ダークネスの"偽物"】の二人をぶつける為に。
「後は、”コイツ”をあの船に向かわせればいいんだよな。……お前もしっかり働けよ、【ホロベーダー】」
そう言ったアロエは、黒く蠢く”何か”をそっと撫でる。悪魔によって産み落とされ、星々を喰らうとされた漆黒の怪物を。
「……さ、お務めを果たしてとっとと魔界に帰ろ。”トワちゃん”も待ちくたびれてるだろうしな!」
宝鐘海賊艦隊二番船の進む航路の上、そう一人で呟いたアロエはその役目を果たし宇宙空間より姿を消したのだった。